「いかに素早く前方向に動き出せるか」実はこれが一番難しいことのようです。

今日は8月13日、世間はみんなお盆休みということで、郡山に住んでいる長男家族も、休みを利用して帰省しています。

子どもが小さいことと、長距離の車の運転が苦にならないようで、郡山から車で帰省しています。
当然帰りも車なわけで、2時間でも長く感じる私から見れば、信じられないことです。

帰省してもベースキャンプは廿日市市の嫁の実家で、今日の午後と明日はこちらに来るということで、午前中にブログを書いています。

今朝は男子200m決勝、ウサインボルトのラストランを、リアルタイムで見ようと、早起きしました。

どんなスーパースターにも終わりがあるわけで、心情的にはアンカーとしてトップでゴールインし、金メダルを最後の手土産にして欲しいという気持ちもありましたが、残酷な結末が待っていました。

それにしても日本チームのバトンパスは、他のチームとは比べられないほどのスムースさで、4人の合計タイムではメダルにはとても届かないなか、ボルトの途中棄権があったとはいえ、堂々の銅メダルを獲得してくれました。

今大会唯一のメダル、世界との差は開くばかりですが、こんなところに日本人のまじめさというか、真剣な取り組みが実を結ぶのですから、走るという行為の本質にも、もっと目を向けて取り組んでくれれば、他の種目でももう少し何とかなるのではと思ってしまいます。

今朝は起き抜けに玄関のドアを開けて空を見上げましたが、明らかに雲の様子が違い、心地よい北風が吹いていました。

久し振りに冷房が要らず、窓を開けて過ごしています。

私の完全な休みは今日だけで、昨日もそして明日も予約を受けています。

さてここからが本題です、陸上競技は当たり前ですが、前に向かって走ります。

しかし、他の競技では前後左右、そしてジャンプ動作もありますから上下に動く動作も必要になります。

私の仕事場である「Conditioning Studio 操」の入り口には、もう一つの名前を掲示しています、それが「動きづくり研究会 西本塾」です。

ですから私の元を訪れてくれる人たちの目的は、大きく二つに分かれ、体の不調を軽減するために施術を受けにくる方と、スポーツ選手として、少しでも良い動きが出来るようになりたいと思って来てくれる人たちです。

この「少しでも良い動きが出来るようになる」ということの意味を説明することは、とても難しいことです。

トレーニングも目的は、筋力アップや体のサイズアップといった、体づくりが目的であり、その結果としてスポーツ動作が向上するというのが一般的な考え方だからです。

肉体改造とか体づくりではなく、トレーニングの目的は「動きづくり」ですと言っても、理解してくれる人はほとんどいません。

では「動きづくり」を目的としてトレーニングを重ねた選手たちが、最終的に求める良い動きとはいったいどんなものなのでしょうか。

なぜか今、指導を依頼される競技の中で圧倒的に多くなったサッカーという競技において、自他ともにトレーニングの効果を実感できる動作はどういうものなのか、逆に言えば、改善するのが一番難しい動きとはどういうものなのか、ここ数カ月の指導の中で、一つの答えが見えてきました。

それは、「いかに素早く前方向に動き出せるか」ということのようです。

ようですというのは、もしかしたらこれからもっと難しい問題に直面するかもしれませんし、これまでそのことに対する私の指導が的確でなかったことが原因だったかもしれないからです。

「人間の体はね・・・」という言葉から始まるのが私の理論というか、体に対する向き合い方です。

これまで経験してきたことや、たくさんの素晴らしい選手の動きを見てきた中で得た、最大公約数的な人間という動物としての効率的な動きを、こういう意識でこうやって体を使えば、誰でも効率的で効果的な動きが出来るのではという仮説を立て、自分の体で試し実証して得たことを、選手に伝えてきました。

頼まれてもいないし、間違っても私にアドバイスを求められることなどあるはずのない選手の動きであっても、私ならこうアドバイスする、こういう風に体を使えばこんな動きが出来るのにと、想像を膨らませているだけでも楽しい時間を過ごすことが出来る、何というかお気楽な性格の私です。

そうやって思いついたことを伝え続けてきた中で、私と出会った選手たちが確実に変化し、成果を残してくれることで、私自身にも自信ができ、もっと良いものがあるのではという欲も出てきました。

明日も来ることになっている高1のA子ちゃんですが、このブログでも何度か取り上げたことがあるので、分かる人も多いと思います。

A子ちゃんは、大学1年になったお兄ちゃんの影響でサッカーを始め、お兄ちゃんの高校進学のために広島に移り住みました。

中学時代は広島のクラブチームに所属していましたが、それほど目立つ選手ではなかったようです。

それでもサッカーを始めたころからの夢であった、強豪校への進学を目指し、真剣にサッカーに取り組んでいました。

その当時の指導者やご両親にして、今のA子ちゃんの姿は想像できなかったかもしれません。

それが昨年の10月から6か月間に渡って、私の元に週に3回くらいの頻度でトレーニングに通い続け、みるみるうちに周りから一目も二目も置かれる選手へと成長していきました。

残念ながら直接プレーを見る機会がなかったのですが、兄妹とは言えライバル心むき出しで、お互いを褒め合うことのないお兄ちゃんから、「A子は凄いです」の言葉を聞いて、これは本物だと確信していました。

お盆休みをもらって広島に帰ってきた翌日からトレーニングに来ていて、意識の高さは想像以上です。

久し振りにトレーニングを指導し驚いたのは、高校では同じ環境で器具を使ったトレーニングは出来るはずもなく、5カ月のブランクで、それぞれの種目にブレが出ているかなと思っていましたが、それどころか逆に、4月以降もずっと私の元に通い続けていたかのような動きを見せてくれるのです。

これなら強豪校の一員として、それぞれそれなりの実力を持って入部してきたライバルたちに臆することなく、それどころか一歩も二歩もリードできていると思いました。

「動きが良い」という言葉はとてもあいまいで、客観的な評価にはなりません。

なぜA子ちゃんの動きをそう感じたのか、5か月前のA子ちゃんや、お兄ちゃんのH君、そして同じく高1になったS太たちの動きが一つの基準になっていた私には、その後に指導した人たち、遠隔サポートを含みますが、やはり彼らはトレーニングに取り組んでくれた期間が長く回数も桁違いに多いからそうなったのであって、他の人に同じ動きを要求するのは難しいと思っていました。

その一番難しい動きと言うのが、今日のテーマである「いかに素早く前方向に動き出せるか」ということでした。

走るという行為は理論の部分から丁寧に説明し、順を追ってドリルを実行していただければ、必ず現状より上達できます。

上達と言うのは、「楽に速く走れるようになる」ということです。

横への動きも、相手に視線を向けたまま、上半身をできるだけ正対させたままで骨盤の動きで対応できるようになったり、後方へのターン動作も同じようにスムーズに一歩目が出せるようになります。

人間がその場からどちらかの方向へ移動するためには、これまでは地面に圧力をかけ、その反力を得るというのが常識でした、それを地面に「居着いてしまう」という言い方で、マイナスな面が多いと考え、別の体の使い方を考えました。

それが、「落下」「捻転」「重心移動」の3つを、一瞬にして行うことが、最も効率的な動き出しが出来るカギになるではないかという結論を得ました。

私自身が動きの達人とか、誰にも真似のできない凄い動きを身に付けているという訳ではありません、本当に普通の人間です。

最大公約数的な観点で超一流選手の動きを分析していく中で思いついた効率的な動きですから、誰にでも習得可能なものでなければ意味がないのです。

もし私にしかできないような動きで、習得するのに何年もかかるような動きを提案しても、誰の役にも立ちませんから。

もちろん指導していく中で、例外なく変化し上達してくれている実感を得ています。

それがA子ちゃんのように、ハイレベルなライバルたちの中でも、ひときわ輝く何かを感じさせている要因はどこにあるのだろうと考えた時、トレーニングの後半で行う動きのドリルで見せる、アイドリングから重心を前に倒し、振り出された足と逆の肩を、骨盤から背骨を広背筋の機能を使って捻り上げることの繰り返しで、一気に加速するというドリルを見て、「なるほどそういうことか」と納得しました。

まったく地面を蹴ることなく、何といえば良いのでしょうか、滑るようにというか、後ろからスーッと風が吹いて押し出されたように、あっという間にスピードを上げて行くのです。

体の負担を少なくし90分間頭と体を動かし続けることを可能とすることが、サッカーにおける私の走りに対する発想の原点であり目的ですが、この前方向への瞬間的なスピードアップこそ、選手本人はもちろん、指導者が選手に求めている最大の能力ではないでしょうか。

同じく高1で、以前指導を受けてくれたK君も、先日久し振りに来てくれましたが、お母さん曰く「特徴のないとことが特徴になってしまい、ここは負けないという所を見せられない」というお話を事前に伺い、まさにこの前方向への動きだしを改善できれば、今のポジションを脱することが出来るのではないかと本人に話をし、そこを目標にトレーニングを行いました。

以前にも書きましたが、その場に立って後ろから手を叩いたことを合図に走り出そうとすると、ほぼ例外なく全員がいったん後ろに下がってから走り出します。

これは地面反力こそが走るという行為で体を前方に送り出す唯一のエネルギーであると、頭も体もそう思っているからです。

この意識を変えるのは容易ではありません、手っ取り早く指導して欲しいと、最終目的を達成するためのドリルをいきなり行っても、絶対に身に付くことはありません。

それぞれ違いますが、どうやって指導して行けばそうなってもらえるのか、それも少しずつ分かってきました。

「キレのある動き」という言い方も、この動きが基本になっていると思います。

テレビでJリーグの試合を見ても、前方向への動き出しが素早くスムーズに行えている選手はほとんどいません。

お互いがそうであるからこそ、大きな問題には感じないのでしょうが、以前話題にした「マスチェラーの選手」のような動き出しをされたら、まったく勝負にはならないと思います。

この動きは他のどんな動きにも共通する意識で、とくに体幹部分をうねり出す感覚がを身に付けることで、競輪や競艇といった、まったく関係なさそうな競技の選手からも、自分の競技動作に変化を感じるという言葉を聞いています。

誰にでもできる走るという行為、だからこそその瞬間的な動き出しの能力は、大きな差となって選手としての価値を高めてくれるようです。

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「背中を使う」「背中で走る」言葉だけが先行しないようにして欲しいと思います。

現在イギリスで行われている世界陸上2019、陸上競技は様々なスポーツ競技の中でも、人間の能力そのものを競い合うという意味で、とても興味深くそして大好きな競技です。

今回の大会はイギリスで行われているため時差が大きく、さすがにリアルタイムでテレビ観戦するのは難しいです。

その中でも特に注目していた、ウサインボルト選手の個人種目ラストランとなる100mですが、残念ながら勝利で飾ることは出来ませんでした。

日本から出場した3選手は、ともに予選を突破し準決勝に進みましたが、残念ながら決勝に進むことは出来ませんでした。

今日は陸上選手のことを深く掘り下げることが目的ではありません。

「走るという行為」そして、「背中で走る」という言葉の意味を、またまた考えてみたいと思います。

西本塾や個人指導、また遠隔サポートを通じて私の指導を受けていただいた方々が、最終的に何を身に付けたいのかといえば、やはり「私の提唱している走り方」に尽きると思います。

様々な理屈を並べたて、体の仕組みやその効率的な使い方をどれだけ丁寧に説いても、それらはすべて走るという行為に対しての前座というか、前置きにしか受け取ってもらえません。

その部分の理解が浅いため、学んだことが形に出来ない、やはりこれまでとは違う体の使い方に、習得が難しいと言われることになってしまいます。

そのことについては、最近何度も繰り返し言及していますので今日は触れませんが、ダンスの振り付けを習うような気持ちでは、絶対に身に付かないことだけは何度でも言っておきます。

何故みなさんが、走るという行為を私から学ぼうとするのか、それは走るという行為が人間にとって最も基本となる運動動作だからだと思います。

そして何より、これまで走るという行為が、楽しいとか好きだと胸を張って言えるものではなかったということも大きな原因だと思います。

専門としている陸上競技の選手にして、練習中に楽しいと思って走る余裕はないと思います。

それが他の競技で、体力トレーニングの一環で行わさせられているランニングが、楽しいはずがありません。

物心つかないうちに、人間は歩行動作から走るという動作を身に付けて行きます。

そして周りの人間たちからの評価が始まり、この子は足が速いとか、あまり速く走れるようにはなりそうもないと、レッテルを張られることになります。

さらに運動会の徒競走で、他の子供たちとの相対的な比較で、速い遅いが決められてしまうことになります。

短い距離のダッシュにしても、長距離を走るにしても、大きなエネルギーを必要とします。

とにかく走ることはしんどいのです。

しかし、走れなければ成り立たない競技がたくさんあります、走れることが前提といった方がよいでしょうか。

だから走ることに対して能力の高い選手は、様々な競技で優遇されることになります。

その能力の劣っている選手は、何とか改善したいと努力しますが、その過程というか方法が、とにかくきついことをやる、体をいじめるとか追い込むとかいう言い方をされる、最もやりたくないことをやらなければ改善することは出来ないと思わされています。

今回のマラソン競技に参加した選手たちの練習内容を聞いていても、量より質と言いながらかなりの距離を走り込んでいますし、そのまま量で勝負とばかりに、他の選手に負けない距離をこなしてきたという選手もいました。

結果はまたまた世界には全く歯が立たず、「力が足りませんでした、一からやり直しです」という言葉しか出てきません。

こういうコメントは、今に始まったことではありません。

結果を残せなかった選手は、ほとんどこういうコメントを残していきます。

ではどうすればよいのか、そろそろ答えを見つけることは出来ないのでしょうか。

今回出場した女子の2選手の走法は、その一つの方向性を感じさせるものでした。

私の指導を受けたことのある人たちには分かると思いますが、あの走法は似て非なるもので、けっして私が提唱している走るという行為の体の使い方ではありません。

一言で言えば、まったく背中が使えていません。

10000メートルを制した、男子のモハメド・ファラー選手と、女子のアルマズ・アセナ選手、二人とも圧倒的な強さを見せつけてくれましたが、失礼ながら見た目は似たような選手がたくさんいて、誰が強い選手なのかは判断できません。

何が違うかといえば、やはり骨盤から背骨にかけてのラインがすっと伸びていて、最後まで崩れることがないということです。

これは私が理想とする400mを専門としたマイケルジョンソン選手の走行中の骨盤の反り方にも共通するところです。

私の提唱する走り方のポイントはいくつかあるのですが、この「骨盤が反っている」という部分は、その中でも最重要ポイントとなります。

なぜかと言うと、骨盤と大腿骨のジョイント部分である「股関節」の機能を最大限に発揮させるためです。

これまで走るという行為は、地面を強く蹴ることによって得られる反力を使って、少しでも広いストライドと速いピッチを両立させることが、スピードを得るための絶対条件だとされています。

スタートラインにずらりと並んだ選手たちの体つきを見ると、誰が強い選手なのか、一見してわからないくらい似た様な体系に鍛え上げた選手たちがずらりと並びます。

10000mであれば、最後の直線でのラストスパートまでは誰が勝つのか分からないほど、みんな素晴らしい走りをしていましたが、最後の最後、ここ一番になった時に体の使い方に大きな差が出てしまいました。

体の前側を使って力んでしまい、骨盤の反りがなくなって身体が丸まり、一生懸命腕を振り、膝を引き上げて速く走ろうとしているにもかかわらず、逆に失速してしまっているかのように、トップに抜け出す選手から離れて行くという現実です。

100mや200m、そして400mといったスプリント種目でも同じようなことが起こります。

そうならないために必要なことが、「背中を使う」「背中で走る」という意識なのです。

そのためには背骨が一本の棒状のものだというイメージではなく、仙骨を含め25個の椎骨の集合体であるという意識と、それを使いこなせるようになるためのトレーニングが必要となります。

そこには体づくりの概念はなく、まさに「動きづくり」のトレーニングを行っているという目的意識が必要になります。

この意識がすべての動作の基本となります。

その上で、背骨を動かす、背中を使うという感覚を意識しやすくするのが、「広背筋」を使っているという感覚です。

広背筋の働きによって、背骨を反らせ背骨のS字カーブを意識して感じられるようになります。

骨盤が後上方に引き上げられることで、股関節の自由度が増し、大腿骨が自然に振りだされやすくなります。

体の前側の筋肉が緊張して、骨盤が後傾してしまうと、大腿骨を降り出すために股関節を屈曲させる筋力が必要となるため、無駄なエネルギーを必要とし、それまで保ってきたフォームを崩してしまいます。

サッカー選手を例に出すと、過去何度も他の媒体でも記事にしてきた、メッシ選手やロッベン選手の背番号の下の部分が常に反っていてスムーズに足が振り出されているという事実です。

ただそこに選手個々の個性というか特徴が出てきます。

メッシ選手の場合は、足元にボールが吸い付いたようなドリブルで、何人もに囲まれた狭いスペースを抜けた行くために、腰は反っているけれど背中は少し丸まって見える「反った猫背」と私が名づけた形になっています。

腕の振りも小刻みで、足の細かいステップと同調させています。

対してロッベン選手は、スピードに乗って長い距離を移動することが多いので、腕を伸ばし気味にして前よりも後ろに大きく振って加速するのが特徴です。

背骨を柔らかく使うというよりも、固く力んでいるようにさえ見えます。

しかしどちらも、いわゆる体幹部分を固めて安定させるのではなく、揺らせているのが分かります。

私は両者の背骨の使い方を、棒高跳びに使用する「ポール」に例えて説明しています。

自分にとって何の問題もない高さを飛ぶ際には、それほどのしなりは必要ありませんが、自己記録に近いような高さを飛ぶ時には、剛性の強い硬いポールを使います。

助走のスピードを上げ、硬いポールをしっかりしならせることで、自分の体を高く跳ね上げてもらうのです。

ロッベン選手は、一瞬の隙をついてトップスピードを得るために、背中を固くして安定させ、伸ばした腕を後方に強く速く振ることで、前に進む推進力を得ようとしています。

練習風景を撮影した動画では、相手の目の前で急激なターンを行うために、トップスピードで相手の懐に飛び込み、その瞬間に顔も骨盤も相手の方に向けたまま、お腹の部分、もっと言えばおへそだけを踏み込んだ足の反対側に捻り込むことで、相手にぶつかる寸前に方向を変えるという、誰にも真似のできないような動きの練習をしていました。

背中を使う背中で走ると言っても、その選手が持っている関節の柔らかさと強さが異なるわけですから、基本的な体の使い方を指導しても、みんなが同じ動きになり訳がありません。

形だけを真似して、「これでいいですか」という質問のされ方をする場合がありますが、私が指導しているのは体をどう使うかという意識の部分で、結果としてこうなって欲しいという「振付」を教えているのではないということを、もう一度よく考えてドリルに取り組んでほしいと思います。

「背中を使う」「背中で走る」、安易に使われることが増えてきたように思いますが、とても難しいことですので、しっかり取り組んでほしいと思います。

これを使いこなせるようになれば、どんな競技でも動きを改善することが出来ると思います。

以前に指導した中学生の卓球選手に私が行ったことは、まさに背中を使えるようにしてあげただけです。

昨日も若いサッカー指導者から、個人指導の申し込みがありましたが、私が書いたロッベン選手の記事を読み、「背中で走る」という言葉に興味を持ってくれたそうです。

指導者としての成長と、何より指導している子供たちのために勉強したいとのことでした。

こういう指導者が一人でも増えてくれることが、サッカーの未来を明るくしてくれるのだと思います。


走るという行為がすべての運動の基本と考える理由。

昨日書いた記事をもっと自分の言葉で整理しておかなければと、今日も文字を書き連ねて行きます。

私は技術という言葉を、「自らが意図(企図)した筋肉の収縮活動を、反復継続して行うことのできる能力」と定義しています。

人間の体が動くという現象は、骨と骨が構成する関節の角度が、筋肉の収縮によって角度を変えるということに他なりません。

筋肉はその両端が腱という組織に移行し、骨にしっかりと付着していることで、脳からの指令で筋肉の収縮が起こり、一つまたは二つの関節をまたいだ筋肉がそれぞれの骨を引っ張り合うことで関節の角度が変わるというわけです。

ですから「筋肉の仕事は骨を引っ張ることで、それ以上でも以下でもない」と言っているのです。

とてもシンプルな仕組みですが、これがとんでもなく複雑に連携して、体全体の連動を作り出しています。

では走るという行為に置き換えてみるとどうでしょう。
人間が走るという行為を行う必要があるのはどういう時でしょうか、歩いているスピードでは間に合わない時、これしかないと思います。

今でこそ、歩くことや走ることが健康づくりの手段となっていますが、つい100年くらい前までの日本でウォーキングやジョギングをしている人を日常的に見かけることはなかったと思います。

目的地に早く着きたいから、少し急いでいるから、他の人に遅れないようについていかなければならないから、とにかく必要に迫られた結果だったと思います。
おそらくはだれかと競うということはなかったと思いますから、目的地までの距離を考えそれぞれにできる範囲のスピードアップだったでしょう。

その際、体をどう使おうなどと考えることはなかったと思います。
意図したことは、目的地に早く着きたい、それだけだったと思います。

スポーツを行う場合、それがレクレーション的なレベルであろうと、プロやそれに準ずる競技レベルのスポーツであろうと、それぞれの競技に必要な動作があります。
一般的には、その動作そのものを指して「技術」と呼ばれています。

ここで冒頭に記した、私の技術の定義に戻ります、「自らが意図(企図)した筋肉の収縮活動を、反復継続して行うことのできる能力」でしたよね。

このことに対しては、反論の余地はないと思います。

様々な競技に特有の動作があります、体一つで行うもの手具を使うもの、各種のボールを使うもの、相手との直接のコンタクトがあるもの、ネットを挟んでコンタクトがないもの、色々な競技があります。

弓道やアーチェリー、射撃など、静止した状態で行われているように見えるものであっても、体のどこかは必ず動いています。
動きが小さければ小さいほど、理想とする動きとの誤差が結果を大きく左右するはずです。

技術を向上させたいと思っている選手すべてが目標としているのは、「自分の体を自分の思ったように動かせるようになること」ではないでしょうか。

しかし、現実に選手や指導者が考えることは、体の動きそのものではなくボールを正確に蹴りたいとか、思ったところにボールを投げられるようになりたいとか、狙った的に正確に矢を当てたいという結果の部分です。

その結果を得るために必要なことは何かというのが、私の技術の定義なのです。

その基本中の基本が、誰にでもできる「走るという行為」です。

どうやって体を使いたいかを考えて走っているのは、おそらく陸上競技の選手だけでしょう。
それは私に言わせると、いわゆるフォームのことであって、人間の体の仕組みに沿ってという、根本の部分が抜け落ちているような気がします。

当然他の競技の選手は、走るという行為を二次的なことと捉え、たんにスピードと持久力の向上がその目的となっています。

しかし、走るという行為ほど難しいものはありません。
体の仕組みに沿ってこれが正しい体の使い方だと、心から信じて「意図」できている選手指導者はいるのでしょうか。

体を動かすにあたって、最もシンプルで基本となる「走るという行為」に対してすら、正しく意図できないのに、それぞれの競技動作に対する筋肉の収縮活動を「意図」することなどできるのでしょうか。

私はここにすべての問題の原点があると思うのです。

投手のコントロールが悪い、サッカー選手が後半足が止まってしまう、基本となるボールを止める蹴るが上手にならない、挙げればきりがないですが、すべて正しく体の動き、筋肉の収縮活動の結果起こる関節の角度の変化という人間の動作そのものを「意図」できていないからではないでしょうか。

サッカーで言えば走るという行為を正しく行えるようになれば、90分間頭と体を動かし続ける能力が向上することで、結果として個人そしてチームとしてのレベルアップに繋がるはずなのです。

走るという基本的な能力の改善もできないのに、いわゆる技術や体力の向上などできるわけがないと私は考えます。

走るという行為は、静から動のイメージがありますが、それではまったく居着いた状態から地面を蹴って反力を得る、体重移動という効率の悪い移動方法となります。

そのことについては過去何度も書いてきましたので詳しく書きませんが、正しい動きを習得するためのドリルとして、最も重要視しているのが「アイドリング」という動作です。

アイドリングという言葉は、辞書によると「主目的に貢献せず、しかし稼働に即応できる様態を維持していること。あるいはその動作である。」と記されていました。
まさに私の思いそのものの言葉でした。

アイドリング状態を作っておくことで、静止してしまうのではなく、次の動作に備えて体全体が波を打つように連動して、いつでも体のどの部分からでも、どんな方向のどんな動作にでも対応できる状態を保っておくことができるのです。

これまでアイドリングドリルの重要性があまり伝わっていないようでしたが、写真と動画を提供してくださった「岩城巧」さんのおかげで、あのアイドリングの動画を見て、多くの方が衝撃を受け、アイドリングってそういうことだったのかと認識を改めてくれたと思います。

たんに走るためのドリルではないのです、あの動きの延長線上に、人間が行うすべての動作があると言っても過言ではありません。

単純に考えても、あれだけの動きができれば、サッカーで言えばそう簡単に逆を取られるなどという状況が想像できるでしょうか。

全身の骨格を筋肉の収縮によって連動させる、そこで動員されている筋肉は大きく肥大しているとか物凄い筋力を持っているという必要はありません。

自分の動きにとって最も効率的に収縮してくれるスピードと滑らかさが必要となります。
そこには当然、それに必要な筋力が要求されますし、結果として筋肥大も起きることは岩城さんの体が証明してくれています。

「自分の体を自分の思ったように動かすことができる能力」その最も基本となるのが「走るという行為」、それすら満足した動きを獲得できないままに、それぞれの競技動作を習得しようというのは安易な考えだとは思いませんか。

私も改めてアイドリングの動作を繰り返しています。
体が喜んでいるというか、いつでも次の動作に移れる、そんな余裕も感じます。
静から動ではなく、動から動、アイドリングのドリル、真剣に取り組む価値はあると思います。

走るという行為の重要性、理解していただけたでしょうか。


「走るという行為」になぜこだわり続けるのか。

西本理論という漠然とした名称が、なんとなく定着してしまった感がありますが、元々そんな理論などあるはずがありません。
私がこれまで経験してきたこと、考え続けてきたことを総称してそう呼ばれているだけです。

理論などというものはそれだけでは何の意味も持ちません、それを基本としての方法論が存在し、それぞれの競技に応用できるドリルであったり、実際の技術の向上に結びつくものでなければ意味をなしません。

様々な要素の中で一番注目されているのが、私が提唱する「走るという行為における体の使い方」です。

西本塾を始めて第一回の参加者から、個人指導を受けた人を含め、例外なくその走りとこれまで自分が行ってきた走り方の違いに驚きます。

ではなぜ私がここまで走るという行為を深く追求しているのか、それは人間ならば誰に教わることなくいつの間にか出来るようになってしまう、「当たり前の運動」だからです。

それぞれの競技動作は、一定の期間練習しなければ習得できないものがほとんどです。

それが「歩く」「走る」という行為に関しては、普通に生活している限り、「歩く・走る」に技術という概念が持ち込まれることはないと思います。

それでも子供の頃から足が速いとか、徒競走が苦手だったなど、早い段階から優劣が付けれらてしまいますが、とくにそれを改善しようと考える人は少ないと思います。

生まれつきの運動神経とか、親からの遺伝などという言葉で片付けられてしまします。
と言うより、別に人より足が遅いからといって、特に困ることはありませんから。

しかし、何かのスポーツを行おうと思った時、必ずと言っていいほどランニングと言う行為がトレーニングの一環として行われることになります。

そこには走る速さはもちろんのこと持久力も求められ、ランニングというトレーニングによって、筋肉や関節の故障というマイナスな結果を生むことにもなります。

しかし、これまでそれに対する、根本的な改善策というか、なぜそんなことが起こってしまうのか、何が正しくて何が間違っているのかという明確な指針がありませんでした。

ストライドを広げピッチを速くすれば速く走れる、そのためには筋力を鍛えてと、当然のように言われてきました。

持久力を養成するためには、とにかくたくさん走ること、これも当然だと思われ、それによって多くの選手が故障を余儀なくされてきました。

何故だろう、どうすれば体に無理なく速く、そして長く走り続けることが出来るようになるのだろう、その答えを探し続けてきました。

今現在、私の中にある答えを、それを知りたいという方に伝えているわけです。

誰にでもできることだからこそ難しい、人間が自分の体を使って行う最も基本的な運動だからこそ難しい、何年何十年と考え続けても終わりのない探究が続いています。

そしてここ数年、たくさんの人に伝えてきましたが、本当の意味で私と同じ考え方になってもらうのは難しいというのが実感で、現実として私が納得できるレベルに達してくれたのは数人しかいません。

それだけ難しいことだと言えばそうなのですが、それでも少しずつ教え方というか伝え方が変化し、特にここ最近は、本人も私もにっこり笑える結果にまで持って行けるようになりました。

なかなか理解してくれない頭と体に、この人にはどう言ったら分かってもらえるのだろうと試行錯誤を繰り返してきましたが、それぞれの疑問点というか、改善ポイントが分かるようになり、当然それに対するアドバイスも的を得たものになってきました。

前回前々回と2回に渡って紹介した、岩城巧さんのように、直接の指導はたったの1回でも、本人の目的意識と取り組む姿勢によってはここまで習得できるという見本が示され、何度指導を受けてもよく分からない、習得できないという言い訳は通用しなくなってきました。

すべては本人の意識、絶対に修得するんだという強い覚悟、そして、できるまでやり続けるという継続の二文字、そのすべてがあれば、誰にでも届く世界だということです。

この走るという行為が結果として上達するための各種のドリル、実はここに前に進むだけではなく、前後左右どの方向へも一瞬で移動でき、更には手足を使った各競技の動作の基本があるのです。

だからこそ私は走るという行為を真剣に追い求めています。

それが今、陸上競技はもちろんのことサッカーや野球に限らず、競輪や競艇といった、直接走ることとは無縁の競技の選手の動きづくりにまで役立っています。

私の言う技術の定義「自らの意図した筋肉の収縮活動を、反復継続して行うことのできる能力」、その一番基本的な動作が「走るという行為」、なのですから。

今回個人指導をした小野さんは、約3年前に同じように走り方を教えて欲しいと東京の青梅市から来てくれました。

二日間の西本塾には参加できないが、数時間の個人指導で、指導を受けた人たちが例外なく驚きの声をあげている西本走りを体験したいということでした。

なかなか思うような結果に結びつかないが、なんとか自分の納得できる走りを身に付けたい、そんな強い想いで広島に来てくれました。

少し見にくいですが、文中に注釈を入れる形で解説していきます。

個人指導の感想

先日は個人指導ありがとうございました。

率直な感想としては、走ることに関してのスタートラインにやっと立てたかなという感じです。

今まで先生には個人指導を含め3回の指導をしてもらいましたが、今まで中途半端にわかっていたことが、4回目でやっと理解できました。

先生の説明を聞いていると、そういうことだったのかという部分があり、今まで疑問だったことが繋がりました。

(以前自分の気づきをコメントしてくれたことがありましたが、あまりにも基本的な部分で、そのことに自分が初めて気付き、他の人にも伝えたいという感じのことが書かれており、西本塾ナンバー1の走りを身に付けてくれている島田さんに、先生が最も基本として指導されている事であり、ブログにも何度も書かれていることを、今頃気付くとは・・・と厳しく返信のコメントがありましたね。)

最初に理解できていないと言った「アイドリングと引っ張り出しの繋がりが・・」と言ったことが今思うと恥ずかしく思います。

本当に自分は今まで何をやっていたんだろうという感じです。

今回の指導では、まずアイドリングや引っ張り出しのドリルの重要性を再確認させてもらいました。

先生がブログなどでドリルが7割、走ることが3割と書いていますが、アイドリングなどのドリルで骨盤が縦に動く、股関節が伸展するなどのことが自分の体で理解出来ないと、走るという結果だけを求めても、何も意味がないことを教わりました。

確かに今までの自分はアイドリングなどのドリルを疎かにしていたせいで、走り方が何かピンと来ない感じで、走る練習ばかりしていました。

(練習に費やす時間はドリルが7割で実際に走るのは3割で良い、という言葉をどれだけの人が本気で実践していることでしょう。ドリルが大切だということを言いたいがために物の例え、くらいにしか思っていない人がほとんどでしょうね。でもドリルが完ぺきに行えるようになれば、その時点で間違いなく走りは変わっているのです。岩城さんのアイドリングドリルの動画を見て、衝撃を受けた方ががたくさんいることでしょう。)

その結果、肩甲骨は上下に動かしているつもりだけど、骨盤との連動が感じられない。
大腿は上がっていないが股関節は伸展していない。

でも、アイドリングの動作を改めて、ゆっくり大きくやった時に、「この感覚だ」と思ってしまいました。それくらいアイドリング動作は意味がある事だと痛感させられました。

FBTも、もう1度基本から教わりましたが、自分が今まで感じていた背中への刺激とは全然違い、これをしっかりやっている人とやらない人では差が出るんだなと改めて感じました。

今回ブログでも紹介されている岩城さんという方の話しも先生から聞きましたが、たった1度先生に会っただけで、あれだけの柔軟な背中の動き、背中の筋肉の発達は凄いですし、自分もやらないといけないと刺激を受けました。

何より岩城さんの理解力や継続力は見習わなければと思います。

(ちょうど岩城さんの記事と時を同じくして指導を受けてもらいましたから、自分の取り組みの甘さが明確になったと思います。FBTはどんなマシンを使うよりも動くための背中を作ってくれます。自分にとってのベストなやり方を今回見つけてくれたと思います。)

自分が今回広島に来て1番の収穫は廊下に出て短い距離を走った時の感覚です。
骨盤が縦に動き、股関節が伸展して前にどんどん進んで行く感覚、骨盤のギアを上げればスピードが上がって行く感覚。
今までの走りでは感じたことが無い感覚でした。

でも、この感覚もアイドリングなどのドリルを、頭と体で理解できたからこそ感じられた感覚だと思います。

他にも捻転を使い3歩でトップスピードに乗る走り方や方向転換の動き方などの指導を受けましたが、まだまだ練習が必要です。

外に出てから長い距離を走った時も注意される所も何点かあり、自分でも全力に近いスピードで走った時に骨盤のギアの回転数が思ったより上げられない、体全体の連動性、頭の位置や目線、他にもまだまだ改善することがたくさんあると思います。

(実は土曜日にも、以前にブログで紹介した福岡のそら君が、久し振りに指導を受けに来てくれました。高校生になっても陸上競技を続けてくれていますが、今ひとつスピード感が出ないことに、フォームのチェックに来てくれました。まるで小野さんに教えたことと同じことを、二日間繰り返し教えることになりましたが、私の指導でもう一つ伸び悩んでいるポイントはやはり同じでした。これまでも伝えてきたつもりでしたが、ポインが明確になり、お互いに納得できる結果になったと思います。)

これからはアイドリングなどのドリルやFBTで体の動きや感覚を大事にして、走りの質を高めていきたいと思います。

約3年ぶりの広島でしたが本当に来て良かったと思います。
正直行くまでは、今の自分に進歩があるのか不安でしたが、その不安を消し去ってくれる先生の指導力は凄いの一言です。

自分はプロのアスリートでもないですし、指導者をしている訳ではないので、次はいつ広島に来られるかわかりませんが、また何かあれば広島まで来たいと思います。
広島まで来るということは、それくらい価値があることだと思います。

今回の御指導本当にありがとうございました。
いろいろな話しも聞けて楽しかったです。

先生もお体に気をつけて頑張って下さい。

また会えることを楽しみにしています。

小野さんは現在40歳、30歳でサッカーは現役を退き、現在はスポーツに関わる立場ではありませんが、人間の最も基本的な運動である「走るという行為」を究めたいと真剣に学んでくれました。

今回は「これだ」という感覚をつかんでくれたようですので、これから行うドリルや走りが楽しくなることでしょう。

真剣に学んでくれてありがとうございました、また会お会いできることを楽しみにしています。

走るという行為が、他の動作とどう関連しているのか、次の機会に深く掘り下げてみたいと思います。

陸上日本選手権100メートル決勝を見て、背中で走るという意味を考える。

昨夜行われた陸上の日本選手権第2日、注目はなんといっても男子100メートルの決勝でした。

世界陸上の出場権をかけ、そして日本選手権優勝という名誉をかけ、さらには日本人初の9秒台を最初に記録する選手に成るという歴史的な快挙をめざし、日本の陸上競技史上ここまでレベルの高い選手たちが、すべて揃ってスタートラインに付くレースは初めてだと思います。

昨日リアルタイムでレースをテレビ観戦した後、気付いたことをツイッターに書きました。

その後も何度もレースを見直し、さらに今朝もまたまた何十回と見直しました。

全体を見たり、ひとりひとりの動きを見たりと、何度見ても飽きないというか、色々なことが見えてきて本当に楽しませてくれるレースでした。

誰か興味のある人が身近にいれば、それこそ何時間でもしゃべり続けるだろうと思います。

優勝したサニブラウン・アブデル・ハキーム選手の走りを、私の視点で分析してみます。

まずはスタート姿勢です、ケンブリッジ飛鳥選手の身長180cmを大きく上回る188cmの長身ですが、頭の位置を比べると一番低いことが分かります。

スタートライン手前についた手の肘を少し曲げて、重心を下げ前方に飛び出しやすくしています。

隣のレーンの多田選手が、手幅を広くして頭の位置を下げているやり方とは明らかに違うのが分かります。

ケンブリッジ選手も肘を曲げていますが、頭の位置はサニブラウン選手の方がさらに低く、お尻の高さはとび抜けて高いです、このことで長身の体をスタートで浮かないように工夫しているのだと思います。

スタートの反応は多田選手がダントツでした、体を支えている両手を地面から瞬間的に離すことで、体が地面に対して前方に落下して行くことをきっかけにしてスタートすることが今の主流です。

サニブラウン選手は一歩目を左足から出していきますが、前方に落下していく体を低く保つために、右手右肩は当然前に出ますが、左手を伸ばしたまま大きく後方に振り上げて行きます。

後方といっても上半身は地面とほぼ平行な角度ですから、伸びた左腕は真っ直ぐ地面と垂直に伸ばされています。

この手の上がり方も他の選手の中で一番高く真っ直ぐ上がっています。

これは肩関節や肩甲骨周辺の筋肉の強さと柔軟性がなければここまでの角度にはならないと思います。

もちろん上がったものは振り下さなければならないのですが、前方に振り出されていた右腕を、肩甲骨もろとも大きく引き起こすことで、作用反作用の働きで、振り上げられていた左手は、やはり肩甲骨からしっかり前方に振り出されるという、ダイナミックな動きが繰り返されていきます。

少し背中を丸めているように見えますが、普通背中を丸めて猫背になると肩甲骨の動きが阻害される要因になるのですが、骨盤から背骨を中心に大きくうねるように動かすことで、肩甲骨の可動範囲が大きくなり、そのおかげで広背筋の機能を十分に引出すことが出来るので、骨盤の後方をしっかり引き上げるという動きにつながっています。

スタートから数えて15歩目まで、スピードを上げて行くための加速期と呼ばれる状態が続いています。

面白いことに隣のレーンの多田選手も、この15歩目まではサニブラウン選手とまったく同じ歩幅とリズムを刻んでいます。

身長が違い足の長さも当然大きく違う訳ですから、サニブラウン選手がストライドよりも加速に重点を置いて15歩目までを走っていることが分かります。

問題はここからです、サニブラウン選手が加速期から中間走に入ると、そのストライドが多田選手と明らかに違ってきます。

上半身が少し起こされた分、骨盤の後傾が取れ、股関節の自由度が高まるため自然にストライドが広がって行きます、

着地の位置も、大きく膝を引き上げ前方に足を降り出すということをしていませんので、重心である股関節の真下、体が通り過ぎた後に足を付く、という感覚になるので、前方に移動する体に対してブレーキがほとんどかかりません。

着地の瞬間、後方の足の股関節も伸展が出来ていますので、無理なく前方に振り出されていき、それが繰り返されていきますので、加速期に得られたスピードを中間走で落とすことなく、最後まで走り切ることが出来るのだと思います。

最後の伸びが良かったという表現もありますが、相対的な問題で、他の選手がラスト15メートルあたりから、重心である股関節を一番先に運べなくなり、腰が残って足だけを前に出しているように見えたり、逆に上半身だけを前に運ぼうとしているように見えるため、明らかに失速してしまいますから、体の動きを変えることなく走ることが出来れば、当然その差は大きく開いてしまいます。

45歩でゴールしましたが、16歩目から最後の45歩目まで、動きの変化はまったく見られませんでした。

欲を言えば、私が理想とするマイケルジョンソン選手のように、もっと骨盤を引き起こし背筋を反らす姿勢が出来れば、さらにスム-ズに走れるとは思うのですが、100mという距離を考えると、加速期の重要性は200mとも400mとも違いますので、これでいいのかもしれません。

腕の振りも他の選手が、速く振ることを重視して肘を曲げ手のひらが顔の高さ以上にまで上がっている選手が多い中、肘をあまり曲げずに腕全体を大きく後方に引き上げるように使っています。

人間の体は四足動物であった時の名残で、手首と足首、肘と膝といった具合に両者の動きには大きな相関がみられます。

肘を曲げて小刻みに速く振るということは、膝を曲げてピッチを上げることにつながります。

サニブラウン選手の使い方は、乱暴な言い方をすれば手足を丸太棒のように振り回して走っているように見えます。

一般的に言われるような綺麗な走りではありませんが、肩甲骨から肩関節、そして腕全体を一体化してダイナミックに使うということは、そのまま足の動きを骨盤から股関節、そして足全体を大きく使うということにつながっているのだと思います。

どこかで見たなと思ったら、サッカーオランダ代表のロッベン選手の走り方に似ていることに気付きました。

どちらも少しだけ猫背に見えますが、必要以上に背中を反らして、胸を張ったような姿勢になってしまうと、逆に肩甲骨の動きが制限されてしまい、動きが小さくなってしまうので、これはこれでサニブラウン選手の体には合っているのだと思います。

さて現在18歳とのこと、山縣選手や桐生選手は名前を知られるようになった頃から比べると明らかに体が大きくなっています、ケンブリッジ選手も同じです。

確かに海外の一流選手たちを見ると、筋肉隆々でとてもこんな人たちにはかなわないという印象を与えられてしまいますが、筋肉の仕事は地面を蹴飛ばしたり、必要以上に腕を強く振ったり、無理に膝を引き上げることではありません。

必要な動作を行ってもらうために、骨を動かし関節の角度を変えてもらうことがその仕事です。

スタート直前、選手たちの後方からの映像がありました、残念ながら2レーンからサニブラウン選手辺りで、映像が切れてしまいましたが、全員の後ろ姿を見せて欲しかったです。

多田選手など、他の選手に比べれば、日本的に言うと線が細いと言われる体つきでしたが、結果は堂々の2着でした。

サニブラウン選手の肩のあたりは筋肉隆々というよりも、すっとしていて肩甲骨や肩関節の動きを邪魔しない、良い筋肉の発達のさせ方かなと思いました。

活動拠点を海外に移す選手が増えてきましたが、たんに海外の選手たちのような体に憧れてしまうと、ケンブリッジ選手のように上半身の筋肉、とくに肩関節周囲の筋量が増えすぎてしまうことにもつながってしまったのかもしれません、それがスムーズな体の動きを邪魔しているのではと思ってしまいました。

サニブラウン選手がこれからどんなトレーニングをして、どんな体になって、どんな走り方を目指していくのか興味は尽きませんが、どうか肉体改造などという言葉に踊らされて、彼本来の良い面が消えて行かないことを祈るばかりです。

昨日のレースは昨日のレース、負けた選手たちも黙ってはいないと思います。

また同じメンバーが、いや私が知らない逸材が出てきて、9秒台の記録を目指してしのぎを削るレースを私たちに見せて欲しいと思います。

今現在であれば、陸上競技を行っているジュニアの短距離選手たちがお手本にする走り方は、文句なく多田選手です。

それぞれの肉体の個性で、同じ動きを目指してもそうはならないのが人間の面白い所です。

すべての選手が9秒台を目指せるわけではありません、それぞれの目標に向かって、夢や理想を追うのではなく、自分にとって一番効率的な体の使い方を模索して欲しいと思います。

サニブラウン選手は今日の200メートル決勝にも出場予定です、どんな走りを見せてくれるか楽しみです。

最近「背中で走る」という言葉を使う指導者が増えてきたということを聞きましたが、本当の意味でその言葉の意味を理解し、それを正しく選手に伝えて指導出来ているのでしょうか。

今日書いたことの中に、「背中で走る」ことの意味というかヒントがたくさんあったと思います。

聞こえの良い言葉で本質を見失わないようにして欲しいと思います。

今日の記事は、自分にとっても重要な内容ばかりで、赤や青の色付けが途中から出来ななりました。

興味のある方は、理解できるまで何度でも読む努力をしてみてください。



プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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