改めて『大迫勇也選手』の体の使い方に学ぶ。

サッカーワールドカップロシア大会のアジア予選が終了し、日本は無事にというか、何とか本戦への出場権を獲得しました。

これまで多くの日本代表の試合では、リアルタイムで気になるプレーについてツイートしてきましたが、最終の2試合に関してはそれをしませんでした。

どの試合を見ても、私が発する言葉があまりにも同じ過ぎて、自分でも楽しくなかったからです。

またどんなに改善点を指摘したとしても、本人たちに届くはずもないのですが、もしかしたらツイッターを見てくれている人の中には、私の意見に賛同してくれたり、そういう見方があるのかと興味を持ってくれる人もいたかもしれません。

そういう人間の動きそのものを見るということの繰り返しが、今の私の考え方に大きく影響を与えてくれていることは間違いないことなので、自分にとっても決して無駄な作業でないことは間違いありません。

しかし、あまりにも毎回同じことをつぶやかなくてはならない状況に少し疲れてしまい、黙って見るだけにしました。

予選突破を決めたオーストラリア戦と、最終戦となったサウジアラビア戦、個人の動きに関して思うところはあっても、欠点を指摘したり改善点を提案することはしないつもりでした。

本当に私の考えていることが伝わったとしても、それを理解し改善しようという気持ちがない人間に対して、何をどういっても仕方がありませんから。

ではなぜ今日この記事を書こうかと思ったかということなのですが、とくにオーストラリア戦で見られた、『大迫勇也』選手のディフェンスを背負った状態での体の使い方に関して、改めて私なりの考えを書いておこうと思ったからです。

まずは2014.1.14にNumber Webの記事として紹介された、木崎伸也さんの記事を読んでみてください。

そして、その文中にある、私のブログ記事へ飛んでいただいて、木崎さんの記事を私が補足した内容も併せて読んでください。

要約すれば、いわゆるフィジカルが弱いと言われる日本選手ですが、たんに肉体改造の名のもとに体重を増やしたり筋力アップを図っても、その汚名を返上することは出来ず、大迫選手に見られる背中側の伸筋と呼ばれる筋肉をうまく機能させることで、海外のパワーを売り物にした選手にも対応できるということを主張しています。

大迫選手は鹿島アントラーズからドイツに渡り、現在もドイツで活躍をつづけその評価を不動のものにしつつあります。

日本の選手が海外に移籍した後陥りやすい事例があります。

それは体力的に勝る海外選手に対抗しようと、まさに肉体改造のトレーニングに励んだ結果、本来の持ち味というか、日本で活躍していた時に見られた動きのキレやしなやかさというものが失われていくということです。

申し訳ないですが、このことについては私自身がサッカー好きという訳ではありませんので、そんなことはないだろうと思っていたところ、何人かの方から同様の指摘を受け、ユーチューブで過去から時系列で動きを追ってみると、確かにそういう傾向がみられると私も思いました。

また実際にそういう例を目にすることにもなりました。

そのことも過去のブログで触れたことがあると思います。

大迫選手に関してはその心配は杞憂なもののようでした。

体格に勝るディフェンダーを背負いながら、きちんとボールをキープし、攻撃の起点となるシーンが増えています。

Number Webの中で紹介したオランダ代表のデ・ヨング選手との体の接触のさせ方のシ-ンでも、彼の表情や筋肉の状態を見ても、いわゆる力感というか歯を食いしばって頑張って、という感じはまったく見受けられません。

そのことを私なりに解説したつもりでしたが、あれから5年近くたった今、大迫選手のような体の使い方が出来る選手は残念ながら私が知る限り現れてくれません。

大迫選手独特の体の使い方ということで、他の選手は興味を示さないのでしょうか。

相も変わらず体幹を鍛えるとか、筋力アップだとか、目に見える効果を求めたトレーニングに終始しています。

私が何年言い続けても、それを必要とし学ぼうと思ってくれるのは、本人が自分の動きに限界を感じ、何かを変えなければこのままでは成長がないと、自らの意志で本気でそう思わない限り、誰かに連れてこられたとか、誰かに聞いたとかいうレベルの動機では、絶対に身に付けることは出来ないようです。

そうは言いながら、もう一工夫して伝えれば、もしかしたらそのメカニズムに興味を持ち、自分にもできるかもしれないと思ってくれる選手が出て来てくれるかもしれないと、少し補足をしようと思います。

そのために絶対に知っておかなければならない考え方が、私が考えた筋肉の収縮活動を模式図で表した、『3・5・7理論』です。

この詳しい説明も過去記事を読んでください。

この理論によれば、屈筋はニュートラルポジションの5の状態から、収縮して3の方向へ縮んで行く過程で、自他ともに感じる力感があります。

まさに頑張って筋肉を収縮させているという感覚です。

それに比べ伸筋が収縮する際には、そういう力感が感じにくくなっています。

人間が重力に抗して立っていられるのは、骨格を維持するために必要な伸筋群が、常に活動してくれているからです。

伸筋の収縮に際し、常に力感を感じるような使い方だったとしたら、我々は何分もその場に立ち続けることは出来ないでしょう。

ここまでは西本塾でも順を追って説明すれば、誰でも理解できることです。

ではなぜ渾身の力で相手の体を制しようと頑張る相手に対し、顔色一つ変えず伸筋で対応することが出来るのでしょうか。

直接指導を行う時には必ず行うデモンストレーションのようなものですが、おしくらまんじゅうの要領で、1・2・3で肩をぶつけ合います。

よほどの体格差がない限り、ふっとばされるようなことにはなりませんが、このぶつかり合いではやはり体格そのものが大きい人の方が有利であることは当然で、お互いにぶつけたところがかなり痛いです。。

ところが体重65キロの私が、20キロも重い相手に対し、意識を変えただけで、その圧力を受け止めるというか吸収してしまいます。

ここに人間の体の不思議さがあります。

ちょっとした段差でも、体全体を緊張させて飛び降りれば、脳天に響くような衝撃があることは経験上知っていますから、そんな飛び降り方をする人はいないでしょう。

かと言って体がフニャフニャした状態では、安定した着地は出来ません。

そうです、着地の際に体のバランスを維持する最低限の筋力が発揮されているのです、その感覚を応用すればいいのです。

それが体をまっすぐに維持するために働いてくれている背中側の伸筋たちです。

この筋肉たちが働いてくれている時には力感をあまり感じません、しかし体の姿勢を維持するという最低限の仕事はきちんとしてくれています。

もうお分かりだと思います、相手と体をぶつけ合う際に屈筋を固めてぶつかれば、筋肉は限りなく3に近い収縮を余儀なくされ、飛び降りた時と同じように衝撃を吸収する余裕はないのです。

私は恐怖心を克服し、相手と接触する瞬間に屈筋の意識を消し、真っ直ぐ立っていることだけに意識を集中し、その仕事を伸筋にお願いするのです。

伸筋は骨格を維持するためにきちんと仕事をしてくれていますが、ニュートラルポジションの5から収縮方向の3への収縮度合いは、屈筋のそれとは大きく違い、3の方向へまだまだ余裕を残した状態でもしっかり機能してくれます。

この余裕が相手の屈筋重視の体を受け止めるというか、衝撃を吸収してくれるので、強く当たった方は、同じような屈筋で固めた状態の体を予測してぶつかっていますから、当たり所がなくなったというか、不思議な感覚になります。

なおかつ余裕があるはずの伸筋にぶつかった屈筋の方が、痛みを強く感じるのですから、人間の体は本当に不思議なからくりが仕組まれています。

体当たりで言うとこういう説明になりますが、大迫選手とデヨング選手のせめぎ合いのシーンでは、太ももの骨の外側から触れることができる『大転子』と呼ばれる部位の位置が最も重要となります。

極論すればこの大転子が相手より低い位置で体を当てていれば、体重や筋力にほぼ関係なく、相手の動きを制することが出来ます。

大迫選手自身の言葉によると、「離れていた選手が寄せてくる圧力をまともに受けるのではなく、先に相手にくっついて背負ってしまえば、体格差そのものの圧力を受けなくて済む」という趣旨の話をしていました。

大迫選手が私の説明のような理屈を考えてプレーしているとは思えませんが、これまでの経験として、いわゆる力んで対抗するより、今のように柔らかく体を預けるるという感覚で、十分に相手をコントロールできることに気付いたのだともいます。

理屈はさておき、なぜ他の選手はそのコツのようなものを聞きだし、自分でもできるようになりたいと思わないのでしょうか。

名選手が必ず名コーチには成れないと言いますが、自分のやっていることをきちんと理論的に説明することが出来ないことがその理由なのではないでしょうか。

大迫選手に是非私の3・5・7理論による、筋肉の収縮モデルの話を説明し、理論的にも自分のプレーの有効性を知ったうえで、更に今のプレースタイルに磨きをかけてくれれば、もっと楽にプレーが出来るのではないかと思います。

欠点を指摘するのは簡単ですが、良いものは良い、そしてそれを体がどういう意識で行ってくれているのか、素直に自らの体と向き合えば、誰にでも体感することが出来、もちろん身に付けることが出来る能力です。

聞く耳を待たない人たちには何の意味も持たいない内容ですが、どういうことだろうやってみようと思っていただければ、本当に誰にでもできることです。

とにかくやってみてください。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月9・10日に予定しています。

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