手前の手前 を探ること

先日のオランダ戦の後、先日取材に来てくれたスポーツライターの木崎さんが、さっそく西本目線の記事を書いてくれたので、私もその記事の中にあった写真の中から一つのシーンを切り取ってTwitterでコメントしたところ、たくさんの反響がありびっくりしました。

そのシーンは、オランダのデ・ヨング選手と大迫選手がボールに向かって体を入れあっている状況でした。

ボールに対して近いポジションにいる大迫選手に対して、デ・ヨング選手が右半身をあずけ、さらに右手を伸ばして大迫選手の行く手を阻もうとしています。

以前Numberwebで紹介していただいた、一対一での競り合いの際、腕を曲げ上腕二頭筋を力ませて相手を押すよりも、背中を伸ばしその延長線上にある腕も伸ばした状態で体を使った方が、相手に押し負けず自分の態勢を維持できることを説明しました。

そういう意味でデ・ヨング選手の体の入れ方は理にかなっています。

木崎さんも私のツイートに反応して、そのことに対するコメントを書かれました。

しかし、私が本当に気づいて欲しかったのは、理にかなった寄せ方をしてくるデ・ヨング選手に対して、左半身を伸ばし、背中側は見えませんが背筋はしっかり伸びて背中が使えている状態で左半身をあずけて対応している大迫選手の体の使い方の方だったのです。

隠れて見えない左手がスッと伸ばされ、さらには右手も同じように伸びています。

人間は不思議なもので、どちらかの手は力んで曲がっているが、反対側の手はリラックスして伸ばせているという状況は作り得ないのです。

試しに右腕で目一杯頑張って力こぶを作って、左腕をリラックスさせようと思ってください、見た目にできているように見えても、実際は脱力できていないことが分かるはずです。

そういう意味でも、大迫選手こそ相手のプレッシャーを上手く受け止め自分の態勢をキープするという、私に言わせれば見事な身のこなしができていると褒めてあげたいシーンだったのです。

日本人はフィジカルが弱いとか、外国選手との体格差はいかんともし難いと言われてきたようですが、ようは使い方の問題なのです。

そしてそれを可能にするのは、そういう体の使い方をすることが理にかなっているという正しい知識を持つこと、そういう風に体が使えるようになるためのトレーニングの仕方を工夫すること、これに尽きます。

分ったからすぐできますというわけにはいきません。

それを今までは、あの選手は体の入れ方が上手いとか、天性のものだとか、特別な能力であるかのような言い方で片付けられていたのではないでしょうか。

同じ人間のやることです。

出来ている人はおそらくそんなこと考えてやっているつもりはないと言うでしょう、だから他の人に伝えられないし、見た目だけを真似しても同じようには出来なかったのだと思います。

それを一歩手前の部分、どういう意識で行っているのか、そのまた手前の部分である、骨を動かしている筋肉がどういう収縮の仕方をしてそういう状況を作り得たのか。

手前の手前を探ってその理屈が解明できれば、そこに到達するための方法論が自ずと導かれ、同じことができるようになるかもしれないと考えることも間違いではないと言えないでしょうか。

理屈や理論というものは、現象として起こっているものを、言葉で説明するためのツールであって、まずは理論ありきではないのです。

スポーツで実績を残した人ほど、理屈じゃ説明できない体で覚えるんだ、的なことを平気で言う人がいますが、自分のやってきたことを理路整然と説明できなくて他人に何かを伝えるなんてできるはずがないと思うのですが。

一枚の写真にこれだけの説明が必要なほど、人間の体を操るという行為は奥が深く楽しいものです。

専門家の方々の戦術や個人の能力に関する解説も、なるほどと読み応えのあるものがたくさんありましたが、現在プレーヤーや指導者として活動している方々には、私のような視点も必要なのではないでしょうか。

この一枚に限らず、話題にしたくなるシーンはたくさんありました。

写真ではなく動画を見ながら、選手の動きの特徴を探ったのが、先日の取材のテーマであった、6人のスーパープレーヤー達の体の使い方を分析するという作業だったわけです。

これについては28日発売予定のNumberの紙上で紹介していただく予定です。

ただ何時間もかけてYouTubeを見続け、取材の際は実演も入れながら2時間近く熱弁を振るいましたが、記事になったのはほんの一部なので、発売後、私が語って記事にならなかった部分については改めて紹介したいと思っています。

さて、明日は月刊化されて初めてのサッカーマガジンが発売される予定だそうです。

私が川崎でどういう考え方でトレーニングを指導したかという部分についても、紹介していただけることになっています。

これに対しての皆さんの反応も楽しみです。

新しいとか独自のとか、いろいろなことを言われましたが、サッカー選手にとって川崎というチームにとって、あの時点でベストだと思った手法を提供しようとしただけのことです。

何処かで聞いたことがある、なんとか式だとか、なんとかトレーニングに当てはめるのではなく、体の仕組みにのっとった、体を動かすためのトレーニング、これを実現させるために知識と経験を総動員して知恵を絞るのがプロとしての私の仕事だったいうだけのことです。

もう一度私に指導させてくれるクラブはないでしょうか。
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Re: 清武選手の競り合いの弱さ
私はそんなにサッカーファンという訳ではなく、清武選手も名前は分かりますが、プレースタイルや動きそのものに関してまったくイメージがありません。
個別に選手についての質問にお答えするためには、その度にユーチューブなどで動画を探し、時間をかけて分析しなければならないので、申し訳ありませんが今回のご質問にはお答えしかねます。
いつか日本人選手の分析も頼まれるかもしれないということは言われているので、その時に名前が上がれば真剣に見てみます。
  • 2014-01-14│17:27 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
清武選手の競り合いの弱さ
日本代表の清武選手を見ていると足元にボールが入った時は上手いのにイーブンなボールが来た時は異常なほど競り負けてる印象があります。体の小ささとスピードの無さ判断能力の悪さとか色々あると思うんですけど、この記事にあるような体の使い方的にはどうなんでしょうか、教えてください。
  • 2014-01-14│12:47 |
  • でび URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
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