動きを見るということ

先ほどNumberを買ってきて、自分のインタビュー記事のところをとりあえず読みました。
この記事も、先日ご紹介したスポーツライターの木崎さんの手によるものです。
彼は今ロシアで本田選手を追って取材中とのことです。

今回のことも、彼との何気ないはない話の中から、私が選手の動きを体の使い方と関連づけて話をした時に、こんな視点は今まで聞いたことがなく斬新で、なるほどと思わせる説得力があると言ってくれて、機会を作って是非こういう 企画を実現させましょうということになっていきました。

程なくメッシやネイマール等、6人の選手について分析しておいてくださいという連絡があり、今回の記事に繋がっていきました。

私が人間の体そのものと、スポーツ動作の関係を意識し始めたのは、20数年前サラリーマンをやめ故郷宇和島に帰り、開業してしばらく経った頃でした。

まだまだ駆け出しだった私を、本当に信頼してくれて大事な選手のコンディショニングを任せてくれた、現在八幡浜高校の陸上部を指導されている岩川英俊先生との出会いからでした。

彼は数年前から広島で行われている、全国都道府県対抗駅伝の愛媛県チームの監督もされています。

お互いにまだまだ若く指導も手探りだったと思いますが、その頃指導されていた愛媛県最南端、いや最西端の南宇和高校で指導をされている時に出会いました。

宇和島から車で1時間以上もかかるところに学校があり、高知との県境までは数分といった場所です。

冬の高校駅伝の県予選を控え、代表選手を選ぶ際に、最後の一人を決めることに最後まで悩んでいました。
2年生か3年生のどちらを選ぶかだったと思います。

実力は甲乙つけ難く、最終的には記録会を行って公平に勝者を選手として選ぶということになったようです。

選手たちは大会一ヶ月前くらいから、どこか故障がなくても、週に一度は私の施設を訪れケアを受けることになっていました。

もちろんその二人は、少しでも良い状態で記録会に臨むために、他の選手以上に真剣に私のケアを受け話を聞いてくれていました。

3年生の選手が直前に訪れた時、「体調も良いし体も軽いのに記録が落ちてしまって焦っています」と言ってきました。

その時、体をチェックして気付いたのは背中の筋肉の張りでした、今思えばまさに広背筋だったと思います。

長距離選手ですから同じ姿勢をずっと保ちながら走り続けます。

足に不安さえなければ練習量を増やせますし、強度も上げることができたのでしょう、それでも記録が伸びてこないことに不安を感じていました。

まだ今のように理論だてて説明することができなかったのですが、この背中の丸みがストライドを縮め記録が伸びない原因ではないかと思い、操体法によって全身を整え、とくに背中側に関しては念入りに本人の意識も確認しながら施術を行っていきました。

施術後、外に出て少し走らせてみると、明らかに楽そうに走っているのが分かりました。

一緒に来た選手にも聞いてみると、そう言われればここ最近は少し猫背になっていたように思いますと、言ってくれ、今見ている走り方が彼の本来の走り方だとも言ってくれました。

本人も気を良くして残りの期間全力を尽くして練習しましたが、記録会で2年生に僅差で敗れ補欠に回ることになりました。

しかし、やり切ったという思いから、予選の時も補助としてしっかりサポート役に徹していた姿が忘れられません。

努力が全て実らないのは、どんな世界でも仕方が無いことで、その過程を立派にやり通したことが彼を育てたのだと思います。

その後、県大会で2位となり、全国大会は逃しましたが、その後行われた四国大会では選手として出場を果たし、立派な記録で監督の期待に応えてくれました。

思い出話になってしまいましたが、普段接することがない彼らでも、体を見て動かすことによって、たくさんの情報が得られアドバイスができることが自信になりました。

その後サンフレッチェ広島にトレーナーとして加わってからも、リハビリにおけるトレーニングや様々な局面でのトレーニングにもその視点は持ち続け、それが操体法からオクタントトレーニングに発展したり、体作りから動きづくりへとトレーニングの方向性が変わって行く基礎になって行ったのだと思います。

今回も、何人かの選手の名前があがりましたが、その直前に西本塾一期生で今治でサッカースクールを運営する 笠原さんから、イニエスタとプジョルという、正反対のタイプの体の使い方をする選手の動きの違いについて質問を受け、すでに分析というか、こういう視点で見ればいいんだということが事前に分かっていて、さらにツイッターでもタウソンさんからも「イニエスタは重心移動が上手なんですよね」というヒントもいただいており、木崎さんのご期待に沿える話が出来るのではと準備していました。

編集担当の方と木崎さんのお二人で広島に来られ、ビデオでも見ながら分析結果をお話しするのかと思ったら、私が準備した内容をとりあえず話してみてくれということになり、途中途中質問を受けながら、結局私が一人で実演を交えながら、喋り続けてしまうことになりましたが、その内容はお二人の期待をはるかに超えていたようで、十分これで記事になりますと言っていただくことができました。

私の視点の中心となったのは、やはり背中を使えているかということです。

抽象的な言い方ですが、背筋が伸びて姿勢が良く見えるということは、広背筋を中心とした背中側の筋肉がきちんと機能していて、骨盤の角度がしっかり起こされ、股関節の自由度が増します。

自由度が増すということは、走る止まる蹴ると言ったサッカーの基本動作がやりやすくなるということです。

関節を伸ばす伸筋が使いやすくなり、筋肉の疲労も猫背で屈筋に動きを依存する使い方よりも疲労は明らかに少なくなるはずです。

そういう意味で指定された6人の中では圧倒的にエジル選手の使い方が理に適っていて美しく見えました。

イニエスタ選手も同じ理由で素晴らしい動きだと思います。

メッシ選手とルーニー選手は、少しタイプは違いますが、分類するとすれば同じグループに入ると思います。

背中側というより前側の屈筋の使い方に特徴がありました。

もちろん背中側を使った方が良いと思われる局面では、きちんと背中が機能しています、それに加えてゴール前の密集地帯や、小さく鋭いキックが必要な局面では屈筋をうまく使うという、使い分けができているのです、流石としか言いようがありません。

そしてどちらにも入らなかったのがブラジルのネイマール選手となったわけです。

こういう視点というか分析の仕方をする人は今までいなかったようで、チームとして個人として私の分析を参考にしてもらえば、さらに能力を向上させることができるのではないかと思っています。

決してこれがいいこれがダメという分析ではなく、自分でも気づいていなかった自分の体の動き方の特徴を知ることは、プレーに生かされ、今後の成長に役立のではないでしょうか。

そこから長所として発展させる部分や、改善点も見つかると思います。

戦術のスカウティングではなく、動作のスカウティングという発想は面白いと思います。

もちろん相手選手の動作の特徴を知れば、対応策も見えてくるでしょうね。

チームとして個人として、私の視点を生かして、使ってくれるところがあれば面白い結果が出せると思うのですが。

それにしても面白い仕事をさせていただきました。

Numberぜひ読んで見てください。

それから、ブログを読んでいただいている方の数は少しずつ増えてきて、書いていてとてもありがたく励みになっています。

この下にブログ拍手というポッチがあるのですが、感想やコメントはいただけなくても、面白かったと思って頂けたらポチッとしていただけたら嬉しいです。

数が多いからと言って何かあるわけではありませんが、みんなどう思って読んでくれているんだろうなと、ふと思ってしまいます。

よろしくお願いします。
スポンサーサイト

Trackback

Comment

Re: No title
タウソンさん
コメントありがとうございます。
「フットボールネーション」という漫画、残念ながら見たことがありませんでしたので、分かる範囲で調べてみました。
スポーツ漫画にもこういう視点が持ち込まれる時代になったのですね。
そのことに関しては評価しなければならないと思います。
ただここでそういう部分の協力者として名前の挙がっている方については、基本的に良いも悪いも言える立場ではありませんので、どうコメントしていいのか難しいです。
というのは、私も今現在は西本理論などという言葉を使っていますが、何度も繰り返してきたように、元々研究者でもありませんし、普通の感覚で普通に現場で頑張ってきた、一職人(本物の職人技を持った方には失礼にあたるかもしれませんが)が、スポーツという世界で勝負に勝つ、結果を残すために、選手個人に対して行ってきたことを、少しでも言い残しておこうとしてやっていることで、理論などという言葉を使うのはおこがましい限りなのです。
その方は東大出身で、私など比較にならない頭脳の持ち主だと思います。
私とは向っている方向もやっている活動もまったく違う方だと思います。
以前から様々な方の考えを知ろうと、本を読み漁り、その方の本も何冊か読みましたが、私はやはり目の前の選手がもがき苦しむ姿を見て、なんとか力になりたいと無い知恵を絞り、経験の中から方法論を探し、たとえそれが前例のない、それこそ漫画のような思いつきの仮説であっても、やってみる価値があると思えば挑戦し、結果を残してきました。
まずは自分の体でできるところまでやってみる、そこから先のレベルは選手が道を切り開き、私に教えてくれたのです。
本当に正しいこと、真理は一つだと思います。
私がすべて正しいなどとは思っていません。
ただやってきたことは間違っていなかったと思っているだけです。
それをお伝えすることが私の使命だと思っています。
色々な方が色々なやり方で、色々な分野にアプローチすることは悪いことではないと思います。
それらがすべて相手のことを一番に考えてのことでしたら。
私の考え方が他の方と考えが似ている、そういうこともあるでしょう。
真理は一つ、それぞれのアプローチの仕方、目的が何かの違いだと思ってください。
  • 2013-11-29│22:56 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
Re: 屈筋の使い方
コメントありがとうございます。
本文中んも書きましたが、外国人選手の多くは、もともと背中側の筋肉が発達していて、意識しなくても姿勢良く背中がうまく使われています。
対して我々日本人は背中が丸く骨盤が後傾している姿勢が多く見られます。
ですから屈筋を意識しないで体を使うという発想のトレーニングで意識を変える必要があると思うのです。
伸筋を意識して使うという使い方とは違います。
心筋から屈筋への受け渡しという言い方も、多少無理がありますが、あくまでも伸筋が自然に使われているからこそ、屈筋を少し意識して使うという風に見えるのだと思います。
我々はまず伸筋優位で使えるように、屈筋の意識を消して行くという作業が必要です。
西本塾を楽しみにしてください。それと年齢の記載がなかったのでお知らせください。
  • 2013-11-29│15:51 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
屈筋の使い方
こんにちは。
ナンバー読みました。動き、技術について考える良い刺激になりました。と同時にメッシとルーニーは体の前側の筋肉の使い方に特徴がある、という今までにない文章がでてきたので非常に興味深かったです。
度々申し訳ないのですが、質問です。ルーニーとメッシという体の前の使い方に特徴がある選手も、もちろん背中の筋肉の使い方はうまいのでしょうか?あと蹴り方の質問をしたときにも出てきたのですが、プレーする際の伸筋から屈筋への絶妙な受け渡しが選手の動き、プレーの特徴を形作っている要因のひとつと考えても良いのでしょうか?
  • 2013-11-29│14:40 |
  • 愛知県のジュニアサッカー指導者 URL│
  • [edit]

Post a comment

Secret


プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

最新記事

カレンダー

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

カウンター

検索フォーム

QRコード

QR