体作りから動き作りへ

体や筋肉の仕組みを、自分なりに分析しながら、まずは自分の体で実践してみようと思いました。

すでに書いたように、私は極端に痩せていてどうあがいても体質という壁は破れないものと思い込んでいました。
鍼灸の専門学校に通いながら、そのころ住んでいた最寄駅近くにできた、公共施設のトレーニングルームに週に一度通うことにしました。

特別に個人指導を受けられるわけではありませんが、最初に問診があって、後は毎回カルテのようなものに記された内容のトレーニングを行うというのが基本的なルールでした。
今から思えばやはり公共施設ですから、安全第一で決して無理はさせず、目的は健康管理プラスアルファーといったところでしょうか。

私はその単調なメニューの中に、関節の可動域や3・5・7理論を加味して、動作のスピードや各関節の連動、そして今この瞬間は3・5・7のどのポジションにあって、どちらの方向へ動いているのか。

屈筋は収縮方向へ、伸筋は伸長方向へ、屈筋と伸筋がどういうバランスで収縮力を発揮しているから、このポジションがキープできている、さらにどのタイミングで屈筋と伸筋の力の配分を変えれば効率よく目的の運動が続けられて、筋肉を上手に利用できるのかなどなど、歯を食いしばって一心不乱に重量物と対決する、というイメージとは程遠いトレーニングを行いました。

しばらく通っているうちに、言葉を交わす人もできて、中には私の動きに興味を持って話しかけてくる人もありました。

すでに私の中では、1㎏でも思い重量を持ち上げられたり、1回でも多く回数を続けられることがトレーニングの目的ではないという感覚が出来上がっていました。

もちろんトレーニーの方の中には、明らかにそのことが目的で、見た目にもすごい体をした方が何人もいましたが、それはそれで目的があるのですから、けっして間違いではありませんし、そういう目的に特化した指導を頼まれればきちんと結果も出せるとは思いますが。

とにかく私は体作りではなく、人間という動物に与えれた、本能というか本質的に平等に備わっているはずの能力を、きちんと使いこなせるようにしておきたいという、単純な発想から始まったのです。

そうは言いながら、60㎏という低いハードルではありましたが、生涯越えられないと思っていた壁を1年にも満たない期間で超えてしまいました。
体作りではないと言いながら、私の様な悩みを抱えていた人間にとっては、まずこの変化は本当にうれしい出来事でした。

昔、忍者がジャンプ力を鍛えるために、毎日同じ雑草を飛び越えているうちに、驚く程のジャンプ力を身に着け、屋敷の塀に飛び乗ったりできるようになった、などという漫画のような話がありました。
もちろん誇張された話で限界はあるでしょう、いくら頑張っても我々は空を飛ぶことはできませんから。

低い高さから徐々に伸びていく雑草を毎日飛び越えるというトレーニングが、有効であったことは間違いありません。

もし、現在50㎝の高さが飛べるという人に、1mの高さを飛び越えられる人は、下半身の筋力や筋肉自体の太さはこのくらいだから、飛び越す練習はさておき、まずは筋力トレーニングで体を作りましょうという発想になったとき、本当にそれが達成できたでしょうか。

いわゆる肉体改造といわれる、見た目重視、数値ありきのトレーニングです。

逆に50㎝から1mの高さが飛び越えられるようになった人は、その時点で1mの高さを飛び越えるという目標に対して、十分な筋力を獲得したということにはならないでしょうか、私が言いたいのはまさにこの部分なのです。

体を作ってから動きを作っていくのではなく、動き作りの延長線上に(おまけといってもよいのですが)それに必要な体ができていたと考えることのほうが正しいと思うのです。

当然筋力も筋量も、50㎝の時とは変わっているはずです。

20年前から同じことを言い同じ質問をされてきましたが、答えはここにあると思うのです。

私が指導しているトレーニングを外から見ている人は、競技レベルの選手たちにそんな重量しか扱わせないのかという目で見られているのが分かります。

それは、その時点でその選手が私の考え方に沿った動きを表現するためには、その重さ以上ではただ頑張るだけになってしまうし、その重さ以下では逆に動きに対して必要な負荷がかからないため、どちらにしてもトレーニングの効果が得られないという判断をしているからなのです。

当然トレーニングを継続していくうちに、スタート時点からは考えられない重量を扱える選手も出てきますが、それでも関節の連動や可動域、そして3・5・7理論に基づいた筋収縮のポジショニングといった、西本理論に沿った動きをきちんと表現できているのです。

重量や回数を競うのであれば、その時点での相対的な評価があって、強い弱いとかいう順番のようなものや、誰かと比較して勝った負けたという感覚も出てきますが、私の指導にはゴールという概念がなく、常により良い動きを作るためのツールとしてのトレーニングですから、年齢や経験にかかわらず常に成長することができるのです。

以前指導していた、社会人野球の三菱重工広島の選手たちは、高卒大卒に関係なく、入社して3年を過ぎるころから、指導している私が驚く程の成長を見せ、重量も高重量を扱うようになりますが、けっしてそれを目標にトレーニングを行っているのではありません、あくまでも動き作りを求めています。

今年5月まで指導をした川崎フロンターレの選手たちにも、まだまだ不十分だったとは思いますが、理論的な部分と方法論は残してきてつもりです。

彼らに、実際に三菱広島の選手たちが行っていた重量のことを話すと、まるで異次元の話で自分たちには無理だという反応でしたが、三菱広島に入ってくる新人たちも当初はまったく同じ反応です。

同じチームの先輩たちと自分とのあまりの差に驚いて、これはとんでもない所へ来てしまったという感想が、例外なく聞かれます、実際に年数を重ねたベテランの選手ほど重量も扱えるし動きも正確になってきて、若手の見本になってくれます。

しかし、本当に3年くらいたつと、やはり新人から先輩はすごいというレベルに成長していくのです。

フロンターレの選手の中からも、2・3年後に同じことを言ってくれる選手を作りたかったのですが、そこは少し残念です。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
今年2回目の西本塾を8月26・27の土日に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。
なお、今回も参加者が5名に満たない場合は開催しません。
9月10日には深める会も予定しています。

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