ボールを蹴る筋肉 屈筋と伸筋

私の考え方の基本になっている、屈筋よりも伸筋の方が力強く持久力もある、見せかけの屈筋ではなく、関節を伸ばすために使われる伸筋の重要性を理解してトレーニングをしよう、というものがあります。

ブログの中でもそのことは強調してきましたし、西本塾でも、実際に屈筋よりも伸筋を使った方が筋力として発揮できるものが大きいことは、実技を通して感じていただいています。

伸筋というのは、基本体の後ろ側に分布しており、そういう意味でも目立たない意識しにくい存在であることもお話しています。

ところが、その説明ではどうしても、すとんと落とせないというか理解しにくい筋肉があります。

「大腿直筋、外側広筋、内側広筋、中間広筋の4つで構成される大腿四頭筋」という筋肉です。

言わずと知れた、太腿の前の長くて大きな筋肉です。

この筋肉が実は曲者なのです。

大腿四頭筋は屈筋と伸筋のどちらでしょうかという問いに対して、皆さんはどう答えるでしょう。

おそらくほとんどの人は、膝を伸ばすために働く「伸筋」と答えるのではないでしょうか。

それは一つの意味では正解です、ところがこの筋肉は股関節と膝関節に2つの関節をまたぐ、2関節筋と呼ばれる側面を持っています。

ということは、股関節の運動という側面から見ると、大腿四頭筋は足を前方に振り上げる時に働きますから、その運動は股関節の屈曲ということになります。

体の前側に存在し、膝を伸ばすために働くことが主な仕事のように思われてしまっているため、どうしても伸筋のイメージが強くなってしまうのです。

私はサッカー自体はいつも言っている通り素人ですが、サッカーに携わっている人たちの間にも、大腿四頭筋は膝を伸ばす伸筋で、この筋肉を鍛えることが、強くボールを蹴ることにつながると思っていることに、この数か月サッカーの指導者の方々と接する中で気づいてました。

事実、日本のサッカー選手の体つきは、下半身とくに太腿の前側の発達は著しいのに、裏側の大腿二頭筋の発達がいまいちで、上半身に至ってはとてもスポーツ選手とは思えない貧弱な選手が多いと思います。

ボールを蹴る、イコール太腿の前側の筋肉、はたしてそうなのでしょうか。

極端に言えば、膝関節の伸展動作、膝から下だけを振りだしてボールを蹴ることなどできるはずがありません。

軸足で踏み込んだ時、蹴り足は太腿の裏側の筋肉が主体となって、体の後方に振り上げられます、これが股関節の伸展動作です、この時に広背筋が強く作用して、骨盤を引き上げ前傾させて、股関節の自由度を高めます。

この運動なくして、ボールを蹴るという運動はできないのです。

ゴールキーパーがボールを地面に置いて蹴る時の蹴り方がまさにそうですね、後方に振り上げられた足が、前方に振りだされ、ボールにインパクトした瞬間で動作が終わっているように見えます、そこから膝関節を振りだしてなどという動きには見えません。

それでもハーフラインを超えるロングボールを蹴ることができます。

逆に言えば、そうやって股関節を大きく伸展させられるからこその飛距離だと思うのです。

パスやシュートといった、割と短い距離のキック(この長さの概念は個人の技量でかなり違うとは思いますが)では、この伸展動作の後、前方に振りだされた足に、大腿四頭筋がブレーキをかけることで、ボールに強い衝撃を与え、正確なキックを可能にしているのではないでしょうか。

そういう意味で蹴る瞬間には、大腿四頭筋が膝を伸ばすという運動に対しても、抑制的に働き、屈筋的な仕事をしているように思えるのです。

これがゴールエリア近辺からの強く正確なシュートを放つ、メッシやルーニーの体の使い方、私の目に映った伸筋から屈筋への受け渡し、という概念に結び付いたように思います。

これまでうまく説明できなかった部分なのですが、私の中で大腿四頭筋の役割が股関節の伸展であるということが明確になり、これが西本塾で指導した、「疲れにくい走り方」でも生かされて、腿を引き上げる、股関節を屈曲させるという意識を消してもちゃんと走れるということとリンクさせられました。

従来の肘関節を屈曲させることが腕振りで、それを推進力として太腿を振り上げ(いわゆる腿上げ動作)、地面を強く蹴ることが速く走るための絶対条件と思い込まされていた我々に、まさに発想の転換で、こうやって走ったら速く走れて疲れにくくて、走りながらの視野も広く確保できて、まさに理想の走り方じゃないの、と思うに至ったのです。

この文章を書きながら、何かすごい新発見をしたような気分になっています。

実際は、新発見でも何でもなく、そうやって走っている人がいて、それぞれのスポーツで超一流と呼ばれる存在になっているという事実を、私なりの言葉で説明できたというレベルにすぎませんが。

ただこれで、これまで私が、なぜレッグエクステンションやレッグカールというマシンを使ったトレーニングが、動き作りに邪魔な存在だと言い続けてきたことや、変な走り方と言われながらも、こっちの方が絶対走りやすいのにと、思い続けてきたことに自分なりに一つの結論が得られたと思います。

ボールを蹴るという動作に関してはサッカー関係者の皆さん、走り方に関しては一般のジョガーの方から、オリンピックを目指すアスリートの皆さん、そしてありとあらゆるスポーツを行っている皆さんに、野次馬根性でいいですから、一度は試してほしいと思います。

そんなバカなという方々きっと損をしますよ、やってみるのはタダです、別に故障をしたりするリスクなどまったくありません。

やらないで否定していては世の中変わりませんよ。

私からのささやかなお年玉です。
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Comment

ありがとうございます。
早速のご返信ありがとうございます。
このご返信の内容がそのまま答えになりました。

大腿四頭筋と股関節というキーワードからスクワットを思い浮かべてしまいましたが、もうそこですでに個別の筋肉にとらわれていました。
トレーニングは全身が協調して連動する意識を身体に染み込ませるものであって、身体が全体で動いていることを忘れてしまっては今までと何も変わらないですね・・・。
無理なく身体を連動させられる軌道を自分の身体と対話しながらもう一度実践して探してみます。
スミスマシンのスクワットも股関節を意識してやってみようと思います。

私は筋肥大ではなく、動きづくりを意識していきたいと思っております。
いつか直接ご指導していただけることを願っておりますが、それまではブログをしっかり読ませていただきます。
また見当違いな質問をすることもあるかもしれませんが、その時はガッチリとご指導いただけますようよろしくお願い致します。
  • 2014-01-08│08:35 |
  • 札幌の仲尾 URL│
  • [edit]
Re: タイトルなし
今回のボールを蹴る動作に対して、大腿四頭筋は伸筋、屈筋のどちらの機能が優先されているのか、という疑問から始まりました。
現実に必要なスポーツ動作であるため、曖昧にはできないと考えました。
ご質問のスクワットという動作は、全身の連動を必要とする代表的なトレーニング種目です。
私はスクワットをバーベルでは行わせません。
スミスマシンを使い、スタートポジションで身体を直立させたまま、足を前に出して斜めになった状態から、お尻を後ろに突き出し、太腿が地面と平行になるとき、股関節と膝関節がそれぞれ90度になるようにします。
股関節を主役にし、膝関節に意識がいきづらくするためです。
運動の目的を股関節に絞ることで、結果として身体のどこの筋肉を使うという、固有の筋肉の意識をできるだけ持たせず、あくまでも全身が協調的に連動している意識を身体に染み込ませることが目的だからです。
トレーニングを指導する人は、あまりにも固有の筋肉の働きに目を向けすぎ、身体は全体で一つの動作を補い合っていることを忘れてしまいます。
それが故障の原因にもなっていると思います。
指導者に対しての指導ということで、最近、広背筋だとか大腿四頭筋などと固有名詞を使っていますが、元々はそういう言い方が一番嫌いな人間でした。
とにかく、いかに無理なく身体を連動させられるかが一番大切なテーマだと思っています。
質問の答えにはなっていないと思いますが、私は常にそう考えています。
ベンチプレスで背中に筋肉痛が出るのは、いままでいかに前側にある筋肉しか使っていなかった証拠でしょうね。
どこかだけに、大きな負担をしいるトレーニングは、ボディービルダーに任せて、我々は効率良く筋力を発揮できる全身の連動動作を目的にするべきだと思います。
個別の筋肉の動きや肥大を目的とするなら、それを専門とする方に聞いていただければと思います。

  • 2014-01-07│21:16 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
No title
遅くなりましたが明けましておめでとうございます。年末年始の休暇で自分自身もトコトコ走り、息子とも走りながら西本理論を復習しています。

大腿四頭筋については、走るうえでも膝を伸ばすだけでなく、股関節を曲げる役割もはたしているという、やたらと忙しい筋肉でどう扱ったらいいのかわからないイメージがありました。実際、忙しく使いすぎてここを痛めてしまったのが息子です。

西本さんが言われている通り大腿四頭筋は「抑制的に働き、屈筋的な仕事」をする、と捉えるとずいぶんすっきりしそうです。

もう少し自分で動きながら、子供たちにも伝えられるよう頭を整理したいと思います。
  • 2014-01-07│21:01 |
  • 福山の親子の親 URL│
  • [edit]
今回のブログ、「なるほど」と同時に疑問といいますか、正直わからなくなってしまいましたのでヒントをいただけないかとコメントさせていただきました。

西本さんがブログ内でおっしゃっている四頭筋と股関節の運動という点からスクワットを思い浮かべました。

昨日までのブログを読んで自分なりに西本理論を解釈し、スクワット時に意識している点は・・・

・3.5.7を意識する
・骨盤をしっかり立て、背骨をまっすぐ(S字ではありますが)に保つ(この時広背筋も意識できるといいのでしょうか?)
・お尻を下げて行く時に四頭筋が遠心性にブレーキをかける感覚、ハムストリングは収縮方向にいく感覚をもち、下げきったところは四頭筋が力を発揮する準備が整うところという意識をする
・別な視点からは下げていく時、大臀筋がブレーキをかけ腸腰筋は収縮方向に、下げきったところは大臀筋が準備が整うところという意識
・膝や骨盤が左右にぶれないよう、足関節、膝関節、股関節の連動がスムーズに一定の軌跡を通るよう意識
・以上のようなことを意識できるように歯を食いしばらず、コントロールできる重さでゆっくりと行う

しかし、股関節の伸展が四頭筋の役割であるならば・・・
スクワット時の意識は、
お尻を上げていく時に四頭筋がブレーキをかける感覚を意識したほうがいいのでしょうか?
ブログにもあるように大腿直筋は二関節筋で膝関節、股関節の両方の運動に関わります。四頭筋もハムストリングも膝から見た場合と股関節から見た場合では伸筋にも屈筋にもなります。
このふたつの関節にはどのような意識で行ったらいいのでしょうか?
伸筋から屈筋の受け渡しの意識はどのタイミングなのでしょうか?
それともブログでおっしゃっていることとスクワットはリンクしないのでしょうか?
ただ理解できていないだけなのですが、混乱してしまいました。
ご指導いただけると幸いです。

現在、上半身はベンチプレス、ラットプルダウン、ベントオーバーロウイングをやっていて、今までは大胸筋の筋肉痛のほうが強くでていたのですが、西本理論を意識してやるようになってからは広背筋と菱形筋のあたりに筋肉痛(今まで痛くならなかったところまで)がでるようになりまして、今まで使えてなかったところが使えて、新たなところに刺激が入ってるのかな、と変化を感じています。

つじつまが合わない文章で申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。
  • 2014-01-07│18:25 |
  • 札幌の仲尾 URL│
  • [edit]
Re: すっきりしました。
大腿四頭筋に関しては、正直自分の中で一番あやふやだったというか、きちんと納得できていなかった部分で、ずっと頭から離れることはありませんでした。

実は昨日、ゴルフの初打ちでラウンドしている最中に、ふっと頭の中で浮かんだことがあって、それを言葉に残しておこうと思って書き出したのが昨日のブログでした。

私はこうして疑問を感じた時、いつも頭のどこかにそれがあって、まったく別の何かをしている時に、ふとその答えが見つかったりするという経験を何度かしています。

今回もそうでした、自慢の飛距離を落としてでも正確なドライバーショットを打ちたい、さりとて合わせに行くようなつまらない打ち方はしたくない、そう思って回っているあいだに、程よい伸筋と屈筋のバランスを感じ、まてよ股関節を回している時の大腿四頭筋の動きは・・・、となっていったのです。

昨日の寒さの中でも250ヤードくらいの飛距離を稼ぎ、ほぼ思ったところに運べたので、それも自信となりました。

たぶん昨日のブログを読んで、なるほどそうだったのかと思った人は、西本塾の塾生の皆さん以外では少ないと思います。

自分のための忘備録のような書き方でしたから。

それでも、どういうことなんだろうもっと知りたいと、自分からアクションを起こすような人でなければ、現実的に理解するのは難しいと思います。

お互いにすっきりしたところで、今後の指導に生かしていきましょう。

これからもよろしくお付き合いください。
  • 2014-01-07│13:46 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
すっきりしました。
あけましておめでとうございます。昨年はお世話になりました。
今年も楽しみにブログを拝見しながら、少しでも西本さんのように選手を観れて、動きと言葉で伝えれるようになりたいと思っております。ブログを通じてとなることが多いかとは思いますが、よろしくお願いします。
今回のブログの記事は自分の中にあるわだかまりがかなりすっきりしました。伸筋の重要性には西本塾にも参加させていただいたため、重々承知しておりましたが、大腿四頭筋の働きについては自分も愛知に戻って実践を行う中でかなりの疑問点でした。伸筋は疲れにくく力を発揮しやすいという考えで大腿四頭筋をみたときに、蹴るという動作のときにどうしても力みが生まれたり、走る動作に関しても方向転換のときなどのときに居つく感覚と大腿四頭筋が関係しているような気がしてなりませんでした。(私自身が動き作りができていない証拠だと思うのですが)
私自身もレッグエクステンションやレッグカールを嫌ほどやり、生きてきてしまった身です。自分自身の硬さの理由も分かった今、どうしてもこの大腿四頭筋のことはずっとひかかっていました。実践していく中で本当に分からなかったら西本さんに質問しようと考えておりましたが、先に答えていただきました(笑)
何か自分の中でも消化しきれない中でコメントしておりますので、支離滅裂な内容となってしまい申し訳ございません。今後もよろしくお願い致します。
  • 2014-01-07│13:22 |
  • 愛知県のジュニアサッカー指導者 URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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