トレーニングの目的再考

屈筋と伸筋、西本塾を開催するようになってから、私の思いを正確に伝えるための方法として、具体的な筋肉の名前を上げて、その解剖学的な起始と停止を明らかにして、収縮した時に起こる関節の運動を説明することで、感覚として伝わりにくい部分を、より視覚的に理解していただきやすく説明するように努めてきました。

具体的には、姿勢を真っ直ぐに保ち、スポーツ動作のすべてに重要な「広背筋」については、道具を使わなくても、いつでもどこでもトレーニングができるように「フライングバック・トレーニング」という名前を勝手に作って、受講者の方が各地で指導し、すでに成果が出ているという報告も頂いています。

今回も、ボールを蹴るという動作と走るという動作に関して、大腿四頭筋という固有名詞を使ったため、私の本意でない、〇〇筋の働きは、的な発想に陥りそうになってしまいましたので、もう一度ここで、私のトレーニングに関する考え方を整理しておきたいと思います。

我々がスポーツ動作や日常生活が円滑に行われるためには、筋肉の収縮が必要です。

人体を形成する骨格は、筋肉の収縮によって関節の角度を変え、動きとして表現してくれているからです。

「筋肉の仕事は骨を動かすこと、それ以上でも以下でもありません」と、私が言い続けているゆえんです。

ところが解剖学という学問が、一つ一つの筋肉の存在と働きを明確にしたため、それらに対して細かいアプローチがされるようになりました。

このマシンを使えば、この種目を行えば、確実にこの筋肉に刺激を与え鍛えることができるということが、定説となり、正しいアプローチのやり方だと信じられるようになってしまいました。

8方向へ展開する自由度を与えられた関節が、全身に数えられないくらい存在している人間の体、些細な動きに対しても、それこそ一つとして知らん顔をすることなく、大なり小なり全身が協調・連動して動いているのが人間です。

そこに〇〇筋を鍛えると、という発想が当てはまるのでしょうか。

広背筋をターゲットにしてフライングバック・トレーニングを行うとき、他の筋肉や関節は休んではいません、広背筋が働きやすいように懸命にサポートしてくれて、下半身のトレーニングをやっているのかと、途中から思ってしまうほどです。

質問していただいたスクワットなど、最も顕著に全身運動だと自覚できる種目だと思います。

今はやりの体幹トレーニングという言葉、その鍛え方が盛んに喧伝されていますが、スクワットでは体幹は鍛えられないのでしょうか。

そういう人たちが言っている体幹部分が弱くて、100キロのスクワットなどできるはずがありません。

ベンチプレスでも同じでしょう、前側の筋肉だけで持ち上がる重量は知れています、全身が協調してこそのベンチプレスで、前側ばかりに筋肉痛が来ることも、裏側だけに来ることも、実はそこに意識が行き過ぎている、もしくは今まで意識が届いていなかったからと言わざるを得ません。

上半身を鍛える、下半身を鍛える、体幹を鍛える、そういう問題なのでしょうか。

例えば正月番組でも目にした「腕相撲」、使っているのは片腕です、ところが、だれがどう見たってあれは全身運動で、腕が太いから強いという単純な競技ではありません。

腕相撲ですらそうです、他のすべてのスポーツや日常動作に必要な筋力の発現は、すべて全身で行っているはずです。

それを不意にどこかの筋肉だけに負荷がかかる動きをした時、ぎっくり腰などと言う悲惨な状態になったりします。

私も30歳までとても痩せていて177cmで58キロしかなかったことは何度か書きました、自分にとって大きなコンプレックスでした。

それをトレーニングで少しずつ克服していく過程で、いわゆるビルダー体型を目指す人たちのトレーニングを見て、どうも違うなと思わざるを得ませんでした。

その後さまざまな経験をしていく中で得られた結論が、「体作りから動き作りへ」というパラダイム転換となっていったのでした。

そんな甘っちょろいトレーニングで効果なんて出ないと言われたこともありました。

その効果とはズバリ筋肥大のことだと思います。

しかし、3・5・7理論に基づく、可動域のいったりきたりをしっかり意識し、筋繊維の奥深くまで刺激を届けることを意識したトレーニングを継続すれば、動きそのものを改善しつつ、その動きに必要な筋肥大はちゃんとついてくることを、指導した選手たちが証明してくれました。

これは一般の方でも同じで、週1回1時間のトレーニングでも半年もすると体つきが変わってきます。

その時意識していただくのは、今どこそこの筋肉で頑張っているという意識を消してもらうことです。

私のトレーニングを一言で言い表すと「固有の筋肉を頑張らせない筋力の発現方法を身に付ける」と言えるかもしれません。

普通は、いま〇〇筋を鍛えている、できるだけ意識を他に逃がさないように、その部分に集中することで、その筋肉に強い刺激が届き強化される、という発想でしょう。

現実のスポーツ動作や日常動作に、そんな局面があるでしょうか、いかに部分に負担をかけないように、うまく体全体に負荷を分散して使うかがキーポイントのはずです。

「いやどんなことがあっても耐えられる強い体にしておくんだ」そうでしょうか、鎧のような筋肉を身にまとった選手は、どんなことにも耐えられケガをしない体になったのでしょうか。

答えはNOだと思います、名前は出せませんが、皆さんでも思い当たる選手はたくさんいると思います。

人間は言葉を得て、文明が発達しました、だから指示をする側も受ける側も、まずは言葉で理解しさせようとします。

やって見せて動きを説明しても、「これはどこの筋肉でやるんですか、どこに力を入れるのですか」と、やる前から矢継ぎ早に質問が飛びます。

まずはやってみて、その感覚をお互いに共有しなければ、会話で言葉にしようがありません。

西本塾生で、札幌の諏訪さんのゴルフスイングを、ユーチューブを通してアドバイスさせていただいていますが、短い時間とはいえ目の前でスイングを見ていますし、私も現在進行形で同じ悩みを持つアマチュアゴルファーとして、思う所を言わせていただいています。

だからこその会話が成立していると思うのです。

これまでマンツーマン、目の前にいる人間にしか指導をしない出来ないと言い続けてきたのはそういう意味です。

直接とはいえ、大勢の方に同時に教えるのも大変ですし、会ったこともない人に伝えるのはさらに難しい作業です。

シンプルに考えてください、人間の体は丸ごと一つの存在です、〇〇筋や骨の名前は後から人間がつけたもの、体はみんなで協力して私たちの体を動かしてくれています。

自然の摂理に逆らわず、いかに体をいたわりつつ無理を聞いてもらえる体になれるか、トレーニングってそういうものではないでしょうか。
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こんばんは。
自分自身、スポーツをやったことがなく、トレーニングというものを実践したことがほとんどなく、筋肉の知識もあまりないので、ブログに書かれている内容をすべて理解できないのですが、「3分間操体法」に書かれている動きを実践していて、最近気付いたところがありましてコメントさせていただきました。

年末に幸運なことに西本さんの施術を受けることができてから、それまでやっていた「3分間操体法」のやり方が劇的に変わりました。施術の中に本にあった動きと同じものがあり、動きのコツのようなものがつかめた感じがします。施術を受けなかったらこの感覚はわかりませんでした。

毎日欠かさず続けていますが、最近歩いていて、以前より楽に前に足が運べるようになった感覚があります。背筋が伸びて腰の上に上半身が安定して乗り、股関節がスムーズに動いて足を前に振り出してくいれるような感じ。体重移動だけで前に進むような感じがしています。以前は振り出した足のかかとをつけて、つま先に体重移動し、つま先をけって前に移動するというウォーキングでよくいわれる歩き方をすごく難しく感じていたのが、足首から下の動きを意識しないでも自然にその歩き方ができるようになりました。

やはり言葉だけではわからない、自分で実感していないとわからないと痛感しております。
私がわかった感覚だけでも息子たちに伝えたいのですが、なかなかまだ自分の体への意識が低いので難しいです。
ただ先日教えていただいた足や股関節をほぐすマッサージを息子にやったところ、効果が実感できたようです。痛みのある筋肉を触らずにほぐしてもらえるのは気持ちよかったらしく、普段はいやがる次男もリラックスしてされるがままでした。自分で実践できることは続けて、子どもたちにもできる範囲で伝えていきたいと思います。



ありがとうございます。
ものわかりが悪くお手間をとらせてしまい、申し訳ありませんでした。
既成概念にとらわれず、よりシンプルに、身体との対話を楽しんでみます。
いつか感覚を共有できる日が来ることを願って、まずは実践、継続してみます。
  • 2014-01-08│21:51 |
  • 札幌の仲尾 URL│
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
今年2回目の西本塾を8月26・27の土日に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。
なお、今回も参加者が5名に満たない場合は開催しません。
9月10日には深める会も予定しています。

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