動きを見るということ

またまた人間の動きを見るという作業を始めました。

こう言うと必ず聞かれるのが、私が選手のどこを見ているのですかという質問です。

自分が一番どこを見ているんだろうと考えた時、やっぱりそうだなと思ったのが部分を見ていないということでした。

体全体から伝わってくる雰囲気、周りの選手たちとの違い、まずはそれが一番気になります。

注目した選手ではなく、その周囲にいた選手の方が気になって、対象が途中から変わってしまうこともあります。

なぜこの選手が気になったのだろう、野次馬根性はそこから始まります。

そういう意味では、選手に対する先入観のない、例えばサッカー選手を見る時の私のような立場がちょうど良いのかもしれません。

次に考えることは、自分はなぜこの選手が気になったのだろうということです。

リクエストがあった場合は、できるだけ周りとの比較で、その選手の特徴を見定めるようにしていますが、それでも一流選手とはいえ、あまり興味のわかない場合も良くあります。

そういう時は逆に、どうして自分の目には平凡な動きとしか見えないのに、結果として一流と評価されているのかという原因を探さなくてはなりません。

どちらにしても、一流とそうでない選手、また超の付く一流選手には、何かほかの選手と違う体の使い方があるはずなのです。

経験とか持って生まれたものとか、そういう言葉で片付けてしまうのではなく、本質的な何かを探すのが私の楽しみとなっています。

そうした中で一般的に多く用いられるのが、筋肉のバランスがいいとか、どこそこの筋肉が鍛えられれていると言った、抽象的な言い方です。

以前に話題にした、「前の前を探る」という観点から考えると、その言い方ではまったく第三者どころか、自分自身を納得させることもできません。

こういう動きができているということは、どういう風に体が動きているのだろう、そのためには体全体がどうやって連動し、目的とする動きを表現しているのだろう。

前の前を、奥の奥を探っていけばそれらしい何かが見えるようになってきます。

ところが当の本人は、そんなことを意識して動いているわけではないと思います。

だから素晴らしい動きをしていたスーパースターが、指導者になったからと言って、自分と同じレベルの動きができるように指導することができないのです。

なぜ私のような人間がそんなことを考え、現実として一流のアスリートにアドバイスができるようになったのかというと、一言で言うと自分ではできなかったからです。

あと一歩のところまで来ている選手たちをみるにつけ、ここをこういう風に使えたら、そのためにこんなトレーニングをしてくれたら、きっとこんなことができる選手になれるのにと、一人勝手に思ってしまうのです。

ところが相手は、そう簡単にそうは思ってくれません。

あなたにそんなことがわかるわけはないと思うのも当然のことでしょう。

しかし現実として、私の考えを理解し共に試行錯誤を繰り返してくれた選手たちは、必ず目標に近づいて行きます。

選手自身にそこまで深く掘り起こして行く知識はないのですから。

受け入れてくれなければ話になりません、そういう意味では組織に所属し、こちらを向こうとしない選手を含めた集団を指導をするより、自分の意思で私の指導を受けたいとやって来てくれる選手や、自分の指導に活かしたいと学びに来てくれる指導者を相手に仕事をしている方が、よほど建設的でストレスを感じないですんでいます。

知識が先走り、この動きの局面では、どの筋肉が屈筋として収縮し、などという議論をしたくなる人が多いですが、動きの中で一つの筋肉だけが主役であとは補助的になどということはあり得ません。

全ての筋肉が主役であり脇役となって、体に無理のない効率的な筋力発揮を実現してくれています。

動きの良さが目に付く選手というのは、そういう意味でどこにも力みが感じられず、滑らかに動いて見えるため、特徴を探すのが逆に難しいのです。

それが、どうしてこの選手はこういう動きしかできないのだろうと言いたくなる選手というのは、明らかに今ここに力が入ったな、ここを使おうとしているなというのがわかるのです。

そういう動きはわかりやすいので、選手の欠点としてだったり、一般の人から見ても、何か違うなと感じさせてしまう要因となるのです。

悪いところを指摘するのはある意味簡単なことです。

しかし、それを改善するためにはどうすればいいのかを指導するのは本当に難しいことです。

そのヒントを得ようと、元名選手だった指導者も私のところに学びに来てくれています。

最近、広背筋の重要性を強調しています、固有の筋肉を意識してはいけないと言っている張本人がなぜそう言っているのか。

もちろんそれには理由があります。

広背筋は下半身と上半身をつなぐという、他の筋肉にはない重要な役割を持っています。

そして骨盤を後ろから引き起こし、股関節の自由度を確保し、背骨を真っ直ぐに起こし、肩甲骨を引き寄せ、それによって上腕骨を後方に伸展させるという、人間の移動動作に直接そして最も重要な筋肉なのです。

しかし我々日本人は、歴史的に骨盤を後傾させ、背中を丸くして作業をするといことが当たり前であったためか、広背筋が本来の働きを忘れ休眠状態に陥ってしまっています。

その弊害は大きく、特にスポーツ動作では、欧米人との比較で明らかに背中を使った動きができていません。

それに気付き、なんとか重要性を意識していただき、使える体になってもらうために、あえて固有の筋肉の名前を前面に出すことで、トレーニングの効果を上げ、動きの改善を図ろうとしています。

ところが、これも日本人の悪いくせというのでしょうか、広背筋という名前が一人歩きをしてしまい、そこだけを鍛えればいいのだという、なんとかトレーニングのような感覚で捉える人が出てきてしまいました。

気づかないままよりずっと良いことだとは思いますが、前の前、奥の奥まで思いを巡らせていただき、指導に活かしていただきたいと思います。

人間の動きを見るということは、単純に動作がうまいとか下手だとかいう問題とは意味が違います。

競技の経験があるなしに関係なく、体そのものを見る目ができれば、それは違う世界が見えるようになるということです。
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Comment

Re: お世話になります。
ご連絡ありがとうございました。
そう野次馬根性がすべての始まりです。
素直な気持ちで体験してみる以外に、物事の本質に近づく方法はないと思います。
わざわざ遠い所から来ていただくのですから、もういいですというくらいお話しして、お腹いっぱいでお帰りいただけるよう準備しておきます。
気を付けてお越しください、お待ちしています。
  • 2014-01-20│21:32 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
お世話になります。
22日は、お世話になります。
熊本の野田と申します。

野次馬根性で訪ねていく私が少しでも怪しまれないように、
コメントを利用し自己紹介させていただきます。

30代前半の会社員です。スポーツ歴は小中高とサッカー一筋。
社会人になってからはゴルフ一筋。

昨年、子供の運動会で走った際、転倒。
足がついてこない感覚に愕然とし一念発起。
学生時代に骨折、靭帯断裂を負った左足首の事が気になり
体にやさしい動きを調べていたところ西本さんのブログを発見。
ホームページの存在も知り、そこで連絡先を見た瞬間、電話していました。

スポーツや人体について、まったくの素人ですが、
3歳の息子が楽しそうに走る姿を見て彼に自分の苦い経験をしてほしくない、
まだまだ自分もスポーツを楽しみたい、そのような思いで西本さんに会えることを楽しみにしております。

コメントで失礼いたしました。
  • 2014-01-20│16:42 |
  • 熊本の野田 URL│
  • [edit]
Re: 私も動きを見てきました
人間の動きを見るということは本当に難しいことです。
最近ではコンピュータによる動作解析なるものが行われていますが、ことの良し悪しを評価しているのは、結局誰かが正しいと決めて打ち込んだデータとの比較でしかないのです。
動きの瞬間瞬間、体の中で起こっていることを数値化するなんてできるはずがありません。
動きを見るということは、体の中を見ることです。
本人さえも意識できない関節と筋肉の連動を、なんとか言葉に落とし込んで、お互いが共有できる情報にできなければ意味がありません。
欠点を指摘することは簡単ですが、それがなぜ良くないのかを明らかにし、改善する方法とそのメリットを伝えることができて、初めて動きがみえたと言えると思います。
すべては相手のために、そう思えば見方も変わるでしょう。
私は常にそういう視点でものを見るようにしています。
  • 2014-01-19│21:54 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
私も動きを見てきました
今日はゴルフの練習と、久しぶりのランニングをしてきました。

以前からゴルフの練習をしているとき、自分のスイングはもちろんのこと、他のゴルファーのスイングを見るのも好きだったので、今日も十人十色なスイングを見てきました。

今日特に気になったスイングは、バックスイングに比べてダウンスイングが速すぎるように見えたスイングです。うまくボールに当たらない→飛ばない→さらにスイングを速く振る、という感覚なのかなと自分のスイングは棚にあげて勝手にチェックしていました。もしも私がその方にアドバイスを求められたら、「右足裏で地球を外側に回す」感覚を伝える!と考えていたらとても楽しかったです。

ゴルフのあとには近くの体育館に行き、肩甲骨と股関節の連動をトライしてきました。
西本塾で教えて頂いたことを思い出しながらブログの内容も意識して、一本のラインを歩くモデルウォーキングからスタートすると、股関節のロータリーが意識しやすかったです。その感覚を持ちながら徐々にスピードをあげるとゴルフで意識しているダウンスイングの右股関節の「内旋&伸展」と似た感覚になり、とても気持ちよく走ることができました(心肺機能が衰えていて長続きはしませんでしたが…)

ランキング中も他のランナーのフォームが気になり「腕の振りが大きい」とか「足で蹴る意識が強すぎる」など考えていたらあっという間に時が過ぎていました。(批判するだけなら簡単ですね…)

今私が企んでいるのは、一見変わった走り方をしているのになぜあんなに長く走っていられるの?と興味を持ってもらうことです。今日は基礎体力が無かったのでウォーキングばっかりやっている変わった人で終わってしまいましたが、いつ「何を意識して走っているのですか?」と聞かれても答えられるように今から準備しておきたいと思います。
  • 2014-01-19│00:03 |
  • 札幌の諏訪 URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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