絵か文字か、言葉の力

昨日、このブログを開設以来、初めて写真を挿入しました。

直接私から指導を受けた方から、フライングバックトレーニングと名付けた、器具を使わない広背筋のトレーニングの形がよく分からないからというコメントをいただき、ならば写真をということになりました。

今でこそ、自分の知識や経験を伝えるための活動を積極的に行っていますが、つい昨年まではまったくその気がありませんでした。

私のやってきたことが、あまりにも感覚的すぎて、自分の中ではわかっていても、それは自分だけがわかる感覚で、それを人に伝えることなどできないと思っていたからです。

後継者だとか弟子とかいう言い方で、なぜ養成しなかったのかと言われることも多かったのですが、もし何年かかけて教えたとしても、私と同じ技術は身についても、同じ感性を身につけることはできないと思います。

私が磨いてきたものは、技術ではなく感性だと思っています。

もちろん私も驚くような素晴らしい感性の持ち主は、他にもたくさんいるかもしれませんが、私と同じと言われるとなんとも言いようがありません。

私の師、渡辺栄三先生は10年ほど前に40半ばで亡くなられました。

もう私は先生の生きた年数を10年も超えてしまいました。

東京でお世話になった約6年の日々を思い出すと、先生の口から操体法の具体的な方法論のようなものを伺ったことがないような気がします。

もちろんなかったわけではないと思うのですが、そういうことではなく、相手の体と自分の体を一つに融合させるという、まさに感覚の世界を感じさせていただいたように思います。

そういう意味では、私が指導していただいたのは、たんに操体法という言葉で言い表されるものではなく、渡辺栄三という人間を通して語られた、先生の人間性そのものだったのではないかと思っています。

今私が行なっている施術は、そういう意味ではもう操体法ではないのかもしれません。

もちろん先生も操体法を学ばれたのですが、先生の感性の中で変化し、それを受け継いだ私の感性が、相手の体とどう向き合うかという方法論を模索してきた結果が、今の形になっているのだと思います。

純粋に操体法を継承している方々から見れば、私のやっていることは操体法ではない、違うものだと言われてしまうかもしれません。

どんなことでもそうですが、人の話を聞いたりそこから何かを学ぼうとすれば、メモを取ったり、今の時代ならばボイスレコーダーやビデオ録画という方法もあるでしょう。

それが長く指導をいただいたにもかかわらず、私は先生の言われたことをメモしたという記憶が全くないのです。

もちろん資料はいただきましたし、今でも大事にとってありますが、これがまた意味不明で、普通の人が見ても何のことだかわからないことが書かれているだけなのです。

もちろんメモをしっかり取りながらという人もいましたが、私はそんなことより先生の表情を見たり語られる口調を聞いて、少しでも先生の言わんとすることの意味を感じようとしていました。

後でメモをみるより、録画した先生の姿を見るより、今この瞬間先生は自分に何を伝えてくれようとしているのか、それが感じられなければ、そんなものは全く意味をなさないと思いました。

だから誰よりも真剣に話を聞いていたつもりです。

今こうして伝える側になって思うことは、私と同じような感性で話を聞いてくれている人はいるのだろうかということです。

もちろんメモを取るなとは言いません、ただペンを走らせている瞬間にもたくさんの言葉が私に口から発せられています。

方法論や形の問題ではなく、何を伝えたいと思って話をしているのかという、本質的なところが伝わっていれば、形がどうこう言うレベルの問題は二の次ではないかと思うのですが。

スポーツライターの木崎さんとご縁ができ、言葉の力、言葉の大切さを改めて感じています。

今までの私は、感覚だ感性だと聞こえのいい言葉で自分をごまかしていたのではないか、本当に自分がわかっていれば、それを言葉に落とし込み、誰かに伝えることができるのではないか、今までその努力を怠っていただけなのではないか。

そんなことを考えるようになりました。

言葉の力、文字の力には限界がある、やはり挿絵や写真、できればDVDでもつければ万人に理解してもらいやすい、そういう安易な考えを持っていました。

しかし今、今日現在ではありますが、考え方が少し変わっています。

たしかに絵や写真は目で見てその形をマネすることができるという意味では、不特定多数の人に説明するのにとても便利なツールかもしれません。

ただ静止画では、その瞬間がどういう局面なのかが伝わりません。

例えば昨日の2枚の写真でも、それが上半身を沈めて行く瞬間なのか、それとも逆に上がって行く瞬間なのか、そのどちらにも取れるわけで、二つの動きには大きな違いが出てきます。

どちらの瞬間かで目線が下なのか上なのか、まったく意味が違って行きます。

もし動画であったとしても、その動きはどういう目的で行われていて、どういう意識が体に働いてその動きになっているのか、それがきちんとわかっていなければ、ただマネをしているだけ、形だけの運動になってしまいます。

私が指導した方から指導を受けた学生が、私の目の前で全く違う動きをした時にはちょっと驚きましたが、正しく伝えるということは姿形を教えることではないのです。

何のためにどういう意図を持って、その部分こそが正確に伝わっていかなければ、⚪️⚪️トレーニングと同じ道をたどっていくような気がします。

学んでいただく方にも、人に伝えるという目的があるのなら、もっと覚悟を持って真剣に取り組んで欲しいと思います。

写真や動画ではなく言葉でうまく表現できて、こちらが言いたいことの本質をつかんでもらえたとしたら、もしかしたらフライングバックトレーニングは全く別の形で行われて行くのかもしれません。

目的が同じなら形などどうでもいいわけで、私が驚くようなフライングバックトレーニングが開発され、もっと良い効果を発揮してくれるのかもしれません。

それが文字の力、人間の想像力の成せる技だと思います、もちろんそのためには基礎的な体の仕組みや、私が西本塾でお話ししているような発想も、多少は知っていないとアイデアも浮かばないとは思いますが。

趣味のゴルフでも全く同じことが言えます。

レッスン書と言われるものは、すべてとは言いませんがほとんど目を通してきました。

主流になるのはやはり写真やイラストを多用したものです、DVDもたくさん出ていますし、YouTubeでも無料でたくさんの動画を見ることができる便利な世の中です。

そのなかで、アマチュアの永田玄さんの書かれた2冊の本は、これまでのレッスン書と一線を画し、文字だけで語られた珠玉の内容となっています。(題名はあえて表記しませんが著者のお名前で検索してください)

書かれた内容から何を読み取り、どう実行に移すか、読んでいる私が、著者である永田さんに試されているような感覚になります。

多くの本は一度目を通せば二度開くことは少ないのですが、この2冊は常に手元に置いて、何度も読み返しています。

できることなら私にも、こんな力を持った文章が書けるようになりたいと思っています。

ただ、読み手にも覚悟が必要だということは、改めて肝に銘じておかなければならないことだと思います。

分からなければ聞けばいい、そんな安易な気持ちで文字を追っても、けっして心に響いてくるものはありません。

作者が言わんとしているものは何か、大袈裟かもそれませんが、書き手と読み手の真剣勝負です。

たかがブログで何を偉そうに、そうかもしれません。

こんなブログでも文字を綴っている瞬間は真剣勝負です。

気楽に読んでいただいて何ら問題はありませんが、質問やご意見を頂く時には、少し深く読んでいただいてからお願いできればと思います。

※鍵付きでのコメントは受け付けないことにさせていただきましたのでご了承ください。
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Re: 文字だけのブログに挑戦中
動きを言葉に変える、これほど難しい作業はありません。
言葉は手段です、自分の感性と相手の感性がどう絡み合っていくのか、同じ言葉から何通りの反応が起こるのか、そのことすら楽しむことができれば、何も怖いものはありません。
自分に嘘をつかず、正直に言葉を綴っていく、これからも続けていきます。
  • 2014-01-31│18:13 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
Re: 野次馬根性
みなさんが私から受けた刺激を大切に思っていただいていること、とてもありがたいと思います。
私の方こそまだまだ未熟なため、喜怒哀楽をコントロ-ルできなかったり、自分の思いばかりが先行してしまうことがよくあります。
そんな私ですが、少しでも皆さんのお役にたてるのならと、活動を続けていきたいと思っています。
これからも気長に見てやってください。
  • 2014-01-31│18:09 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
文字だけのブログに挑戦中
先週から自分の文章力を養う目的でブログを始めました。今私が取り組んでいるゴルフスイングを文字で表し、これからゴルフを始める方に役に立ててもらえたらという気持ちで書いています。実際に記事を書いてみて、文字だけの文章がこんなにも難しいとは思いませんでした。ただ言葉を選びながらブログを書いてみることで言葉の引き出しが増えていくような気がします。
西本さんの「何度でも読みたくなる」文章に負けないようにブログを書いていきます。(in札幌のためにも)
  • 2014-01-30│22:32 |
  • 諏訪俊一 URL
  • [edit]
野次馬根性
西本さんの指導を受けた方であれば、教材があるものならば是が非でも手元に置きたいと思われるはずです。
正に自分がそうです。

お会いしてからというもの、操にあるトレーニング器具の名称を調べたり、体感した事を何とか言葉に残そうとレポートを書いたりと楽しませてもらっています。

我流でゴルフをはじめ、ソコソコのスコアでラウンドできるようになり、スイング理論から体の仕組みまで調べるようになり、西本さんに辿りついた生粋の野次馬が、烏滸がましくも動きの本質を体現する欲求にかられております。

今後もブログを教材に西本理論を学ばせていただきます。
とりとめもないコメント、失礼いたしました。
  • 2014-01-30│19:44 |
  • 野田幸広 URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
今年2回目の西本塾を8月26・27の土日に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。
なお、今回も参加者が5名に満たない場合は開催しません。
9月10日には深める会も予定しています。

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