正しい動き考察

私がよく使う言葉に、「体に無理のない動き、本来の正しい動き」というものがあります。

これこそまさに抽象的で、伝わりにくい表現だと思います。

そこには長い経験の中で自分なりに感じ取った、感覚的なものが大きいと思います。

それを言葉にして説明するのは難しく、実際にやってみてなるほどと思ってもらうしかありませんでした。

例えば痛みの感覚で言うと、人間は不思議なことにというか、残念なことにというか、痛みに単位をつけて他人と比較したり、自分の中でも、現在自分が感じている痛みの箇所に順番をつけて、腰が一番痛くて、その次に膝も痛くて、3番目に首がちょっとなどという感覚は、無理に表現すればできないことはないのでしょうが、実際には最も気になるところ、一番痛みを感じるところに気持ちを取られ、他の部分についてはほとんど感覚できないようにできているようです。

首が痛いということを主訴として来ていただいた方でも、体を動かして行く中で、膝を左右に倒した時の左右差が大きく、腰から背中にかけての筋肉の柔軟性に問題があることがわかる場合がありますが、それでもその部分よりも首の方に意識が行ってしまい、なかなか他の部分を改善しなければ首の違和感をなくすことはできないことに気付いてくれません。

自分が今、違和感がある部分の問題ではなく、なぜそこから信号が発せられたのかという、体全体としてのバランスだったり問題点を探る必要があるのです。

そういう意味で、正しい動きができていれば体は不調を訴えることなく、十分にその能力を発揮してくれるのだと思います。

ではその正しい動きを作るためにはどういう発想が必要なのでしょうか。

人間が二本足で立っている、このこと自体に大きな意味があります。

我々はそれが当たり前だと思っていますが、例えば猿でも犬でも、普段四足歩行の動物が二本足で立つと、その行為自体が芸になります。

それほど二本足でバランスを取ることは難しいことなのだと思います。

地面に足の裏をつけ、膝から下のふくらはぎの部分、膝上の太ももの前側の部分、ここの筋肉がバランス良く収縮してくれることで膝が伸びた状態を維持できます。

そして股関節の上に乗った上半身は、体の後ろ側、骨盤や背骨を支える筋肉によって、下半身の上にまっすぐ乗った状態を維持しています。

ただ何となく立っているだけでも、そうした筋肉を中心に、たくさんの筋肉が仕事をし続けています。

これはある意味、心臓やその他内臓が自律神経の働きで、自分の意思とは関係なく動き続けていることと似ていると思います。

まずは基本となる、立ち姿勢を維持するための筋肉を、きちんと鍛えておくことが全ての始まりだと思います。

そういう意味で私は関節を曲げる屈筋よりも、伸ばすための伸筋の方が重要だと言い続けているのです。

伸筋は普段意識をしないでも働き続けていますから、持久力もあるし筋力も強いのですが、いざという時に意思を持って使う屈筋の方が、筋力発揮のうえでは主役と考えている人が多いようです。

屈筋は体の前側で目立つ存在ですから、自分の鍛えた肉体を誇示する際も、前側の筋肉を見せていることが多くなりますし、筋肉が落ちた(落ちたのではなく肥大していたものが縮んだというのが正しい表現)と感じるのも屈筋の場合がほとんどです。

しかし、大事な伸筋を使わないまま休ませてしまうと、いわゆる猫背になり骨盤が後傾し、歩く走ると言った基本的な動作から、様々な競技動作に至るまで、本来できるはずの動きができなくなってしまいます。

この本来できるはずの動作のことを、私は正しい動作だとか、体に無理のない動作と言っています。

それができるようになるために、伸筋を重視したトレーニングを行っています。

例えばスクワットという種目で、普通にバーベルを担いで行うとき、腰を落とした時につま先から膝が前にでないよう気をつけてという指示があります。

最も肥大を狙っているのは大腿四頭筋だと思いますが、膝が前に出ると重量の負荷が膝にかかり過ぎるため、膝を痛めてしまうことになり、そういう注意がされます。

それでも負荷が高くなると、やはり膝のお皿の上あたりに負荷がかかることは避けられません。

本来、手も足も、体幹部分に近いところが太く、末端に行くほど細くなることでムチのようにしなり、速く走れたり、速いボールを投げられたりするはずなのですが、末端が太くなってはそういう動きがしにくくなります。

そのために、スミスマシンというバーベルシャフトの軌道が機械的に制御された状態で、直立ではなく少し両足を前に出し、腰を下ろして太腿が地面と平行になるポジションの時、股関節と膝関節がともに90度になり、背中をしっかり反らせた状態になるように工夫してスクワットを行ってもらいます。

こうするとかなりの高重量を扱っても、バーベルを戻した瞬間に膝がガクガクするような感覚にはならず、そのまま歩いたり、また今の体の感覚で走ったらどうなるんだろうと駆け出してみたくなったりします。

これこそ動きづくりのトレーニング、どこの筋肉のためではなく、全身の関節が筋肉をうまく利用して動きを表現するという、人間本来の動きづくりを行うトレーニングだと思ったのです。

いつものことですが、このトレーニングはどこに効くのですかとか、どこを使ってやるのですかという質問がありますが、「どこか特定の筋肉に意識がいかないようにすることが、このトレーニングの目的です」、と答えるようにしています。

ただ普段意識していなかった伸筋群には、少し辛いトレーニングになり、後で今まで経験したことのない場所に筋肉痛がきたという感想をよく聞きますが、それがまさに屈筋優位で体を使ってきた紛れもない証拠で、このトレーニングによって主客が逆転し、本来人間が動くという行為に対して、自然に発揮できる筋力の発現、関節の連動動作を獲得する方法であり、それを継続することで無用な筋肉痛も起こらなくなると思います。

「どこが頑張っているのですか、みんな頑張っています」「どこが大変ですか、みんな大変です」「楽そうに見えますね、はい無理なく楽に動いていますから」

そういう風に体を使うことが一番大事なことなのではないでしょうか。

アスリートの動きもその延長線上にあります。

体が嫌がることを、無理を承知で鍛え上げることがトレーニングではないと思います。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。

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