病名が独り歩き

腰椎椎間板ヘルニア、よく聞く病名です。

背骨の椎骨の間にあって、クッションの役目をしてくれている椎間板という組織が、本来あるべき位置からはみ出ている状態を言います。

私も高校時代から数えて5回のギックリ腰を経験し、その時にはもう二度と立って歩けなくなるのではというくらいの恐怖と痛みを経験しました。

もしその何回目かにでも、MRI検査を受けていたら、おそらくヘルニアという診断を受けていたかもしれません。

腰痛を抱えている人の多くが、検査でヘルニアという診断を受け、腹筋を鍛えなさいとか腰痛体操をやりなさいという指導を受け、それでも痛みが軽減しなければ手術をしましょうということになります。

手術という言葉を聞いたとたんに、痛みを訴えていた言葉がトーンダウンし、なんとか手術をしないで楽になる方法はないかと、あちこち探して施術を受けてはみたものの、思ったような効果は得られない。

こんな話が日常的に、皆さんの身近なところでも話題になることがあるのではないでしょうか。

腰が痛い、その度合いは様々で、痛みに対する感受性もそれぞれですから、実際にどの程度の状態かを客観的に知るためには、レントゲンやMRIという画像診断が有効なことは誰もが認めることです。

たしかにすでに手遅れでもう手術する以外、この痛みから逃れることはできないであろうという人のMRI画像を見たこともありますし、目の前で本人の痛がる様子を見たこともあります。

しかし、「私は腰が悪いの、ヘルニアだから」が、口癖になっているにもかかわらず、普段の日常生活にはそれほど影響もなく過ごしている人もたくさんいます。

そんな生活の中で、時々勧められるままに治療院のようなところをはしごしている人も多く見かけられます。

そして異口同音に、「私の腰はどこに行っても治らない」、これもお決まりのパターンです。

どうしてそういうことが起こるのでしょう。

私が見た2日後に手術を受けることが決まっていた女性のヘルニアは、その時どんな姿勢を取ろうとも脊髄神経を圧迫し、常に強い痛みから逃れることができないという悲惨な状態でした。

ヘルニアという状態にも様々なパターンがあります。

背骨の椎骨に限らず、骨という組織は靭帯でつながれ筋肉で動かされています、けっして骨が単独で位置を変えることはできません。

筋肉が骨を動かし、ある姿勢になった時に、はみ出した椎間板が神経を圧迫して痛みを発するのであれば、姿勢を変えて痛みが出ない姿勢を取ることで、痛みを軽減することができるでしょう。

それをある姿勢で撮った画像で、はみ出している部分、ヘルニアの存在を確認したことで病名がつき、言われた方はなるほどその部分が悪いから自分の腰は痛いんだと、すべてその部分の問題としてお互いが認識し合うことになります。

ではその部分を見つけた医師が、そこに対して何をしてくれるのかということになります。

これについては私からはこれ以上言うことはできません、皆さんの経験で想像してください。

まさにこのブログのサブタイトルにもなっている、「木を見て森を見ず」という言葉通りのことが現実に起こっているはずです。

確かに今この瞬間にはヘルニアという状態が確認され、間違いなくそれが原因で痛みを発していることは事実でしょう。

しかし、交通事故などのとんでもない力が外から加わったりしない限り、そう簡単に椎間板という組織が本来あるべき位置からはみ出てしまう、などとといことが起こるはずはないと思うのです。

ではどうしてそんなことが起こるのか、それこそ今問題となっている生活習慣病の最たるものではないでしょうか。

考えてみてください、椎骨と椎骨の間でクッションの役目をしてくれている組織です、体の動きに合わせて柔軟に対応しているはずの組織が、なぜはみ出たままで戻ることができなくなってしまったのでしょうか。

その根本的な問題を抜きにして、今こうなっていますから、この部分をどうしましょうでは、何の解決にもならないと思いませんか。

たとえ手術をして一時的に改善できたとしても、その人の体はまた長い年月をかけて同じことを繰り返し、同じ状況を引き起こしてしまうのではないでしょうか。

なぜはみ出してしまうのか、なぜ元の位置に戻れなくなったのか、そういう前の前を考えずして、ヘルニアと付き合っていく方法ないと思うのです。

ではどうするのか、簡単な話です、体に聞いてあげるのです。

どうやって動きたいのか、筋肉が体を形づくるために、どのくらいの力加減で骨を支えてくれているのか、関節の8方向の動きに対して、うまく対応できているのか、どこを動かしたくてどこを動かしたくないのか、体の本音を耳を澄ませて聞いてあげるのです。

それが操体法です。

どんな状態でも治せるとか、そういうことを言っているのではありません。

1本の木の枝葉の問題だけに気を取られ、森という全体像を見ようとしないことへの警鐘を、少し鳴らしておきたいだけです。

そしてそれは遠回りのようで、実は本当の意味で体を改善してくれる唯一のアプロ-チの仕方であると私は思います。

26歳でヘルニアの宣告を受け、以来15年間腰痛に苦しみ、ご縁があって私のもとを訪れた方との会話と、体との対話を通して、あらためて考えさせられたことでした。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。

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