体の使い方、背中を使うということ

本日珍しく、二回目の更新です。

今日は仕事は定休日で、本当はこの記事を書くつもりでいたのですが、午後から仕事が入ってしまい、午前中に別のことで記事を書きました。

今日は、腰を落とし背中が丸まり、体が前傾したために、その場に居着いてしまい対応が遅れてしまったという、ある試合の中の1シーンの解説をしてみたいと思います。

Jリーグ第2節の中のカードです。

私がライブで見るカードですから、言わなくても分かると思います。

前半はお互いに探り合いというか、しっかり守られているため決め手がなく、また守りを固めている側もこれといった仕掛けができず、膠着状態が続き、0対0で終了かなと思った、前半のアディショナルタイム、おそらく残り30秒を切っていたと思います。

一瞬の隙を突かれ、左サイドをスピードを武器とする選手がドリブルで上がっていきました。

もうここしかないというタイミングと、スピードを生かしたドリブル突破という、誰が見てもそう来るだろうなという形の中で、ディフェンス側の選手は、腰を落とし前傾し、相手を追いかけながらも、足が完全にその場に居付いた状態からの対応で、相手の動きの方向の変化についていくのがやっとでした。

背中が丸まり腰が引けた状態ですから、巧みなフットワークとスピードのあるドリブルに翻弄され、体を入れることができません。

体勢を崩しバランスを失ってしまったため、もう一人サポートに来ていた選手も、味方の選手が邪魔になって相手の前に出ることすらできないまま、中央に絶妙なパスが渡され、そこからさらに逆サイドに振られて、見事なボレーシュートを決められてしまいました。

ではこの時ディフェンスの選手にどういう意識があれば、良かったのでしょうか。

まずは相手がJリーグ屈指のスピードを誇るドリブラーであるということを考えれば、追いかける展開には絶対にしてはいけません。

ボールを奪うというよりは、相手とゴールの間に体を入れ、相手の動きを遅らせることが重要だったのではないでしょうか。

そのためには相手の動きに対して先回りをしなければなりません。

股関節の位置を高くし、アイドリングしながら相手の動きを見極め、地面を蹴る体重移動ではなく、振り子のような重心移動でなければ、あのスピードに対応するのは不可能です。

股関節の位置を高く保つ、上体は前傾してもかまいませんが、広背筋を使って骨盤を引き上げ、股関節の可動域を確保し、重心の移動と上腕骨の後上方への引き上げをスイッチとした足の踏み出しができる状態を作っていれば、もう少しついて行けて、パスコースを消せたかもしれません。

最悪でもパスの精度を落とすくらいのことはできたかもしれません。

ディフェンス側はどうしても受け身になり、下がりながらの対応が多くなります。

その時に、あまりにも腰が落ちて前傾を通り越し、背中を丸めた前かがみに見える選手が多いのです。

断言します、その態勢ではある一定以上のスピードとテクニックを持った選手には対応できません。

股関節を上下に使うこと、常に一定の高さを保ちアイドリング状態を維持できること、相手の動きに対して重心を傾けることで対応できること、これが最低限必要な体の使い方です。

その上に相手の動きを事前に学習しておくとか、戦術的な特徴を知っておくとか、その選手とマッチアップした時の過去の経験とかいう、選手として蓄積されたノウハウも必要となってくるでしょう。

先日もスポーツライターの木崎さんから、あるプレーについての意見を求められましたが、今言ってきたことをまさに体現したプレーだったとので、私も目の前で見たかのように熱く語ってしまいました。

彼の手になる文章のどこかで、このプレーのことが触れられるかもしれないので、私も楽しみにしています。

野球で、一塁から二塁への盗塁を試みる際のリードオフの姿勢、まったく同じ理屈です。

地面を強く蹴ってスタートを切りたいために、足を広げ重心を低くして投手の投球に備えます。

これはまさに居着いてしまっている状態です。

以前指導していたチームで、重心移動によるスタートをしつこいくらい繰り返し練習させましたが、彼らの意識は従前のままで変わることはありませんでした。

盗塁はこうやってやるんです、しっかり腰を落とし、スパイクで強く地面を蹴ってスタートするんですよ、という固定概念からのパラダイム転換は想像以上に難しいようです。

ただ盗塁王も何度かとった一流選手が指導者となり、私の理論を学んでくれているので、もしかしたら近い将来まったく見たこともない体勢からスタートを切って盗塁を決める選手が現れるかもしれません。

それにしても固定概念というものは恐ろしいものです。

今回のプレーのようなシーンはサッカーの試合の中でよく目にすることだと思いますが、ただスピードが足りないとか事前の準備ができていないとか、体にキレがないとか、本質的な部分を見ていない指摘ばかりだったように思います。

攻撃側の選手の方が、自分から仕掛けられる分、体をうまく使うことができやすいようです。

それに対抗するためには、いわゆる身体的な強さや大きさで、フィジカルが強い的な評価の仕方ではなく、それだとさらに強い選手にはかなわないと自分で認めてしまうことになりますから、そうではなくて、いかに自分の体をうまく使って、大きさにも強さにも速さにも対応できる準備をすることこそが必要なのではないでしょうか。

そんなうまい話があるはずがない、そう思ってあきらめたり、信じていただけない人にはこれ以上言っても仕方がありませんが、直接私と身体をぶつけ合った人には、私が言っていることは絵空事ではなく、意識とトレーニング次第で、誰にでも獲得できる能力であることは分かっていただいていると思います。

西本塾で学んだこと、既成概念に固められてしまう前の子供たちに、どんどん教えてあげてください。

そしてそれが当たり前のことだと思ってもらえる日が来たら、日本のサッカーが、いや、すべてのスポーツにおける考え方が変わっていると思います。
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Comment

Re: No title
荒井さん、コメントありがとうございます。
おっしゃる通りですね、1体1で相手に抜かれないという、最もシンプルなディフェンス能力を、きちんと発揮できていたにもかかわらず、既成概念から離れられない指導者が、腰を落とし低く構えて対応することが基本であるとの認識を変えることができなかったのですね。
私こそいつも偉そうに言っていますが、サッカーの経験はまったくありませんし、様々なスポーツに精通しているわけではありません。
ましてや研究機関で動作解析がどうのこうのと、難しいことをやってきたわけでもありません。
だからこそシンプルに一流選手たちの動きを、自分がずっと実践してきた、体に無理のない効率的な筋力発揮、体づくりではなく動きづくりのためのトレーニングだと言ってきた、人間本来の連動動作という観点と照らし合わせた時、すべてが何の問題もなく説明できるのです。
そして自分の体でそれが再現でき、それを人に伝えることもできます。
サッカーはこうしなければならない、野球はこうだ、そんなことをまったく考えたことがありません。
方法論は結果のためであって、既成概念は未熟な指導者に最も安直な武器を与えてしまっているだけなのです。
西本塾は参加者に条件などつけておりません、色々な立場の方が来ていただいています。
唯一の条件はこのブログを読んで、私という人間に興味を持っていただいているということです。
次回参加していただく予定に方の言葉です、「how-toではなくhow-whyを学びに行きます。」
こんなことを言っていただける方は大歓迎です。
機会がありましたらぜひ起こし下さい。
今後ともよろしくお願いします。
  • 2014-03-18│13:24 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
No title
はじめまして。以前より拝見しております。

居着いてしまう、が理解出来ていないので筋違いかもしれませんが、学生時代に真剣にサッカーに取り組んでいた頃、ずっと注意されてきた事があります。 まさに1対1で守る時の姿勢です。 

私は両足を軽く開き重心を均等に置いた、いわゆる棒立ちの姿勢で力を抜いた状態で守ります。 そして、1対1についてはドリブルで抜かれた記憶があまりありません。レベルも選手権出場クラスのチームでも抜かれなかった程度です。

立った姿勢の方が体全体を見る事で相手の狙いが捕捉でき楽だったのですが、コーチからは盛んに腰を落とせ、と視野を奪い苦しい体勢に導かれる事ばかりでした。

このブログに出会って、西本さんに教えを乞う事が出来れば、嫌気がさす事無く選手生活をもっと続けられたとも思える程感銘を受けました。

これからも拝見していきますし、機会があれば指導などには携わっていませんが、息子の為にという理由でも問題が無いのであれば、参加させて頂きたいと思っております。
  • 2014-03-18│12:51 |
  • 荒井 URL│
  • [edit]
Re: タイトルなし
コメントありがとうございました。
私の体の動きに関する考察がお役に立てて何よりです。
ただ何度も繰り返し言っていますが、私は申し訳ないですがサッカー自体はまったく素人で、ボールを蹴る止めると言った基本的なところも、人前でお見せできるようなレベルでないことをお断りしておかなければなりません。
ただどんなスポーツのどんな動きであっても、体の動き使い方には、人間として備わった原理原則があると考えています。
それらを基本としてサッカーならサッカーのプレーを見た時に、こうした方がいいんじゃないかなとか、これは違うんじゃないのかなという風に見えてしまうのです。
私の考えを聞いていただき、ご自分の体の使い方に当てはめ、改善点を見つけていただけたのなら、それが私にとって一番ありがたいことです。
けっして小理屈を並べただけの机上の空論ではないと思っていますので。
かの風間八宏が監修してつくばを中心に運営されている「トラウムトレーニング」というサッカースクールの基本コンセプトは、まずしっかりボールを止める技術を身につけることが大事である、ということだと聞きました。
それなくしてボールを蹴るシュートをする、戦術を身につけるという部分に進めないということだとお思います。
確かに、次のプレーに最も的した位置にボールを止める技術が身についていなければ 、サッカーになりませんよね。
ボールを止める、トラップする時の体の使い方と、ボールを蹴る時の体の使い方は、もしかしたらまったく同じではないかと思います。
もっと詳しく分析できたら、記事の本文に書いてみようと思います。
体の動き方その意識、考えらば考えるほど興味がつきません。
今後ともよろしくおつきあいください。
  • 2014-03-14│10:34 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
この記事を見て感動しました。私はサッカーをしてるのですが、年をとって抜かれることが増えたので悩んでました。急にそんなことはないだろうとは思ってたのですが、昔に聞いてた腰を落とすというのを正しく理解できてなかった(?)のかと思います。骨盤を起こし、背中を意識すると、その場に居座り続けるというのがすごくマシになった気がします。私の感覚なのですが、この姿勢でいるとトラップもうまくなるのではないかと思いました(結果的に私はその方がうまくできます)。それは背中を、丸めて居座るということが下半身の自由を制約し、止めるのに必要な体全体で吸収する感覚がなくなってしまう、速いボールをトラップするためにしっかりしたを向いてボールを見ることが、背中を丸めて、骨盤の動きを制約するということになると理解しました。トラップについて何か考察されることがあれば、宜しくお願いします。
  • 2014-03-12│23:05 |
  • agtmcivo URL│
  • [edit]
Re: カープに期待
まだまだ一人の力で変化を起こさせるのは難しいと思いますが、いつかきっと誰かがやってくれると信じています。
野球は特に保守的な部分が多いですから、既成概念岡部は分厚いです。
だからこそやったもん勝ち、早い者勝ちな部分があるんですけどね。
私も楽しみにしています。
  • 2014-03-11│16:26 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
カープに期待
カープの選手たちはもともと走力があってバンバン盗塁してくるイメージがあるのに、走攻守においてトップだったコーチが西本さんの理論を選手に伝えていけば、さらに盗塁成功率と盗塁数が伸びてますます期待が持てそうですね。カープから目が離せなくなりそうです。

そうなれば私の高校生に向けてのメッセージも格段に説得力が増して目の色を変えて話を聞いてくれるのではないかと思います。そういう意味でもコーチと選手にぜひとも活躍していただきたいと、ついそんな期待もしてしまいます。

盗塁の居着きに関しては、どれだけ指導しても変わらないというお話を直接お聞きしていますし、私も実際に感じてきたことですので、これまでもこれからも何とかしたいテーマのひとつです。
  • 2014-03-11│14:35 |
  • 森孝寿 URL│
  • [edit]
Re: タイトルなし
ボクシングをというイメージが私には分かりませんが、これは私の体の使い方の根本的な部分で、簡単に言葉で説明することは難しいです。
  • 2014-03-10│18:50 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
股関節を上下というのはボクシングをイメージしたら良いでしょうか?
  • 2014-03-10│18:17 |
  • 米山 URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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