姿勢について

前回、プレーにおける姿勢の重要性について書きました。
骨盤を後傾させ、背中を丸めてはいけない、股関節の自由度がなくなり、足が出にくくなる、そう言いました。

その意味をもう一度考えるヒントにしていただくために、もう少し書いていきます。

弓道やアーチェリー、また射撃競技のように静止してた態で行われる競技もありますが、ここではまず、動くことが必要な競技で考えて行きます。

陸上競技のように、基本的には自分のペースで動きをコントロールできるものもありますが、ほとんどの場合対象物があって、ボールなどの動きに対応したり、人の動きに対応するという能力が要求されます。

一瞬の遅れが致命的な失点をうむということになる場合もあります。

スポーツで命までとられるということは、あってはならないことですが、昔の武士のように刀を抜いて対峙しているような場合、まさに一瞬の動きの遅れが生死を分けることになります。

そうであるならば、刀を構えたその時の姿勢や、体の備えというか意識は、すべてのお手本になるのではないでしょうか。

時代劇など見ていると、主役の剣豪は、まさに骨盤が起きて背筋がすっと伸び、かといって力んでいる様子もなく、相手のどんな動きにも対応できる盤石の態勢がとられています。

いわゆる「隙がない」、という状態です。

対する敵役というか、その他大勢で主役を取り囲んでいる人たちは、それこそ腰が引けた、いわゆるへっぴり腰になっています。

もちろんそういう演出でしょうが、どちらが強そうなのかは誰が見ても一目瞭然です。

「臍下丹田に力を込め」という表現がありますが、ただ下っ腹に力を入れるのではなく、大きく吸った息を骨盤の下深く、臍下丹田に沈めるような意識になると、間違いなく骨盤はきちんと立てられ、背骨がすっと伸び、肩の力が抜けて、いつでも動き出せる態勢になれることがわかります。

野球の投手の足を上げた時の骨盤の形、打者の構えた時の骨盤の状態、ゴルファーのアドレス、サーブを待つレシーバーの構え、バスケット選手のディフェンスの姿勢、どの動きを見ても一流と呼ばれる選手には、背中を丸めて腰が引けた構えは見当たりません。

レスリングのタックルの動きも、背中を丸めて低い姿勢で飛び込んでいるように見えますが、よく見ると相手の体とコンタクトする瞬間には骨盤がしっかり起きていることがわかります。

真似をしてみるとわかりますが、背中を丸めたままでは、逆に相手に押し返されてしまいます。

相撲で四つに組んで動きが止まっている時も同じです、骨盤を起こし背中を伸ばし、まわしを引き込む力の入れ方ではなく、肘を絞り腕を伸ばして押している力の入れ方が必要で、逆に肘を曲げ腰を引いた瞬間を相手は待っていて、背中を伸ばしたままで押してきます。

どんなスポーツ動作にも共通して見える骨盤と背骨(背中)の関係です。

さらにここから走る、早く移動するという必要が生じた場合、やはり刀を構えた剣豪の姿勢が一番のお手本になると思います。

腰が落ちている状態からだと、自分の体重を移動させるために、地面を蹴って股関節を屈曲し、膝を曲げるという動きが必要になります、これが居ついてしまうという状況です。

これに対して、骨盤が起きている状態、極端に言うと、お腹を突き出しておへそがお腹の肉に被らないような姿勢と言えばいいでしょうか、こうすると足で地面を蹴らなくても、重心が前に少し移動した(体が傾いた)だけで、足は蹴って膝を曲げてという意識がなくても、自然に重心の移動した真下に、体を支えるために降り出されるのがわかります。

これが体重移動ではなく重心の移動による歩きであり走りに繋がって行きます。

外国の選手がこの動きを自然に行えているように見えるのは、長い間の生活習慣の違いによるDNAの違いがあると思います。

ならば我々は、少しでも自然に、あくまでも自然に、その動きができるようになるための意識でありトレーニングを行う必要があると思うのです。

ですから、単純にそれなら広背筋のトレーニングをすればいいんだなと、重量や回数を増やしたからと言って、そういう動きができるようになるわけではありません。

第4回の西本塾に申し込んでいただいた方からの受講動機に、こんなことが書かれていました。

「私からhow-toを学ぶのではなく、haw-whyを学ぶために参加したい」、という言葉でした。

なんと素晴らしい表現でしょうか、私の言い方である「根っこのそのまた根っこを掘り起こす」、などよりよほどスマートで言い得て妙な言い方です、申し訳ないですが今度から私も使わせていただきたいと思います。

お会いできるのがとても楽しみな方がまた一人増えました。

よく使われる、「腰が入っている」という言葉、お互いが共通理解ができる言葉にまで落とし込むことができれば、まさに骨盤を起こし背骨を立てるために必要な条件だと思います。

ただ一つ私の理屈に合わないのがロードバイクの乗車姿勢です。

乗り始めた頃、骨盤を起こし背中を伸ばしてと、何時ものイメージで乗っていましたが、他の人を見るとどうも違うような気がして、本を読んでみると、背中は「ラクダのコブ」という表現がされていて、空気抵抗を減らすためお腹を引っ込め背中を丸めて肘を少し絞るような姿勢が正しいのだそうです。

私の言う姿勢では、股関節と膝を伸ばしてペダルを踏む、という動きには都合が良くても、空気抵抗を減らし、ペダルを踏むのではなく回すという感覚の動きにはマッチしていないようです。

まだまだ私にはわからない動きがたくさんあるようです。

ツールドフランスのような直距離レースになれば、もともと背中の強い欧米の選手に利があるのも頷けることなのかもしれません。

姿勢とスポーツ動作の関係、それぞれの立場で検証して見てください。
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No title
私はバドミントンをやっているのですが、今回の記事と先生が紹介されていたレスリング、相撲の動画をヒントに、お腹を突き出して骨盤を起こし、背中は反るイメージというより、意識を置くというイメージでバドミントンをしてみました。
これまで強く打とうと力んでいた感じとは違う、腕やラケットのしなりを感じる程に余分な力が抜け、ショットの安定度も抜群に良かったです。何よりプレー中に落ち着いていました。
これまで腕や身体の前側へ意識が行っていたのを、背中に置いたままにするというイメージでプレーしただけなので、理にかなった動きを理解しているわけではないのですが、この感覚を繰り返し意識し、もっと良い感覚を掴みたいなと思っています。

ただ、股関節の自由度や、丹田に力を込める事、重心移動での動きだし、頭の位置はどうするのかなど、掴みきれていない感覚が数多くありますので、4月の西本塾で学べたらと思っております。

西本先生のブログ読者はサッカー関係の方が多いとの事ですが、身体の使い方や動き出しが重要なバドミントンに有益な情報が満載だと思います。
Re: ロードバイクの姿勢
コメントありがとうございます。
なるほどそういうことですか、ロードバイクという道具の縛りの中で、いかに目的に対して効率的に体を使うということですね。
長く乗りこなして行くうちに、自分にあったバイクと乗り方が出来上がって行くのでしょうね。
「ラクダのコブ」も意識しすぎると疲れますよね。
こうやっていろいろな問題にいろいろな方が意見を出し合っていただくことが、読んでいただいているみなさん、そしてもちろん私の勉強になって行くのだと思います。
今後ともよろしくお願いします。
  • 2014-03-14│10:12 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
ロードバイクの姿勢
西本塾参加者で唯一?の自転車競技経験者です。
ロードに限らず自転車の姿勢については、「背中を伸ばす」「お腹を引っ込める」正反対の意見が雑誌上で展開されてきました。
実際に、日本人初のプロロードレーサーの方は空気抵抗を無視したかのような、極端に高いハンドル位置で背中を伸ばしたポジションであったように記憶しています。
他にも西本塾の際にお話しした短距離選手は、背中を伸ばしつつ低い前傾姿勢を取るためか、脚は股関節のあらゆる方向への可動域をフルに使って、股関節の間にに体幹が沈み込むような、見ていて「変な」ポジションで成功を収めた方もおられます。
私も記事などにのせられて、両方を極端なぐらいに試してみましたが、私なりの結論は、「背中は自然」に、「お腹の下(臍下丹田と言っていいのか?)の意識」のと「肩甲骨を背中から分離したように沈める(ハンドルを若干押すぐらい)」ということです。人間本来の姿勢から外れているようですが、規則でサドルやハンドルの位置関係まで縛られていますので、やむを得ない点もあります。
ただ、肋骨を痛めた関係で、肩甲骨がうまく動かせなかった時には本当にペダルに力が伝わらなかったことがありますが、これは肩甲骨とそれを動かす広背筋が働いていなかったことが原因ではなかったかと、今になって感じています。
  • 2014-03-13│23:18 |
  • 西本晴雄 URL│
  • [edit]
西本塾の詳細について
西本塾については、過去記事にも書いてありますが、「Conditioning Studio 操」のホームページ内に詳細が書かれていますので、そちらをご参照ください。
  • 2014-03-13│07:04 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
はじめまして
現在、幼児~中学生までのサッカー指導に携わっています。
身体を思い通りに動かすこと、うまく使うこと、とても興味があります。
西本塾の講習も受けたいと思っています。
日程等の詳細を教えてください。
よろしくお願いします。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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