結果は過程で決まっている

昨日、地元広島で行われた広島カープ対横浜ベイスターズ戦、昨年のオフから指導している篠田純平投手が約1年ぶりの一軍での先発のマウンドに立ちました。

私はご存知の通り、カープのエースとして18年間の現役生活を送った佐々岡真司投手のパーソナルトレーナーとして、引退までの9年間を一緒に戦いました。

その佐々岡君が引退した翌年、入れ替わるようにドラフト1位で入団してきたのが篠田君でした。

申し訳ないですが、佐々岡君の引退で、カープの試合を見る機会も減り篠田君のこともとくに印象がありませんでした。

ドラフト1位で期待されて入団したようですが、これといった結果が残せず、炎のストッパー津田恒美が背負っていた背番号14番も 、今年から新人投手に取られてしまっていました。

もう後がない何とかしなければ、そう思っても現状の環境の中で、自分を正しく導いてくれる指導に巡り合うことができず、日々の努力も結果に結びつくことはなかったようです。

これも縁なのでしょうか、同じような状態から復活し、そこからさらに9年間活躍し続けた佐々岡君のところに相談し、佐々岡君から篠田をなんとかして欲しいという連絡があったのです。

こういう裏話は、本来書くべきではないという意見もあると思いますが、こうして私個人のブログとはいえ表に出すことで、同じような状況に陥っている選手やそれをサポートしている立場の人間、またこれからプロ野球選手を目指す子供達まで、様々な立場の人たちに「私が話しておきたいこと」として、堂々と書いていきたいと思います。

私は根っからの野球少年で、自分が選手として伸びなかったことに対して、考え方や方法論が何か違っていたのだろうというのがずっと頭の中にあり、それが私のものの見方になり、経験を積み重ね理論として確立されてきたのだと思います。

サッカーや他の競技のことでは、私は素人ですから実際にはできません、というお断りをしてからでないと話を進められませんが、こと野球に関しては、あのまま続けていればそれなりのことはできるようになったと思っています。

縁あってサンフレッチェ広島で仕事をしている時も、今の監督である森保選手のリハビリを担当し、毎日一緒に過ごしている時、「僕はね、カープの2軍の選手の育成担当で契約してもらって、一軍の試合で1勝させたらいくら、みたいな仕事をさせてくれたら面白いことができるんだけどな」と真顔で話をし、彼も真顔で、「西本さんなら本当にやりそうだから、冗談にしといてくださいよ」なんていう会話までしたことがありました。

相手がサッカー選手だったとはいえ、トップレベルの選手の体を相手に仕事をして行く中で、「ああこうやればこうなるのか、自分でも子供の頃にこういう指導をしてもらえば、きっと違うレベルの選手に成れたんだろうな」と、しみじみ思うことがありました。

そのあと縁があって指導させて頂いた、社会人野球の三菱重工広島では、その思いとノウハウをすべてぶつけて、平成8年に前年まで7年間遠ざかっていた都市対抗野球全国大会で、決勝戦まで駒を進め惜しくも1点及びませんでしたが、準優勝まで 押し上げることができました。

それから出たり入ったりでしたが、通算7シーズン仕事をさせていただき、一昨年末で卒業という形にさせていただきました。

三菱では、私の立場はとても恵まれていて、最初の時もチームの変革を期待され、私流を導入でき、一度離れた後復帰したあとは、監督やコーチたちがみんな現役の時に指導した選手たちだったので、指導方針やノウハウ、また効果やその結果に対しても、すべて経験してくれているので、何の問題もなく私の考えで指導することができました。

会社側も全面的に信頼しバックアップしてくれましたので、ストレスなく仕事をすることができました。

昨年久し振りに関わったサッカーの仕事では、私の考え方や経験がなかなか理解されず、マスコミからは独自理論だとか、なかには私のものの言い方に、どうしてあそこまで自信を持って言い切れるのか自信過剰ではないかと、怪訝な顔をされることもありました。

どんなスポーツであれ、 私のなかには人間の動きづくりの要素はすべて同じで、競技特性に合わせて多少のアレンジはあるものの、こうすればこうなる必ずできるという確信が出来上がっていたのです。

個人差があるし、そう簡単にできるはずはないという人もいますが、そんなレベルで仕事はしていません。

それこそ私に言わせれば、「そういうレベルの人間しか見たことがないからそう思うんでしょ、あなたたちの既成概念で測れるような人間だと思わないでください」ということなのです。

とても不遜なものの言い方に聞こえるかもしれませんが、どの分野のスペシャリストの方も同じように思っていると思いますが、そう言う方々は世の中からきちんと評価を受け尊敬され、その地位が確立されているのだと思います。

残念ながら私の専門分野でこう言う言い方をすると、ただ大口を叩いているだけの生意気なやつだと思われてしまうのはとても残念なことです。

以前競輪選手が練習中に大怪我をして、復帰を目指すトレーニングを依頼された時には、たまたま近くにある競輪場に通い、一流選手の動きを観察し、レースの競技特性を自分なりに分析した上で、心拍数のことまで考えたトレーニングを行ってもらいました。

また惜しくもプロテストには受かりませんでしたが、もう後1打で合格までいったゴルフの研修生の女性のリハビリとトレーニングを引き受けた時にも、それをきっかけにゴルフを始め、様々なレッスン書を読み漁りました。

そういう努力も私なりにきちんとやっているつもりです。

選手や指導者にはプライドがあるでしょうが、私の目に見える世界には、そう言う人たちからは見えない本質的な何かが見えることもあるのです。

私が自信を持って結果を出してきたことには、いろいろな要素があります。

その一番大きな要素は 「相手が私を信じてくれているかどうか」、これに尽きると思います。

チームであれば複数の選手を相手にしますし、選手だけではなく、私の分野に関してはまったく素人のスタッフ達もいます。

そのすべてが私を信頼しバックアップしてくれなければ、チームとしての結果を出すことは難しいようです。

その点、個人として向こうから指導を受けたいと来てくれる人間は、心構えが違いますから自ずと効果も出しやすく当然結果も見えています。

いくら信頼している人の紹介でも、いきなり「すべてを信じて言う通りやりますからお願いします」と言ってくれる選手はいません。

「お話を伺いたいのですが」、と恐る恐る電話をかけてくるのが普通です。

こと野球の投手の動きづくりに関しては、私のなかで理想の動きと言うものが出来上がっています。

投手の仕事とは何か、目指すべき姿とはどういうものか、その部分に関して私の考え方に納得が得られなければ、目標向かって一緒に努力をして行くことはできません。

幸か不幸か、私の考えに異を唱え、自論を展開できる選手に出会ったことがありません。

そこまで自分の考えがあって、目標を立て進んでいけるような選手なら、私のところへ来る必要などなく、着実に選手としてのキャリアを積み上げているはずだからです。

みんな迷っています、自分が活躍できていた時は何が良かったのか、プロにまでなろうという選手たちです、二軍とはいえそれなりの評価を受けて入団しているはずですし、一軍経験者ならなおさらです。

それが自分の何が良かったのか、そして今何が悪くてこうなってしまったのか、さらにはこれからどうして行けば良いのか、まったくわからないまま、日々与えられたメニューをただ一生懸命こなしているのです。

正しく導くことができない指導する立場の人間たちにも、大いに問題があると思いますが、これはある意味仕方が無いことなのかもしれません。

出口の見えないトンネルを、闇雲に走っているだけです。

そこに私の理論をぶつけました。

静止した状態から140gほどしかないボールに対して、最も効率的に力を伝えるためには、どういう要素があるのか。

運動のエネルギーは、上から下、後ろから前、そして回転、この三つの要素が最大限発揮され、交わるところがリリースポイントであること。

マウンドに埋め込まれたプレートと18.44m先のホームプレートの間で、白いボールが 打者の目に見えている時間をいかに短くするか(いわゆるリリースポイントを見えにくくすると言われる状態です)。

たんにスピードガンの数字が速いことが打者を打ち取れる要素ではないということ。

同じ動き同じリリースポイントから何種類もの変化球を投げられるようにすること。

そのために必要な体の動きを獲得するためのトレーニングはすべて考えてあって、その効果は実証済みであること。


これらのすべてをきちんと納得し、私を信じてついてくる覚悟があるか、それを確認してからしか仕事として請け負うことはできません。

佐々岡君のように年間の契約で仕事をするわけではなく、あくまでもスポットで、シーズンまで10回程度の時間しかありませんでしたが、私の指導も多少は要領が良くなったのか、本人が真剣に取り組んでくれたこともあり、来るたびに変化と成長が見られ、昨年までの彼とはまったく違う投手になっていきました。

そう簡単にはいかないだろうと、またまた既成概念から抜けられない人たちは思うでしょう。

そう思っている限りは、間違いなくそれ以上の結果など得られるはずはありません。

きちんとした目標を定め、それに必要な要素を身につけて行く作業を続けることさえできれば、それなりの結果は必ず出ます。

それなりのという部分が曲者で、ここに私が以前使った 言葉である「負けるとわかっている喧嘩は買わない」という要素が出てきます。

この判断は人間性です。

どうやってもダメなやつはダメということも、残念ながら認めなければならないことかもしれません。

体が大きいとか小さいとかそんなことではなく、理解して努力を継続する能力があるかどうか、そして毎度おなじみのきちんと挨拶ができ、それなりの言葉遣いができ、ゴミが落ちていれば拾ってゴミ箱に入れられる人間であるならば、私が請け負った瞬間に結果は見えているのです。

一番難しいのは「続ける」ということです。

過去にも少し活躍できるようになると、いろいろな誘惑に負けて、私のところに足が向かなくなる選手がいました。

その頃は腹も立ちましたし、なぜだどうしてだという気持ちも強く持ちましたが、今は少し違います。

活躍して喜ぶのも自分、元の状態に戻って消えて行くのも自分、それを選ぶのも自分、私の仕事の範囲を広げすぎると、自分のストレスになってしまうことを何度も経験してきました。

余談ですが、私の血糖値を上げたのも、このストレスを感じやすい性格だったかもしれません。

先発の予定を知らせてきたメールに、私はこう答えました、「精神論は好きではないが、久しぶりの一軍のマウンド、色々な意味での覚悟を持って、性根を据えて上がってくれ。今まで一緒にやってきたことを信じて、今できることをすべて出し切ってくれ」と。

期待以上のピッチングでした、私が伝えてきたことを一軍のマウンドできちんと表現してくれていました。

今朝見た、彼自身のブログに、短い言葉でこう綴られていました、
「オフから取り組んできたことを信じて、これからも続けていきます。」

シーズンはまだ始まったばかり、昨日のようにどんなに良い投球をしても勝ち星に結びつかないこともあるでしょう。

今はやりの言葉ですが、とにかく「ブレないことです」。

久し振りに昨夜は興奮しました。

現場に未練があるのか、チームなのか個人を相手にしたいのか 、後進の方々に経験を伝える仕事なのか、自分が本当にやりたいことは何なのか、いろいろなことを考えた夜でした。
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Re: 注目していきます
直接お会いできるチャンスがあれば、具体的な指導の内容もお話しできると思います。ここではこれ以上は書けませんのでご了承ください。
  • 2014-04-11│15:30 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
Re: 解説者も驚いていましたよ
あまり具体的な内容には踏み込めませんが、少しずつ修正して良い投球ができるようにアドバイスしていきますので、応援してあげてください。
  • 2014-04-11│15:27 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
解説者も驚いていましたよ
篠田選手のピッチングを生中継で見ていましたが、解説者の方もすごく驚いておられました。私は西本塾後の懇親会で、詳しく西本さんから経緯を聞いていたので、ニヤニヤしながら、中継をみていました。
youtubeで
2012年のピッチングと見比べてみると、以前は球は速いのですが、頑張りすぎているというか、動作が性急な感じがしました。下肢もつっぱっているようで、居付いてる?
今シーズンは、股関節、下肢もつっぱっておらず、ゆったりと構えている印象ですし、肩甲骨と肩の柔軟性が高くなり、背中が粘るように使えている印象です。
リリースも引っかかることなく、以前より安定している。また、4月4日試合終盤の三者三振は圧巻でしたね。なんか、ハンマー投げみたいな感じでボールが投げ込まれているように見えました(遠心力でどんどんボールに勢いが付いていく)。
次は巨人戦の登板かもしれませんが、今までの努力を信じて向かっていってほしいですね。
  • 2014-04-07│00:28 |
  • 石川 太一 URL│
  • [edit]
注目していきます
西本さんに篠田投手のお話を伺ったときから、今シーズンの活躍に注目して行こうと思っていました。

映像は見られなくて、ほとんど結果しか見てはいないのですが、西本さんのブログの文面から伝わってくる興奮度から察するに、かなりのレベルで西本さんの指導を体現してパフォーマンスを発揮されていたのだろうと感じます。
本当によかったですねと。心から思います。

どのような指導をされて、どのように変わっていかれたのか、ぜひぜひ詳しくそのお話をお聞きしたいという欲求を抑えられない気持ちです。

もし、もし万が一にでも直接指導されている現場に私が立ち合わせていただける機会があるのなら、広島まで飛んでいってその様子を目を皿のようにして観察させていただきたい。
そんな図々しいことを考えてしまわずにいられません。

それと、チーム全体、監督、コーチなどからすべて指導を任されるくらいでなければストレスなく仕事をすることも、目指す目標を達成していくこともできないというお話ですが、私などと西本さんではレベルの差はもちろんありますが、同じような思いが私にもあります。

ひとつの解決策としては、私自身が、西本さんの教えを体現して、私にできるんだからお前たちにできないわけがないだろ、と選手や指導者たちに納得させられなければいけないのだと思っています。

ともあれ、今後も篠田投手の活躍には大いに注目させていただきたいと思っています!
  • 2014-04-06│17:48 |
  • 森孝寿 URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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