初版から10年、11刷の重み

先日、私の唯一の著書である「朝3分の寝たまま操体法」の、 第11刷が増刷されるという連絡が、出版元の講談社の編集担当者からありました。

時々ページを開くことがありますが、改めてじっくり読んで見ました。

10年間という長い期間、増刷の部数自体は途中から1000部ずつという小出しの数ですが、それでも消えることなく売れ続けているという事実は、こうした健康法を前面に打ち出した タイトルの本としては、異例のロングセラーになっているそうです。

普通に考えれば、出版不況と言われているこの時代ですから、有る程度の読者を持っている私が、続編のような形のものを出せば、少なからず売り上げが望める企画として、取り上げられ依頼が来てもおかしくない状態であることは間違いありません。

現実として書店に行くと、⚪︎⚪︎健康法とか、どこをどうすれば健康になるといったタイトルの本が並び、10万部を超えるベストセラーになっているものもあります。

一度売れてしまえば、二匹目のどドジョウを狙って、似たようなタイトルの本が出たり、同じ著者が少し切り口を変えて続編を出すというパターンも多く見られます。

初版から数年後には、本の中の実技の部分に特化した、いわゆるハウツー的な内容の健康書をというお話も頂いたことがありました。

もともとあの本を書くきっかけになったのは、私のトレーニングや体に対する考え方を本にしてみないかといことが、スタートだったと記憶しているのですが、やはり出版側の意向もあり、売れるもの、読者が読みたいものという観点が優先され、最終的にああいう内容になりました。

私としては、タイトル自体に操体法という文字が使われることも、中身に操体法の実技が入ることも、当初は全く考えていませんでした。

それが結果的にあの内容で出版されたことに、当初は割り切れないところもあり、自分の中では納得してやり切ったという満足感もありませんでした。

当初寄せられた書評を見ても、他の健康書と同じような扱いで、結局はあの実技部分にしか目がいかないのかと、正直残念に思いました。

ところが月日が経つに連れ、当然書店の棚からは消え、ネット上だけの流通になってからは、実技の内容に関しての感想はもちろんのこと、私の体に対する思いそのものに対する感想を書いていただくことも増えてきました。

巣立って行った我が子が成長して行くように、それを読む読者の意識も変わってきたのかと不思議な気がしています。

失礼な言い方になりますが、書店に並んでいる健康書の類には哲学が感じられません。

こうすればこうなる、こういう痛みに対してはこう対処すればたちどころに改善できる、みんなそう書いてありますし、実技以外のページは医学的な知識の基礎の基礎が同じように説明されているだけです。

そして対象はみんなセルフコントロール、つまり自分の健康は自分で守りましょうということです。

聞こえはいいですし、正しいことかもしれません、超高齢化社会で医療費は膨らむばかり、自分の健康は自分で守りましょう、間違ってはいません。

それだけでいいのでしょうか、希薄になるばかりに人間関係、家族といえどリビングで集まっているように見えても、お父さんはテレビを見ているし、お母さんと子供たちはスマホやタブレットを覗き込んで会話などほとんどなし、自分のことばかりで他の人に関心さえ示さない、そんなことが日常化しています。

もしこれはという健康法に出会い、本を買ってきて実践したとしても、おそらくはそれも自分だけのためということになってしまうのでしょう。

合う合わないがあるし、個人の問題だから、それはそうかもしれません。

はるか昔のことのようですが、子供が親やおじいちゃんおばあちゃんの肩を叩いてあげたり、うつ伏せになった足の裏を踏んであげるといった光景は見られなくなってしまったのでしょうか。

自分のことは自分で、それもいいでしょう、そこに誰かのためにという気持ちが加われば、もっと素晴らしい何かが起こるのではないでしょうか。

そのためには単なるハウツーを学ぶのではなく、人間の体とどう向き合うのかという根源的な部分に目を向ける必要があると思うのです。

改めて自分の本を読んでみて、そういう観点から新たに何かを付け加えようとか、ここの部分は時代とともに変わってきたから、少し訂正が必要だなという部分がまったくないのです。

今からちょうど10年前に書いた文章ですが、限られたページ数の中で、私の思いと読者のための実技の部分がバランス良く配置され、どこを直す必要も感じないのです。

趣味であるゴルフのレッスン書でも、何年か経てば著者の中にも変化が出てきますし、理論にもトップレベルの選手からの フィードバックがあって、どこかしら変わって行く部分があります。

だから同じ人が次から次へと似たような本を書いているのです。

今私に前著以上の内容で本を著す自信はありません。

すでに10年前に、私の中での体に対する考え方は出来上がっており、それは私にとって「真理」と呼ぶにふさわしいもので、あの内容で十分私の思いは完結させられていると思うのです。

ただそれは私の自己満足であるかもしれません。

もっとこの部分に特化して、知識のない一般の方にもわかりやすく実用的な本を書いて欲しいというご意見もあるかもしれません。

私の考え方を切り売りすることは本意ではありませんが、これまでの経験を世の中に還元するという意味では必要なことかもしれません。

どなたか本当にこういう本を書いて欲しいというご希望がありましたら、ぜひお寄せいただきたいと思います。

内容次第ですが、今なら出版側も実現させてくれる可能性はあると思います、いかがでしょうか。

この10年の間には本当にいろいろなことがありました。

それでも10年前に書いた本の内容に自信を持っていられることを誇らしく思います 。
私がその時考え実践していたこと、またその後の活動に関しても、間違っていなかったと確信しています。

多くの方が手にとって読んで頂いた本です、今、西本塾でお話ししている内容も、その中に書かれていることが基本となっています。

持っている方ももう一度読み直してみてください、私の伝えたかったことが改めて見えてくるかもしれません。

先日書店の店員さんが選ぶ「本屋大賞」という賞の発表がありました。

10年前の本ですから、対象外だとは思いますが、改めて書店員の方たちの評価を聞いてみたいような気がしています。

本を書く、不特定多数の方の目に触れ、それぞれの感性を通して読まれていく、そして流れて行った10年の歳月、売れ続けているという事実、私の責任は思っていた以上に重いものとなってきました。
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素晴らしい本です
初めてコメントさせていただきます。この本を手に取ったのが5年くらい前になるでしょうか?海外在住ですが、腰痛について調べている時に出会いました。日本からわざわざ取り寄せたのですが、この本が私に与えてくれたものを考えると、本当に取り寄せて良かったなと思っています。以来、家族で寝たまま体操を1日も欠かさず行っています。私の腰痛は一度も再発していません。ちょっと危ないなと体が感じることがありますが、その時はより入念に教えていただいた体操をするようにしています。さらに、私の父(75歳)に本を薦めてみたところ、歩くのにも苦労するぐらいに腰痛がひどかった父が今ではゴルフに行けるようになりました。会う人会う人に西本さんの本を薦めているようです。私の感覚では、毎日続けることで体がいい感じにほぐれて行くような感覚を感じました。とにかく機会がありましたら一度お礼と素晴らしい本への賛辞を送らせていただきたいと思っていたので、今回コメントを書かせていただく決心をしました。ブログも楽しみに読ませていただいています。この本がいつまでも読まれて続けるように願うばかりです。
Re: 書店にて。
出版する側は、売れると思えば内容はほとんど同じでも、手を替え品を替え状態で新刊を出してきますよね。体幹トレーニングも長友が代表であり続ける限り、こういう出し方がまだまだ続くと思います。体幹トレーニングをどうこう言う気はありませんが、我々は選手のためにしっかりした連動を作る「オクタントトレーニング」をしっかり身につけて使えるようにしていきましょう。私がもっと注目されるようなことがあれば、そういう内容の本も依頼されるかもしれませんが、まあないでしょうね(笑)
  • 2014-04-11│15:24 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
書店にて。
先日、書店で長友くんの体幹トレーニングの本が又、又、出てました。何気にパラパラとめくっていると。過去の本と同じ様に、思いややり方や注意点などが書かれてるなか気になるフレーズが…。連動と。体幹トレーニング自体をどうこう言うつもりはないですが、これで連動と言えるなら、オクタントトレーニングは連動しまくりやなと改めて思いながら、練習台の相方とハァハァ言いながら練習中です。西本さんの様にプロにすまして出来る様になり、なんとかして、選手に還元していきたいと思います。
  • 2014-04-11│13:07 |
  • 神野慎哉 URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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