改めて思うこと

ゴールデンウイークもあと一日、長期の休暇が取れた方は今日の間に自宅に戻り、明日一日ゆっくりして明後日からの仕事に備えようなどと優雅な休日を過ごした方も大勢いるのでしょうね。

私はサラリーマンを辞めてこういう仕事についてからは、ゴールデンウイークどころか土曜も日曜も関係ない生活が続いていたので、今年のように連休があるとどうしてよいのか分からないのが正直なところです。

広島に帰ってきたのがちょうど一年前のゴールデンウイーク明けの日でした。

あれから一年、すっかり生活も落ち着き自分のペースで仕事をしています。

まだまだ軌道に乗ったとは言い難いのですが、これまでお世話になった方々から飛び込みで予約をいただいても、ほとんどお断りすることなくお役に立てていることが、私にとっては何よりの救いです。

それは一般の方だけにとどまらず、スポーツ選手にも言えることで、いよいよどうにもならない状況になった時には、なんとかしてくださいと、個人的に私のところへ送り込んでくることもあります。

また昨年のオフには、以前指導をさせてもらっていた佐々岡君の紹介でプロの投手の再生を依頼されました。

もし今私が生活に不安がなく、自分のやりたいことやって生活していける立場にあり、どんな仕事をしたいですかと問われたら、迷いなくこう答えるでしょう。

「自分で選ばせてもらったプロ野球の投手を、一人前の投手になるよう指導させてほしい。」

私の原点であり、こういう仕事を目指したことも、すべては自分が選手として成功できなかったことから始まっているからだと思うのです。

この仕事に携わって20数年、独立を意識してからは30年の歳月が過ぎました。

以前神戸に在籍している時、私のこれからの目標を聞かれ、高校野球の監督になりたいと答えた時には、質問したマスコミの方の方が困っていました。

残念ながら今その夢はもう持っていません。

集団を統率し指導していけるほどの器ではないことが、自分でよく分かったからです。

逆に、私の知識や経験、また野球の投手の動きづくりに関しての指導力を評価していただき、是非私に指導してほしいという選手がいれば、絶対にそれなりに評価を受ける投手にしてみせる自信があります。

そして今そのチャンスを与えられています。

しかし、相手は生身の人間で考え方も育ってきた野球環境もまったく違います。

そして限られた時間しか私には与えられていません。

そんな中で、人間関係を築き、私の考えを伝えていくのは容易なことではありません。

同じ言葉も、その時々の精神状態によって違うものに聞こえることもあるでしょう、分かったつもりでいてもまったく分かっていなかったということもたくさん出てきます。

どんな形であれ結果がついてくると嬉しいものですが、そういう時こそ私は不安の方が大きくなります。

プロ野球の選手になったほどの人間でも、まったく知らなかったことを初めて聞いて、そんな考え方もあるんだとまずは受け止める、その内容はすでに大先輩が実践し結果を残しているのだから間違ってはいないのだろう、ただ自分ではまだ納得できるところまでは来ていない。

そんなやり取りから、その理論を実践するための体の使い方ができるようになるためのドリルを行うことで、なんとなくわかったような気がしてくるし、自分でもできるような気になってくる。

オフの間の短い期間でしたが、たぶんそこまでの理解は進んでいたと思います。

キャンプから実戦へと移行していく中で、私の思惑通りに事は運び、一軍での先発を勝ち取るところまでは順調にきました。

それから一か月、内容的には一試合の中でも、やるべきことができていたり、あれどうしたんだというイニングがあったり、本人も試行錯誤の毎日だったと思います。

それでも勝ち星がつき、ローテーションを任される立場になってきた矢先の3回KOです。

心配していたことが起こったというより、必ずこうなることは目に見えていて、こういう形にならないと、何としてでも時間を作って、私の直接指導を受けようという気持ちが起こらないだろうと思っていたのです。

佐々岡君はチームの柱で実績もありましたから、行動に融通が利いてシーズン中でも遠征を除き、ほぼ毎日のように私のところにやってきてくれました。

しかし実績のない選手にはそんな権利が与えられるはずもありません。

登板した当日ではなく、翌日にかかってきた電話に対して、私は厳しい言葉を浴びせました、「こうやってメールや電話でのやり取りで修正できるほどの完成度がお前にあるのか、時間がないとかいう前に、私にとっての休日だろうが時間外だろうが、そんなことを気にしている場合か、ここに来ても来なくてもこっちは何にも困ることなどない、困るのは自分じゃないのか、いくら頼まれてもダメなときはダメだけど、なんとかお願いしますと頭を下げるのはそっちの仕事じゃないのか」と突き放しました。

それで来なくなるのであればそれだけのことです。

彼は人生をかけて野球に取り組み、30歳を目の前にして本当に目指さなければならない方向性を突き付けられたのです。

ここが勝負なのです、優しい言葉は必要ありません。

そして昨日の試合の後、久しぶりに私のもとを訪れました。

すべては私の想定内の出来事です、もし中途半端に結果がついてきていれば、彼はそのまま自分の考えで動きを作り、私の伝えたものからはどんどん離れていったでしょう。

それもありです、でもそれが通用しなかったからこその現状だったはずです。

もう一度基本的なところから話をしました、彼は今まで以上に真剣に耳を傾け、今までにはできなかったしっかりとした質問をしてくれました。

目の前で手取り足取り行ったドリルでも、そんな風に教えたつもりはないよ、という理解になっている部分もありました。

そういう本当に細かい意識の違いも許されないほど、人間の動きを作るという作業は難しいのです。

まだまだ先は長いです、今回のことですぐにすべてが修正されるとは思っていません。

また、彼は私の操り人形ではありませんので、私の伝えた人間としての基本的な動作を、どうマウンドで応用してくれるかというのが最終的な目標です。

ただその応用編に至る基本編は、とてつもなく大きく深く難しいのです。

せめて私が中学生くらいの時、近所に私のようなことができる「オッチャン」がいたら、自分は違った人生を歩んだのではないか、そう思って色々な経験を積み指導をしてきました。

まあ子供相手にそんな人が真剣に教えてくれるとは思えませんが、私は相手がプロであろうが子供であろうが、本気で向かってくる人間に対しては絶対に悪いようにはしないというのが、私のポリシーです。

少し気難しい所があるオッチャンですが、自分で言うのもなんですが、中身は結構純粋でいいやつだと思っています。

ただ「去る者追わず」は変わりません。

誰かの役に立ちたい、誰かのためにという気持ちがなければどんな知識も技術もただの飾り物だ、そう言ってはばからない私ですが、結局はこうやっていろいろな人間とかかわり、自分を高めて行くことのできるこの仕事で、大いなる自己満足に浸っているだけの私なのかもしれません。

人の心は移ろいやすいもの、一年間のブランクを挟んでも、変わらずに信頼していただいている方々に対して、私は生涯その信頼に応え続けなければなりません。

人生で初めて大いなる野望を持ってしまい、そこで失った信頼と、それでも信じ続けていただいた方々の気持ちを忘れることのないよう、心して生きていきます。
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篠田投手に期待です
ますます篠田投手に期待ができそうですね。今回のブログにも西本さんの熱い気持ちが込められていて、グッと来ました。

本気で向かってくる相手には全力でこたえるという意思を篠田投手に対して向けているのだなと感じました。そして篠田投手もまた一段、西本さんに対する本気の度合いを高めたのだなと思います。本当に今後にますます期待したいです。

これからの様子もぜひぜひブログでお知らせいただきたいです。そして広島に伺った際にはぜひぜひ直接お話をおききしたいです。
  • 2014-05-06│09:47 |
  • 森孝寿 URL│
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
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