投げる動作さらに詳しく その1

昨日も野球中継を見ていて、改めて私の考えを正確に伝えなければならないと思いました。
仮にも日本の中では最高峰のカテゴリーであるプロ野球の投手たちです。

オフには野球教室と称して、子供達にお手本を見せることもあるでしょう。
そういう立場にある選手たちの動きを見ていて、彼らは本当に自分が投手として身につけなけれなならない、また追求していかなければならないことを分かっているのだろうかと思わざるを得ないのです。

それは日本における選手の育成環境に一番問題があると思います。

まず子供達が野球というものを始めようとした時、私が子供の頃であれば父親とのキャッチボールという行為がスタートになりました。

人間は生まれた後、自分の意思で動けるようになるのに、他の動物とは比べ物にならないほどの時間がかかります。

首が座って安定し、寝返りを打てるようになり、四つん這いではいはいができるようになって、つかまり立ちができるようになり、それからやっと自分の力で歩くことができるようになります。

もし他の動物がこれほどの時間をかけていたら、自然の摂理で他の動物の餌にされ、とっくに絶滅しているはずです。

人間だけが知能が発達し、他の動物から襲われる心配がなくなり、このゆったりした成長過程が許されています。

そして立って歩くことができるようになった赤ちゃんは、自由度を増した手を使うことによって急速に成長の度合いを増していきます。

このことは人類が四足歩行から二足歩行へと進化して文明を手に入れたことに通じていると思います。

私は4人の子供に恵まれ、すでに3人の孫を持つ身ですが、その子供達の成長を見守ってきた経験の中で、赤ちゃんが次に行う本能的な動作が 「物を投げる」ことだということを知りました。

小さな手に何かを握らせると、すぐにポイっとその辺に放ります、投げるというよりも放るという表現の方が正しいと思いますが。

人間にとっての成長過程で獲得する本能的な能力として、この物を投げる・放るという動作は必ず身につけていく動作なのです。

難しいことはわかりませんが、農耕以前の人類は狩猟によって食べ物を得ていたのですから、石ややりのような物を投げることは普通に必要な能力であったと思います。

それが現在まで、本能として成長過程で獲得する放るという行為は身につけるものの、それ以降成長するにつれ放るという動きを行う必要がほぼ無くなっていきます。

それが小学生における体力テストの種目として行われている、ソフトボール投げの記録の低下に現れていると思います。

放るという動作から投げるという動作への体の使い方の変化が見られないからです。

この放ると投げるという動作の決定的な違いを正確に理解できていないことが、野球を始める子供達から、高いレベルを目指す子供達まで、さらにはプロと呼ばれる選手たちを含めて大きな問題だと思うのです。

平成8年に社会人野球の三菱重工広島が、前年までの不振から一躍、都市対抗野球大会で準優勝の成績を収め、私の指導理論にも注目が集まった時、トレーニングジャーナルという専門誌に、この「放ると投げるの違い」と題して文章を寄稿し、私自身がモデルとして写真付きで解説をしましたが、その際にも、たとえば何処かの高野連の研修会で講演をして欲しいとか、ぜひ我がチームにも指導をして欲しいというような反響は全くありませんでした。

自分たちが正しいと思っていることと違うものには、拒否反応を示しているようでした。

結局は結果を残した指導者の指導方法や理論が正しいこととされ、深く根っこを掘って真理を追求しようなどというレベルの指導者は、残念ながら野球にはいないようでした。

そういう意味では現在、少しご縁のできたサッカーの指導者、とくにジュニア世代を受け持つ指導者の方々の知識欲というか好奇心は立派なものだと思います。

自分のやってきたことを否定されるとでも思うのでしょうか、例えそうだとしても、今この瞬間から正しいことを指導できるようになれるのなら、どうしてそれを選ばないのでしょうか。

その後、プロ野球選手として一度は頂点近くに上り詰めた佐々岡投手の再生という仕事を通して、私の理論の正当性は十分分かっていただけたと思っていたのに、相変わらず投手の動きづくりの方向性は変わっていません。

このブログのタイトルである「西本直が話しておきたいこと」の一番大きなテーマはこの部分だと思います。

なぜこの事実が分かってもらえないのだろう、このことが分からなければ、肩や肘の故障で野球から離れていく選手は永遠に減らせないし、選手として向上していくために身につけなければならない指針として、明確なものとして確立されているのだから、指導者が真剣にこのことを学んでくれたら、もっと良い指導ができ良い選手を育てることができるのにと思わざるを得ません。

そしてはや20年が過ぎました。

何も変わっていません、同じことが繰り返されています。

どうしてそこまで自信をもって言い切れるのか、何を根拠にそんなに偉そうにものが言えるのか、そう思っている人がほとんどだと思います。

三菱が準優勝したからとか、佐々岡投手が復活したから、それを自慢して、「どうだ間違ってないだろう」などと言っているのではないのです。

体の仕組みがそうなっているのです、そういう動き方をしてくれないと体自身が「困る」と言っているのです。

私はそれを代弁しているに過ぎません、「野球はこうやってやるんだ、俺は選手としてこうやって結果を残してきたんだ。また自分の指導理論で指導して、何人ものプロ野球選手を送り出してきたんだ」それだけでものを言わないで欲しいのです。

そうやって送り出された選手たちが、現実としてプロ野球選手になってから伸び悩み、その影には故障で消えて行った多くの有望選手や、的確な指導を受けられず失意のまま去って行った選手が沢山いるのです。

私がきちんと指導をしたら、全員が甲子園に行ける投手やプロ野球選手になれるのか、そしてプロ野球選手として活躍できるレベルになるのか、それはまた別の問題です。

正しい努力は決して裏切りませんが、勝負の世界そういう正しい努力をしたもの同士で争うハイレベルな戦いになれば、そこには優劣があり序列がついてきます。

ただ、いま現状では、周りが正しい方向性が見えていない中で、それを指し示してあげることができ、真剣に取り組んでくれれば、一歩ずつでもその目標に近づいていくことは間違いありません。

今日は、そこからの細かい部分、体の使い方にまで言及するつもりでしたが、その前振りだけでこんなに長くなってしまったので、次回、これまで面と向かって説明させてもらう機会があっても、ここまでは説明しきれなかったというくらいの、解説をしてみます。

このブログを読んでいただいている方は、まだまだサッカーに関わる方が多いようですが、野球が好きな方、指導に携わっている方、ぜひ読んでいただきたいと思います。

少年野球や高校野球の指導者に知り合いの方がいましたら、ぜひ一読を薦めていただければと思います。

私の生涯の夢、こんな知識と指導力をもった「オッちゃん」が身近にいてくれたら、という存在になっていただきたいと思います。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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