強く意識していること

トレーニングの内容に関して、初期の私のメニューにはこれと言って目新しい内容はなかったと思います。

基本となる何種目かのメニューを、できるだけマンツーマンに近い状態で指導するということだけは守っていたと思います。

いわゆる紙に書いたメニューであとは個人に任せますというやり方では、指導の意図が伝わらないと思ったからです。

そうは言いながら、チームを指導したくさんの人数を相手にしなければならなくなったとき、どうしてもそうならざるを得ない時もありました。
これはもう自分の中でも割り切るしかない部分ではありましたが。

ではなぜマンツーマンにこだわるのか、例えばベンチプレスという種目で80キロを10回3セットやってください、という指示をしたとします。

それを見た選手が、どういう動きでその重さと回数を扱っているか、そこを見るのが私の仕事なのです。

上下するスピード、動きがどこでどの程度止まってから動き出すとか、下していくときの深さ背骨の反らせ具合、1セット目から3セット目までの時間のかけ方や、それぞれのセット10回の中での疲れ具合、選手の表情や息遣いなどなど、言葉にすればきりがないほど見なければならないことはたくさんあります。

その中で最も重要なのが、こちらがどういう意識でこの重さこの回数を要求したのか、そしてそれがこちらに伝わってくるように確実に表現されたのか、結果としてお互いが意識を共有できたのかというところが最終的な目標となります。

単純に言えばベンチプレスという動作は、肘を伸ばした状態で支えているバーベルを、肘を曲げることで胸までおろし、そこからまた肘を伸ばして持ち上げていくという動作です。

これまで何度も言ってきたように、曲げる時には上腕二頭筋、伸ばす時には上腕三頭筋という単純な図式は、実際には成り立たないのです。

道具がなくてもその場で腕立て伏せをしてみてください、女性の方は膝をついたままでも結構です。

背中を真っ直ぐ保ち、肘を伸ばした腕で体を支えますね、その状態から、力こぶを作る上腕二頭筋だけを意識して、肘を曲げてみてください、あっという間に胸がと言うより顔面が床にぶつかりそうになります。
それを避けるために、無意識のうちに肘を曲げる意識が薄れて、肘を伸ばす上腕三頭筋でブレーキをかけることの方へ意識が転換されていることに気付くはずです。

一度で分からなければ、何度かやってみてください、三頭筋をブレーキに使わずにただ肘を曲げることがどれだけ難しいのかを実感してください。

そんなことまで考えて腕立て伏せをしたことがないと言われそうですね。
例えば同じ腕立て伏せと言っても、お尻をぴょこんと持ち上げて、体全体をくの字にして、両手の間に頭を突っ込むような形で行う人がいますが、これですと肘というよりも肩の前側の筋肉と、胸の上部の筋肉で重さを受け止めることになってしまい、肘の曲げ伸ばしという運動ではなくなってしまいますので今説明している感覚は掴めません、ここではあくまでも正しい方法で腕立て伏せを行うことを大前提としています。

いかがでしょうか、何度か行っているうちに結論として、腕立て伏せはそのほとんどの局面で働いてくれているのは上腕二頭筋ではなく、上腕三頭筋であることを納得していただけたでしょうか。

自分の思ったスピードで自分の思った深さまで上体をコントロースするために、三頭筋が肘を曲げるという運動に対してブレーキを少しずつかけて微調整しながら、結果として肘が曲がったという状態を作り出したのです。

ですから可動域の端っこ近くまで動いて、もうこれ以上は曲がりません、胸がついてしまいますという状態のときの肘は、実は三頭筋がこれから肘を伸ばして体を持ち上げていく準備が完了してその指令を待っている、という状態と考える方が自然なのです。

たかが腕立て伏せにどうしてここまで小理屈が必要なんだと思われるでしょうが、このイメージが分からないとほかの動作を説明するとき、まったく意味不明なまま話を進めていかなければならないのです。

曲げ伸ばしの例で言えば、野球の選手がバットを持って構えているとき肘は曲がっていますね、ではこの時曲げている、すなわち二頭筋の力で肘を曲げる方向に筋力を働かせているとしたら、今度はボールが投手から投げられてこちらに飛んできたときに、一度曲げるという脳からの指令を解除して、改めて肘を伸ばす筋肉に働いてもらわなければならないことになります。

構えているときに力んでいるという状態は、この屈筋である上腕二頭筋が主体となって、肘を曲げバットを構えてボールを待っていることを指します。

逆に、肘が曲がっていることをいつでも上腕三頭筋が、肘を伸ばす準備万端で待っている状態だとしたら、ボールに対してスムーズにバットが出てくるということにはならないでしょうか。

これはただの理屈ではありません、筋肉の仕組みや働きから考えればまぎれもない事実です。

そういうことを考えながらのベンチプレスであったり、スクワットでなければ、何キロ上がった何回出来たのトレーニングから抜け出ることはできないのです。

そういう意識のトレーニングの積み重ねが、競技動作の向上に直結していくのです。

理屈はいいから力を出し切れ、もっといけるさあもう一回のトレーニングとは目的が違うのです。

私の好きなゴルフでも同じです、トップの位置にあるとき肘は曲がっています。
アドレスの位置で伸びている両肘を曲げようとして動き出した結果、トップの位置でシャフトを支えるように曲がっているというのと、トップの位置からボールを打ちに行くためには肘が伸びていかなければならないのですから、伸びていた肘をもう一度伸ばすという状態に戻すための準備として、トップの位置に来た時には結果としてま曲がっているという意識では、まったく逆の運動になるのです。

体も大きく、私などよりどう見ても腕っ節の強そうな方が、力いっぱい叩いても意外にそれほど飛んでいないというシーンを何度も見ました。

まさに今日説明したことの証です。

伸ばさなければならない時に、まだ曲げる筋肉が出しゃばって邪魔をしているのです、こういう状態を「力んでいる」というのです。

まるでブレーキを踏みながらアクセル全開で車を走らせようとしているのと同じです、車は壊れてしまいます、だから体も悲鳴を上げて壊れてしまうのです。

出来るだけブレーキをかけずに、滑らかに関節の伸展運動を連動させていく、これが理想の動きです。

そのためのトレーニングでなければならないのです。

今日の内容は今まで書いてきた中で、私の中でも一番深い内容だと思います、何度も読んで理解してください。

まだコメントというか質問がありませんが、私が「そこを聞いてきたか」と膝を叩いて答えたくなるような質問をお待ちしています。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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