あらためて「体作りから動き作りへ」

サッカーW杯、日本代表の戦いはあっけなく終わってしまいました。

それぞれの立場で思うところがあると思います。

サッカーをよく分かっている人たちにとっては、あまりにも過度な期待をかけ、視聴率を稼ぐためだけのテレビ番組に踊らされたり、選手自身が発信するポジティブすぎる発言に、眉をひそめてしまっていたかもしれません。

結果は出てしまいました、もう何を言っても後の祭りとはこのことです。

誰が悪いとか、何が悪いとか、そんなことを言う暇があったらこれからどうするかと言う建設的な考えを発言した方が精神衛生上もいいのではないでしょうか。

我々が何を言ってもどこに届くのか、届いて欲しい相手は聞く耳を持ってくれるのか、そんな歯がゆい思いから、とりあえず言いたいことは言っておこうと言う気持ちになるのも当然だと思います。

あるサイトをたまたま見たら、選手個人に対する辛辣な書き込みが、驚くほどの数になっていました。

それで気が済むのならそこですべてを吐き出して、本当に日本のサッカーを応援する気持ちをもう一度再確認できたのなら、引きずらないで4年後に向かって気持ちを切り替えて行きましょう。

今回私が一番残念だったことは、「自分たちのやりたいサッカー、日本らしいサッカーができなかった」と言う言葉が何度も聞かれたことです。

それは即ち、選手一人一人が、「自分はこういう動きをしたかったのにそれができなかった」ということではないでしょうか。

個人として自分の本来やろうとしている動きができないのに、それがチームとして同じコンセプトを共有し、お互いを信じあえる状況など作れるはずがありません。

これを単純にコンディショ二ングの失敗とか、個人の能力不足の問題として処理してしまうのでは、絶対に改善はあり得ないだろうと思います。

私がこのブログに何を書こうと、代表チームの何が変わるわけではありませんが、子供達を指導している方々や保護者の方々、またサッカーに限らずすべてのスポーツに関わっている皆さんに、こんな考え方もありますよという、私個人の考え方として読んでいただければと思います。

私の考えにいろいろなご意見はあろうかと思いますが、評価は皆さんそれぞれにお任せします。

まず体のサイズで言えば、最初にお互いが交差しながら握手を交わして行くシーンを見ると、他の国の選手たちとはまるで大人と子供の違いがあります。

たとえ身長が負けていなかったとしても、体の厚みというか体つきというか、これまたとてもかないません。

そういうところから日本のスポーツ選手は肉体改造という甘いことばに誘われて、体作りのためのトレーニングを行う傾向が強くなってきました。

遺伝的に持って生まれたそういう肉体と、後付けで作り上げたサイズだけ似せた体とでは、本来目的としている動きに差があることは明らかです。

自虐的な表現になりますが、残念ながら大柄な外国選手に比べて貧弱としか言いようがない我々の体で、そういう選手たちと同じピッチで一つのルールの中で戦わなければならないとしたら、与えられた体を使って、いかに目的に応じた動きが 出来るようにするか、これしかないと思います。

日本人の中にも外国の選手と遜色のない立派な体を持っている人もいます。

しかしそれは割合にするとものすごく少ないもので、例えばサッカー選手をJリーグの選手としてスカウトする時の条件が、185センチ80キロ以上などという規則を作ったとしたら、いったい何チーム作れるのでしょう。
今回の大会で決勝トーナメントに進んだメキシコチームは、体格的に日本チームとそれほど違わないという意味で、我々でも出来るはずだとか、お手本にしなければという意見も聞きますが、体を自由に動かすという本質的な部分が備わっていなければ、大きいとか小さいとか そんな話ではないはずです。

私が作った技術の定義は「自らの意図(企図)した筋肉の収縮活動を反復継続して行うことの出来る能力」としています。

自分が何をやりたいか、何をしなければならないか、その正確な判断と予測の元に、脳からの指令によって筋肉を収縮させ骨を引っ張って関節の角度を変えるということが人間の体を動かすということです。

目的とする動きというものは、それぞれのスポーツで違いますし、そのレベルに対しても必要とされる動きは変わってきます。

私がずっとテーマとして取り組んでいる「体作りから動き作りへ」という言葉に、「動きが良くたってやっぱり相手に負けない体がないとダメだよね、そんな理屈ばかり言ってても」 ずっとそう言われてきました。

相対的な考え方としてサイズ的に大柄な選手にかなわないとしても、動きで確実に上回ったとしたら、その時その選手の体は、私の技術の定義の部分で、相手を上回る体の動き(技術)を発揮できる体を作れたと言えないでしょうか。

そういう意味で、「動き作り」の先には、かならず「体作り」というオマケがついてくるのです。

動くための体です、目的とする動きを獲得するために動きづくりのトレーニングを継続した結果、動きそのものを手に入れ、その結果としてそれに必要な体も手に入れることができていたという、二次的な効果としての体作りができたと考えるのです。

それはただ単に数値で表されるサイズの変化や、トレーニングで扱う重量や回数の変化ではなく、個人としてのパフォーマンスを向上させることを目的とした動き作りのためのトレーニングであるべきだと考えます。

動きそのものが物足りないということは、まだまだその目的に対して必要十分な体も出来ていないということになります。

もっともっと動きづくりを追求しなければなりません、その結果として、自分の目指したところに近づけたとしたら、さらに動きの質を高める欲求が出てきます、この欲求には際限がありません。

もっとうまく動けるのではないか、もっと効率的な動きがあるのではないか、体作りでは味わえない楽しい作業が続きます。

その作業に終着地点はありません、また年齢やその時の状況によって目指す高みも違ってきます。

この考え方を理想とする利点は、単純に若い時の肉体のピークを追い求めることではないということです。

経験を積み必要な動きを見極められることによって、獲得し発揮しなければならない動きの質は変わってくるはずですから。

その感覚的な部分にきちんと向き合えるようになれば、歳を重ねることへの不安も減ってくるはずです。

私がこれまで深く関わった選手に、それぞれの競技でピークになる年齢を過ぎた選手が多かったのも、単純な肉体の衰えをカバー出来る何かに気づいてくれたからだと思います。

逆に言えば、もっと若い頃から、いえ子供の頃からそういう発想を持ってくれれば、無駄に遠回りしないで、本来の技術向上、動きづくりのトレーニングを行い、体のサイズでは明らかに劣っていたとしても、海外の選手たちに一歩も引けを取らない動きで、見ている我々を驚かせてくれるようになると思うのですが。

現場を離れてしまい、どこかで誰かが私の考えを具現化してくれることがあるのか、まったくもって想像もつきません。

現実的にはまったくどこにも届かず、生かそうと思ってくれる人もいないかもしれません。

プロという組織で結果を残すことで、他のクラブにも影響を与え、アマチュアの皆さんにも興味をもってもらい、この考え方が独自なものでも特別なものでもない、至極当たり前のトレーニング理論になって行くこと、これが私が描いた大きな夢でした。

その夢を果たすことは出来ませんでしたが、一人でも多くの方に気づいていただき、その一端でも伝わって実践していただけるように、発信を続けて行きます。
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Comment

Re: No title
短い期間でしたが、これまでサッカーの世界になかった視点を持ち込めたかなと思っています。
選手個人や風間監督の目指す方向性に少しは役に立てたのかなと思っています。
子供たちのために新しい感覚を磨いてください。
  • 2014-06-28│08:59 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
No title
ブログ拝見しました。
川崎フロンターレの大久保選手の昨年の得点シーンを見ていると、ミドルシュートを打つ前のステップがすごく躍動的で印象的でした。川崎フロンターレのサッカーがおもいしろい!という記事を見たので、Jリーグを観戦してみたら、サッカーがスピーディーで、ボール受け方、受ける前のステップ、動き出し、走り方がしなやかで見ていて、サッカーそのものより選手の体の使い方に目がいきました。風間監督のコメントに西本さんが今期最大の補強という記事を見てこのブログに行き着きました。現在子供たちの指導をしており、動き作りからはじめているところです。いろいろ勉強させていただきます。
考え方…。
本田君の四年間の方向性が間違っていた…。のコメント重かったです…。彼らなりに死に物狂いのトレーニングの結果、これからどうする?心配です。改めて動き作りの重要性、日本人ならではを目指してほしいです。
西本さんの考え方を知らない時は、まだまだ足らんのやって思ってましたが、今回は、観戦してて、本当に考え方変えな無理って思います。
  • 2014-06-27│22:00 |
  • 神野慎哉 URL│
  • [edit]
Re: 石本です
陸上競技の種目の中でも、最も苦しいと言われている400mですが、アンカーで最後の直線で勝負をかけて選手は、バトンをもらってから終始冷静で、フォームの乱れが見えません。
他の選手が最後のコーナーを回ってから苦しくなって、前側の筋肉に頼ってしまい、腕を前に大きく振ってしまい、上体が反りすぎブレーキになっているのに、最後までしっかり肘が後ろに引かれ、背中の反りが安定し、骨盤の位置を高く保てていることでストライドが伸びています。
広背筋を使うというのはこういうことですね。
陸上競技こそ、私の言っていることが重要なカギとなることは、この映像からも見て取れますね。
  • 2014-06-27│09:57 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
Re: 石本です
石本さんの嬉しそうな顔が目に浮かぶようですね。
技術は使ってこそ値打ちがあります。
誰がうまいとか誰が上だとか、そんなことを言っている暇があったら、自分のできる最高の技術を発揮して、目の前の人間の役に立とうと思って頑張れば、気持ちは通じると思うし結果も出るのだと思います。
また広島に来ていただく機会があれば、私も是非石本さんに「ふわっと」させていただきたいと思います。
嬉しいご報告ありがとうございました。
  • 2014-06-27│09:42 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
石本です
「西本塾」「深める会」にも参加させて頂きありがとうございました。
勉強させて貰ったお陰で、僕の所へ来てる高校生が今年の近畿IH陸上男子4×400mリレー決勝アンカーで1位になりました。http://m.youtube.com/watch?v=BZ9xwNc8ZC0&sns=tw#
彼の個人タイムは46.7秒で今年の高校生記録でした。
彼の通っている高校陸上部は指導者がいない時期もあり大変でした。しかし、昨年世界に挑戦した選手もおり、選手達が自主的に練習していた時もありました。
だから、僕の説明も凄く真剣に聞いてくれました。広背筋の重要性、重心移動についてや股関節に乗るという感覚(僕は理解が遅く申し訳ありませんでした)等を話しました。
これらもあり、最後の加速があったと思います。

彼に「体ほわっと」をすると筋肉の緩みと気持ち良さを喜んで貰えますし、西本先生にも「指が太く期待値が高い」と言って頂いたのでもっと精進しようと思います。
  • 2014-06-26│23:28 |
  • 石本 和也 URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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