施術とトレーニング

今でこそ私は、スポーツ選手を相手にトレーニングの指導をしたり、体作りではなく動き作りが大事なのだと言ってみたり、一流選手の動きを分析して、人間に本来備わっている能力の可能性を探ってみようなどと、ちょっと変わったところで注目されたりしています。

元々は痛みや体の不調を訴える人に対して、道具を使わず自分の手と感覚でアプローチする施術行為の腕を磨き、縁あって広島に渡りプロスポーツ選手を相手にするようになりました。

一般の方の施術ももちろん行いますが、その方達にとってみれば私がスポーツ選手に対してどんなことをしているかなどはまったく関係ないことで、自分の痛みが改善すればいいだけのことです。

治療院や各種の施術所に対して、一般の方が期待するものはそれほど大きくないような気がします。

もしかしたらそれは医療機関でも同じかもしれません。

多少なりとも楽になればいい、本当の意味で治癒とか改善してくれるというレベルまでは期待されていないような気がします。

はっきりとリラクゼーションをうたっているのであれば、その場限りの安らぎを与えてもらうことが目的ですから、双方なんの問題もありません。

それが医療機関だったり、腰痛改善等を前面にうたった施術所であれば、それなりの結果を出さなければ、わざわざ来てくれた人に申し訳がありません。

にもかかわらず、多くを期待されていないのは、その期待に本当の意味で応えてくれる施設や施術者に出会ったことがないからだと思います。

私のところに来る一般の方も、最初は同じ気持ちで来る方がほとんどです。

少しでも楽になれば、当然のことだと思います。

しかし私はそういう考えで施術を行いません。

腰が痛いから腰を治す、首が痛いから首を治す、そういう発想がもともとありません。

今日久しぶりに来られた男性は、一月半ほど前に、長いおつきあいをいただいているアマチュアゴルファーの紹介で来られた重度の腰痛の方でした。

病院ではヘルニアの診断を受け、10日間まったく自分で歩くこともままならない状態で、ここへも駐車場から数分の距離を20分以上かけてやっとたどり着き、その日を含めて3日間、私が車椅子で駐車場まで送り迎えが必要な状況でした。

とにかく行ってみろと言われて、車で1時間以上の距離を走ってきてくれましたが、正直ここでどれだけの変化を期待していただいていたか、いつものことですが表情や会話の様子で察しがつきます。

3日続けて来ていただき、4日空けて4回目に来ていただいた時には、日常生活にはほぼ支障がない状態になり、1週間空けて5回目に来ていただいた時には、大好きなゴルフの素振りを施術後、ここでブンブン振っていただくことが出来ました。

私にとってはある意味当然の経過ですが、10日もほとんど動けなかった本人にしてみれば、自分の体の変化に追いつくことができず、まだまだ不安は消し去れない様子でした。

今日は、始めて来ていただいた時のことから改めて振り返り、いろいろな話をしましたが、その方が一番不思議がっていたのが、私があまりにも自信満々で、こうしたらこうなる、今はこういう状態だから、明日にはこうなって来週はこうなると、断定的なものの言い方をすることでした。

もちろん適当なことを言っているわけではありません、「この動きは誘導してもらえたら動けたけれど、この人の頭は不安の方がまだまだ大きくて、一人では動かそうとしてくれないから、少し日にちの薬がいるね」とか、「腰から背中への連動はまだ怖いから今日はやめといて」などと、本人その人ではなく、その人の体そのものと会話しているのですから間違いありません、自信を持ってこうなりますと言っているのです。

今までこんな言われ方をしたことがない、痛みが我慢できなくなり近くの医療機関を受診すると、安静にして様子をみてくれ、痛みがひどいようなら痛み止めの注射をしましょう、そういう対応しかされたことがない、そう言われます。

私は魔術師でもペテン師でもありません、それぞれの人間の体に対して、どういう使い方をしてこうなってしまったのか、本当はどんな風に動きたかったのか、丁寧に探って行くだけです。

痛いと訴えている腰だと言い張る部分にも、そこだけの問題ではないと体に言い聞かせ、全体の動きを探って行きます。

痛い部分から意識が離れず、なかなか言うことが理解できない人も中にはいますが、それでも私は体に語りかけて行きます。

実際に体が楽になり、できなかった動きが出来るようになり、少しずつ不安が消えて行くというプロセスを経て行き着く先は、何の事は無い「あなたの体は元々こうだったのですよ」ということです。

私が治したとかそういう問題ではなく、「あなた自身が、やっと自分の体というものを意識し、対話することが出来るようになりましたね」ということです。

道具のように使い続け、悲鳴をあげた体に正面から向き合い、やっと自分の体はこういう風に動いていたのか、こういう風に動かさなければならなかったのかという意識に目覚めたのです。

残念ながらそういう気持ちにならない人が稀にいます、私の力ではどうにもできない人たちです。

すべては自分の決めること、いつか必ず体から大反撃を受けることになるでしょうが、そういう人はその時になってもおそらく気づかないのでしょうね。

ゴルフを競技として取り組んでいる方ですから、50代半ばを過ぎた今、ご自分の体と向き合うことが出来たことで、これからの競技者としてのゴルフライフには大きなプラスになったと思います。

ヘルニアという診断を受け、激しい腰痛から回復して行くプロセス、実はそのままスポーツ選手の動き作りのトレーニングにも当てはまるのです。

どうして思ったような動きができないのか、どんなトレーニングをしたらもっと動ける体になるのか、一応プロ選手と言われるレベルの選手であっても、まったくわかっていない選手がほとんどです。

このブログは、そういうレベルの選手のこそしっかり読んでもらって、自分に足りない部分に気づいて欲しいのです。

指導者も同じです、育成年代の指導者だと思われる方にはブログやTwitterも読んでいただいている雰囲気はあるのですが、たとえばJリーグやプロ野球の選手や指導者は、自分たちのやっていることこそ、日本の最高レベルで、私の言っていることなど役に立たないと思っているかもしれませんが、そう思っている時点で勉強不足です。

体の動きを知らずして、スポーツ動作の改善や技術の向上など出来るわけがありません。

逆に言えば、そういう部分を根本的に見直して行けば、今の技術そのままでも動きそのものを変えることができるかもしれないのです。

先日来てくれた選手のトレーニングも同じです。

たんに手術後のリハビリがうまく行っていないから、そのためのトレーニングを教えるのではなく、本質的な体の使い方を頭と体に理解させることで、確実に彼の動きは変わって行きました。

今朝は試合がなかったので、早起きしなくても済みましたが、ベスト8に進んだチームの選手だから凄いのではなくて、人間として発揮出来る能力のすべての要素の中で、傑出した部分をそれぞれ持っていて、本人が気づいているかどうかは別にしても、その抜きん出た体の使い方を分析し、客観的な説明を加えることで、メッシだからできるとかネイマールにしかできないと決めてしまわず、同じ人間として、使い方の意識さえ理解できれば、近づくことはできると考えた方が自然ではないでしょうか。

どうも我々は諦めが早いというか、スーパースターを特別視する癖があると思います。

現状は日本代表の選手たちでも、はるかにレベルが違うことは事実です。

それで諦めてしまっては、何十年かかっても日本のサッカーは世界に並び立つことはできないでしょう。

代表チームのフィジカルコーチにどんな実績のある有名なコーチを招いても、年に数回集まりその都度メンバーが違っていたら、本来の動き作りなど出来るわけがありません。

そんなことよりこれからの選手たち、育成年代を指導している指導者の方々が意識を変えて指導してくれることの方が、時間的にも早いだろうし、確実に全体のレベルアップに繋がって行くと思います。

いつも大風呂敷だと言われますが、至って大真面目に考えています。

今日もどのレベルかわかりませんが、動き作りのトレーニングを指導して欲しいという電話があり、関西の方から来てくれるそうです。

私がどこにいようと、本気で指導を受けようと思ってくれる人間は、広島まで来てくれるようです。

もう少し近かったらという声を聞きますが、アメリカやブラジルに来てくれと言っているわけではありません。

本気の人間を相手にして、私も初めて何かを伝えられると思っています。

施術もトレーニングも、相手は生身の人間です。

やることは同じ、アプローチの仕方が多少違って見えるだけです。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
今年2回目の西本塾を8月26・27の土日に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。
なお、今回も参加者が5名に満たない場合は開催しません。
9月10日には深める会も予定しています。

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