体がかたい

今日のタイトル「体がかたい」です。

「かたい」という文字を平仮名にしたことには意味があります。
かたいという言葉は、人によってさまざまなイメージで受けとられることでしょう。

基本的には三種類の見方ができます。
まずは見た目の硬さです。
もの凄く筋肉質で岩のような体をしている人を見て、やわらかそうというイメージは湧きませんね。
反対にすごく痩せていてあばら骨が見えているような細身の体も、やわらかいとは感じません。

次は触った感触です。
もちろん骨はかたいですから、筋肉の部分を触ったときに、先ほどの見た目で感じたことがそのままだったり、逆に岩のような筋肉が意外にお餅のように柔らかい感触ということもあります。

そしてもう一つ、おそらく一般的に自分の体がかたいとかやわらかいと表現されているのは、この分け方だと思います。
それは関節の可動域、一般的な言い方をすると関節を曲げたり伸ばしたりする時の、柔軟性があるかないかということになります。

それともう一つ、体の一部分ではありますが、やはりその人の人間性を表す言葉として、頭が固いという言い方もあります。
直接体がかたいやわらかいということとは関係なさそうですが、頭がかたいイコール、既成概念にとらわれて柔軟な発想に乏しい、という考え方であるとするならば、これから説明するような考え方も受け入れてもらえず、結局は体のかたさも改善できないということになりかねませんので、あえて加えておきたいと思います。

この体のかたいやわらかいという概念、自分の体はやわらかいと自信を持って言える人は、割合で言うとどれくらいの数字になるのでしょう、おそらく一割にも満たない数字になるのではないでしょうか。

この概念は、子供の頃から行われてきた体力測定の種目の一つである、立位体前屈(最近は無理に前屈しようとして測定台から落ちてしまう危険性があるので、座位で行われることが多い)や伏臥上体反らしで、足先より何センチ下まで指先が下せたとか、床より何センチ顎を持ち上げられたいう数値で評価されます。

年齢別男女別の平均値から自分の数値が何点と、相対評価で点数を付けられますから、やっぱり自分はかたいんだとがっかりしてしまうわけです。

こういうテストをすると、普段特に運動もしていない人が高い数値を出すことがあります。
痩せているとか太っている(お腹が邪魔で前屈に支障があるくらいの肥満は別ですが)とかも、とくには関係ありません。

ではなぜそういうことが起こるのでしょう。
こうした関節の可動域を決める要因として、遺伝的先天的な体のつくりが最も大きな要素となります。

これまで説明してきたように、とくに大きな関節は骨と骨とを強い靭帯という組織で結合されています。
そしてその関節を動かすために様々な筋肉が関節をまたいで存在しています。

大きな関節を動かすためには大きな力が必要となりますから、当然筋肉も他の小さな関節に比べて太くて長い筋肉が必要となります。

筋肉は中央部の太い部分から、末端にかけて細く収束して強い腱という組織に移行します、ふくらはぎの筋肉が踵の骨に付いている部分はアキレス腱としてどなたにも分かりやすいですね。

その腱の末端の両端が、一つまたは二つの関節を挟んで骨に付着していることで、筋肉の収縮により骨が元の位置から可動範囲の中を近づいたり離れたりという運動がおこり、我々の体が動いているわけです。

ですから遺伝的に筋力を強く発揮できる体というのは、腱の部分が太く短く、筋肉が大きな力で収縮した時に骨を引っ張るという仕事に適した形態をしています。
その強い引張る力に対して、関節の間隔を一定に保つ仕事を担っているのが靭帯という組織ですから、こちらも短くて太い方がより強い力に対応できるということになります。

当然二つの組織が太く短いことで大きな力を発揮しやすく、さらにその力に対して安定的に働いて体を守ってくれるのですが、難点は骨と骨との間隔が狭いために、曲げ伸ばしをする可動域には少し制限が出てしまうことになります。

逆のパターンはすぐに想像がつくと思いますが、腱と靭帯の両方が細長くしなやかな組織(あくまでも比較の問題ですが)であるとするなら、当然その可動範囲は広くなるでしょう。

その代り、大きな強い筋肉の収縮に対しては負担は大きくなりますので、体の本能的なコントロールで、その組織に見合った力のコントロールが行われているはずです。

ですから、両者が数値上の比較でかたいやわらかいという優劣をつけることにあまり意味はないのです。

もちろん自分は逆のパターンだという方もあるでしょう。
どう見てもやせ形で筋肉もしなやかそうに見えるのに、まったく柔軟な体とは程遠いとか、立派な体格で筋力も強いが柔軟性に関しても非の打ちどころがない人もいると思います。

こういう方は、遺伝的先天的な体の構造はもちろんですが、太くて短いはずの組織に対して適度な負荷を与え続けることで、後天的に柔軟性を獲得出来たり、逆にまったく運動による働きかけがなされなかったために、せっかくの長所が生かせず柔軟性を失ってしまったということも考えられます。

努力はしたけれど、努力もしないのに、そういう方ももちろんあります、人間の体は教科書的にこういうものですと言い方ができない本当に神秘的な存在です。
だからこそ私のような人間が、少しばかりの知識で始めた仕事で、後は本当に目の前の人間の体を見ることによって得られた経験を積み上げて、今考えているようなことをお話するようなことにまでなったのですが。

男子の器械体操の選手のように、柔軟性と強い筋力の両方を兼ね備えていなければならない競技もあり、その体は我々からは想像もつかないレベルのはずです。

しかし彼らのトレーニングに、いわゆる筋トレというものは存在しません。
いくつもある種目の動きを習得していくことの過程そのものがトレーニングになっているのです。
素晴らしい筋肉の体をしていますが、彼らこそ体作りのためにトレーニングを行って作り上げた体ではなく、動き作りの延長線上で獲得した筋肉の成長だったはずです。

その努力は並外れたものだとは思いますが、そういう選手体でさえ、おそらくは遺伝的にはやわらかさの方を先に備えていて、強さが加えられたものと想像します。
まったく体がかたくてという子供が体操をはじめても、あのレベルまで行くものでしょうか、もしそういう選手がいたらそれはそれで凄いことだと思いますが。


次回は、今日の内容を読んで、自分の体がかたいのは遺伝なら仕方がない、努力も報われないことの方が多いのならやっても無駄と諦めてしまった方に、それでも西本理論、とくに3・5・7の考え方を応用すれば、いくつになっても改善の余地はあるんですよ、という希望を持っていただける方法をご紹介したいと思います。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
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