走ること、質問に答えて

有難いことに、コメントが続き、今日はその答えとなるような内容を書いてみたいと思います。

ただ、お一人の方は西本塾で直接指導をした方、もう一人はこのブログを通して文字だけの説明で実践している方という、大きな違いがあります。

まずは、ちょうど一年前に何回かに分けて書いた、カテゴリ「走るという行為」を、じっくり読み返してほしいと思います。

私が言っていることは、たんに走り方という技術の問題ではなく、なぜこういう発想にたどり着いたのか、どうしてこういう走り方を提案しているのか、まずはその部分をしっかり整理してから、実際の動作を練習してほしいと思います。

聞き飽きている言葉だとは思いますが、枝葉の方法論の話ばかりをされると、結局私から聞き出したいのはその部分だけなんだなと淋しい気持ちになってしまいます。

本当に過去記事を読んで、私の走りに対するイメージが共有できていれば、根っこの部分は分かってもらえるはずで、その先はそれこそ自分で好きなようにやってくださいと、言い放ってしまえばいいことで、細かいことを文字で説明できるは訳はないと言い切ってしまうこともできます。

しかし、私の言っていることを実践していただいている方々に対し、あとは好きなようにやってくださいとも言いにくいので、もう少し言葉の説明を加えたいと思います。

お二人に質問の趣旨は、私から見ればまったく同じものです。

上手く走れるようになるコツは、一言で言えば「骨盤(股関節)と肩甲骨の、背骨を介しての連動をいかに滑らかにするか」ということになります。

望月さんの質問にある、右の上腕骨と右の股関節の関係性ですが、フライングバックトレーニングの片足立ちパターンで、同側パターンと対角線パターンの二つを行いましたが、質問されたことは、この右右の同側パターンに問題があると考えられます、という答えが出てきそうなのですが、私は別の問題だと思います。

人間の意識は、瞬間的には一か所しか認識できないという話は西本塾のさいにも、実技を交えて説明しましたが、意識されていない部分にも負荷はかかっているという説明もしたと思います。

広背筋をメインに行うベンチプレスを行っている時にも、もちろん大胸筋は収縮していますし、股関節メインで行うスクワットを行うさいにも、大腿四頭筋はしっかり収縮しています。

意識を変え、フォームを工夫するだけで、メインとなる筋肉が変えられることは体験していただけたと思います。

走るという行為を行うとき、もろもろの条件がそろって初めて股関節の自由度が確保され、無理なく足が振りだされるという状態が作れます。

かと言って、下肢の筋肉が全く収縮していないかと言えば、もちろんそんなはずはありません。

従前の走りに比べればという比較の問題で、圧倒的に足で地面を蹴って推進力を得ている、という感覚が少ないと言っているのです。

だから疲れにくいし、足の負担も少なく故障も少なくなります、でもまったく蹴っていないかといえば、やはり蹴っています。

しつこいようですが繰り返すと、「今までに比べて蹴って進んでいる感覚が少ない」ということを理解してください。

ということはどういうことですか望月さん、いったん文章を読むことをやめて、この先の答えを自分で考えてから、次の行に進んでください。

どういう答えが出ましたか、私は望月さんの左右の蹴る力の微妙な違いが、股関節から肩甲骨への連動に違和感を生んでいるのだと思います。

従前の走り方では全く気にもしていなかった部分だと思います。

左右の蹴る力の差、左右のストライドが1ミリと違わない選手などいないと思います、よほど大きな違いがあれば別ですが、足で地面を蹴って推進力を得るという走り方では、筋力の差など様々な要素で違うことが、ある意味当たり前だったのです。

ところが、広背筋のリードで、骨盤を上下させ、上腕骨の自然な動きと連動させるこの走り方では、従前の蹴るという動作が、その連動を邪魔してしまうことになります。

結論です、一か月やそこらの期間で、私と同じような感覚で走れるようになると思ったら大間違いです。

自分の体と対話しながら、自分が一番いいと思う動きの連動をできるようになるまで練習してください。

矢継ぎ早に疑問点を質問していただくことはやぶさかではありませんが、そんな簡単に身につけられる感覚ではないことだけは言っておきます。

ただ100点を目指す必要もありません、望月さんなりの連動を探すのです、いつかその走りを見せてください。

阪井さんからの質問ですが、ここまで書いてきたことがそのまま答えになると思いますが、スピードの変化、私の言うギアチェンジの意識は、「骨盤(股関節)と肩甲骨の背骨を介した連動を、いかに滑らかに変化させられるか」ということです。

その結果として、骨盤の上下動が速くなり、上下の動きが楕円に変化することで、動きが大きくなります。

けっして単純な上下運動ではありませんので、上下のストロ-ク幅が広がるという感覚ではありません。

上腕骨の動きも同じです、腕を振るとか振らないとかいうことではなく、広背筋によって自然に後上方に引かれる感覚を、作為的に操作することなく脱力していれば、スピードアップとともに、外見的には、「なんだ腕を振っているじゃないか」という風に見えているだけです。

実技で私の肩甲骨の動きに驚かれる人が多いですが、「連動に任せている」からこその動きなのです。

「そんな簡単なものじゃないよ」と、厳しいことも言いましたが、ではどうやってその感覚に近づいていくのか、そのことを書いておかなければ、今日の答えにはなりませんね。

皆さん実際の走るという局面での動きに目が行ってしまっていますが、一番大切なのは実技の際に皆さんが一番難しそうな顔をして、ぎこちない動きに終始した「その場足ふみ」の動作です。

もう一度説明します。

両足を肩幅程度に開いて立ちます、1センチ1ミリでも背が高くなるようつま先立ちになってください。

その時に背中を丸める人はいませんよね、一番広背筋が正しく収縮できる準備ができています。

その時両方の大腿骨の大転子部分(足ふみをした時動いているのが分かる左右のでっぱり)に手のひらをあててください。

その姿勢から、つま先を付けたままで踵だけでを上下させて足ふみをします、足首と膝を柔らかくして、膝が前後に動くようにしてください。

手のひらが大転子部分にあるため、肘が少し曲がっていることで、上腕骨が引き上げられることが分かりやすいと思います。

良い姿勢を維持したまま足ふみを繰り返してください。

その時の私の肩甲骨の動きがあまりにも大きいので、皆さんが首をかしげてしまいますが、まずは肩でいいですから、骨盤の上げ下げと肩の上げ下げを、同側で同調させてください。

これがすべての基本です。

しかし、これが一番難しく楽しくもないので、次のドリルに進んでしまいますが、極論すれば、これだけをしっかりやって、体の連動という感覚を頭と体が理解してくれさえすれば、後のことはすべてできるようになるのです。

というか、それが体の中に仕組まれている自然なからくりなのです。

皆さん聞いたことがあると思いますが、「コツを教える、コツを覚える」という言い方をしますね、その時の「コツ」こそ、まさに「骨(コツ)の動きを体に教える、覚えさせる」ということそのものなのです。

それが私の言っている「動きづくりのトレーニング」「骨を動かす」ということなのです。

その場足ふみのスピードが上がると、大転子に触れていた手のひらが、スピードを上げるために上下に大きくこすれて、大転子を離れます。

これが実際に走った時に、腕が振れて見えることにつながります。

さらに背中全体がうねるように大きく動き、もうこれ以上その場で足ふみを続けることが難しくなるほどのスピードを感じた時に、つけたままですよと言っていたつま先が、地面を離れることを許すと、自然に前に進んで行きます。

そしてさらに動きが速くなり(この時はうねりの回転数が上がるという感覚ですが)、気がつけば走り出してしまったという感覚になります。

だから走り方がどうの、腕の引き上げがどうの、スピードの変化は、どこでこんなトロールするのかなどという部分の問題ではなく、すべては連動を滑らかにコントロールするという感覚なのです。

それを感覚的に身に付けることができたからこそ、大久保選手は「いつ動き出したのか分からない、無駄な動きがない、一人動きが違う」などの表現をされるような動きができるようになったのだと思います。

今現在、川崎でどんなトレーニングの指導がされているのか、私にはまったく分かりません。

阪井さんが指摘していただいたような変化があったとすれば、私が提唱したトレーニングが継続されているのかもしれません。

走り方の問題でも同じですが、このトレーニングを行えば必ずこんな効果があるとは言えません。

正しい意識を持って行ってくれなければ、ただ似たようなことをやっているだけということになってしまいますから、当然効果にも個人差が出てきます。

それでもたんなる体作りのトレーニングを行っていることに比べれば、頭の理解はなくても体は正直に反応してくれますから、やらないよりはずっといいと思います。

短い期間でしたが、選手たちの体のどこかに残っていてくれて、チームとしての取り組みとして継続されていれば、こんなに嬉しいことはありませんが、実際のところはまったく分かりません。

私のトレーニングはある意味地味なトレーニングですが、しっかりとした理解のもと意識を持って継続すれば、技術的な部分にも必ず良い変化があります。

阪井さんのような、選手の変化を指摘していただくと、またそういうレベルの選手たちを指導してみたいという気持ちが、うずうずしてきますね。

お二人の答えになったでしょうか、すべては根っこの部分の大切さに気付くことから始まります。

根っこを掘る作業を実践していただき、また質問をお寄せいただければと思います。
スポンサーサイト

Trackback

Comment

Re: 5ヶ月目のご報告。
ご連絡ありがとうございます。

一歩づつ前進ですね、本人の努力のたまものだと思います、しっかり褒めてあげてください。

どんなレベルであれ、自分を向上させるためには努力する以外に方法がありません。

その道筋を微力ではありますが、お手伝いさせていただくのが私の仕事です。

道に迷った選手にに対して、当初は私が手を引き道を照らして前を歩かなければなりません。
そのあたりまでは、私の方が偉そうにして威張っています(笑)

しかしある一線を超えると、選手は私の手の届かないところへ駆け昇っていきます。

そんな姿を、私は羨ましくも嬉しく見つめるだけです。

結果が出て喜ぶのも、不本意な結果となって悲しむのも、すべては本人の問題です、私が立ち入ることはできません。

先日のスーパームーンのように、明るい太陽に照らされてこその月の輝きなのです。

選手のために一生懸命自分のできることを精いっぱいやった結果として、誰かが私のことも「月がきれいですね」と見てくれるのです。

こうやって息子さんが輝いていく過程に参加させていただいたこと、感謝します。

少しでもお役に立てたこと本当に嬉しく思います。

また道に迷ったら訪ねてきてください、いつでも待っています。
  • 2014-09-12│16:08 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
5ヶ月目のご報告。
こんにちは。

西本さんに指導していただき、継続して5ヶ月が経ちました。

昨夜、息子が試合から帰ってきて「西本さんに 今度会えた時、感謝を一杯伝えたい」としみじみ話しました。試合に出る機会が増え、対人プレーの変化は 本人がここ1ヶ月の間、特に感じている様です。続けていくうちに『変わった!』と強く感じる瞬間に辿り着くには5ヶ月という時間の積み重ねが必要だったのだなあと思いました。スーパーな選手なら短期間で獲得するであろうことも、平凡な息子は時間がかかります。それでも、積み重ねて得たものは、やはりしみじみと嬉しく感謝を感じた様でした。続けないと解らない、続ける事で得られるもの。時々OTT 中に「西本さん、こう言ってたからな」等と言っている姿を見るにつけ、まだ1度しかお会いしていませんが、西本さんは息子にとってのメンターなのだと感じています。

さあ、やっと入り口に辿り着いた?息子。これからもコツコツと続ける背中を応援していきます。

遅ればせながら、Studio 操 一周年おめでとうございました。益々のご活躍お祈りしています。

プロフェッショナルな方々ばかりのコメント欄に、一保護者の のんびりしたコメント。読んでくださりありがとうございました。




  • 2014-09-12│14:43 |
  • 4月にお世話になりました一家です。 URL│
  • [edit]
楽しいやりとりをさせていただきました。
お二人ともありがとうございます。

実際に目の前で指導した人と、このブログに書いて有ることを頼りに実践していただいた方という、私にとっては最もありがたいパターンのやりとりになりました。
文字で書かれていることをどうやって実際に行っていただいているのか、今度は私の方が想像するしかありません。

実際にいろいろな受け止め方をして、いろいろな形で取り組んでくれている人が、たくさんいるのだろうなと、改めて責任を感じました。
そしてその難しさを痛感しています。

けっしてブログを使って指導をしているわけではなく、私の想いを多くに人に知っていただきたいということで書いてはいるのですが、出来ることなら、実際に役に立てていただきたいと思っています。

人間の感覚は、どう頑張っても同じものを共有するというわけにはいきません。

どんなに文章が上手な人が書いても、読みての感性で受け取り方は様々です。
数値で管理することも出来ず、理屈で割り切れない部分ばかりです。

それを私は、あえて文字だけで伝えようとしています、動画はもちろん写真もイラストもつけていません。
それは、皆さんそれぞれの答えを見つけて欲しいからです。

西本塾で二日間しっかり伝えた方々の中にも、私の動きを間近で見て、実際に動いて体験したことで満足してしまう人もいたかもしれません。
こうして実践してこそ出てくる疑問をぶつけて来てくれる人はほとんどいませんでした。

本当に楽しいやりとりをさせていただきありがとうございました。
  • 2014-09-09│10:13 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
取り組んでみます。
おはようございます。
ご丁寧に日記にまで書いて説明いただき、恐縮いたします。ありがとうございました。
「その場足踏み」を室内でやってみましたが、体が自然と前傾していくことは感じ取れました。日記を読みながら室内で動いただけなので、私の質問である「スピードアップ」の領域には達していませんが、動きの速さなのか大きさなのか、ということについては、おそらく両方なのだろうと思いました。屋外の広い場所で練習してみます。

原理原則vsハウツー、若い頃に仕事の仕方について半年くらいかけて直されたことがあります。ハウツーで凝り固まっていましたので、半年かかってやっとその先生が言わんとすることが何となく分かり、実際、身に付くまでにはかなりの時間を要しました。
また、最初の頃は、慣れない正しい方法の方がやりにくく、かえってパフォーマンスが落ちた記憶があります。それでも根気よく指導していただいたことで、ハウツーから抜けることができました。

ランニングは仕事ほど凝り固まってはいませんが、抜本的な変更なので多少の回り道は覚悟の上で取り組んでみます。

今後もよろしくお願いします。

阪井
  • 2014-09-09│07:30 |
  • 阪井徹史 URL│
  • [edit]
No title
浅はかな質問に対して、お答え頂きありがとうございます。
私自身深く考えているつもりでも、西本先生の答えを頂くと、
自分が如何に浅い考え方だったのかを痛感し、とても恥ずかしく思っています。
しかし、恥ずかしい思いをしてでも質問をして良かったです。
質問をしなければ、上腕骨が引かれない原因を股関節の力不足だと考え、
必死で股関節の筋力強化をしていた事と思います。
これこそ、枝葉の小手先の事になってしまいますね。
また今一度、「走るという行為」についてブログを読み返すと悩み解決のヒントがたくさん書いてありました。
ただし、今回のブログ内の「今までに比べて蹴って進んでいる感覚が少ない」が
「実際は蹴っている」という事については、改めて考えさせられました。
正直、「その場足踏み」は確かに地味で簡単に済ませていたドリルでしたが、
今後は、「その場足踏み」に対する意識改革を行い、実践していきます。
西本先生の走りを手に入れる為に1ヶ月やそこらで出来るはずがないのは百も承知しています。しかし、先生の提唱する「走るという行為」を早く手に入れたいと思っています。その為にもしっかりとした練習をします。
今後はなるべく浅はかな質問をしないように、深く考えていきますが、また質問をしてしまう事があるかと思いますが、その際は何卒宜しくお願い致します。
また今回は、すぐに実践出来るお答えを出して頂きありがとうございました。

  • 2014-09-08│14:47 |
  • 望月 URL│
  • [edit]

Post a comment

Secret


プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

最新記事

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

カウンター

検索フォーム

QRコード

QR