体の仕組みを知るということ

32歳で会社員を辞め、この仕事に就いてから 24年の歳月を数えました。
今の状況は、その頃の私には想像も出来ないようなものとなっています。

日々目の前に迫ってくる問題に対し、自分には何が出来るのか、何をしてあげられるのか、そのことばかり考えてきた日々の繰り返しでした。

仕事を始めた頃に関わった選手たちは、すでに現役を引退し、それぞれの道に進んでいますが、そのうちに何人かは指導者として立派な成果を上げている人間もたくさんいます。

私の立場は何年経っても変わることなく、生涯一トレーナーとしての人生を歩み続けていますが、そんな中、過去に関わった選手たちの子供達が成長し、親子二代に渡って私の指導を受けるという例がいくつかみられるようになりました。

まだ幼かった頃の彼らの姿は記憶していますが、父親を凌駕するような体格に成長した彼らを見るにつけ、過ぎ去った歳月を感じています。

父親の後を追うように、スポーツに熱中する姿に、微笑ましくも羨ましい想いを感じます。

生涯一職人を自認し、後継者どころか他人に対して、自分の技術や経験を教えるなどということは、全く頭にありませんでしたが、今こうして自分の考えを発信し、西本塾等を通じて、多くの人に伝えることを行い始めるようになりました。

今となっては遅きに失した感もありますが、3人の息子のうち1人でも私の仕事に興味を持ってくれていたらという気持ちも少し感じるようになりました。

とはいえ、これほど先の見えない仕事はなく、まさに不安定この上ない状況の繰り返しに、我が子を引き込むことは出来ないという気持ちの方が大きかったのも事実です。

親子で同じ夢を追いかける何組かの姿を見るにつけ、やはり羨ましい気持ちが強くなっています。

さて、老若男女、スポーツ選手から一般の方を含め、この一年だけでも新しい出会いがたくさんありました。

それぞれの立場で、私から吸収しようとする内容も様々なわけですが、やはり一番基本となることは「人間の体の仕組みを知る」ということに尽きると思います。

そう言うと解剖学や生理学といった、医学の基本を思い浮かべる方がほとんどだと思いますが、例えば筋肉や骨の名前というのは、後から人間が便宜上名付けたもので、文字や会話の中で共通認識が出来るための記号のようなものに過ぎません。

筋肉の起始や停止、収縮した時の関節の可動域の角度などを知識として覚えることが、体の仕組みを知っていることではないと思っています。

人間も地球上に存在する生命の一つで、生命を維持し種を存続していくための体の使い方というのは、自然に備わっているはずです。

二足歩行になって知能が発達した為、本来の動物としての自然な動きを離れ、こうしなければならないと思い込まされている部分がたくさんあります。

その一つが、私が提唱している「歩く」という動きであり、その発展系としての「走る」という動きの中に見られます。

腕はこうやって振る、足はこうやって使う、こうしなければならないこうでなければいけない、いつどんなタイミングで教えられたか分かりませんが、いつの間にかそれが唯一無二の正しい使い方であるかのような錯覚に陥っています。

私が西本塾で伝えているのは、筋肉というものにはどういう仕事が与えられているか、与えられた役割をきちんと全う出来ているか。

さらに根っこを掘り返して、そもそも筋肉とはどういう組織なのかという根源に迫り、収縮するというメカニズムと、体が動くという関係など、教科書的な知識ではなく、動物として人間の体はどういう風に動くことが出来るのかを知ることこそが、「体の仕組みを知ること」だという考え方を伝えています。

犬や猫が、歩き始める時にはどこを意識して使っていますとか、ライオンが獲物を狙って走り出す時には、少しストレッチをして筋肉に負担をかけないようにしています、などという意識があるはずはないのです。

本能の赴くままに、生きていくために、持って生まれた最良の体の使い方を、自然に行っているだけなのです。

私がスポーツ選手に対して最初に行うことは、人間の体はこういう風に出来ていて、こういう分に使えば効率良く働いて、自分の持っている能力を十二分に発揮してくれるんだよ、ということを理解してもらうことです。

一度や二度の説明で理解出来るはずはありませんが、時間をかけ回を重ねるたびに、実際の体の動きと最初の説明がリンクして、本当の意味で正しく伝わる指導になっていくようにしています。

ボールはこうやって蹴らなければならない、ディフェンスの姿勢はこうでなければならない、ボールを投げるためには手首はこうやって使わなければならない、例をあげれば切りが無いほど出てくる様々な思い込みを、「人間の体はね、こういう動きが必要な時はこういう風に動いてくれるように出来ているんだよ」と、少しずつ人間本来の自然な動きに変えてあげるという作業をしていくのです。

なぜ屈筋ではなく伸筋が大切なのか、人間が動くことの本質である骨盤と背骨を動かすために必要な意識はどこにおけば良いのか。

歯を食いしばって一生懸命がんばっているように見える、自他ともに満足感が得られる筋力の発揮方法がなぜダメなのか。

ちゃんと聞いてくれれば、解剖学の試験対策に割く時間の100分の1くらいの時間で理解出来るはずです。

そうやって根っこの部分がわかれば、枝葉のことは、ちょっと後ろを向いて教科書を開けば書いてありますし、ネットで検索すれば立体的に見ることが出来るアプリもあり、現実私も使っています。

人間の動きそのものが見えるようになれば、痛みに対応する施術行為であっても、能力向上のトレーニングであっても、その方法論は自ずと見えてきます。

○○トレーニングに当てはめるのではなく、今、自分の目の前にいる人間の体に、何が必要で何をして欲しいのかわかるようになります。

それが体の仕組みを知っているということす。

なんとかしてあげたい、そう思わせてくれる選手が、次々とやって来ます。

私自身、まだまだ頑張らなければならないようです。
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第二回の西本塾に参加し、その時に西本さんが「身体は、こうにしか動かない」とさらっと言われた時に受けた衝撃から、自分なりにいろいろ考えながら月日が過ぎ去っております。まさに身体の仕組みを知ることが西本さんのおっしゃる根っこと思い、ほり続けている最中です。頑張ります。
  • 2014-09-21│19:04 |
  • 神野慎哉 URL│
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。

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