正しい体の使い方を知りたいと言う前に

連休明け、少し休みボケの状態です。

日曜日は長女のところに幼稚園の運動会の応援にいき、昨日は帰省中の長男の嫁と1歳になる孫娘が遊びに来てくれて、すっかりおじいちゃんとしての役割を果たしていました。

運動会では、ほとんどの家族が3世代で応援に来ていますが、私と同じおじいちゃん世代の人と自分を比べると、この人たちと自分が同じ立場でここにいるのかと、ちょっとがっかりしてしまいます。

若いと思っているのは自分だけで、どうあがいてもそれは変わりませんが、年長さんの母親で運動会の役員さんをしているママ友さんから、「ご主人さんですか、いつも◯◯ちゃんにはお世話になっているんですよ」と、挨拶され悪い気はしませんでした。

長女が父ですと紹介してくれても、「お父さんお若いですね」と言ってくれ、よく言われるんですよと、会話が弾みました。

石田純一さんより年下ですから、幼稚園に通う子供がいてもおかしくはありませんが、普通そんな方は珍しいですよね。

まだまだ自立を果たせない息子がいますので、おじいちゃんとしての自分よりも、父親としての自分の方がウエイトは高いので、まだまだ老け込むわけにはいきません。

さて、20数年のキャリアが様々な出会いを生み、自分でも気づかないうちに多くの方に影響を与える人間になっているようです。

自分自身は全くそんな気持ちはありませんでしたが、我が道を歩き続け、少ない機会ではありましたが本を出させていただいたり、トレーニング関連の専門雑誌に文章を寄稿させていただいたことがあり、それらを目にした方々が、私の考え方に触れ影響を受けたということのようです。

私の言ってきたことは、すべてその時々に経験してきたことで、教科書的な一般論ではなかったと思います。

直接そのことに関して感想をいただいたりしたことは、これまでありませんでした。

私がこの仕事を始めた頃、そういう雑誌を一生懸命読みましたが、そういう方々に自分はこう思いますなどと、言えるほどの経験も知識もありませんでしたし、そんな勇気もありませんでした。

今振り返って、そういう方々の中に、私に対して大きなインパクトを残してくれた人がいたかといえば、残念ながらいませんでした。

立派な肩書きを持ち、有名な選手やチームの指導をされていることが紹介されていましたが、書いてあることは正しいのかも知れませんが、本当にそれで事足りるのだろうか、自分ならこう考えこうアプローチするのではないか、常にそういう気持ちで接していました。

そして数年の後、そういう雑誌を読むことすらやめてしまいました。

目の前にいる選手たちが何を求めていて、自分には何が出来るのか、足りない部分は何で、どうすればそれを身につけていけるのか、問題も答えもすべて目の前にあることに気づいたからです。

そしてその答えを見つけるためには、そういう教科書的な発想では何の役にも立たないことも実感しました。

故郷での開業当初は、普通に痛みへの対応が求められる仕事でした、それが早い段階で、痛みの原因は何か、どうすれば、こういう痛みと向き合わないで済む体になるのか、そういう根本的な問題へと意識が変わっていきました。

私を信頼してくださった方々からの要望もあり、あのまま宇和島で治療院を続けていれば、それほど広くないスペースでしたが、トレーニングの機械を入れて、今行っているようなものに近い、それぞれの体に合わせた動きづくりのトレーニングの指導と、体のケアの両面からサポートできる施設を作っていたと思います。

私が言うところの「正しい体の使い方」とは、持って生まれた人間としての能力を余すところなく利用して、体に無理をさせず楽に動けて、目的とする動作に対して効率良く動かせるようにすることです。

電化製品などには、必ず取扱説明書というものが添付されています、近頃はペーパーレスで詳しくはウエブで、という場合も多くなっていますが、最近は歳をとったせいか、そういうものを読み込むことがとても苦手になってきました。

我々人間はどうでしょう、生まれてから月日を重ね、人間として成熟した肉体に成長して行く過程の中で、そういうマニュアル的なものは何一つ与えられていません。

育って行く環境の中で、自然と身について行くのものです。

先日もここを訪れて、トレーニングを行ってくれたサッカー選手は、お父さんがエジプトの方だそうで、顔はどう見ても私たちとは違っていますし、遺伝的にはもっと背中の筋肉をうまく使えるはずだと思うのですが、日本で生まれ育った彼の体は、外見的には素晴らしく発達した体ではありますが、肝心な広背筋に関しては、我々と同じレベルの動きしか出来ていませんでした。

遺伝的な要素はとても重要で、どうにもならない部分もありますが、彼の例を見ても、後天的な要素の方がはるかに大きいような気がします。

ただ彼の場合は、先天的に与えられた要素がありますので、ここに正しい意識で正しい刺激が入れば、必ず目的とする動きを獲得することができると思います。

ここを訪れてくれる人の大半が、私に「正しい体の使い方を教えてください」という要求をされます。

私が不思議に思うのは、今まで人間として普通に生活してきて、なぜ急に正しい体の使い方、などという言い方をするようになったのだろうと思ってしまいます。

自分の体が、今現在動いてくれていることに対して、これは間違った使い方だから直さなければならないと、本当に思っているのでしょうか。

スポーツ活動をしていて、他の上手な選手に比べて自分の技術が上達しないことを、自分の体そのものの動き方のせいにしているのではないでしょうか。

ある意味本末転倒ではないでしょうか、生まれてからずっと一生懸命動き続けてくれている体に、感謝こそすれ、自分の体は正しい動きをしてくれないと、文句を言うことが果たして正しいことなのでしょうか。

スポーツを指導している人の中にも、自分の指導は間違っていない、上達しないのは本人の問題と開き直っている人もいるのではないでしょうか。

その部分を、単に素質がないだとかセンスがないだとか、指導に対する理解力がないとか意識が低いとか、すべて選手本人の問題にしているのではないでしょうか。

なぜこの選手はこの動きが出来ないのだろう、この技術が身につかないのだろう、講習会に行って指導者としてのライセンスも取って、自分はこんなに努力しているのに、そんな声があちこちから聞こえてきます。

そして気付いたことが、技術以前の体の使い方に問題があるのではないかということになるようです。

そしてネット等を通して調べて行くうちに、私の存在を知り私の考えに触れて行くうちに、自分たちが指導されたものだけでは足りないという事実に辿り着くようです。

私が西本塾でお話ししている、スポーツの世界で当然のように思われてきた、技術と体力は別物という考え方の弊害です。

私はサッカーの技術や戦術を教える立場だから、体力のトレーニングのことは知らないとか、体力そのものの概念も、数値で表すことの出来る客観的な評価に限られていました。

人間の体の動きそのものを見る目を養うことから逃げて、データで管理しやすいものを信じることの方が正しい判断であるというのが今の風潮です。

サッカーでも、1試合で走った距離を個人別に集計して、運動量を図るということが行われています。

本当にそうでしょうか。

超一流と言われる選手たちの身のこなしは、そういうデータだけで語れるものではありません、そんな時に持ち出される言い方が、「だから彼らは凄いんだよ」の一言です。

では他の選手にはまったくNOチャンスなのでしょうか。

違うと思います。

普通に生活して行く上ではまったく支障はありませんが、残念ですが我々日本人が普段最も意識して使えていない部分と、それをうまく使いこなしているという意識がないことが一番問題なのです。

ここにその答えを求めて個別指導を受けに来てくれた選手たち、小学生から一般の方まで、老若男女を問わず大きな変化を感じて帰ってくれるのは、その部分なのです。

人間が動くというのは、現実にはどの部分が動くことなのか、それを可能にしてくれているのは、どの部分を中心とした全身の連動動作なのか、出来ないことをやれと言っているわけではありません。

「普段意識していなかったけど、こうやって動けば確かに動きやすいし楽に動けるよね」と、体と頭が納得してくれれば、それから後はそういう風に体が動いてくれます、当然効率の良い動きを行おうとするはずですから。

「なんで今までこんな風にしか動けなかったんだろう」、本来の動きを知ってしまうと、過去のそういう感覚すら思い出せなくなってしまいます。

屈筋に頼る動きがどうしてダメなのか、伸筋を使うという感覚はどういうものなのか、体感していただくより他に方法はありません。

過去何人もの指導者の方から、どうして指導者の養成カリュキュラムに、こういう「体そのもの」に関しての時間が割かれないのだろうという、というご意見をいただきました。

いつかそんな日が来るでしょう、その時に西本塾で学んでくれた若い方々の出番が待っていると思います。

私は今、一人でも多くの方々に、お互いの体を通して、人間本来持って生まれた能力を余すところなく利用して、無理なく無駄なく動ける体になってもらうことで、それぞれのスポーツでレベルアップを図り、ケガをしにくい体になってもらいたい、そんな活動をしていきたいと思います。

西本塾でも、回を重ねるごとに説明の仕方というか、指導のレベルが上がっているように思います。

来月の開催に備えて、改めて頭を整理して行こうと思います。
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Re: No title
報告ありがとうございます。
私が対象にしてきたのは一般の健常者で、スタートラインは同じ条件であることが前提となっています。
荻原さんが指導している車椅子陸上の選手の皆さんは、それぞれ障害の程度も違い、それこそ一般論が当てはまる事など全くないと思います。
お話を伺って私なりにトレーニングを考え提案してみましたが、選手の皆さんに変化が見られてようでありがたいことです。
基本は基本としてあって、そのうえで障害の状況を見極め、あと一歩のところを踏み出してもらえるようなアイデアを探し出す過程は、健常者のそれよりも難しいことはもちろんですが、やりがいのある仕事だと思います。
このブログの読者に、荻原さんと同じような立場で仕事をしている方がいるかどうかわかりませんが、情報交換していただき、競技力の向上に役立てていただければと思います。
私が直接指導することはないと思いますが、これから先選手の皆さんがどういう変化をしてくれるのかとても楽しみです。
これからも頑張ってください。
  • 2014-09-26│09:31 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
No title
西本先生
先日は深める会ありがとうございました。
他の参加者の皆さんと中身の濃い時間を過ごせました。
これも西本先生の熱い指導のお陰だと思います。ありがとうございました。

西本塾を受講してからの車いす陸上での取り組みを報告させていただきます。
まず、車いす陸上用の車いす(レーサー)への乗り方をフライングバックトレーニング時
の姿勢で乗るようにしました。
また、車輪を回すときの手のキャッチの仕方を小指側の意識で行うように変え、車いすを漕ぐ時のイメージは背中側の筋肉を使って背骨と肩甲骨、頭部を連動させて漕ぐようにしました。

西本先生に教えて頂いた頭部と腕へのトレーニングも行っています。フライングバックトレーニングも腹筋・背筋の効く選手はレーサーの上で、腹筋・背筋の効かない選手はなるべく姿勢を良くして常用車いすで行っています。
深める会で教えていただいたトレーニングはベッドがなくてまだ行っていませんが、工夫をしてやっていきたいと思います。

選手達にも変化が出てきました。前よりも力感なく巡航スピードがあがったり、MAXが上がったりしています。これから試合も増えてくるので楽しみです。

まだまだ分からない事だらけですが、西本塾と深める会で学び感じた事を選手一人ひとりと向き合って根っこを掘り下げながら実践していきたいと思います。

荻原 孝俊
  • 2014-09-25│22:03 |
  • 荻原 孝俊 URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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