シーズンオフという考え方

昨日から広島にも本格的な冬がやってきました。
北側に見える山並みの上にも、いかにも寒そうなというか雪を降らせそうな雲が見えています。

昨日は定期的に受けている血液検査の結果を聞きに行き、受付の方の対応に一瞬ドキッとさせられましたが、大きな変化はなくとりあえず穏やかな気持ちで年末年始を過ごせそうです。

ただ今日の夕方にもう一つの大きな検査の結果を聞くことになっていて、こちらも万が一ということがあるかもしれないので、今日1日なんとなく落ち着かない精神状態が続きそうです。

20年前、サンフレッチェ広島で仕事をしていた1年目のシーズンオフ、その年には活躍の場がなく、来シーズンの飛躍を期して、休日返上でトレーニングをしたいという若手の選手と一緒に、練習場近くの山を走り回っていたことを懐かしく思い出します。

彼らにはそれこそオフシーズンという言葉はありませんでした。

主力選手が休んでいる今こそ努力して、少しでも近づき追い越したいという気持ちが、私を誘い毎日のようにトレーニングに駆り立てていたのでしょう。

そういう次代を担う選手の突き上げが、主力選手の緊張感を生み、リーグ発足2年目の前期を優勝という最高の結果で飾れたのだと思っています。

おかげで私の休日はオフシーズンにもほとんどありませんでしたが、新しい組織新しい仕事にまっすぐに立ち向かっていたあの頃は、とても充実していたように思います。

さてウインタースポーツはこれからがシーズン本番ですが、屋外の競技はいわゆるシーズンオフという期間に入ります。

「期分け」という考え方があって、シーズンの導入期からプレシーズン、そこからシーズンを迎えシーズン中のコンディショニング、そしてシーズンオフの過ごし方と、それはもう微に入り細に入り手取り足取りの指導がなされ、それが絶対に必要なことで正しいことだと誰もが思わされているように思います。

もちろん一年中気持ちを集中させ、心休まる暇がないというところまで要求しているわけではありませんが、選手たちの考え方の中に、少し違和感を感じている部分があります。

それは「切り替えて」という言葉に象徴されています。

「失敗してもすぐに切り替えて次に向かっていこう」、聞こえはいいのですが、そこにはその失敗から得られる教訓もなく反省さえ感じられません、その場限りの傷の舐め合いにしか聞こえないことが多いように思います。

私はそういうシーンでは声を荒げ叱責し、その上で反省し改善点を見つけ話し合って乗り越えていくという手法でやってきました。

馴れ合いは許さないと。

またオンとオフの切り替えという言葉も良く聞かれます。

ユニフォームを脱いだらスポーツ選手とはいえ一般の社会人としての生活があると言いたいのでしょうが、そんなことは誰に言われなくても当たり前のことで、どこでどんな格好をしていても、スポーツ選手であることの緊張感を持って生活することこそ、本来の意味での切り替えであって、私服の時は何をしてもいいと勘違いをしている選手までいるように思います。

今日はシーズンオフという時期の考え方がテーマですが、特にスポーツを職業としている選手たちにとって、一般的に言われている休息を意味するオフシーズンという概念はあってはならないと思います。

どんな競技であっても、現役選手として活躍できる期間は、人生の中でもわずかな期間です。

中日ドラゴンズの山本昌投手のように50歳になっても厳しいプロ野球の世界で現役を続けられる選手も稀にはいますが、その努力たるや我々の想像をはるかに超えるものだと思います。

「休むときは休まなきゃ、羽目をはずすときがあるのは当たり前」、そんな声が聞こえてきそうですが、私の知る元プロ野球選手は、引退まで夜の誘いは極力断り、どうしても参加しなければならないときは一次会で必ず帰ると決めていたそうです。

指導者となった今も、現役時代と全く変わらない体型を維持していて、こういう人間に指導を受ける選手は、言葉どおり身が引き締まる思いだと思います。

自己管理ができない人間が、他者を管理できるはずはありませんから。

それが徹底されれば、誘う方もわきまえてくれるようになり、結果として選手生命を全うできたのだと思います。

少し活躍すると誘いが多くなりますが、活躍しなければすぐに離れていくのもそういう人たちです、本気で自分の体をいたわり、また心配してくれる後援者なら付き合いにも節度があると思います。

そうやって消えて行く選手のなんと多いことか、もっと自分を大切にしなければならないと思います。

シーズンを終え様々な課題が浮き彫りとなってくるのもこの時期です。

緊張感から解き放たれ、目の前から結果を求められることがない環境が、ほんの短い期間与えられるのもこの時期だけです。

ここで何をするかが選手としての成長を決めると言っても過言ではありません。

自分の何が良かったのか、何が足らなかったのか、きちんと分析し改善の努力ができるのは今しかありません。

先日もある若手の女子プロゴルファーと話をした時に出てきた内容は、ツアーで活躍するプロが見てもらっているトレーナーのところに行ったとか、今はやりのトレーニングを指導するトレーナーのところへ行ったとか、目的が何なのかではなく、誰かがやっているからというところからしか話が始まらないのです。

同じ女子プロだから、結果を出している人がやっているからでは、自分のためになるはずがありません。

自分にとって必要な能は何なのか、それを獲得するとか伸ばすためには何が必要なのか、そのためにはどんなトレーニングが必要で、それを指導してもらうためにはどこの誰に指導を受ければいいのか、真剣に考えアンテナを張り巡らせておけば、またネットなどを通じて情報収集しておけば、自分にとって有益な指導者は必ず見つけられると思います。

私とその女子プロを引き合わせた方は長くお付き合いをしている方で、私のことをよく知っていますから、彼女が私との会話で響くものがなければ、お互いにそういう関係にはならないことは承知の上でした。

おそらく私の指導を受けようという気持ちにはならないと思いますが、それはそれだけのことで何の問題もありません。

問題意識を共有し、選手の能力を引き出してあげようという気持ちにならなければ、指導などできるはずがありませんから。

故障がちだった選手たちからはおきまりのフレーズが聞こえるようになりました、「シーズンを通して活躍できるための肉体改造を行う」と。

このブログを読んでいただいているみなさんに、この言葉が全く的を得ていないことは理解していただいていると思いますが、いまだにこの言葉はオフシーズンの慣用句とでも呼べるような使われ方をしています。

私の提唱する「動きづくりのトレーニング」には、シーズンオフという概念はありません。

特に股関節や肩甲骨の動きは、油断するとほんの数週間で動きを忘れてしまうこともあります。

忘れられては大変ですが、動きを作るという概念には、もうこれでいいというゴールがありませんので、常に体との対話を繰り返しながら、自分の体の動きを確認しておかなければなりません。

9年間一緒に戦った、あの佐々岡投手にして、たった数週間トレーニングを離れ、久しぶりにキャッチボールを再開するというとき、自分の体がどういう風に動いていたのかわからないという事態が、実際に起こるのです。

日南で行われるキャンプの前半に、マスコミの目を避け無人のグランドでキャッチボールの指導をしたことさえありました。

当たり前のことだと思っていても、あのレベルの選手にしてそういうことが起こるのです。

それを若手のまだまだ成長過程の選手たちから、オフシーズンの過ごし方を、パワーアップだ肉体改造だという言葉を聞くと、そうやって失敗していった選手の反省は届いていないのかと残念に思います。

今日今やっていることが、そのままシーズンにつながっていきます。

切り替えも大事かもしれませんが、自分の体としっかり向き合い真剣に「動きづくり」に取り組むことこそ、自分の能力を余すところなく発揮できるようになる唯一の手段であること に、そろそろ気づいてもいいのではないでしょうか。

私の指導はある意味とても厳しいかもしれませんが、健康維持増進などが目的の、一般の方に対してであっても、きちんと説明し言うべきことは言っています。

それがプロの選手であれば、厳しいのは当たり前です。

何を言われても自分のために言われている言葉だとかみしめて、実際にやるわけではありませんが、踏まれても蹴られても食らいついて指導を受けてくれる覚悟を持った選手はいないでしょうか。

来年の今頃、もうトレーニングが必要ではなくなる立場にならないために、今しかできないことをしっかり頑張って欲しいと思います。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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