走るという行為その2居付く

一人でもよいのですが、出来れば二人以上で競わせるという状況を作って、5m競争をやってみてください。

もっと長い距離になれば、そこまでスタートに集中する必要もないのですが、5mという短い距離ですと勝負はスタートで決まってしまいます。

この時の選手たちの動きをじっくり観察してみると、スターターの動きに集中し、一瞬たりとも出遅れないように気持ちも重心も前がかりになっていることが分かると思います。
そしてスタートの瞬間、どうでしょうか全員5メートル先のゴールに向かって動き出せたでしょうか。

瞬間的な動きで集中してみていないと分からないかもしれませんが、ほぼ100%の人間はスタートの合図の瞬間に、後ろに一歩下がってしまうのです。

人間の本能が、前に進むエネルギーを得るためには、極端に言うと一度後ろ方向に踏ん張って、その反力を使ってエネルギーを得ようとする動きをやってしまうのです。

同じことを何度かやらせてみてください、負けた選手は次こそ勝とうと、踏ん張る動作が極端になってきます。
見ていて面白いほどです。

次にその事実を説明し、前に進むんだから後ろに下がるなよと、声をかけてみてください。
今度はどうやってスタートしてよいのか分からず、動作がぎこちなくなってきたり、合図と同時に踏ん張らないことでワンテンポ遅れてスタートを切るなど、パニック状態になります。

この事実がまさに我々の既成概念に染み付いてしまった、「屈筋優位説」の証明なのです。

よしこの時と頑張る瞬間には、どうしても屈筋が働いてしまうのです、そしてその方が有利で正しいことだと思ってしまっています。

スタンディングスタートで右足を後ろにおいて構えていたとすると、その右足で地面を蹴って、地面の反力を得るためには、構えた時の重心配分から、一度右膝を曲げる(屈筋を使う)という予備動作があって、はじめて膝を伸ばして(伸筋を使う)地面をけるという動作が行えると思ってしまっているのです。

このことは、スタートという動作が直接結果に関与しない、例えば走り幅跳びとか走り高跳びなど、自分のタイミングで動き出せばよい状況であれば何の問題もありません。

しかし、短距離走はもちろんのこと、野球での盗塁のスタートやサッカーなどの対人競技で、相手を抜き去ろうとする時、逆に抜き去ろうとする相手に反応良くついていくという場合など、一瞬の遅れが致命的な状況を作り出すような状況の中では、この曲げて伸ばすという使い方は、絶対に避けるべきなのです。

しかし現実は、どんなにその事実を説明し練習の中である程度できるようになった選手でも、試合という結果を求められる状況の中では、やはり同じことを繰り返してしまいます。
とくに野球の盗塁の動作では、そんなこと練習でやってないだろうという動きをされてしまうことがあります。

この状況を「居付く」と表現しています、そのままの意味にとれば、長い時間動かないように聞こえるかもしれませんがほんの一瞬の出来事です。

いや短距離走ではスターティングブロックという道具まで使って、前に進む反力を得ようとしているよ、と言われるかもしれませんが、あのブロックこそクラウチングスタートで両手を広げて体を支え、号砲とともに両手の支えを外すことで重心が前方向に落下していき、その落下する上半身の先に足を降り出すためのブロックであって、両手両足の重心の配分を、一度すべてブロックに乗せ変えて、それをしっかり蹴ってという使い方では完全に居付いてしまう瞬間ができてしまうのです。

もしかしたら専門の陸上競技選手の中にも、いまだにブロックを強く蹴ってと思っている人がいるかもしれません。
これは難しい表現ですが、蹴るなと言っているわけでも蹴れと言っている訳でもないのです。

最も無駄なく体を前に運ぶ(結果として速く走る)ためには、その障害となる居付くという瞬間を排除したい、そのための方法論としてこうやったらどうでしょうかと考えられたものなのです。
実際にトップレベルのスタートの瞬間を見てもらえば、そういう雰囲気は伝わってくると思います。

ですから現実的にはブロックには強い圧がかかります、それは前のめりになった重心を支えようと足を前に運ぶという動作に必要な、最適な力が加わったということです。
はじめからこのブロックを強く蹴ることで強い反力をもらって、スタートダッシュにつなげようとした蹴り方とは意味が違うのです。

居付くという行為は、例えば真剣の日本刀で対峙した侍が、相手の剣の動きに対応しようと一瞬でも屈筋を使ってから伸筋を使うという居付きの動作が入れば、もうすでに相手の剣先が届いて、結果は死が待っているということです。

現在はそこまでの状況はありませんが、それに近い状況で戦っているスポーツ選手たちには、こういうことまで考えて体を使えるようにしてほしいのです。

なかなか実際の走り方の説明にたどり着けません。
次回にはなんとかと思っています。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
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