3時間授業

昨日は久しぶりに気分が高揚して、ツイッターで情報を先に発信してしまいました。

その情報とはもちろん「J2カマタマーレ讃岐」から、トレーニング指導のオファーをいただいたことでした。

このチームのヘッドコーチは、私がサンフレッチェ広島在籍時に選手として活躍し、その後もいくつかのチームで活躍した上村健一君です。

彼が新人として入団してから3年間同じチームで仕事をしましたが、正直扱いにくいというか、素直に言うことを聞かないタイプの選手でした。

私も人のことは言えないタイプですし、やることが多すぎて全員にまで手をかけられる余裕がなかったため、とくに彼に対してどうのこうの思っている暇もありませんでした。

私がチームを離れて2年後、ヴィッセル神戸のフィジカルコーチという立場で再会した時、彼がいたずらっ子のような笑顔で、私のところに挨拶に来てくれ、「西本さんがもっと厳しくトレーニングをやれと言ってくれていたら、僕はこんなにケガで苦しまなくても済んだのに」と言うではありませんか。

一瞬何のことかと思いましたが、度重なる膝の故障に、出会った頃、しっかり私の言葉に耳を傾けトレーニングをやっていれば、もしかしたらもっと違うサッカーが出来たかもしれないと、本気で思ってくれていたようでした。

「いくら言っても言うことを聞かなかったじゃないか」と、やりかえしましたが、あの時の表情はとても印象的でした。

その後、ヴェルディに所属していた時には、若手の選手を私のところに連れてきてくれたり、指導者となってからも同じようなことがありました。

自分の失敗を繰り返させたくない、私の話を聞いたり指導を体験することが、選手の成長にとって大きなプラスとなる、彼はそういう気持ちで私との関係を保ち続けてくれていたようでした。

昨年私の元を訪れてくれた際にも、「お前が来てくれと言ってくれるのなら、いつでも手伝いに行ってやるぞ」と言って別れましたが、チーム事情もあって昨シーズンは実現しませんでした。

あれから1年、私のサッカー選手に対する動きづくりの指導方法は間違いなく進歩し、自信を持って選手の能力を向上させられるレベルにある、という所まで来たと思います。

現実的に、チームを指導するという環境はありませんでしたが、個人的には何人かの選手を指導し、確実に手ごたえを感じていました。

カマタマーレ讃岐は、昨シーズンJ2で苦戦を強いられ、J3との入れ替え戦でからくも降格を免れたシーズンとなっていました。

直接的には言えませんでしたが、色々な人間を通して、「今声をかけてくれるなら、私の力で何とかチームを変える手伝いが出来るかもしれない」と、メッセージを送り続けていました。

本当に今なら、私の考えている選手の能力向上のメソッドを、一番形にしやすい環境があのチームにあるのではないか、そう思ったのです。

どこのクラブも経営的に厳しく、私のような人間を抱えるほどの余裕はないと思います。

だからこそ、こういう形でスポット的な関わり方でもいいから、協力関係が出来れば、逆に組織の中に入ってしまうよりも客観的にチームや選手が見られて、的確なアドバイスもできるのではないかと思のです。

ただ今回は3日間限定の臨時コーチですから、継続的なお話をいただいているわけではありません。

たとえ今回の、一度限りの指導になったとしても、今の私に声をかけてくれたクラブに対して、私は精一杯協力し応援する気持ちが湧いてくるのは当然のことです。

限られた戦力の中で、一人一人の能力をたとえ10%でも向上させることが出来れば、チーム力の向上は10%どころではないと思います。

「私の仕事は、監督が指す将棋の駒を磨くこと」、その指し手の監督とはお会いしたことがありませんが、私に興味を持ち、指導にも大きな興味を持っていただいているとのことなので、私が磨いた駒で、ぞんぶんな戦いが出来るよう下地を作ってきたいと思います。

チームからは何も発表がない状態で、といっても、私が3日間指導するということが、外部に対してリリースするほどのニュースではありませんが、このブログを読んでいただいている皆さんや、ツイッターを見ていただいている皆さんだけでも、四国の香川県にホームタウンを置くカマタマーレ讃岐というチームに注目していただくきっかけになればと、勝手に先行して発信させてもらいました。

私は一職人で、相手にするのは目の前の選手のみ、後のことはまったく興味がなく、営業部門とかには関心もありませんでしたが、広島に戻ってから、川崎を愛するサポーターの方と親しくお話をさせていただく機会があり、広島で一緒に応援もさせていただいてから、プロスポーツに対する見方が大きく変わりました。

一緒に戦ってくれるサポーターや、支援してくださるスポンサーや後援の企業の方々の応援があってこそのクラブ運営で、現場にいるトレーニングコーチだからトレーナーだから、自分には関係ないどころか、どんな形でもいいから、そういう方々に対して感謝の気持ちを込めて何かできることがあるのなら、黙って見ているより、こちらから動いた方がいいと思うようになりました。

もし私が指導する3日間に興味があるとか、西本という人間がどんなことをするのか見てみたいという人がいてくれるのなら、クラブからのリリースがなくても、私からの発信でグランドに足を運んでくださるサポーターが一人でもいるのなら、それがそのまま選手のモチベーションを上げ、クラブを活性化させる一助になるのではと勝手に考えています。

私にそんな力があるのかは甚だ疑問ですが、そんな心意気で香川に行こうと思っています。

さて、ここで行っている指導ですが、一般の方に対する指導とプロの選手に対する指導で、何が違うのかということになりますが、けっして手を抜いているとか、そういう意味ではありません。

彼らは、目の前に勝負の世界が待っています。

それはチームとしての勝ち負けではなく、個人としてチームメートとの戦いでもあります。

試合に出ることが出来なければ、来年の今頃はチームにいないかもしれません、それどころかサッカー選手という立場すら失ってしまうかもしれません。

そういう覚悟ですべてのことに取り組まなければ、結果など出るはずはありませんから。

その一つの手段として私の元を訪れてくるわけですから、私の自己満足で終わるわけにはいかないのです。

昨日初めて来た二人の選手には、何と4時間半も指導を続けてしまいました。

最初の説明では、「3時間は付き合ってくれ、1時間やそこらで何かを分かろうなんて無理だからね」ということでスタートしました。

学校の授業ではありませんが、1時間目は座学、サッカー選手にとって「西本理論」がどう役立つのかを、まずは頭でしっかり理解してもらう所から始まります。

2時間目は、その理論に沿って室内の器具を使ったトレーニングを行ってもらいます。

そして3時間目は屋外でのトレーニング、頭で理解し室内で体に対して行った意識付けを、実際のピッチの上でどう活用するかというステップで進めていきます。

その各1時間の予定が、それぞれ大幅に時間オーバーとなってしまい、終わってみれば4時間半という長丁場になってしまいました。

来てくれた本人たちのために役に立ちたいという気持ちはもちろんですが、毎年主力選手が移籍してしまい、戦力ダウンは誰の目にも明らかなチームを指揮している、かつてトレーナーと選手という立場で共に戦った現監督を、少しでも応援したいという勝手な思い込みも大きな原動力となって、指導にはどうしても力が入ってしまいます。

教えただけでは私自身が満足できないのです、このくらいの動きが出来れば、間違いなく昨シーズン以上の活躍が出来るだろうと、たとえ1度の指導であっても、私がそう思えるところまで教え込みたいという気持ちで指導しています。

ただ、1度だけのつもりできた選手も、残されたわずかな時間の中で、せめてもう1度指導を受けたいと明日もまた来てくれることになりました。

外部の人間ですから、私のところに来てくれる限りは、私の考え方で指導することが出来ます、組織の中ではこうはいかないでしょうが、前回の記事の通り、一人でやっているからこその真剣勝負が出来ます。

1時間目から2時間目、そして3時間目が終わった時に、初めて1時間目の座学の重要性が分かり、すべてはピッチの上でのプレーにつながっていることに気付いてくれます。

受けない冗談も言うことがありますが、私の口から発せられた言葉に、無駄な言葉は一つもありません。

それくらい濃密な時間が過ぎていきます。

毎回全力投球ですので、このところの疲労はかなり堪えています。

そんなことは言っていられません、私の故郷愛媛では、愛媛FCが問題を起こし、悪い意味で話題になったり、まだ地域リーグの今治FCが良い意味で、愛媛FCを上回る話題を提供しています。

私はそのどちらとも関係がありませんが、同じ四国香川県のチームの指導をさせていただくチャンスをいただけたことを、素直に喜んでいます。

「たった3日で何が出来る」、そんな声も聞こえてきそうですが、たった3日だからこそ、お互いが限られた時間で何かをつかもうと真剣に取り組めると思います。

3時間の授業を、3日間にどう振り分け、選手の意識改革と動きの変化を引き出すために、もうわずかな時間しかありませんが、しっかり頭を整理して臨もうと思います。

こういう緊張感嫌いじゃないです。
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Re: 我那覇和樹をお願いします。
改めてフロサポの皆さんが、どれほど選手を大事に思ってくださっているのかが伝わってきます。
今、所属している選手たちも、応援してくださる皆さんの気持ちを、心から受け止めて、プレーはもちろん、日々の生活も含めて自覚をもって行動して欲しいと思います。
彼にはすぐに声をかけて、話をしたいと思います。
私の指導がきっかけとなって、活躍する姿を見せて欲しいですね。
  • 2015-01-24│22:26 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
我那覇和樹をお願いします。
おはようございます。
フロサポの阪井でございます。

カマタマーレの指導、ツイッターでも何人かの方が書いていましたが、我那覇選手をよろしくお願いします。

彼の来歴をご覧いただければ分かりますが、フロンターレのJ1昇格に大いに貢献、J1昇格後も活躍し、オシムジャパン時代に代表にも選ばれたことがある選手です。しかし、医療判断トラブル(ドーピング疑惑)で精神的に調子を落とし、怪我をしやすくなり、サッカーの調子まで落としてしまいました。

ドーピング疑惑を解決するため、国際司法裁判に判断を委ねるところまで手を伸ばし、5000万円とも言われた費用を自分で背負いこみました。

そんな負債を負わせるわけにはいかないと思ったフロサポたちは、我那覇募金活動を開始、最終的にはその全額を募金で集めたそうです。もちろん、私も協力しました。

我那覇和樹という選手は、それほどにフロサポに愛されているのです。今でもです。

彼が選手としてフロンターレに戻ってくることはないでしょう。しかし、天皇杯等で新しくなった等々力でフロンターレと対戦する姿はフロサポ全員の夢でもあります。復活を願っているはずです。

カマタマーレの選手が真っ白な心と頭脳で食いついて来ることをお祈りします。

本文とは関係が薄い長文コメント、失礼しました。
  • 2015-01-24│09:42 |
  • 阪井徹史 URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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