正しい体の動かし方、改めて思うこと

週末から今日にかけて、トレーニングの個別指導に来てくれた選手が二人ありました。

茨城からトレーニングの指導を受けに行きたい、大学を卒業し地元のクラブチームでサッカーを続ける、ついては金曜の午後と土曜日の午前中、合わせて丸一日の時間を取って欲しいという電話があった時、何の疑いもなく男子の選手だと思いました。

どのカテゴリーかまでは聞きませんでしたが、わざわざ広島まで来て私の指導を受けることで、サッカー選手として少しでも成長したい、それが女性であることに気づいたのは、直接顔を合わし受付票に記入してもらった内容から具体的な話を始めた後でした。

トレーニングウェアに身を包み、大きなリュックを背負って現れた時にも、何の疑いもなく男性だと思っていたため、電話の時にも言ったけど、女の子みたいな名前だね、と口にしてしまい、どういうチームでプレーを続けるのかということを聞いていた時に、「なでしこリーグを目指して、今地域リーグで戦っているチームです」言葉を聞いた瞬間に、私の頭はまさにパニック状態となりました。

「なでしこリーグ、え、女子・・・」失礼ながら電話の声も直接会話する声も、女の人からこういう予約の電話があるはずがない、という先入観があったにせよ、普通に若い男性っぽい声だし、ショートカットで化粧気の少ない顔も、まさかまさかの展開でした。

私自身が気持ちを整えるのに少し時間はかかりましたが、相手が男性であれ女性であれ、目的があってここまで来てくれたのですから、なんとかして満足する形にして返すのが私の仕事です。

逆に、女性の中にもこんな気持ちを持って、勇気を持って行動できる人がいるんだ、女性アスリートに対しても私の指導は十分伝えられるものだということを証明する、大きなチャンスだという気持ちで、二日間真剣に向き合うことが出来ました。

男だから女だからそれがどうしたと、言われるかもしれませんが、そこには明らかに違いがあって求めるものが違ってくるのは仕方がないことです。

しかし今回感じたことは、そういうことではなく、一人の人間としての能力の限界を探るというか、可能性を最大限に発揮してもらうためのトレーニングは、まったく同じであるということでした。

極端に言えば、22歳の彼女に指導して身に付けてもらおうと思った動きは、中学生の男子には求めない動きのレベルだったかもしれません。

高校生の中にも、彼女が身に付けてくれたのと同じ動きが出来ない選手もいるでしょう。

要するに相手の性別も年齢も関係なく、今何が出来て何が出来ないのか、そして自分がどうなりたいかという目標を明確に持っているか、それだけだと思いました。

かなり厳しい言葉もぶつけましたが、しっかりと受け止め真剣に返してくれました。

現時点では無名な選手かもしれませんが、本来の意味で動きの本質に迫ろうとする姿勢は、名前のあるなしに関わらず、大きく評価できる素晴らしい選手だと思います。

そして私にとっての大きな収穫は、動き作りのトレーニングの中で、筋力において男性とは差がある女性にとって一番難しい、動きのキレを感じさせる、また感じることのできる動きとはどういうものなのかという問題に直面できたことでした。

男性であれば、私にとってはキレのある動きではなく、ただ無駄に激しく動いているように見えるだけの動きでも、周囲に対して動きの良さという意味でアピール出来るかもしれないでしょう。

しかし、女子ではなかなかそこまでの動きにはならないと思います。

だからこそごまかしのキレではなく、「本来の意味のキレのある動き」を身に付けてもらおうと思ったのです。

そのカギとなったのが、「上半身と下半身を割って使うと」いう、これまで私が指導の際にキーワードとして使ってきた言葉に加え、「下半身を動かさず上半身から動き出す、上半身を動かさずに下半身から動き出すという、割って使うというイメージに加え、両方動かさずに、お腹だけを動きたい方向に向けていく」というものでした。

上半身には肋骨があって、一つのドームを形成していますから、これをバラバラに使うというイメージはありません。

下半身は骨盤によって形成されていますから、これも割って使うというイメージは持てません。

そこに登場するのが、骨盤と肋骨の間のお腹周りを、単独で動かすというイメージです。

このイメージで体が使えるようになると、体がどちらに動き出すのか、相手からの判断が難しくなるばかりか、自分自身も左に行こうと思ってお腹をそちらに向けたけれど、肋骨も骨盤も意識は正面に残っているから、逆方向にも全く自然に動かすことが出来るのです。

体全体が右向け右と、一体となって動いてしまうことで、簡単に相手に振り切られてしまう選手が目につきますが、二分割どころか三分割のイメージで体を操ることが出来れば、相手への対応はずっと楽になりますし、自分から仕掛ける時でも相手を惑わすに十分なフェイントになるはずです。

力強さを女子に求めるより、こうしたしなやかな身のこなしを身に付ける方が、ずっと重要だと思います。

しかしそのためにはかなりの訓練というか、結果的には筋力も必要となります。

いわゆる体幹部を安定さえるというか、固定するイメージとは真逆な発想になります。

動き作りの副産物として得られる、使える筋力も得ることが出来ます。

二日間のトレーニングで、この方向性に改めて自信を持ちました。

今はどんなレベルであっても、高い意識で貪欲に吸収する姿勢があれば、だれでも到達可能な領域だと思います。

この三分割の使い方を高い次元で形にしてくれているのが、最近また記事に取り上げた「ロッベン」の動きです。

私の動きにキレとしなやかさを感じていただけたとしたら、ロッベンの動きは大きなマサカリのような切れ味と、走り高跳びに使われるポールの一番固いグラスファイバーのしなり戻しというか、剛のイメージのキレの良さだと思います。

そのイメージを追及するためのトレーニング、実はもう何年も前から行っていました。

そこに三分割という明確な意識を加えることで、さらに動き作りは完成形に近づいていけるような気がしています。

男であれば、無意識に力任せで行えていたことが、女性を指導させてもらえたことで、もっときめ細やかな表現が必要なことが分かりました。

彼女には本当に感謝するとともに、直接目の前にしてもまだ男だと思い込んでトンチンカンナ会話をしてしまったことを、改めてお詫びします。

体のキレを自分でも感じられるというのは、こういう動き方が出来るようになることなんだと確信しました。

もちろん周りから見て、そう見えないはずがありません。

今後の指導に大いに役立たせてもらおうと思います。

女子サッカーにも西本理論が浸透していくことを願っています。

そして今日、本来は休みにしている月曜日ですが、昨日卒業式を終えて明後日には関東の大学に出発するため、今日しかないということで予約を受けた、高知県の陸上選手が、ご両親とともにやってきてくれました。

4時間半の運転をしてでも、息子のために、送り出す最後の一日でも何かしてやりたいという親心は、私も4人の子供の父親として痛いほどわかります。

故障続きで、今もまともに走ることが出来ず、車の中での会話も、実技の指導は受けられなくても、考え方は知っておいた方がいい、施術を受けることが出来れば、痛みも良くなるかもしれない、そんな会話が続いたそうです。

それが結果的には本人もご両親も驚くような走り方に変わり、さっきまで走ることが出来ないと言っていた息子に、痛くないのか無理しているんじゃないのかと、本気で気遣わなければと思うほどの走りを見せてくれたのです。

どこかが悪いんじゃないのです、申し訳ないですが、痛みを訴えて受信すると無理やりにでも病名をつけられ、治してくれるわけでもないのに、ついてしまった病名に振り回され、本来の動きを忘れてしまっていただけで、体に聞けばどうやって走りたいか教えてくれるのです。

体が発する言葉の通訳を私がしているようなものです、だから走れたのです。

私が偉いんじゃなくて、体の力は凄いんです。

私にとっては当たり前のこと、最近は独り言でしか言いませんが、「誰に指導を受けていると思ってるんだよ」と、心の中ではやっぱりそう思っていられることが、自己満足ではありますが、私のモチベーションとなっています。

現在の陸上長距離の選手に、大きな期待を持たせる選手は残念ながら見当たりません。

というよりも、私の提唱する体の使い方で走っている選手が見当たらないと言った方が正しいでしょうか。

彼は箱根駅伝のメンバー入りを目指して進学しますが、けっしてスカウトされてとか大きな期待をかけられての入部ではないそうです。

それこそ大チャンスでしょう、野球でいうドラフト外の無名選手が、「今までの常識とは違うけれど、とてもいい走りを見せてくれる、育ててみよう」と、指導者の目を向けさせることが出来たら、こんな痛快なことはありません。

たった一日の指導で何が変わるんだ、そうです、一日だからこそ、お互いが真剣に向き合い、何かをつかもうと取り組んでくれたのです。

ご両親が、「3年前、高校入学時に私と出会っていれば今頃どんな選手に育っていたのだろう」と、残念がってくれましたが、この言葉は私と出会った人間が必ず使う言葉で、言われることは有難いですが、「みなさんとは今日出会えたのです、出会えていない人から見れば、凄いことを知って身に付けようとしているのです。これからがスタートです」と、話をしました。

あっちもこっちも自信満々に指導しているが、本当に大丈夫なのかと、心配していただくかもしれませんが、大きなお世話です。

私が相手にしているのは、サッカー選手でも長距離選手でも男子でも女子でもないのです、真剣に成長したいと願う一人の人間なのです。

だからこそ「誰かのために」が通用するのです。

今までやってきたこと、もっと成長しなければならないこと、私自身まだまだ考えなければならないことはたくさんあります。

それでも、今の私でも十分にお役に立てることはたくさんあります。

楽しい数日間を過ごさせてもらいました。

まだまだ同じような夢追い人も応援する仕事は続きます。

夢先案内人を自認していますが、夢に向かって進んで行こうとする若者と過ごす時間は、まさに至福の時です。

ただ体力的には正直キツイです、今日も一緒に走りながら、最後はずるをしてコースをショートカットしました。

いくらハーフスピードとはいえ、箱根を目指す若者と、今年57歳にならんとする私が張り合って走るには無理があります。

そうは言いながら、まだまだ負けたくはない、その気持ちがあり続ける限り、この仕事を続けていけそうです。

さてあとどれくらい気力が持つのでしょうか、「西本さんは一生そうやって走っている」、そんな言葉をかけてくれる人もいますが、色々な意味で、本当に倒れるまで走り続ける人生になりそうです。

リョート君がんばれ!箱根を走る時には必ず応援に行くからね!
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Re: 帰ってから実感した変化
改めて失礼をお詫びします。
さっそくトレーニングの成果を感じらているようですね。
他の選手から、どうしてと不思議に思われるような動きが出来るように、継続して取り組んでください。
そう時間がかからないうちに、きっとそうなっていくと思います。
間近にプレーを見ることはできませんが、いつかこんな動きが出来るようになりましたと、動画でも送ってほしいと思います。
十分必要な能力は持っていると思うのでも、動きをどんどん磨いていってください。
お疲れさまでした。

  • 2015-03-04│19:03 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
帰ってから実感した変化
西本先生、2日間大変お世話になりました。
こちらこそ、紛らわしい見た目や声で先生を混乱させてしまい申し訳ありませんでした(笑)
さて、広島から帰ってきてまず感じたことは、指導を受ける前と比べ目線の高さが高くなったことでした。変に意識せずとも、自然によい姿勢で過ごすことができるようになりました。今まで姿勢を正そうとするときには、首回りや脊柱についている筋肉のみで正そうとしていたのですが、すぐに疲れてしまうことが多く背中が張ってしまい筋肉が熱を持つようなこともありました。しかし広背筋が正しく働くようになると、一部の筋肉で無理に姿勢を正す感覚がなくなりごく自然にすっと姿勢が正されるようになりました。
また、練習の際にはとにかく動きやすさを感じました。今までの自分はどうしてあんなに踏ん張って動いていたのだろうか…と不思議に思うくらい楽に、そして素早く動くことができました。体にとっていい動き方をしていると不思議なもので、走れば走るほど心が晴れやかになっていくように感じました。
とはいえやはりまだまだ未熟な自分では少し疲れが見えてくると、屈筋優位の動きが顔を出してきてしまいます。当面の課題は先生にご指導いただいた体の動かし方をしっかりと自分の体に浸透させることと、効率良く動くことで生まれた余裕をどのようにいかすのか、という2点であると思っています。
またお会いしたときに成長した姿を見せられるように取り組んでいきたいと思います。
本当にありがとうございました。
  • 2015-03-04│13:59 |
  • 大武 URL│
  • [edit]
Re: 講習の御礼
コメントありがとう。
確かにここに来る前の状態では、不安だらけのスタートになっていたろうね。
でも、たった数時間であんなに変われたんだよ。
迷わず継続すれば、もっともっと良くなるよね。
箱根を走る自分の姿を明確にイメージし、焦らず着実に進んでください。
期待しています
  • 2015-03-02│21:46 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
講習の御礼
本日は指導をしてくださりありがとうございました。自分はここ数日間とても不安で、やっていけるかどうか自信がありませんでした。しかし、今日西本さんに指導をしていただき、大学に対する不安な気持ちが大きく変わり、逆に楽しみだと思えるようになりました。今日学んだことをこれから毎日継続していき、恩返しできるよう箱根目指して頑張っていきたいと思います。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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