伝えることの難しさ

昨日も午前中、大学に進学してサッカーを続けるという、卒業式を終えたばかりの高校生と一緒に、室内のトレーニングを行い、公園に出て走ったりボールを蹴ったりと、体を使う仕事が続き、少々疲れ気味ですが、夢を追う若者と一緒に流す汗は本当に心地良いものです。

予定より早く、トレーニングの途中から雨が降り出しましたが、そんなことは構わず二人でボールを蹴り合いました。

この歳になって、こんなに体が動かせて、自分の息子よりも若い年齢の選手と一緒に走り回れることは本当に有難いことです。

私が主宰する勉強会「西本塾」と、西本塾に参加した方を対象とした「深める会」、今年この会を継続して行うことを決めた時に考えたのは、ただ伝えるということでは終われない、参加者と一緒に学びつつも、私が直接出会うことのない誰かのために役立つためには、私から学ぼうとする人たちに、それなりの力を付けてもらわなければならないということでした。

その目的に近づくために最も重要なことは、西本塾に参加してくれた人が、私が伝えた理論と実技を、本気で自分のものとし、活用できる力を身に付けてもらう機会を作ることでした。

そのために、昨年は1日開催で行っていた深める会を、施術やコンディショニングといった分野と、動き作りのトレーニングを中心とした内容を、1日づつ二日間に分けて行うということにしました。

今月の21日と22日に、その試みの1回目となる「深める会」を行います。

残念ながら参加を希望してくれているのはお一人だけです。

もう一人申し込んで頂いていましたが、先ほど仕事の都合でキャンセルとなりました。

一人でも多くの人に私の考えを知ってほしい、自分が出会えない誰かの役に立つ人材になって欲しい、そのためには西本塾で、まる2日間伝えたくらいでは、とても足りないのです。

受け取る側の求めるものと、私の伝えたいことに違いがあるのは分かっています。

昨年までは、それでもいいと思ってやってきましたが、今年はさらに高いレベルを目標にして始めました。

時間はかかるとは思いますが、本気で学び続けてくれる人を、一人でも多く育てていきたいと思います。

今月の深める会、このまま申込者が一人であったとしても開催します。

準備しているすべてのことを、これでもかというくらい指導させてもらいます。

ブログの内容や著作物などに書いてあったことを、私から直接聞きたい学びたいという人たちを相手に、受け身な立場で始まりましたが、もう受け身では気が済まなくなりました。

攻めの気持ちで指導し、絶対に身に付けさせるというくらいの気持ちで向き合います。

さて、今週の月曜日からNewspicksで、新たな連載をさせていただくことになりました。

今までは、一流選手の動きを分析し、体の使い方のカラクリを探ることで、一般の方にも何かヒントになればという内容でした。

今回は、いわゆる一般の方向けの「健康指南書」的な内容です。

私は常日頃から、万人に叶う◯◯健康法や、◯◯トレーニングのように、世の中に湧いてきては消えていく、一時の流行のような、気をてらったというか、なんと言えばよいのでしょう、そういうものを自分では絶対に書きたくないし、実際にこれだというものには出会ったことがありませんでした。

私がもう11年も前に書いた本が、消えることなく少しずつではありますが増刷されて読み続けられているのも、書かれている内容は不変のもので、まったく売らんかなの気持ちがなかったからではないかと思います。

それでも、あの本に書かれた内容のすべてが、私の書きたかったことかといえばそうではありません。

最初に初稿として書き終えて送った内容の、半分以上はどこかに消えてなくなり、編集者とのやり取りの間にどんどん加筆修正が繰り返され、途中で自分は本当にこんな内容の本を書きたかったのかと、書くのをやめようと思ったことも一度や二度ではありませんでした。

それでも最終的には、こうして読み続けられる内容にまとめていただけたことは、プロである編集者の力だと思っています。

このブログのように、一方的に私の思いを書き綴っているだけなら何の問題もありません、有料ページでお金をもらっているわけではありませんから。

それが書籍として出版ということになるとそうは行きません。

著者として書きたいことと、読者が読みたいと思うものとの間には当然隔たりがあるでしょう。

出版社の編集者として、売れる本になってもらうためには、それなりの内容を要求するのも当然です。

書きたいもの、読みたいもの、売りたいもの、売れるもの、いろいろな思いが交錯して一つの形を作った行くのだということを経験させてもらいました。

素人が考えても、発行部数こそ大した数ではないのかもしれませんが、有名人でもない私のような人間が書いた本が、これだけロングセラーになっているのであれば、出版社として続編なり、同じような内容であっても少し切り口を変えれば、また少し売れるかもしれないと商売気を出してもおかしくありません。

世の中にそんな風な、二番煎じや、中身はほとんど同じで写真だけが違うような本がたくさん出ています。

出版不況と言われる中、売れるとなったらとことんその路線が続けられるようです。

事実私にも、そういうお話がなかったわけではありません。

それが実現しなかったのは、私があの本の中に書いたことは、人間の体に仕組まれたカラクリの真理であり、何年経とうと変わるものではなく、それ以上もそれ以下もない、精一杯書いた内容だと思っているからです。

操体法の実技を紹介するイラストのページが少ないから、それを中心とした、もっと実用的なハウツー本のような内容にという提案には、「それが私にとって一番書きたくない内容ですと」、突っぱねてしまうのです。

あれから11年にもなります。

いろんなことがありました。

私の目の前にいる人間に対しては最高の結果を出す自信はあります。

しかし、それは奇跡のような確率で私と出会った数少ない人たちだけが感じられる恩恵です。

残念ながら、そういう体の変化にも気づけない頭と体になってしまっている人もいますが。

このまま私の中だけに眠らせておいてはいけない、その思いがこのブログであり、西本塾へと繋がっていきました。

それでも、もし今私がこの世から消えてしまったとしたら、自信を持って本当に私の思いを引き継いでくれる人を、まだ養成できていません。

人生の折り返し点をとっくに過ぎて、少し焦りにも似た感覚が私の中に芽生えてきているようです。

スポーツライターの木崎さんとのご縁の中で、「西本さんの理論をもっと世の中に役立てるために、分かりやすい一般の方向けの健康指南書を書いてみませんか」という言葉に、「だからそんなものが書けるわけがないでしょう」と、いつもの調子で応じたことから始まりましたが、自分のそういう思いから、百歩も千歩も譲って、今なら書けるかもしれない、いや書かなければならない時期にきているのかもしれないと、パソコンに向かう日々が続きました。

実はその作業を行っていたのは、昨年行われていたW杯本大会の前でした。

当然のように、書かせたいものは分かっていますが、私にとっては、そんなことよりも書きたいものが最優先で、売れる本にするためにはという提案にはまったく耳を貸そうとしませんでした。

一般の方が読んで、文字として得た情報の中で理解して実行してみた時、本当にその効果が実感できなければ、書いた意味がないし、読んでもらう意味もない、どこかを触ればどこかが良くなる式の、お手軽な健康法などあるはずがないと分かっていて、それを私が世の中の人に提示するなど、他の誰が許しても私自身が絶対に許せないと思っています。

それでも、無い知恵を絞って、日常生活の様々なシーンで気楽に取り組め、効果を実感できると自信を持って提案できる内容の本にするために多くの時間を費やしました。

「いつも分かったような分からないような偉そうなことを言っている割りには、こんなお気楽な本を書くんだね」という声が聞こえてきそうになるのを、今回は我慢してでも、今まで世の中に出ては消えて行った健康指南書とは 一線を画したものにしたいと頑張ったのです。

しかし、木崎さんの手元に送った原稿が、どこかの出版社に興味を持っていただき、出版に至るというところまではいきませんでした。

たぶん、興味を持ってくれたとしても、11年前と同じことが繰り返されていたことは目に見えています。

売れる本にするために、修正修正が繰り返され、自分が書きたかったものはどこへ行ったのだろうということになって行くのでしょう。

自分の中ではもうこれ以上は譲れないというところまで落とし込んでいますから、その作業はできないのです。

木崎さん自身も私がそういう人間であることをわかってくれていますから、この辺で仕方がないかと諦めてくれたのでしょう、なんでもいいから出版したいということにはしなかったのだと思います。

自分の中では、すでに一冊の本として書き上げ、完結している過去のことだったのですが、今回Newspicksで、連載という形で世に出していただけることになりました。

当然私の当初の原稿通りというわけにはいかないでしょうから、毎週月曜日の5時にアップされることを前提に、内容の修正のやり取りをしながら、連載という形をとらせていただくことになると思います。

私自身最終的にどんな形で完結して行くのかとても楽しみです。

「西本もこんな内容のものが書けるのか、やってみたけど結構いいね」そう思っていただくことができるように、これから頑張っていきます。

人生の後半戦に入り、今まで以上に波乱万丈が続いています。

こうなれば行けるところまで行くしかありません。

私は全力で走り続けます、誰か真剣に追いかけてきてくれませんか。

私を、追いつき追い越せということを言う人がいますが、絶対にそんなことはさせません。

どんな状況になっても、絶対に前を走り続けます、追い着けるものなら追いついてみろ、という気持ちがなくなった時は、静かに消えていきます。

「深める会」、もしお一人だけの参加のままだったら、覚悟してきてくださいね、首に縄を付けてでも私の進む方向に引っ張っていきますから(笑)

あなたが、私が伝えるではなく、本気で指導するという気持ちになった第一号の相手になります。
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お詫び
今回の深める会の要項がHPにアップされてから、西本先生の本気度を痛烈に感じ日々過ごしており又、楽しみにしておりましたが、キャンセルしてしまい申し訳ない思いと自分としても残念です。近況報告とともに、ここに至った経緯を報告させて頂きます。
現在、中学生のサッカー選手を2名診ています。
1人目は、中学2年生ポジションFW、目的は小学校までは足の速さが売りで活躍していたが、中学生になり伸び悩んでいるらしく、障害も多くなってきた。今は痛む所は無いが、サッカー有名高校への入学を目標にしており、どうにかならないかということで、昨年12月より週1回のペースで来院中。
2人目は、中学1年生ポジション、ボランチorCB。目的は昨年11月に整形にて、腰椎分離症と診断。コルセットの着用を義務付けられプレー。痛みで思うようなプレーができず、痛みを何とかしてほしいと今年1月より、週1のペースで来院中。2人はいとこ同士で、幼稚園の年中から同じチームで現在も同じ中学校でサッカーをしています。結論から申しますと、動きをどうにかしたいという要望と、痛みをどうにかしたいと要望に対して、私がこの数カ月かけて行ってきたことは、まずは基本の骨盤と背骨、股関節と肩甲骨を機能的に動かすために広背筋に機能してもらえるように説明しフライグバック1から一緒に取り組んで行きました。最初は全くできない状態で、2人とも背中を使えないことを体感しながら、コツコツ取り組みました。2年生の子は1~3まで、1年生の子は痛みを考慮しながら取り組んでいたのでゆっくりですが1をできるようになりました。
それと、身体ほわぁとから朝3分の操体法をベット上で行いました。1か月経過(4回目)頃から中1の子の腰痛はほとんどなくなり、プレーも思うようにできだしたのですが、時折痛みを訴えるので、他に何か原因があるのではと思いながらある時、試合があるという事でこっそり2人のプレーを見に行ったところ、小さい時からの癖なのでしょうか左肘は屈曲し身体にくっつけたまま、右肘は伸展した状態で、走ったり、蹴ったり窮屈そうにずっと動いていました。この癖が身体の動きを邪魔しているのではないかと思い本人と確認し改善すべく走りへと取り組んでいる最中です。2年生の子はフライングバックでの効果で、キック時や相手を背負った時のプレーでの変化を感じだしてきたと言ってます。こちらも走りへ取り組んでいる最中です。(店前の道路)
今回、相反する2人の要望を踏まえたうえでほぼ同じ事を基本からと思いとりくんできましたが、今までの身体の使い方でいかに負担をかけてきたか、また以前の私なら体の一部分しか目がいかなかったと思いますが、西本先生のおっしゃる動きづくりと痛みをとるという作業は表裏一体どころか全く同じという事が2人の経過で実感しました。また動きづくりの重要性を再認識できましたし、現場に行って気づくことが、要望の違う2人に対して的確に答えるヒントがあると感じています。西本先生のカマタマーレの指導を拝見したり、中学生の試合に足を運ぶ事で現場の大事さと、箱の中だけの指導ではなく、何とか動ける場所を確保できないかと思うようになりました。この2人を診ていくうちに自分にもっと何かできないかと自分のレベルアップの為に今年からの深める会を自分のハードルと課しておりましたが、かねてから、顧問の先生に現場に入らせてもらってよいかと問い合わせていたのですが、やっと来ても構わないと、言われ21,22日の試合にも来てほしいとのことで、今回の参加は断念しました。どこまでさせてもらえるかは未定ですが場所を確保できたので、フライングバックと走りをもっと確かなものにするように指導できたらと思います。
ここ今治では、FC今治という名もないチームが岡田監督のもと壮大な夢へ向けて動き始めました。しかもこの組織の中には第2回の塾生の渡辺憲司さんもいらっしゃいます(先日会見の準備でプラカードを持っている方に話しかけてみて偶然お会いできました)又なでしこ予備軍のアカデミーも始まります。地域の小、中、高のサッカーも含めた市全体での取り組みがされるそうです。私のできる事は、組織外での活動で西本理論を示していくことで、どこかでつながっていき、少しでも貢献できたらと思います。亀の歩みほどですが、成長できればと思います。長々とすいませんでした。
  • 2015-03-05│21:06 |
  • 神野慎哉 URL│
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。

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