動き作りの先にあるもの

先ほどNewspicksに記事がアップされました。

今日の内容は体の「キレ」という概念を言葉にするという試みです。

「キレ」という言葉ほど曖昧に使われているものも珍しいのではないでしょうか。

過去誰一人としてこの言葉を明確に定義付られた人間はいないと思います。

今はやりのデータや動画を駆使して、客観的な指標を得ようとしても、こればかりは無理な相談だと思います。

それでもそういうことに長けた人たちは、こういうデータから今日のこの選手の動きは評価できるという結論を導き出すのでしょうが、そこにも「キレ」という言葉は持ち込むことはできないと思います。

それは、見る人それぞれの感性が違うからだと思います。

同じ選手の動きに対しての期待値というか、もっと素晴らしいプレーができるはずだと思う人がいるかもしれませんし、今日の試合の中でも、あのシーンでの動きはやはりさすがと思わせるものだななどと、評価する人によってまったく逆の印象を持たれることさえあるほどです。

「体作りから動き作りへ」、我々が真に目指すべき方向性を世の中に広めるために、こうやって小さいながらも声をあげ続けている人間として、動きづくりとは何なのか、その本質をさらに明らかにしなければ、西本理論などと大風呂敷を広げても、これ以上の進化発展は望めないのではと考えるようになりました。

体作りという概念は誰にでも理解しやすいと思います、かれこれ50年前、東京オリンピックでの日本選手の活躍を期して、ヨーロッパ各地を視察した結果の一つとして、我々日本人と欧米人の体格差や筋力の差が歴然としていたことに端を発した、肉体改造という名のトレーニング革命、その後紆余曲折、理論やトレーニング方法の変遷はあったものの、今だに体作りのためのトレーニングが、その中核を担っていることは間違いのないことです。

私自身がそういうことが必要な体で、そのためのトレーニング理論を学び実践もしてきました。

しかし、指導する側となって競技レベルのアスリートたちを対象とするようになってから、時を置かずしてこの考え方では対応できないことに気づかされました。

いわゆる「フィジカルが弱い」という言われ方を克服するために、様々な数字で評価される能力の向上が図られてきました。

海外の選手に負けない基礎体力の評価を受ける選手も出てきたと思います。

それでも世界との差は縮まるどころか、大きく開いている競技もあります。

私がそこで考えた仮説は、もともと遺伝的に備わった基礎体力をベースに動きを作っている海外の選手と、基礎体力自体を後天的に養成し、その体を使って動きを作ろうとする日本人の間に、根本的な違いがあるような気がしたのです。

成人してから身長をなんとかしてくれと言われても無理な相談です、となるとアプローチできるのは身長以外の体のサイズと、筋力や筋持久力といった客観的に評価できるものの数値の向上に限られます。

私が初期に指導していた高校生であれば、成長期の後半、正しい指導を行えばその数値を向上させることはある意味簡単で、競技力の向上にも大きく貢献できたと思います。

ところが成人した後、競技レベルがトップレベルに達した選手の中には、すでにそういう部分の目標値をクリアしている選手もたくさんいたのです。

そういう選手たちに対して、同じ発想で体作りのトレーニングを継続しても、競技力の向上には結びつかないことはすぐに感じましたし、それ以上に後天的に作り上げれば上げるほど、先天的な能力を持った海外の選手との動きの差を感じるようになりました。

これまで色々な環境で様々な選手を相手にしてきましたが、私如きが世界を相手にこうすればこうなるなどというアイデアを求められるはずもありませんし、そんなことを考える必要もなかったのかもしれません。

ただ日々の仕事を行っていく中で、誰に頼まれたわけではありませんし、実際になんの役に立つかはわかりませんでしたが、もし自分がそう言う立場に立ったら、常にそういう思いを持ち続けてきました。

広島にはサッカーのチームに呼ばれてきましたが、その最中にも自分の好きな野球の選手を相手にするとしたらどんな指導をすればいいかなどと考えていたため、その後の社会人野球の仕事やプロ野球の投手の仕事に対しても、不安どころかよしやってやろうという気持ちしかありませんでした。

そうした中、体作りから動き作りへという、まさにパラダイム転換的なことを考え実行していく中で、それだけでは物足りない何かを感じ始めていました。

体の仕組みを私なりに整理し、骨格と筋肉の関係をより明確にすることで、関節の8方向の連動とか支点を作らない動き方など、いろいろな言葉で人間の動きを説明し、本来人間とはこういう風に体を使うことが、与えられた能力を存分に発揮するための絶対条件であるというところに、西本理論の本質を見出し、それを伝えてきました。

これでパラダイム転換の旗振り役としての私の役割は、十分果たせてきたと思っています。

まだまだほんの一部の人にしか伝えられていませんが、その人たちの創意工夫によってさらに世の中に広まり、いつかは当たり前の考え方になっていくと信じています。

ただここで止まってしまっては、私も面白くありません。

と言うか、本来の体の動かし方は、というところが見えてくると、遺伝的な能力の差はあるにせよ、世界の超一流と呼ばれている選手たちの動きの秘密を、私自身納得のいく言葉で整理し、同じような動きができるために必要な、本来の意味での「動き作りのトレーニング」を作り上げていくことを、これからの目標にする必要があるのではと考えるようになりました。

その答えの一つとして、どうしても避けて通れないのが「キレのある動き」という言葉で語られてきた動きの正体を見つけ出すことです。

絶対に数字では表せないものだからこそ、多くの人に言葉として納得できるものにしなくてはなりません。

今回のNewspicksの記事は、その試みのスタートだと思っています。

凄いとか速いとか、そんな言葉ではなく、まずは私の目に選手の動きがどう写っているのか、それを言葉にすることから始めました。

それが「ロッベンは体を3分割にして使っている」という表現になりました。

彼がそんなことを意識して動いているはずはありません、だからこそ今はできないその動きを、我々ができるように努力することで、同じかそれ以上の動きができる選手を作ることができるかもしれないと思っているのです。

「彼らは特別な人間だから」、確かにそういう部分はあります。

それでも子供の頃から、彼らの動きの秘密をわかりやすく説明し、そこに近づくためのトレーニングを行えば、できないはずはないと思うのです。

私自身、イメージをつかんでもらえる程度の動きですが、すでに幾つかの動きをできるようになっています。

これまでは体を鍛えることイコール、体を固めてしまうイメージがあったように思いますが、ロッベンの動きには「剛」のイメージの中に間違いなく「柔」のイメージが見えます。

あのスピードを生み出すために骨盤を引き上げる腕の使い方、細かいステップから強烈なシュートを放つ時の瞬間的な腕の使い方、さらには今回の記事で取り上げた、足を正面に踏み込んだ瞬間に、左右どちらかにお腹をグッと回すようにしてヘソを行きたい方向に向けることで、 正面にいる相手に対して方向を変えるという動作を感じさせない、あの体の使い方は、誰が見ても「キレのある動き」と言えるものだと思います。

いわゆる体感部分と呼ばれているのは股関節から上、脇の下までだと思いますが、その中には骨盤と肋骨という大きな骨の塊が存在します。

もちろん背骨で繋がってはいますが、正面から見れば肋骨と骨盤の間のお腹の部分には動きをジャマする骨の塊はありません。

ロッベンはその部分だけを瞬間的に強烈に回しているように見えるため、体幹部分全体が向いている方向とは違う方向へ瞬時に方向転換出来るのだと思います。

あの原稿を書くためにロッベンの近況を知ろうと検索したら、なんとそのお腹周り腹筋を痛め離脱したという記事を見つけてしまいました。

昨年のW杯では大きな故障もなく、素晴らしいプレーを見せてくれたことで、足の肉離れに関しては動き方で克服できたのかと想像していましたが、私が見つけた3分割の動きを司る腹筋を痛めてしまったことはとても残念なニュースでした。

彼らの筋肉は、陸上の棒高跳びに使うグラスファイバー製のポールのようなものだと思います。

自分の体重やその時の体調、またトライする高さに合わせて使うポールの硬さを変えるそうです。

あれだけのスピードとキレを感じさせれる動きをするためには、かなり剛性の高い筋肉が必要なのでしょうね。

メッシのポールはロッベンよりも少し柔らかめかもしれません、ネイマールはさらに柔らかいポールでしょう、そんな見方をすることも選手の動きを見る一つの指標として面白いと思います。

世界のトップのレベルを維持し、さらに向上させようと努力するスーパースターと呼ばれる選手たちの、身を削るような努力は想像を遥かに超えると思います。

その秘密を少しでも探って、少しでもわかりやすく表現し、興味を持ってくれる誰かのために書き残していこうと思います。
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Re: No title
コメントありがとうございます。
色々な考え方があり、それぞれのやり方があって当然です。
私は学者でも研究者でもありませんので、客観的なデータといわれると何もお見せすることは出来ません。
ただ自分のできることをやり続け、選手のために仕事をしてきました。
批判は甘んじて受け止めますが、これからも変わらないスタンスで仕事を続け、一人でも多くの体と向き合っていきたいと思います。
その経験の中で伝えたいことを伝え、役に立ててほしいと思っています。
ただ人間の体に備わった原理原則をうまく使いこなせないと、スポーツ動作に限らず日常の動作にも支障が出ることは明らかです。
与えられた環境で精いっぱい続けて行こうと思います。
  • 2015-04-30│22:29 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
No title
通りすがりトレーナーです。お話しされていることがかなり独りよがりで、思い込みを持っているように感じます。あなたのストロングポイントは、知識や研究力ではなく、選手を洗脳する、いや騙すスピーチ力だと思います。 すごいスピーチ力をもつ人間だからこそ影響力があります。もう少し客観的なデータをもとにスポーツを解釈し、選手に敬意をはらってスピーチしてください。

そして、体づくりをしても…世界との動きの差はうまっていない…ようなことを書かれていますが、トレーニングなんてそんなものですよ。サッカーやその競技の本質、トレーニングの本質を理解されていないことを露わにする文章です。文章にかいてあるようなトレーニングで競技パフォーマンスを変えようなんて失礼な話です。世界との差が埋まっていないのは、トレーニングではなくサッカー文化、練習、コーチングなどのサッカーそのものの練習に問題があるんです。

トレーニングで体の変化、進化を追求するのは、原理原則だけです。それ以外に競技動作を変えたいならトレーニングという言葉を使わずに、スキルコーチとして活動してください。でも、そこで気づくのは、実際のピッチ上での動きにはいくつものパターンがあることに気づき自分が伝えていることがあまりにも狭いということに気づくでしょう。

ビビリなもんで無記名で大変申し訳ございません。無視してください。
  • 2015-04-30│21:54 |
  • training science URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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