仕事ではあるけれど

ツイッターでフォローしている、美輪明宏さんのBOTに、「お給料は我慢料」という言葉がありました。

生きていくためにはお金を稼がなければならない、そのためには働かなくてはなりません。

世の中にはそんなことをしなくても、なんの不自由もなく生活できる人もいるようですが、人生いろいろな経験をして、我慢することを覚えることも必要だと思います。

私が言うのはおこがましいですが、会社員を辞めこういう仕事に変わってからも、自分の思ったことを思ったようにやってきたわけではありません。

嫌な思いもしましたし、我慢しなければならないことも当然ですがたくさんありました。

現実的には、私など比べものにならないような我慢を強いられて仕事をしている方の方がずっと多いと思います。

この仕事についた時、自分のやることがそのまま結果として、だれかのために役に立っているという実感が得られる、本当に有難い仕事だと思いました。

だからこそ組織やしがらみに対して妥協することなく、自分を必要としてくれる相手のために最善を尽くしてきました。

そのやり方が組織に合わないと感じてしまうと、自分からその環境を離れることを選んできました。

いまの私は、そういう意味で何のしがらみもなく、自分の思ったように能力を発揮できる環境を作っています。

いわゆる医療機関やそれに類する施設であれば、まずは人に来ていただくことが第一ですから、間違っても予約の電話の段階でお断りするようなことはないはずです。

ところが私の場合、例えば保護者の方から子供さんの動きをなんとかして欲しいという趣旨の依頼があった時、当事者である子供さんが私の存在や考え方を少しでも理解していて、自分から興味を持って広島に行きたいと言ってくれているのかを確認し、保護者の気持ちだけが先行しているような場合はお断りすることもあります。

また、すでに施術を受けにきてくれている方にも、誰にでも勧めて紹介していただくのではなく、きちんと自分の体と向き合い、人任せではなく自らが努力する姿勢を持てないような人には紹介しないで欲しいとも言っています。

どんな相手に対しても最善を尽くすことが、私に求められている仕事かもしれません。

初期にはそういう時期もありましたし、チームに所属している時には、権利意識ばかり強くて、意識の低い選手であっても対応しなければならない場合もありました。

現実的には、一人でも多くの方に来ていただき、仕事をさせていただかないと生活が立ちいかなくなっていくことは分かっています。

しかし、自分なりにこの仕事を天職と定め、誰よりも深く体との対話ができるようにと、咲き誇る花でも大きな枝振りの木でもない、土の中でそれを支える根っこの部分に思いを馳せながら、もっと良い方法はないか、もっと分かりやすい説明はできないかと、我ながらなぜここまでやってしまうのだろうと思うほど真剣に体と向き合ってきました。

そしてやっと、どんな人間に対しても、他の誰よりも役に立つことができるものを身に付けてきたと思えるようになりました。

まだまだ進化の余地はあるとは思えますが、それぞれの体に対し、今の時点で充分に対応できると思っています。

ただそこに、相手に迎合したり、この辺でいいやという妥協が入ってしまうと、自分自身に対して納得することができません。

相手が私の話を真剣に聞く耳を持ってくれなかったり、体の明らかな変化を認める心の余裕のない人にまで、私の能力をすべて発揮して対応することが、少し苦しく感じるようになってきました。

我慢料をいただくために仕事をしているのではない、本当の意味で相手の体をなんとかしたい、生意気な言い方ですが、そのことを理解してくれない人にまで私の能力が必要なのだろうかと。

仕事としてお金をいただかなくてはならない関係です。

だからこそ、ただ仕事としてやることをやってではなく、私を頼ってきてくれた人間に対して、精一杯のことをして返してあげたいと思うのです。

先日訪れてくれた大学生、メールでのファーストコンタクトから始まって、ここを訪れ私の前に立った時の姿勢から会話に至る態度が、これから数時間同じ時間を共有し、指導しなければならない相手として、どうしても素直に認められないものを感じました。

彼にとっては言われたくもないことを延々と話し、嫌なら帰れと言わんばかりの言い方になってしまいました。

それでも4時間後、握手をして笑顔で見送ることができる関係になりました。

後日電話があり、自分が求めていた部分以外の、人としての姿勢を学ばせてもらいましたと言ってくれました。

私は、関わった人たちは、すべて家族だと思っています。

その後連絡がなく、どうなっているのかも分からない人であっても、心のどこかで常に気に掛けていますし、何度も来ていただいたり、その後の近況を届けてくれるような関係になってくれば、まさに他人ではない関係だと勝手に思っています。

先週行った松江で高校のサッカー部の指導をされている教員の方とは、失礼ながら友人の一人だと思っていますし、指導を受けている選手たちは、自分の教え子のような気持ちになります。

テーピングをしてあげた小学生のご家族も同じように、もう勝手に大切な友人だと思っています。

私は関わった人たちを、仕事上の付き合いでは見られなくなってしまうのです。

決められた時間決められたことをやってお金をいただく、そんな気持ちで仕事はできないのです。

ここをオープンして1年半が過ぎました。

当初は訪れていただく方も少なく、不安の方が大きかったですが、自分の信念を貫き通して、一人一人に対応したいという環境は、着実に作り上げることができています。

いつも家内と話をしますが、私ではなく買っているのは家内ですが、宝くじが当たったら、ここを訪れ私の指導を受けてくれた人たちのところを周って、指導のお手伝いをしたり、故障で困っている選手のアドバイスをして全国を歩きたいねと、夢のようなことを考えています。

昨日も高校2年生としか書いてありませんでしたが、故障の痛みに関する相談がコメントに寄せられました。

申し訳ないですが、目の前にない体をどうしたらいいのか、私にはなんのアドバイスもできません、という返事しかできませんでした。

幾つかの医療機関を回っても、納得のいく治療を受けられないという言葉に、いったいいつになったら、こんな子供たちが安心してスポーツを続けられる環境を与えてあげられるのかと悲しくなりました。

日本代表やプロスポーツのトレーナーになりたいという夢もいいでしょう、でも身近にいる故障を抱えた子供達や一般の方のお役に立てなくて、なにがプロスポーツのトレーナーでしょう。

現実そういう環境にいる人間たちのレベルがどんなものか、肩書きだけの人間もたくさんいます。

知識と経験を積んで、誰かの役に立ちたいとこの仕事を目指すなら、どんな立場の人間であれ、目の前の一人ひとりに自信を持って対応できるようになることが先ではないでしょうか。

私がこの世界を志した30年前と、今の現状はなにも変わっていません。

つくばに講演に呼んでいただいた際にも同じことを言いました。

スポーツ医学がいくら進歩したと言っても、トレーナーという言葉が認知されるようになっても、困っている人間の数は全く減ってはいないのではないかと。

私のできることなどたかがしれています、だからこそ一人一人に真剣に向き合い、私自信が納得できる形で仕事をしていきたいと思います。

少しづつ私の存在を知っていただき、ここを訪ねていただく方も増えてきました。

年月を重ねれば、もう少し増えていくかもしれません、同時に毎年私も歳をとっていきます、肉体的な衰えは隠しようがありません、口だけでできる仕事ではありませんから。

もう少し早く人に伝えるということを始めていればと思うこともあります。

しかしそれも流れの中でもことで仕方のないことです。

これから先も、できるだけ我慢料としてお金をいただくことがないよう、真剣に取り組んでいきたいと思います。

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Comment

昨日は失礼いたしました
昨日はせっかくご連絡いただきましたが、お伺いできず申し訳ございませんでした。
いろいろ、見せていただき、話をお伺いできる良い機会になればよかったのですが。

おこがましいですが、自分も最近、治療院で、中学生や高校生で、親が一生懸命で本人は自分の身体の状態の事をほとんど話さない。
質問しても、親の顔を見るばかりで....

こう言う場合は、この子より親の治療が必要だとつくづく思いました。

また、自分自身もやろうと言う気持ちが強すぎて、その思いがいろんな部分で素直に動くと言うものを阻害していたなと最近思えるようになってきました。

改めて、時間を作ってお伺いさせていただきたく思います。


Re: ご無沙汰しております。
コメントありがとうございます。
そこに気を止めていただきましたか。
四人の子供を育ててきた私から、僭越ながらアドバイスさせていただきます。
子育ては世の中の全ての親が、初めての経験から始まると思います。
子供のためにできるだけのことをしてあげたい、それが親心でしょう。
ただ、自分の経験や知識を基準にして、良かれと思って子供の歩く道の先を明るく照らしてしまうよりも、少し後ろを提灯の灯りくらいを持って、道を踏み外さないかだけを見てあげるくらいで、ちょうど良いのかなと思います。
子供には子供の人生があり、どんなに明るい道を歩かせようとしても、そこだけを歩いてはくれません。
どんな時でも、最後は親が味方になってくれることさえ分かっていれば、自分の道を自分で歩いていきます。
我々もそうだったんじゃないでしょうか。
何でも分かっている、コミニケーションが取れている、それは親の幻想です。
古い言い方ですが、細かいことは言わず背中で引っ張る、親は親、子には子の人生があります。
自戒を込めて、干渉しすぎたり応援しすぎることより、一歩引いて見守る時期も必要だと思います。
次回、ぜひ私のお勧めの店でご一緒しましょう。
  • 2015-04-17│22:23 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
ご無沙汰しております。
ご無沙汰しております。先月末に小4になった息子とトレーニングさせてもらった讃岐サポです。
息子は最近、心理的ストレスなのかいろんなことがイヤイヤ病にかかってる状態でサッカーも休みがちです。

私ばかり先走っているのではないかと改めて振り返るきっかけを頂いた今回のブログ。

息子との信頼関係を見直し今できていることをきっちり認めてあげながらともに成長したいと思いました。


ちなみに息子はほぼ毎日寝る前にフライングバックトレーニングを行い、私もフライングバックトレーニングと教えて頂いた走り方で短い距離ですが走っています。
だんだん教えて頂いたことが実感出来つつあります。

今度帰省した際には夕飯をぜひご一緒させてくださいませ。
ブログ・NewsPicksの記事ともに楽しみにしております。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
今年2回目の西本塾を8月26・27の土日に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。
なお、今回も参加者が5名に満たない場合は開催しません。
9月10日には深める会も予定しています。

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