まずは見ることから。

私がこれまで関わってきた選手たちは、基本的にプロかそれに準ずるレベルの選手でした。

とくに広島に来てからは、そういう選手たちの能力を向上させることが、個人としてチームとしての最終目標である「勝利」に貢献できる一番重要な要素だと思って仕事をしてきました。

彼らは一般の方から見れば、自分たちにはできないことができる、特別な能力を持った人間たちだと思われているでしょう。

もちろんそういう部分はありますが、私から見ればもっと出来るはずなのに、と思ってしまうところがたくさんありました。

しかし、小さい頃からその競技一筋という選手がほとんどで、ある意味出来上がってしまった選手が多く、技術的にも体力的の大きな進化は望めないではなく、望んでいないように見える選手もいました。

私がもっと出来ると思う根拠は、それぞれの競技に必要な技術レベルの話ではなく、一般的には基礎体力という言葉でくくられてしまいますが、それを使いこなす体の使い方の部分でした。

良く言えば無意識に、悪く言えば何も考えないでやっているように見えました。

私がこの仕事を通して、スポーツの世界で少し知られるようになったのは、これまで関わってきた選手たちのおかげです。

彼らに対して私が何かを教えたということはあるかもしれませんが、それは新しい能力を授けたとか言うことではありません、彼らが持っていた潜在能力、人間として持って生まれた能力の中で、現実として使いこなせていない部分を目覚めさせる方法を提案し、彼らの体に対する意識が少し変わっただけのことだと思います。

それぞれ個人差がありますから、全く同じことを指導しても意味はありませんが、個別に問題点を見つけ出し細かく指導して行ったとしても、行き着く高みは同じというわけにはいきません。

そういう意味でも私は運が良かったのでしょう、何人かの選手が世間が驚くような変化を示してくれたことで、その陰にはということで私の存在も知られることになったのですから。

そんな中、あまり話題にしてきませんでしたが、先週行われたJリーグの川崎対大阪戦で、久し振りに大久保選手の動きを追ってみました。

後半終了間際アディショナルタイムに入った時のことです。

1トップに大久保選手を残して、ほぼ10人で大阪の猛攻をしのいでいた時、右からのクロスボールに対して、ボレーでパスというよりクリアという感じで、左タッチライン沿いセンターライン手前に蹴られたボールは、タッチラインを割るかと思いましたが、そこにくることを予測していたかのように、猛スピードで走ってきたのが大久保選手でした。

時間帯を考えても他の選手は、ボールがラインを割ることで一瞬ですが一息つけると思った瞬間だったと思いますが、大久保選手は全力でボールに追いついたにもかかわらず、冷静にコントロールしてドリブルで相手ゴールに迫って行こうとしました。

2人のディフェンダーを振り切ろうとした瞬間、2人目の選手に、なんと後ろからユニフォームの襟元を持って引き倒されプレーを止められてしまいました。

時間帯やプレー位置、また大久保選手の技術を考えれば、もしあのまま抜けていれば勝ち越しのゴールが生まれていたかもしれません。

相手の反則行為が問題になっていますが、私が注目したのはそこではありません。

まずあの時間帯にタッチを割りそうなボールに追いつくスピードはもちろん、この方向に来ることを予測していたかのような動き出しができる冷静な判断力があったことです。

その瞬間の彼の表情をよく見ていると、全く力みがありません。

もし動き出しの瞬間に、ヨシとばかりに歯を食いしばってしまったら、紙一重でタッチを割っていたかもしれません、それぐらい微妙なタイミングでした。

そしてドリブルで相手をかわしに行くのですが、これまた表情を変えることなく涼しい顔に見えます。

力んで無理矢理にスペースをこじ開けるのではなく、行きたい方向に体をスッと倒し重心を移動しています。

それに対し相手のディフェンダーの表情は、まさに緊急事態発生とばかりに歯を食いしばり、屈筋を使って地面を蹴り、大久保選手を追いかけて止めようとしていますが、全く動きのスムーズさが違います。

この時間帯にこの動きができることこそが、彼が持っている潜在能力を自在に操れるようになった証拠ではないかと思います。

もう完全に自分のものとして体を使いこなせているので、彼自身の動きに好不調は考えにくいと思います。

あとは周りとの連携でしょうね、彼にとっての一番の敵はストレスでしょうから。

さてそんなことを考えながら画面を見終わって、ふと思い付いたのが深める会に参加予定の方が指導している「ラクロス」という競技でした。

正直見たことがありませんのでルールももちろん分かりません、なんとなくイメージはできますが、ついでにと検索して幾つかの映像を見てみました。

その中でラクロス界のCロナウドと呼ばれている「マイクパウエル選手」の動きに目を奪われました。

名前は別の競技で聞いたことがある選手と同じでしたが、もちろん全くの別人です。

これは凄いです、私がサッカーの超一流選手の動きを分析するためにYouTubeの画面を見続け、凄い凄いと一人うなづいていた時と同じです。

他の選手とは異質な動きです、ロナウドといえばロナウドですが、ロッベンの三分割の動きもやっていますし、ネイマールのようなトリッキーな動きあり、スピードも強さもあります。

私が知らない競技や凄い選手が、まだまだたくさんいるんだろうなと、改めて思い知らされました。

引き込まれるようにいくつかの動画を見ましたが、激しいコンタクトシーンに、アイスホッケーやアメフトやラグビーと変わらない迫力を感じ、独特な手具を使ったプレーには細かいテクニックや戦術の複雑さを感じたり、日本ではマイナーな種目だとは思いますが、本当に面白いと思いました。

ついでに出てきた「アメフト選手の身体能力」のタイトルが気になって見てみましたが、CGではないかというような凄いシーンが次々と現れ、これまたびっくりでした。

これまで私が残してきた実績というか、自己満足してきたことは、もう一息の選手の背中を押してきたにすぎないのかもしれません。

今私から何かを学ぼうとしてくれている人たちは、もっともっと手前のこれからという選手を指導している人がほとんどです。

一般の方の体をケアするということも同じことかもしれません。

ラクロスは大学生になってから始める選手が多いそうです。

そういう意味では、これからスポーツを始めるという子供たちと共通するものがあると思います。

子供たちや、そういう選手たちに対して、どういうアプローチをしてあげることが、ケガなく楽しくスポーツを続けてもらえるのか、私が考えなければならないことは、どうやらそちらの方向性が求められるようになってきたようです。

もちろん今までやってきたことがベースになりますし、そういう仕事もしたいと思いますが、私の後ろを追いかけてくれる人たちのためにも、私自身がもっともっと勉強して自分ならこうやって指導するというレベルまで準備する必要まで感じ始めました。

生来働き者ではないのに、またまた自分に余計なプレッシャーをかけることになりそうです、考えなければなんということもなかったのに、またまた余計なことを考え始めてしまいました。

このテーマを私自身がしっかり追いかけて、自分なりに満足できるものを見つけなければ、それぞれの競技の世界の超一流選手と方を並べるような日本人選手は、そう簡単には生まれてこないと思います。

まずは色々な競技を見ることから始めようと思います、できれば生で。

サッカーをやっている子供たちは、日本だけではなく海外の選手のことも良く知っていますが、野球をやっている子供たちはテレビを見る時間もないのでしょうか、日本のプロ野球の選手のこともほとんど知らない子供がいます、目標が違うといえばそれまでですが、野球界が発展していくためには、そういう部分の意識改革も必要ではないでしょうか。

まずは見ることです、良いところ悪いところを見分ける目を持つことです。

大人にできることは、子供たちに色々な世界を見せてあげることです。


遅まきながら、私自身これから視野を広げていこうと思います。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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