走るという行為 まとめ

今夜、地元広島で川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島の試合が行われます。
このブログを見ていただいている方の多くは、この試合を特に注目されていると思います。

私にとっても、八宏対ポイチの対決という意味で、昨年は試合を見に行きました。
同じチームで一緒に戦った二人が、指導者としてどんな戦いを見せてくれるのか、去年はメインスタンドから試合そっちのけで、ベンチで指示を出し二人の後ろ姿ばかり気になっていました。
あれからもう一年近くに経つのですね、今夜の試合も楽しみにしています。

さて今回は、何回かに渡って書き続けてきた「走るという行為」を、振り返ってまとめてみます。

こういう考え方に至った背景には、様々な紆余曲折がありました。

走るという行為はある地点Aから、ある地点Bまでの移動を、より速くするために行われることです。

そのことに関してはどなたも異論はないと思いますが、その当事者がA地点にいる時にどういう状況にあって、B地点には何をするために行く必要があって、さらにその途中で目的地であるBの方向や距離が変わってしまったり、スピード自体もその速度を調整しなければならないなど、走るという行為は、単純に速度を速くすることだけを考えればよいのではないことは、容易に想像できると思います。

さらにその行為が、定められた時間の中で何度も繰り返さなければならないような競技であれば、上記の要素はさらに複雑となり、この走り方がベストであるとは言い難い状況となります。

20年以上前までは、プロ野球のトレーニングコーチ(ずばりランニングコーチという呼称もありましたが)には、陸上競技経験者の方が名前を連ねていたこともありました。

こうしてさまざまな要素を考えたうえで、この競技このチームこの選手には、どういうイメージを持って指導していくのかという問題は、考えれば考えるほど、これが正しいと言い切れるものが見つけにくくなってきました。

例えば野球で考えた場合、私が2チームで延べ8シーズン関わらせていただいた社会人野球ですと、DH制を取り入れていますので、投手が打席に立つことはありません。

そうであれば、投手がランニングをトレーニングとして行う方法や目的はおのずと決まってきます。

野手の場合は、全員攻撃時に打席に立って、バットを振ってから全力で走る、ベースを左回りに回る、ベース直前でスライディングをする、離塁してほぼ静止した状態から走り出す、牽制球に対応して進行方向の逆に戻る行為など、投手とははるかに違う要素の動作が要求されます。

さらに守備位置で言えば、捕手は別として、内野手と外野手とでは打球を追う距離や、方向にも大きな違いがあります。

これらを加味して考えると、外野手を基本にして組み立てていけば、他のポジションの選手でも、できるようになっていて損はないという意味で、トレーニングを組み立てていくのが理想的であると判断しました。

分けて行えば済むことですが、選手もスタッフも限られた人員で練習を行いますから、チームスポーツとしての一体感というものも必要となってきます。

例えば外野手が、投手の投げる球種とコースをあらかじめサインで確認しておいて、バッターの体の使い方や過去のデータまた、ボールをヒットしたその瞬間等の情報を一瞬で判断して、ボールの落下地点を予測しスタートを切るわけですが、この時にこれまで説明してきた、重心を一度後ろに下げて蹴りだす準備をする「居付く」という動作をやってしまうと、そのコンマ何秒かの間に打球は何メートル飛んでいくんですか、という問題に直結するのです。


いわゆる守備範囲に換算すれば、おそらく5メートル以上になるのではないでしょうか。

そのスタートのイメージが前回説明した、皮袋やこんにゃくのイメージで居付くことなく肩甲骨の振りだし動作で、行きたい方向へ瞬時に体重移動ができれば、抜けたと思った打球を見事にキャッチということになります。

さらに言えば、そういう届くか届かないかの球際のプレーを、普通のフライのように追いついて取ってしまうプレーこそが、本当の意味でのプロフェッショナルなファインプレーで、体の使い方が上手にできている超一流の選手だと思います。

普通に取れそうな打球なのに、飛びついてやっと捕球してファインプレーと喜んでいる選手は残念ながらそこまでの選手ということになります。

野球であれば、3時間を超える試合時間になったとしても、実際に意識を集中して、筋肉と神経の微妙な調整を必要とするような瞬発力を発揮している時間は、10分もないのが現実です。

平成8年に初めて三菱広島の指導を行ったとき、事前にミーティングを3回行い色々な知識を植え付けていく中で、この話もしましたが、たった10分なんてそんなバカなことはないという反発がありました。

守りの時間を考えてみましょう、投手が投げる球数を150球とすると、投手がモーションを起こして投球し、打者が打ったか打たなかったかを判断する時間が5秒くらいです。
150球×5秒で750秒ですから、これだけで12.5分という数字になりますが、本当にそうでしょうか。

ツーアウトランナーなし、打席には小柄な左打者、サインはアウトコース低めのストレート、この状況でライトを守っている選手と、レフトや三遊間の選手の緊張感が本当に同じだとは思えません。
明らかな送りバントの状況の時もあります、もろもろ考慮しても12.5分がそのままマックスの緊張感とは言えないはずです。

しかしそういう競技であるからこそ、この一瞬で勝敗を分けてしまうという怖いところがあるのです。

攻撃の時は、その当事者以外はベンチに座っています。
そして自分の順番が来た時に、いきなり自分の持っている能力のすべてを発揮してバットを振り、一塁に全力疾走するのです、肉離れを起こして足を引きずるシーンをよく見ますが、ある意味当然のような気もします。

サッカーでは、試合開始直後や終了間際の時間帯に点数がよく入ることから、「魔の5分」などという言い方があるようですが、ウォーミングアップから試合開始にかけての、身体と気持ちの準備が整わないうちにやられたとか、最後の5分もうひと頑張りが効かずやられてしまうというパターンでしょうか。

そのために必要なのが、延々と説明をしてきた走るという行為を一から見直す作業をしてみることなのです。

単純な走り方の問題だけではなく、走ることの意味を含めて、自分はこのピッチの上で90分間どうやって走り続けなければならないのか、それを自問自答して得られた結論としての走り方でなければならないと思うのです。

ただただがむしゃらに走り回って、そのことでチームに貢献できていたとしても、前半の45分も持続できないのであれば、本当にそのことがチームのためになっているのか、考える必要があると思います。

陸上競技の選手に正しい走り方を指導してもらって、タイムが向上した足が速くなった、それもいいでしょう。
持久走を延々と繰り返したり、インターバル走で心肺機能を鍛え上げ、誰にも負けないスタミナを身に付けた、素晴らしいことです。

最後にもう一度同じことを繰り返します、考えてください。

あなたがA地点にいる時にどういう状況にあって、B地点には何をするために行くのか、さらにその途中で、目的地であるBの方向や距離、到達した時点で行わなければならない目的そのものまで変わってしまったり、スピード自体も途中で速度を調整しなければならない、そしてその走るという行為を、必要に応じて自分の意思とは関係なく、何度も繰り返すことを要求されている。

それがあなたに必要な走力なのです。

サッカーだけではありません、そういう要素が必要な競技はたくさんあります。

何のために走るのか、誰のために走るのか、ゆっくり考えてみませんか。
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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