潜在能力を眠らせておかないために

私の運営する「conditioning studio 操」は、海に面した宇品港のターミナルビルの2階にあります。

すぐ目の前に見える江田島や似島そして宮島、遠くは故郷愛媛の松山にも航路があって、普段港に縁のない人から見れば、ひっきりなしに港を出入りする船の多さに驚くばかりです。

まさに通勤通学の足、海上交通の要所となっています。

そんな場所に縁があってスペースをお借りできて仕事をさせていただいています。

エスカレーターで2階に上がると、西本塾の懇親会でお世話になっている中国人ご夫婦が経営する中華料理店があり、その隣には珈琲専門店、さらにはインドの方がやっているナンカレーのお店と、ここまではありそうなお店が並んでいます。

私の施設の奥には江田島市の出先機関や海運会社の事務所があり、これもあって当然の事務所が並んでいます。

そんな中に、ここは何をするところだろうという意味不明な看板(と言っても手作りの張り紙ですが)が貼り付けられた入り口があり、開設当初は知らない人が勝手に扉を開け入ってきて、中を覗こうとされることもありました。

さらには、私のやっていることをよく知らないで、どなたかの紹介で施術を受けに来られた人は、ベッドが置いてある施術スペースの何倍ものスペースをとってトレーニング器具が並んでいるのを不思議そうに見て、「あなたが趣味でやるんですか」 とまで聞かれることがあり、「さすがに趣味でこんなスペースを作ったらすごいですが、残念ながら仕事です」 と、これまた意味不明な会話になることがあります。

そのスペースと器具を使ったトレーニング、私にとってはおそらく生涯をかけて取り組んでいく大事な仕事です。

単なる体作りではなく、人間として持って生まれた、神様という表現は正しくないかもしれませんが、人間という生物の創造主から与えられた能力を、余すことなく使いこなせるようになることを最大の目標として、「動き作り」という言葉を使ってトレーニングの指導をしています。

まだまだ私の考え方は一般的なトレーニングとは異なっているため、理論的な部分を正しく理解し、実際に指導できるレベルになってくれている人はほとんどいません。

そんな中で実際に私の指導を受け、それまで発揮できなかった能力をうまく使いこなせるようになったことで、結果として成績が向上したという例は幾つかあります。

その選手たちには幾つかの共通点があります。

ひとつは、彼らが持っていた潜在能力は各々の競技レベルに必要な要素という意味で、かなり高いレベルにあったということです。

言い訳ではありませんが、同じことを同じように指導して、同じように能力を向上させられたとしても、悲しいかなそこには相対的な評価がされてしまいます。

各自の努力を絶対評価という物差しで計れば、文句のつけどころがない成長であったとしてもです。

ですから、私が月として光を与えられた太陽たちは、みんな大きなエネルギーを秘めていた素晴らしい選手たちだったということです。

自己満足の極致を表した言葉ですが、「私と出会ったからこういう結果になったとは言わない、しかし、もし私と出会わなければこういう結果は得られなかっただろう」という言い方をするのはそういう意味です。

申し訳有りませんが、すべての選手を光り輝く太陽にすることはできません。

これも何度も書いてきましたが、将棋に例えた言い方で、自軍の王将を守り、敵の王将を攻め落とすためには、全員が飛車や角ではダメで、金も銀も桂馬も香車も歩も必要だということです。

それぞれの駒に与えられた役割を全うできる能力を磨いていけばいいのです。

そういう意味ではどんな人間にもチャンスはあります。

ところが私が感じてきたのは、ほぼ全員が飛車や角を目標とし、そこに届かないことを悟るとすべてを諦めてしまうということです。

「いぶし銀」という言葉がありますが、日本一の歩も必要なのです。

私に光を与えてくれた選手たちは、間違いなく飛車角レベルの選手たちでした。

もうひとつの共通点、それは年齢的にも競技経験にしても、それぞれの競技でベテランと呼ばれる年齢に差し掛かった選手たちだったということです。

これは何を意味するかというと、もちろん人一倍の努力を積み重ねてはきたものの、いわゆる素質と言われる早熟型の選手で、すでに大きな成果を残しているにもかかわらず、あるところで自分の能力の停滞や限界を感じ、これまで続けてきた努力だけでは打開できない何かを感じているということでした。

親からもらった立派な体と人一倍の努力でここまで来た、みたいな言い方をよく聞きます。

この人一倍の努力という部分に、私は違和感を覚えました。

そして様々な経験をしてきた中で、この努力の方向性が根本的に間違っているのではと思うようになったのです。

それがずばり「体作りから動き作りへ」という発想の転換でした。

「動き作りって何ですか、体作りはどうでもいいのですか」素朴な疑問に答え続けてきました。

と言っても、それは一般の方に対してではなく、目の前の選手たちに結果を出させることでしか答えられませんでしたが。

言葉や文字で分かってもらえるとも思っていませんし、選手たちにとっては結果がすべてですから、その必要もありませんでした。

私を必要としてくれる選手たちのもうひとつの共通点は、その体作りという方向性のトレーニングはすでにやり尽くしているというか、その結果として、自分が思っているような動きができなくなったと感じていることです。

こんなに頑張ってきたのに、こうやって頑張り続ければ、もっと良い動きができるようになると信じて取り組んできたのに、そう思って長く頑張ってきた選手ほど、そのことに悩み方向性を失ってしまいます。

縁があって私と出会い、体の仕組みから始まって、体作りではなく動き作りという概念を知り、トレーニングに取り組み始めると、何故もっと早くこの考え方に出会わなかったのかと悔しがりますが、別の方向性をやり尽くしたからこそ、私の考え方を素直に受け入れることができるとも言えるのです。

「若い選手たちにも教えてあげたい」そう言ってくれることもありますが、まだまだ私の力不足で、体作りに気持ちが行ってしまう若い選手たちに、こちらを振り向かせるだけのものがありません。

私が一番苦手とする数字やデータで証明する以外に、世の中の人が全て認めてくれる理論にはなり得ないのだと思います。

しかし現実に目の前の選手たちは、私の理論であり実践を必要としてくれていることは間違いありません。

きちんと向き合ってくれた選手たちは、確実に変化し進化し、それぞれが持って生まれた能力を思う存分発揮してくれています。

彼らに私が新たな能力を授けたなどということは全くありません、彼らが持っていたけれど使えていなかったり、気付いていなかっただけのことを、「こうやって使えばいいんじゃないの、こういう動きもできるんじゃないの」と体と頭に語りかけることが、私のトレーニングの目的です。

あとは素晴らしい能力を持った選手たちが、勝手に結果を出してくれます。

この考え方や体の使い方を、子供の頃から自然に身につけておけば、というよりも普通のこととして生活の一部であり、スポーツ動作の基本であると思ってもらえれば、大人になってから体作りから動き作りへ、などと分かったような分からないような理論を聞かされることもなくなると思います。

今私ができることは、現在進行形で取り組んでくれている選手にも、過去に指導した選手たちと同じように、私が教えたとか教えられたとか、そんなことを忘れてしまうほど自然な動きでピッチを動き続けてもらえるようにすることです。

年齢のことを気にする選手が多いですが、すでに40歳を超えていると言われると少し無理がありますが、30歳を過ぎていたとしても、未開発の能力を残したままで、今のパフォーマンスを発揮し結果を残してきているのであれば、そこに本来使えるはずの能力を目覚めさせてあげられれば、今以上に楽に効率的に体を使えるようになることは明らかですから、もっともっと高いレベルを目指すことを選手には要求しています。

そうでなくてはお互いに面白くありませんから。

崖っぷちの選手を必死に支えることよりも、ここは崖っぷちではなく、レベルアップするための絶好のジャンプ台だと思わせるのです。

物は考えようです、崖っぷちだと思うから守りに入るのです、選手である限り攻め続けるのです、そのお手伝いなら喜んでさせてもらいます。

個人はもちろんですが、チームとして取り組めば、それぞれの年代の選手たちがお互いの変化を感じることで相乗効果が生まれると思います。

サッカーであればプロであるJリーグのチームが真剣に取り組むことで結果を出してくれれば、この考え方も広がりを見せてくれるかもしれません。

たった3日間の指導でしたが、カマタマーレ讃岐というチームに、私の考えが少しでも根付いてくれているとしたら、きっと良い変化が続いてくれるのではないかと思っています。

私は動き出してしまいました、自己満足の世界から離れてしまいました。

共感してくれる仲間たちのためにも、私自身が結果を出し続けなければなりません。

頑張っています。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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