動き続けなければならないのは体、それとも頭。

昨夜行われたW杯予選日本対シンガポール戦、仕事の都合で後半からテレビ観戦となりました。

ランキングは大きく格下の相手ではありますが、サッカーをやっている人たちにとってW杯予選は普段の試合とは全く意味が違う重要なもののようで、予選リーグをどう戦うのか、この一戦だけではないトータルとしての戦い方も含め、それぞれの国の考え方が大きく異なることは私にも理解できました。

そんな中、当然日本は勝たなくてはならない、勝って当然という雰囲気の中でホームゲームを戦い、シンガポールにとっては引き分けで勝ち点1を取ることができれば、勝ちに等しいと言えるくらいの中での戦いだったようです。

家に帰る途中に想像したのは、地力の違いを見せつけて2対0くらいでリードしているか、完全に守りを固めている相手を攻めあぐねて0対0のままかのどちらかだと思っていました。

テレビを見ると後者の予想が当たっていたようでしたが、攻めあぐねてというよりは、何度も訪れる決定機をことごとく決められなかったということのようでした。

前半のハイライトを見ても、日本選手の表情はここで負けたらW杯への道が閉ざされてしまうかのような硬い表情で、ベンチの監督も感情丸出しで大声を出したり悔しがったりと、まさに真剣勝負そのものでした。

舞台や状況を考えれば、それは当然のことかもしれません。

しかし私は何かが違うというか、表現しにくい違和感を感じていました。

後半の立ち上がりから、前半と同じような展開が続き、スタジアムで観戦していたサポーターには、見ている角度によってはゴールが決まったのではというシーンが何度も繰り返されました。

それでも決まりません。

テレビ中継は、もちろん日本の放送ですから日本の応援のような内容となることは、解説の方からも想像がつくので、音声はオフで見ていました。

この実況と解説のコンビについては賛否あると思いますが、私は行ったことがありませんがスポーツバーというところで、アルコール片手にああだこうだ言っている人の方が、私のような人間にも良くわかる解説をしてくれそうな気がします。

野球中継などまさにそんな人がたくさんいますから。

それはさておき、解説もサポーターの歓声もカットして画面を見ていると、選手の動きや表情がよくわかります。

試合後のコメントで、監督が1点入っていたら展開は全く違ったものになっていたという趣旨のことを言っていましたが、それはどんなレベルのどんな試合にも言えることで、特に昨日の試合ではシンガポールチームはなんとかそうさせないように、ということが一番のゲームプランだったと思います。

その上でカウンターのチャンスがあれば、得点も取りたかったでしょうが、まずは得点を与えないことに全力を尽くしていました。

テレビに映る選手たちの表情は、シンガポールが1対0でリードしていて、負けている日本が必死にゴールを狙っているという状況のように見えました。

あれだけ攻め込まれていれば、肉体的な疲労はシンガポールの方が絶対に大きいはずです。

自分から仕掛ける動きと、相手の仕掛けに対応する動きでは、誰がどう考えても受け身の選手の方が疲れるはずです。

それでも絶体絶命のピンチが続く中、彼らの動きは実に冷静で集中していました。

後半バタバタと足がつって倒れ込んでしまう選手が続出しましたが、これはある意味仕方がないことだと思います。

交代選手を上手く使いながら守りきったシンガポールのベンチワークに「あっぱれ」だと思います。

ではなぜ日本チームはゴールを奪えなかったのかという根源の問題です。

サッカーでは決定力不足ということががよく使われますが、そんな曖昧な表現では何をどう改善していいのかわかりません。

交代した選手もいましたが、途中で倒れ込んでしまう選手はいませんでした。

そういう意味では90分間走り続ける能力は日本の方が優っていたと言えるかもしれません。

私はこの走り続ける能力という言い方はサッカーに限らず、時間制で行うスポーツの中では正しい表現とは思えず、90分間動き続けるという言い方をしています。

なぜかというと、ただ走り回ることがサッカーの目的ではなく、チームとしての戦術と個人に求めれらた能力を90分間発揮し続けることこそが、求めれる能力だからです。


それを発揮し続けるためには何が必要なのでしょう。

それはどんな状況になっても、自分が何をすべきかを的確に判断し続ける能力、平たく言えば「頭を使い続ける」ということなのではないでしょうか。

そこに日本人の美学というか、これまで求められてきた既成概念という大きな壁を感じます。

というのは、日本人はとにかく「頑張る」とか「一生懸命」という言葉を好みます。

これは当たり前のことで、言葉の意味でその逆のことがよくないのは当然のことです。

いい加減でいいとか適当でいいなどと言っているのではありません。

その頑張るや一生懸命が、ともすれば選手本人はもちろんのこと、指導者や第三者であるサポーターも含め、表情や態度、動きそのものも含め、歯を食いしばり目を釣り上げ脇目も振らずに猪突猛進的な動きを良しとしてしまっているのではないかということです。

数年前にもそんなことを言われたことがありました。

試合終了のホイッスルとともに、相手の選手は何人もピッチに倒れ込んでしまうのに、こちらの選手は一人としてそうならない、選手は全力を尽くしているのか、まだ余力があるのではないかと。

公務員ランナーとして名を馳せている川内優輝選手が、有名になり始めた頃、ゴールとともに倒れ込みタンカで運ばれるシーンをよく目にしました。

おそらくゴール直前には正常な思考ができない状態になっていたのかもしれません。

サッカーをはじめ他の競技で、そんなことが許されるでしょうか。

もう何も考える余裕もなく、ただ走り回っているだけの選手が本当に役に立つわけがありませんから。

シンガポールの選手たちの疲労が早かったのは、まず頭をたくさん使わされたということです、その上に肉体的な疲労は日本選手を大きく上回っていたでしょう。

それらも全てゲームプランの中にはあったはずです。

比べて日本選手たちの動きはというと、確かに運動量という意味では上回っていました。

どの数字を見ても圧倒的でした。

しかしゴールを奪うという究極の目的に対する頭脳の働きは、相手のゴールを守るために使われた頭脳の働きを上回れなかったということなのではないでしょうか。


ここに私が伝えている「体の仕組み・屈筋と伸筋の働きの違い」など、基本的な体に対する知識や理解がされていれば、もっと違う結果になったのではと思っていまいます。

「頑張ったり一生懸命やっている」と、自他ともに思える時には間違いなく屈筋優位の体の使い方になっています。

その弊害を、視野の狭さや股関節の自由度が失われるとか、動き出しに股関節を屈曲させなければならないから、出足が遅くなるとか、結果として疲労しやすくなるだとか、いろいろな例を挙げ、身を以て体験していただいています。

もっとストレートな言い方をすれば「屈筋で頑張ると頭が働かないよ」ということになるのです。

私自身、今頃こんなことを言うと過去関係してきた選手にそれはないでしょうと言われるほど、勝ち負けに対し異常な執念を燃やし、勝つためにはなんでもやらせてきました。

衝突することがあっても、私が正しいと思ったことを要求し、それでも彼らのためだと嫌われることも覚悟で指導をしてきましたし、一生懸命やらない選手は当然許すことはありませんでした。

その頑張り方を少し変えようというのです。

ただ一生懸命やっていますではない頑張り方、それこそが周りの状況を的確に判断し、自分がなにをすべきかを瞬時に判断し行動に移せる能力です。

そのためには悲壮感漂う表情や、良い言葉ではありませんが喧嘩腰ではダメなのです。

現役時代はあまり好きな選手ではありませんでしたが、中田英寿選手はピッチの内外を問わず、こいつやる気があるのかと言いたくなるような表情で、他の選手とは一味違う動きを見せてくれていました。

ガンバ大阪の遠藤選手にも同じことが言えるでしょう。

野球で言えばイチロー選手もそうですし、私が関わった佐々岡投手も、マウンドで喜怒哀楽を全く表さない選手でした。

海外の一流選手たちにも同じことが言えます、プレーが止まった時には感情を表わすことはあっても、プレーの最中は全く無表情、そんな選手が多いように思います。

昨日の日本選手たち、私が注目した宇佐美選手は、股関節の屈曲を使ってから膝関節の伸展動作で、正確にボールを蹴ることができる珍しいタイプの選手だと思いますが、その宇佐美選手にして特徴を生かせず、屈曲動作のマイナス要素が前面に出てしまい、いつも見せてくれる正確なシュートができませんでした。

さらには疲労という一番の弊害も出て、後半早々に交代してしまいました。

「90分間走り続けるではなく動き続ける能力、その目的は90分間考え続ける能力を維持できること」

そのためには、屈筋を使って腕を前後に大きく振り、太ももを引き上げることでストライドを広げ、地面を強く蹴って推進力を得るという、従来の走るという動作の概念を捨て、私が提唱する走り方を身につけることが、その能力を得るために絶対に必要で、誰にでも獲得可能な方法だと思います。

これも毎度のセリフですが、決して私が考え出した専売特許ではありません、人間の体の仕組みと、一流・超一流の選手たちの動きから導き出された最大公約数的な発想の元に作り上げたものです。

他にも同じような指導をしている人がいて当然で、むしろそうでないとおかしいと思うくらいです。

同じことを教えても、少しづつ動きは違って当然です。

なぜどうしての部分さえわかってもらえたら、人を見る目も変わるし、自分の動きももちろん変わります。

昨日の試合を見ていて、選手の意識を少しでも変えれらたら動きも変わるだろうし結果もなぁ、と思ってしまいました。

監督に対してもいろいろタイプがあって、評価は違うのでしょうが、「とにかく自分の教えた通りにやれ」というタイプに見えますがどうでしょう。

練習ではそうでも、試合中はもう少し冷静にやって欲しいような気もします。

彼には監督に与えられたなんとかゾーンすら目に入っていないようでしたから。

人間の体は本当に不思議の塊です、既成概念というこれまでの常識など、本当に正しいかどうかなど誰も答えられないものばかりです。

もっと良い方法や考え方があるのではないか、そっちを考えるほうがよほど楽しいし役に立つと思います。

それにしても次の試合は結果を残して欲しいですね、期待しましょう。

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Re: 結果報告とお礼
ご報告ありがとうございました。
昨年末にきていただいた時のことよく覚えていますよ。
短距離選手として記録が伸びないということは、とても悔しいし残念だったと思います。
それも、今回のことを除けばほとんど故障もなくしっかり練習もつめていたということでしたからなおさらでしょうね。
言葉としては私が言っていることと同じことを指導された経験もあるということでしたが、その感覚を自分の体で感じたことはなかったと言われていました。
具体的には、股関節の真下に着地するとか、地面を強く蹴らないなどという言葉でしょう。
ただ指導を受ける側に、その動きのイメージがきちんと伝えられないのであれば、それは指導したことにはなりません。
そういう意味でも、目の前で走って動きを見せるということが、最も必要となります。
息子さんは、私と一緒に走って、体の使い方を真剣に学んでくれて、最後の走りではかなりスピードに乗って走れていました。
たった一度の指導でしたが、その後どうなったか気になっていました。
たとえコンマ1秒でも、自己記録を更新できたということなので、少しはお役に立てたと嬉しく思います。
お父さんの言われる通り、これから先どんなスポーツをするにしても、また特定のスポーツをしなくなったとしても、この体の使い方を知っていることは大きな財産になると思います。
「せめてもう1年はやく出会っていれば」、この言葉を過去どれくらい言われ続けてきたことでしょう。
私のできることには限りがありますが、真剣に学んでくれる仲間が少しずつ増えています。
そんな人たちと一緒に、1日でもはやく正しい体の使い方を知ることができる環境を作って行きたいと思います。
こうして実際に指導を受け、結果を残してくれた人からの感想をいただくことで、既成概念から一歩踏み出せずにいる人たちの背中を押してくれるきっかけになると思います。
ご報告ありがとうございました、これからの活躍を期待しています。
  • 2015-06-18│10:21 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
結果報告とお礼
 12月6日に走りのトレーニング指導をしていただいた兵庫県のWKです。
西本先生に教わった走りは感覚的には3割も再現できませんでしたが、何とか自己ベストを更新することができました、有難うございました。
 西本先生に指導をしていただいてから、かなりいい感じで走れていたのですが、1月初旬の合宿で怪我をしてしまい、全力で走れるようになったのは2月下旬でした。走れない間はフライングバックで練習を続け、走れるようになってからは、部活の後に自宅で西本式の練習を行ないました。競技シーズンを迎え、腕を使わずに走れば教えていただいた走りが7割程度は再現できるようになりました。しかし試合で腕を振って走ると、体に染みついた走りが出てしまい、下り坂を走っている感覚がなかなか出ませんでした(それでも自己ベスト近くは出ていました)。やはりそう簡単に広背筋を使った走りは出来ないんだと痛感しました。もう1年早く指導を受けていれば違う高校陸上生活を送れていたのではないかと思います。

その父より
 苦難の連続の3年間でしたが、西本先生の指導を受けて走りのヒントを掴み、引退レースで僅か0.1秒ですが自己ベストを更新するこができ大変嬉しく思っております。
上り調子になってきていたので、もう少し早く先生に出会えていれば・・・という思いは息子と同様にありますが、指導をしていただいたことは大切な宝物になりました。 
 先生の教えは、陸上だけでなく全てのスポーツに通じる礎であると思いますので、今後大学で何かスポーツをする際には必ず役立つものと信じております。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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