楽に走るという感覚は良くないことなのか

走るという行為に対してポジティブなイメージを持っている人がどれくらいいるでしょうか。

走ることが好きで全く苦にならないという人もいるかもしれませんが、スポーツトレーニングにおける走るという行為は、けっして自発的なものではなく、やらされている走らされているというネガティブなイメージの方が強いと思います。

そんな中、私から走るという行為に指導を受けた人たちから聞かれる感想は、これまでの真逆なイメージを蜂起させるものばかりです。

「走っているのに疲れない、楽だから次の指示でいつでも走りだせる、走ることってこんなに楽しいことだっけ」、文字として読んでいるだけの方々には、よほどゆっくりと走っているのだろうというくらいにしか思えないはずです。

ただ、いくらゆっくり走ったとしても、そこから楽しいという言葉までは出ないと思いますが。

走ることは苦しくて辛くて、この辛さを乗り越えることで自分の限界を超え、新しい能力さえ手に入れることが出来ると、選手も指導者も疑うことなく信じてきたと思います。

実際に選手たちから聞いた学生時代の思い出話で、信じがたいような過酷な走りを体験し、あの頃を乗り越えた自分があって今があると、公言する選手を何人も見てきました。

人生にはもっと苦しいこと理不尽なことが次々と突きつけられてくる、こんな程度のことで音を上げているようでは将来困ることになる、そんなことまで思い込まされているようでした。

しかし、高校生や大学生のスポーツ選手に要求し、身に付けさせなければならない能力はそういう部分なのでしょうか。

そんなトレーニングの中から、スポーツ選手にとって一番大切な創造性や判断力という部分が確立されていくのでしょうか。

私がこの楽に走れるという感想をいただく体の使い方を指導しているのは、ただその言葉から受ける印象とはもしかしたらまったく逆なことかもしれません。

肉体的に疲弊し思考も正常に行えない状況で、本当の意味で技術を高め戦術を浸透させる練習が出来るのでしょうか。

たとえば2時間という練習時間の中に、体をいじめるという感覚のトレーニングの時間が30分あったとしたら、残りの時間、頭は想像性と判断力を維持しながら練習を続けることが出来るのでしょうか。

「その苦しい状況の中でも、頑張れるようにトレーニングさせているんだ」、そうでしょうか。

そこを目的にするのではなく、創造性と判断力、つまり頭を働かせ続けられる状態を維持しつつ、技術戦術の練習にもっとたくさんに時間を費やしてこそ、個人としてチームとしてのレベルが上がるのではないでしょうか。

私は楽をしろとか、させてあげるとか言っているつもりは毛頭ありません。

それどころか、もっとたくさん練習しろと言っているのです。

ボールを使い人を使い、実戦に近い状況でたくさんたくさん練習しなくて、強いチームなどできるはずはありませんから。

そういう練習が出来るようになるためには、ただ走るという行為で疲れてしまっては意味がないと言っているのです。

私はやったことがありません、見ているだけですが、サッカーの練習で特にミニゲームなどを見ていると、これが走りのトレーニング、フィジカルトレーニング、すべてを総合的に含んだ最高のトレーニングだと思うのです。

ピッチの中を素早い攻守の切り替えを繰り返しながら動き回る姿は、時間や距離を決めてただ走るだけのトレーニングの何倍もきついと思います。

そのキツイという感覚を、肉体にはできるだけ負担をかけず、頭の方が先にパンクしてしまうくらいフル回転させながらのゲームでなければ、試合に勝つための練習とは言えないのではないでしょうか。

そこに伸筋優位の体の使い方や体重移動また居つくという感覚を離れ、股関節を使ったアイドリングから重心移動や背骨の捻転を利用した動きだしを行うことで、肉体の負担を減らすことが出来れば、今まで以上に時間をかけて戦術練習が出来るはずなのです。

では私がフィジカルコーチとして行うトレーニングはないのか、もちろんたくさんあります。

器具を用いて体の連動を促すことを目的とした使い方、フォームや意識を指導したり、グランドレベルではそれらを総合的に利用して、無駄なくスムーズに動ける体の使い方を提案していきます。

それらを自由に駆使して動き回り、たくさん練習できる状態を作るのが仕事だと思っています。

たんに準備運動や故障者のトレーニングだけでは、私の能力は半分も生かせないでしょうから。

それでもまだ机上の空論というそしりは免れられないのが現状です。

それでも、心ある指導者の中には、現状に危機感を覚え、自分が指導する選手たちにもっと良いものを提供したいと考える人が出てきました。

私の考えを学び実技を体験してしまうと、このことを教えないで何を教えるのかとまで言ってくれた人もいます。

ただその指導者たちが、自分自身がお手本となって正しく指導するのには少しばかり時間がかかります。

実際に中途半端な理解で指導を続け、思ったような効果をもたらすことが出来なかったことを恥じて、改めて学びなおしに来てくれた人もいました。

本気でそう思ってくれた指導者と一緒に、選手たちを、そして指導者も含めて正しく指導し、結果を残していかないと、私が打ち上げた花火が、ただの空砲になってしまいます。

走るという行為は一つの技術です、「自らの意図(企図)した筋肉の収縮活動を反復継続して行うことが出来る能力」という、私の言うところの技術の定義から考えても、ただやみくもの歯を食いしばって走ることは、まったく意味のない行為でしかないのです

走るという行為に対して、正しい技術を身に付け、それを使ってそれぞれの競技に必要な個人の能力や戦術を浸透するために練習をたくさん行ってほしいと思います。

フィジカルとは、たんに体が大きいとか強いとかいうための物差しではありません。

勝つために必要な一つの要素にすぎません。

一日でも早くそういう発想から離れ、本当の意味でつらく苦しいトレーニングをたくさん行ってください。

私はそういう指導をしたいと思います。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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