一歩ずつ

先日こんな電話がありました。

「以前お世話になった◯◯です、覚えていらっしゃいますか?」、彼は私がサンフレッチェ広島に在籍していた当時、大学を卒業して下部組織のコーチとして入社したばかりの新人でした。

彼の方はまさか私が覚えてくれているとは思わなかったようでしたが、親しげに自分の名前を名乗ったその声に、私はすぐに、あの◯◯かと思い出しました。

仕事としてそれほど接点があったようには思えませんが、試合会場で裏方としての役割をしていたことや、内容は忘れましたが何度か話をしたこともあって、不思議と名前も顔も浮かんできました。

現在彼は、広島県福山市にある「FCバイエルンツネイシ」というチームでU14のコーチをしているそうです。

要件はこうでした、私がサンフレッチェを辞めて社会人野球のチームに移り結果を出した後、ヴィッセル神戸やカープの佐々岡投手の仕事をしていたことも知っていて、その後、フロンターレに行った後すぐに辞めてしまったことを知り、その後どうしているのかと動向が気になっていたところ、私のブログを見つけ真剣に読んでくれていたそうです。

彼も今年で45歳になるそうで、指導者として十分な経験を積んできたはずです。

それが経験を重ねていくにつれ、自分が学び積み重ねてきたノウハウが、今自分の目の前にいる子供達にとって最良のものなのか、何かが足りないのではないか、そんな疑問を感じ始めてきたというのです。

このことは、これまで西本塾や個人指導を受けにきてくれた人たちが共通して口にする言葉でした。

サッカーの指導者にはライセンス制度があり、最低限横並びの知識や指導技術は持っているはずです。

それに自分の経験と創意工夫を加えて、独自の指導方法を構築していくのだと思います。

そんな人たちが異口同音に口にする「何かが足りない」、そのヒントが私の書いた文章の中にあると思ってくれるようです。

それは一言で言ってしまうと、戦術や技術以前の人間としての体の使い方、ということになるのでしょうか。

サンフレッチェ在籍当時から、「西本直」という人は、ちょっと変わった人で、やることも他の人とは違う、というくらいのことは聞いていたと思います。

ですから、ブログを読んでなおさら私の考えていることに興味を持ち、これをしっかり学んで指導に取り入れなければ、目の前の子供たちに申し訳ないとまで思うようになったそうです。

ただ土日の二日間に行われる西本塾に参加するためには、スクールを休まなければならなくなり、申し込みにまで至らなかったそうです。

そして断られることを承知で、話だけでもさせて欲しいという気持ちで電話をかけてきたのでした。

知らない人なら対応も違っていたと思いますが、20年間全く縁が途切れていた彼が、実は私の動向を追い、ブログから多くのことを学んでいますと言われれば、無下に断ることもできず、とにかく一度来てくれということで電話を切りました。

数日後やってきた彼は、大学を卒業したばかりのお兄ちゃんから、白髪の混じるおじさんに変わっていました。

私の方がひと回り年上ですから、人のことは言えませんが、人間初めて出会った頃のイメージは一生ついて回るので、お互いに年をとったなというのが最初の挨拶になりました。

来てもらった限りは、ブログを読んで実践しているという彼の話を聞かせてもらい、時間の許す限りサッカーの指導に活かせそうなところを説明し体験してもらいました。

彼は私の理論と、実際にやってみせる実技の動きに驚きを隠せず、「想像してきた以上の内容で、西本さんの理論を聞いて、見て体験して、これが本物だと知ってしまったら、これを自分で指導できないことに罪悪感すら感じます。すぐに西本さんと同じことができるようになって、子供達に指導するなどできるわけがないことは十分わかりました。できることなら一度だけでも本物を子供たちに見せてやってもらえませんか」とまで言ってくれたのでした。

これまで多くの方を指導してきましたが、私から学んだことをそれぞれの環境で真剣に伝える努力はしてくれていると信じています。

しかし、申し訳有りませんが、私と同じことができるようになっているとは思えません。

そういう人の中に、今回のようになんとしてでも本物を見せたい、指導を受けさせたいとまで言ってくれた人はいませんでした。

今の私は自分の能力を現場で発揮する環境を与えられてはいません。

シーズン前の3日間、臨時コーチとしてJ2のチームを指導させてもらったことがあっただけです。

そこからも継続の要請はありませんでした。

サッカーに限らず、どんな競技であっても、またスポーツではない分野であっても、人間の体を使って行う何かであれば、個人であろうと団体であろうと、それぞれの目的に合わせた指導をし、結果を出して行く自信のようなものが今の私にはあります。

先週行った「ゴルフ西本塾」でもそうでした、帰ってきて、腕自慢のゴルファーにその話をすると、私がゴルフスイングを教えてきたことを不思議がります。

しかし私の指導した内容は、間違いなく相手の動きを変え、飛距離を大幅に伸ばせたのです。

私のゴルフがうまいとか下手とかいう次元の話ではなく、人間の体の動きを分析できて、それを改善させる的確なアドバイスができるかどうかだけの問題です。

昨日ツイッターにも書きましたが、不調に苦しむあのあタイガーウッズにさえ、私の分析から得られたアドバイスが届けば、きっと何かが変わると本気で思っているのです。

そんなことばかり考えている私ですから、いつどんな対象からオファーが来ても、「よしきたか」と、腹を据えて取組む準備はできています。

その対象はプロのチームでもそうでなくても、本当に私の考え方に賛同し、なんとか私の力を発揮して欲しいと、本気で思ってくれる相手なら、どこでもいいと思っています。

もしそういう状況になったとしたら、まず私の心の中に浮かんでくるのは「見とけよ」という言葉です。

サンフレッチェを辞めて社会人野球のチームに移った時、私の心の中にはその言葉しかありませんでした。

色々な意味に取られそうですが、私が本気で勝たせようとしたチームがどうなって行くか、特定の誰かに向かって言っているような言葉ですが、私を知る全ての人に対して密かに発する、自分のモチベーションを上げる唯一の言葉だったと思います。

もしこれから私に期待して指導を依頼されることがあるとしたなら、また同じ言葉が私の心を支配すると思います。

「見とけよ」この一言です。

彼は帰り際に、「自分の指導している子供達に直接指導してもらう機会を作りたい、帰って上司とも相談しなければならないが、協力してもらえますか」という言葉を残して帰って行きました。

その後すぐに連絡があり、28日に指導に行くことが決まりました。

彼の子供たちに対する情熱、「自分ももちろん努力しているが、自分以上の何かを提供してくれる人間を見てしまったら、それを提供しないことに罪悪感すら感じる」という本気というか覚悟を持った言葉に、「よっしゃ任せろ」と言う気持ちと、「見とけよ」という熱い気持ちがメラメラと湧いてきています。

中学生相手に目を釣り上げ声を荒げるような大人気ないことにならないように、しっかり準備して、機会を与えてくれた彼と、彼が指導している子供達、そして部外者の指導を受け入れてくれた「FCバイエルンツネイシ」というチームのために頑張ってこようと思っています。

自分の年齢から、こうして選手と一緒に動き回れるのも後何年かな、という気持ちがどんどん大きくなっていましたが、肉体は衰えて行こうとも魂を熱く持ち続けていれば、そんなことを考える必要はないと思うようにしています。

衰えているはずの肉体も、目の前に目標ができると、そこに向かって準備をすれば、自分が思っていた以上に動ける体が作れることも実感しています。

暦の上での年齢はひとまず忘れて、自分の熱い魂と肉体を信じて「誰かのために」できることを、一歩ずつ着実に進んでいきたいと思います。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
今年2回目の西本塾を8月26・27の土日に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。
なお、今回も参加者が5名に満たない場合は開催しません。
9月10日には深める会も予定しています。

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