施術(治療)の目的

先日、プレー中に肉離れを起こした選手の治療(本来私が使ってはいけない言葉なのですが、今回は敢えて使わせてもらいます。) を、依頼されました。

肉離れの初期対応については、このブログでも何度か書いたことがりますし、西本塾では具体的な方法も説明しています。

しかし、現実に受傷直後の体が目の前にあるわけではありませんから、実際にこうやるとこうなるんだよ、と説明されても、本当にそんなにうまく行くのかなと思った人の方が多かったかもしれません。

受傷後、22時間くらい経過し、自力歩行は可能ですが、左大腿部後面、大腿二頭筋が突っ張ったような痛みと違和感が強く、見た目にもかばって歩いていることが分かる状態でした。

教科書的に言えば、まだまだ患部を安静固定し、処置といえばアイシングや私の苦手な治療器具を使った電気的な刺激くらいのことになるのでしょうか、間違ってもその部分の筋肉を収縮させるようなことはしないと思います。

何をどうやってという部分は過去記事に書いたので今回は書きませんが、約2時間の治療で、本人が驚くほどの変化を実感させることができました。

歩く際の違和感が、全く無くなったというわけにはいきませんが、ここに来るときに比べ明らかにスムーズになっていることを、自他共に確認できる状態まで持って行けました。

私が肉離れの治療で最も重視していることは、安静固定の状態をいかに短くするかという事です。

筋肉の損傷のレベルを、筋肉の最終単位であるアクチン線維とミオシン線維にまでさかのぼって考えてみた時、ここに貯留した炎症物質をいかに早くそこから流し出して、酸素と栄養をたっぷりと含んだ血液を送り込んであげる事こそが、ダメージを受けた細胞を修復する唯一の方法だと思うからです。

そのためにはどうすればいいのか、試行錯誤を重ね作り上げてきたのが、私の行っている方法です。

完全にリラックスさせた上での他動運動を行わせるわけですが、もちろん最初は患部の筋肉に関係する関節を動かされるのですから、不安もありますし実際に違和感もあります、もし無理に動かせば痛みを与えてしまう事になります。

そこをなんとか、まさに腫れ物に触るようにというか繊細なガラス細工を作るようにというか、とにかく細心の注意を持って丁寧に時間をかけて動かしていくと、アクチン線維とミオシン線維の滑り込みが出来なくなっていた部分が、少しづつノリを剥がしていくように、動き出してくれる、そういう感覚で私は自分の感覚を信じて手を動かし頭を働かせ続けています。

肉離れという状態の初期に何をしなければならないか、とにかく安静にしてアイシングでは、滑り込みを妨げている炎症物質を外に送り出す事はできないと思うのです。

長くその状態が続くと固まってしまうというか、どんどん動かしづらくなっていきます。

それと私が一番重要視している事、患部をかばって体のバランスを崩してしまう事で、他の部分、例えば腰痛を引き起こしたり肩や首にまで痛みを訴えたりという事に繋がって行く事を防ぎたいという事です。

時間の経過と共に炎症物質は吸収され、MRIの画像にも患部らしきものは写りこまなくはなるでしょう。

しかし、それをもって治癒ではないと思うのです。

それは物体として修復はされたけれども、人間の筋肉の機能としての回復は計られていないのですから。

教科書的な治療をしたとして、本人に治療前後の明確な体の変化を自覚させる事ができるでしょうか。

2時間という時間経過の中で、最初はこう、今はこう、あれどうして膝が曲がるようになって行くんだろう、ほんの少しでも動かされると痛かったのが、いつの間にかこんな角度まで動かされても大丈夫になってしまったんだろう、そんな感覚や会話なくして、2時間も向き合い続ける事ができるでしょうか。

これですべてが解決し、私が肉離れを治しましたとかいう話をしているのではありません、初期段階において大事な事はいち早く本人の不安を少しでも減らして、今後の進め方に希望を持たせる事ではないでしょうか。

そんなに慌てなくても、時が来ればできる事はどんどん増えていくわけで、早く進めるここが良い事ばかりではない、そう言われるかもしれません。

20数年前、いきなりプロという世界に放り込まれ、必死に戦う選手たちを目の前にして、自分にできる事は他にないのだろうか、もっと選手のためにできる事はないのだろうか、毎日毎日考え続けて今日に至っています。

自分がやっている事で、時間と共に選手の表情が変わって行く様子を見られる事が何より励みになりました。

こういう時はまずこれをやってこう処置して、はい終わり、その途中もその後も、一回や二回で1日や2日でそう簡単に変化するわけではないから、自分は正しいことを一生懸命やっている、今日はこれをやりました、明日はこれをやりましょう、それで良いと思えるのならそれもいいでしょう。

現実として選手もそれ以上のことを期待してはいないのかもしれません。

それでも私は、今できることは今やってあげたい、少しでも楽に歩けて明日に希望が持てるように、精神的な支えにもなってあげたい、そう思い続けてきました。

こんな考え方や方法論がスタンダードになるとは思っていません、正直誰でもできる技術ではないと思うし、人とは違う繊細な感覚も必要かもしれません。

でも結果を恐れていては何も始まりません、私は私を信じて頼ってきてくれる人間に対して、最高の技術を提供し、その信頼に応えていくだけです。

どんなケガをしてどんな状況であっても、今できることをしっかり探して、これからも一緒に戦う気持ちを持ち続けていきたいと思います。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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