今更ながら

先日予告していた福山市にある「FCバイエルンツネイシ」のU14チームの指導に行ってきました。

本人の許可があったので名前を出しますが、私がサンフレッチェ広島に在籍していた当時、下部組織のコーチをしていた藤井君が、このチームのコーチとして中学生年代の指導をしていました。

当時はそれほど深く関わったことはないと思うのですが、トップチームのトレーナーまたトレーニング担当としての私の仕事ぶりに興味を持ってくれていたようで、チームを離れた後も私の動向を気にしてくれていたようでした。

もし彼が筑波大学を卒業して、私という存在を知ることなく普通にサッカーの指導者としての人生を歩んできたとしたら、今彼が抱いているような悩みや疑問は湧いてこなかったかもしれないと思います。

子供達にサッカーが大好きになってほしい、個人としてチームとしてのレベルを向上させてあげたい、そう願わない指導者はいないと思います。

そのためにサッカー界では指導者に対してのライセンス制度を設け、一定の経験と指導技術を持った人間が指導にあたることになっています。

藤井君もかれこれ20年以上の指導歴になると思います、様々な経験を積みきっと良い指導者になっていることでしょう。

そんな彼が漠然と思い始めたのが、自分の指導が目の前にいる選手たちにとってベストなものなのか、何かが足りないのではないかということだったと思います。

育成年代選手たちを預かる指導者は、数年おきに選手が入れ替わり、ある意味同じことの繰り返しの中から工夫を重ね、経験を積んでいくのだと思います。

その時々に流行りというか戦術的な部分も変わってみたり、選手個々の能力に合わせて指導方法も当然変わってくるのだと思います。

そうやって長い年月を繰り返していく中で、自分の指導技術は向上し知識も増えていくことは実感できても、それに比例して実際に指導している選手たちのレベルを向上されられているか、経験を積めば積むほど、真面目に考えれば考えるほど自分を納得させらなくなる部分が出てくるのだと思います。

その答えというかヒントを、彼は私の書く文章から見つけれれそうな気がしたのでしょう。

それこそが私の提唱する「体作りから動き作りへ」というパラダイム転換であり、「屈筋に頼るのではなく、伸筋を使わずして使う」という、体にとって最も効率的な連携連動の方法なのです。

柔道でよく使われる「柔よく剛を制す」というイメージとは少し違って、体を使う時のちょっとした意識の違いだけで、結果がまったく違うという事実を知ってしまうと、これまで正しいと思って行ってきたトレーニングや動きの意識がなんだったんだろうということになってしまい、さらにはそれをベースに指導していることが、選手たちにとってマイナスに作用していることもあるという事実が分かってしまうと、今日今から自分はどうしたら良いのだろう、そう思ってくれたようでした。

今私のブログを読んでいただいている人は、多い日で150人くらいです。

育成年代を指導しているサッカーの指導者だけでも日本中にどれくらいの数いるのでしょう、サッカーだけではなく他の競技も含めおそらく数万人単位の数になると思います。

その中で、藤井君のような悩みを持っている人もけっして少なくはないでしょう。

実際に西本塾に参加してくれた過去の参加者で、サッカーの指導に携わっている人たちは口を揃えてこう言ってくれます、「ライセンス取得のための講習で、なぜこういう話が聞けないのだろう」と。

技術・戦術・フィジカルトレーニング、すべてを網羅してあるはずの講習内容に、肝心な人間の体の仕組みや使い方という基本中の基本の内容が抜けているから、せっかく身につけた指導方法がなぜ正確に伝えられないのかが分からないということになってしまうのでしょう。

日々真剣に選手たちに向き合って最善の指導をしている、自信を持ってそう言い切れる人も多いかもしれません。

スポーツですから結果が問われ、結果を残せば評価されるという側面はあります。

しかし、特に育成年代では、その時々の結果はもちろん重要かもしれませんが、これから先競技を続けていくための基礎になる部分や、伸びしろをどれだけ作ってあげられるかという事の方が、私は重要な気がします。

今トップレベルでプレーしている選手たちは、言葉は悪いですが、幼少期からその才能を認められ、どんな理不尽な練習にも耐え、 踏んでも蹴られても這い上がっていった選手たちです。

でもそんな選手以外にも、もしかしたら数年後、うさぎと亀の例えのように、コツコツと正しい努力を積み重ねていく事で、先を走っていた選手に追いついたり追い越したりすることもできるのではないでしょうか。

そんな選手の基礎を作ってあげられる育成年代の指導者にこそ、もっと勉強して欲しいと思うのです。

このブログを読んでくれる人が、毎日千人単位くらいになる日がくるとしたら、少しは状況も変わってくるかもしれません。

逆にいえば私が考えているような事は知らないままでいた方が、指導者にとってはある意味楽かもしれません。

今回私が直接指導したのは中学2年生の年代です、同じ14歳といっても体の大きさも私の話に対する理解力もまちまちでした。

これはプロの選手を対象にしても同じ事です。

まずは、私が話をすることが、どれだけ自分に必要な内容であるかを分かってもらわなければ、具体的な内容など耳に入ってくるはずがありませんから。

本来であればボールを蹴って練習したい彼らに、丸一日ほとんどボールを触らせないで過ごすことがどれだけ楽しくないことか、私にも十分理解できます。

そこをあえて14歳という年齢の今だからこそ、聞いて欲しい知って欲しい内容なんだよという、この部分が一番大事なのです。

小学生だと少し難しいかもしれません、高校生では少し遅いくらいだと思います。

今回の14歳という年代は、西本理論の入口を覗いてもらうには最も適した年齢だったように思います。

今回のような指導を、仕事として請け負っておいて今更ですが、なぜ私が14歳のサッカーの選手たちを前に、熱く語り体をぶつけ合い、体の動きはこうだ、走り方はこうだと教えているのだろうと、帰りの高速道路を車を走らせながら考えてしまいました。

私はいつも流れの中で生きてきました。

今私に求めれれていることが、これまでの経験から培われた西本理論に基づいた指導であれば、求められるままにどこにでも駆けつけて、相手のレベルや、それが選手か指導者かの区別もなく、私の存在や指導内容から、何か得るものがあると感じてもらえるなら、それをやるのが私の役目だと考えます。

体の不調を訴え駆け込んでくる相手には、それを改善する手当を考え、自分の思い描く動きができないと悩む選手には、動き作りのトレーニングを指導する。

私にできることは少ないですが、私という人間を信頼してくれる人間がいる限り、それに応える義務があると思っています。

昨日の子供たちには、私の思いが伝わったと信じています。

数年後彼らの中から、周りがあっと驚くような動きをこともなげに行う選手が出てきて欲しいと思います。

何より、こういう体の使い方をすると、サッカーってもっと楽しめそうだなと思ってくれる選手が増えてくれることの方がもっと嬉しいかもしれません。

単発の指導ではどこまで伝わったか分かりませんが、藤井君をはじめサンフレッチェ時代に旧知のコーチが他にもいますので、みんなで昨日の内容を共有して指導に活かし、近隣の子供たちがFCバイエルンツネイシでサッカーをやりたいと思ってくれるような存在になって欲しいと思います。

何事も最初の一歩がなければ大きな変化はありません。

その一歩目の手伝いができたと思うだけでも、昨日はいい気分で帰ってくることができました。

途中何箇所か集中豪雨に見舞われ、高速道路の運転で怖い思いもしましたが、安全運転で無事帰ってきました。

参加してくれた選手たち、厳しいことも言いましたが、今日からの練習に昨日のことを活かして、しっかり頑張ってくださいね。
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ご報告です。
 また一つ皆様にご報告です。
 先日卓球の全日本選手権(小学生6年生以下の部)という大会に出場しまして、私の教えている子が初めて決勝に進み準優勝することができました。

 最近は以前より背中の辺りが使えた感じになっているので、過去最高の成績をほんのり期待していましたが、本当に達成できるとは思いませんでした。

 前回も書きましたが、西本塾で学んだことがなければ、この結果が得られたとは思えません。本当にありがたいと思っています。

 ちなみに決勝は前年も優勝している子との対戦でありまして、全く歯が立ちませんでした。
 決勝の模様は、8月16日(日)12:00からBSジャパンで放送されます。

 多少結果も出ていますが、私の理解不足のため全て順調というわけではありません。本当に奥深いものだと思います。
 指導対象の多くが小学生なのですが、もっともっと言葉を考えてしっかり伝えなければならないと痛感しています。
 そのためには、ブログを読み返すなどして研鑽を積む所存です。

 今後も少しずつ頑張りたいと思います。
 共に学んだ11期の方々からの報告も期待しています。
  • 2015-07-31│17:38 |
  • 第11期 中川 URL│
  • [edit]
Re: No title
嬉しい報告をありがとう。
自分の学んだことを誰かに伝えたい、そう思ってくれたことで一つの成果が現れたと思います。
加えて自分の弟が、お兄ちゃんからの又聞きにもかかわらず、動きに変化が見えるなんて、こんな楽しいことはないでしょう。
藤井君の言う通り、子供のうちからこういう意識で動くことが当たり前だと思って育ってくれたら、どんなスポーツをやっても上達は早いと思います。
まだまだ周囲の理解を得ることは難しいかもしれないけど、見てしまった知ってしまった人間の責任として、より良い指導を追求してください。
  • 2015-07-30│09:29 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
No title
西本 様

昨日はわざわざお越しいただきありがとうございました。

できるだけ早く選手に西本さんの指導を受けてもらいたくて
夏休みに入りバタバタなスケジュールのあいているところに
来ていただいたので、十分な準備、受け入れ態勢を作ることができなくて
失礼しました。

今日あらためて選手に聞いてみたのですが、
今までとは違うことを感じていたようで
「楽に走れる」という感想をみんな持っていました。
そして、選手のお父さんと話す機会があり、面白い話が聞けました。
1人の選手が家に帰ってから小学校5年生の妹と1年生の弟に
見よう見まねで指導したところ、小学校1年生の弟のターンが見違えるようになったそうです。
その話しを聞き、自分が思っている小さい頃に西本さんの考えを学び、
それが当たり前で成長していくことで、今よりもっと選手の可能性を引き出すことができる
ということを実現したいという思いが強くなりました。

お忙しいところ来ていただき本当にありがとうございました。

藤井 洋
Re: お世話になりました。
コメントありがとうございました。
私も4人の子供を育てた父親として、中学生年代の子供の難しさは痛感させられました。
昨日も午前中の講義を開始して10分くらいしか経っていないタイミングで大あくびをする選手がいて、思わず大声で叱りましたが、こうやって叱られるという経験もほとんどないようで、問いただしても小さな声でシドロモドロになり、「すいませんでした」という言葉が出てこないのです。
子供のようで、もう子供でないという年代ですが、サッカーという話題でなら話もしやすいのではないでしょうか。
昨日はどんなことを教えてもらったんだという切り口で、親子の対話が始まればいいですね。
私との出会いが彼らの役に立ってくれることを願っています。
これからも成長を見守ってあげてください。
  • 2015-07-29│16:45 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
お世話になりました。
昨日はお世話になりました。
ご指導を頂いた、U-14の保護者です。
子どもとは年齢的なこともあると思うのですが、中々会話ができないときも多く、練習ではどんなことをしているのかなど、気になることも多いです。しかし、子供から親には伝わらないことが多いような気がします。
記事を読まさせていただき、子供たちもご指導いただいたことで、今はほんのわずかな違いでも、将来には大きな差が生まれることと思いますので、今度はそれを踏まえて子供と話してみたいと思います。
ありがとうございました。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月9・10日に予定しています。

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