予想通りの展開と結果

昨日のカンボジア戦、このブログにも私の動き分析を期待してくださる方からのコメントもあり、いつも以上に気合を入れてテレビ観戦に臨みました。

とは言いながら今回の試合には正直あまり期待していませんでした。

というのは、これまでいくつかの試合を見てきましたが、いわゆる格下のチームと対戦するときの選手の動きは、彼らが持っているポテンシャルの何パーセントが発揮されているのかと言わざるを得ないような、物足りない動きに終始してしまうことが多かったからです。

試合の内容としては、前回のシンガポール戦のように一方的に攻めまくり、何度も決定機を作りながらも得点できないこともありますが、基本的には勝てる相手には負けないという試合運びになると思います。

ところが相手の方が格上で、勝てば金星という扱いを受けるような対戦相手に対しては、自分の持てる限りの、いえそれ上の能力を発揮しても対等に戦えないという状況の中でこそ、私が見ていても「これは頑張った、今のような動きがもっとコンスタントにできるようになれば」、そう思わせてくれるようなシーンを見つけることが出来ます。

逆に、こういう動きをしている限り、絶対にこういう選手、こういうチームには勝てないんだろうなと思わざるを得ない体の使い方や動きが、たくさん見えてしまいます。

私の動き分析は、重箱の隅を突っつくようなあらさがしをしているわけではありません。

「こういう時にはこういう意識でこういう風に体を使えば、もっと簡単にもっと効率的に自分に必要な動きを行うことが出来ますよ」と言いたいだけなのです。

数年前まで、サッカーに対してこんなにも思い入れを持って選手の動きを見たことはありませんでした。

私のような素人が見て分かること、気がつくことを、プレーしている当事者である選手や、資格を持った指導者たちが、知らないとか気がついていないなどということがあるはずがないと思っていました。

ところがそうではありませんでした。

動きに対する、体そのものに対する見方というか感じ方がまったく違っていたのです。

「サッカーというものはこういう風に体を使うのだ、そのプレーに対しての意識はこうあるべきだ」、長くかかわっている人たちに刷り込まれた固定概念は、そうそう簡単に変わることはありませんし、何よりそれらが間違っているとまでは言いませんが、もっと違うもっと良い動き方があるなどということを考えようとする人はほとんど皆無に近いと思います。

事実私のことを知っている人たちこそ、私がこんなことを言っても「お前にサッカーの何が分かる」と、思っている人がほとんどだと思います。

そんな現状の中、私のような人間のものの見方や考え方に興味を持ってくれる人が増えたことは、色々な意味で喜ばしいことだと思います。

現在選手としてプレーしている、子供さんがサッカーをやっている、育成年代の指導者をやっている、サポーターとして真剣に応援している、様々な立場で私の見ているフィルター越しに、改めて日常にあるサッカーというものを見ていただくと、今まで見えていなかった部分に気づけるかもしれないと思うのです。

そんな私が昨日の試合を見ながら一番感じたことは、選手たちが伸び伸びとプレーできていないということです。

監督が代わり、自分のプレーをアピールして代表チームに不可欠な選手であることをアピールしたい、そう思うのは当然です。

それぞれのポジションで安定した中にも攻撃的な姿勢も見せなくてはならないし、何よりあそこまで引いて守ってくる相手に対して、なんとか自分の力で得点を取るというプレーを見せたい、そんな思いがひしひしと伝わってきました。

そんな中で最初の得点を挙げた本田選手は、自分の力通りのプレーを見せていました。

本田選手のフアンには申し訳ないですが、けっしてもろ手を挙げて褒めているわけではありません。

あそこまで引いたうえに、背中を丸め前傾した姿勢でボールを奪いに来るわけでもなく、ひたすらスペースを守るというかブロックを敷いて陣地に入れさせないことが目的のような相手選手に対してなら、その外側で自由にプレーできて当然の能力を持っているのですから。

そんな中でのシュートですから、同じようなレンジから何度かシュートを打っていれば1発くらいは入って当然でしょう。

居残り練習で、壁人形を使ってミドルシュートの練習をしている状況とそれほど変わりませんから。

取りに来ないのですからボールキープも出来て当たり前です、格下のチームや選手が相手だったらこのくらいのプレーが出来ることはもう分かっています。

彼の場合は、W杯の時からずっと言われている、自分と同等かそれ以上のレベルの選手と対戦するときの、一歩目の出足の悪さとか、攻撃で前掛かりになる時の姿勢の悪さからくる力みによる、ボールタッチの悪さをどう改善していくかの方が問題で、上から目線でプレーしている彼を見ても、どう評価していいのか分からないのです。

ただ今回は良く頑張って、勝つための試合を作ってくれたと思います。

問題は他の選手たちです、海外のチームでプレーしている選手がほとんどで、本田選手と同じように上から目線でプレーできる選手たちばかりのはずなのに、もう自分のことで精いっぱいと言わんばかりのプレーが目立ちました。

ツイートでも言いましたが、ゴール前に何人も突っ立ったままで、自分のところへ放り込んでくれ、そしたら自分が決めるからと、本当にただ待っているだけにしか見えませんでした。

私が使っているipadのアプリの位置を替えたり、消去しようとして操作するとき、アプリの右上に×印がついて、アプリのマークが小刻みに揺れます、そして一つを動かすと後のマークが一斉に横ずれして整列しなおします。

イメージは分かっていただけると思いますが、サッカーの場合なら一人の人間ではなく、全員がいつでも動きだせる状態を作り、なおかつ実際に相手に近づいたり離れたりという皆が動きを行うことで密集地帯にスペースを作り出さなければなりません。

それが出来ていないから、実際に自分のところにボールが来ても相手に競り負けたり、こぼれ球に対しての反応も遅くなるのです。

気持ちばかり焦って前かがみになり、本来の動きが出来ないというシーンが何度あったことか、私が定義する技術というのは「自らの意図した筋肉の動きを、反復継続して行うことのできる能力」のことですから、こういう試合でできないということは、私がここの選手に対して持っている彼らの技術というイメージは、たまたまユーチューブで見たゴール集の、年に何回かしかできないプレーを、何時でもできる技術と勘違いしていることになります。

香川選手の動きなど、「え、こんな動きしかできなかったっけ」と、逆に驚いてしまいました。

悪い所を指摘することは簡単だと言いますが、ではなぜそうなってしまうのか、その原因を少しは探らなければなりません。

もちろん外から見ているだけの人間ですから、それらをすべて言い当てるなどということは出来るはずがありません。

ただ動きがなぜできないかという部分に関しては、私なりの意見があります。

それはやはり意識の問題です。

メンタルのコントロールが出来ていないのなら、専門のメンタルトレーニングを受ければいい、などという単純な問題ではありません。

国を代表してW杯の予選を戦うピッチに立っている、前回ふがいない試合で引き分け、この試合は何とか圧倒的な力の差を見せて勝利したい、個人的にもアピールして代表のスタメンを確保したい、そんなさまざまなプレッシャーの中で普段通りのプレーを望むことは無理なのでしょうか。

つい先日閉幕した世界陸上を見ていると、まさに本番に力を出す選手がたくさんいました。

この一投で予選を通る、最後の試技で逆転金メダル、そんなシーンを何度見せられたか。

敗れ去っていった日本選手たちのコメントを聞くと情けなくなりました、「世界との力を痛感させれらました、ここ一番で力が出し切れませんでした」、陸上に限りません、あらゆる競技でもう何十年も前から聞かされてきたコメントが繰り返されていくのです。

ではどうすればいいのか、私に答えはありません。

しかし、私がアドバイスを求められるとしたら、どんな競技であっても根本的な体の使い方が分かっているか、一生懸命になることは良いけれど、それのよって能力が発揮できなくなっている事実を知っているか、そこから始めなければいけないのです。

体のしくみ、屈筋と伸筋の役割など、それがどうしたと思われるでしょうが、そこをきちんと理解することなく技術の獲得も発揮も出来ません。

さらには、それらを十二分に発揮するための体の使い方を、どういう意識で練習しておくか、それを知らなければ結局頑張ったのに、で終わってしまうのです。

W杯予選の戦いはまだまだ続きます、もう監督が代わることはないと思いますが、あの人の言うことや表情を見ていると、選手はやらされているという感じが強いと思います。

それはそれで仕方がないことかもしれませんが、もっと冷静に周りを見て動きを作れる選手が必要だと思います。

そのための一つの方法論として、私が提唱する90分間走り続ける能力ではなく、90分間頭と体を動かし続ける能力を持った選手が一人でも多く必要なのです。

それに今の選手の中で、一番近いと思った武藤選手でさえ、昨日はまったく私が知っている武藤選手の動きではありませんでした。

ということは、彼の動きも理屈を理解したうえではなく、天性のというかまだ若い選手ですが、これまでの経験で作り上げられてきた動きでしかなかったということです。

やはり、こういう動き、体の使い方には意味があるんだということを、しっかり頭が理解し整理したうえで、普段の練習から意識と動きの統合を図り、どんな状況でもそれが発揮できる準備が必要なのだと思います。

ただ跳んだり走ったりのトレーニングにはまったく意味がありません。

次の試合も注目はしますが、私が考えていることを本当に理解して指導することが出来なければ、何も変わらないと思います。

逆に言えば、本気で理解しようとすれば一晩で変わる選手もいるかもしれません。

その意識を持って動きづくりに取り組んでいる選手もいますが、今回その選手はピッチに立っていません。

歯がゆい思いもありますが、現状はそう簡単には変えられません、多くのサッカーフアンのためにも、選手たちの奮起を期待します。

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Comment

Re: No title
コメントありがとうございます。
次の試合も仕事が早く終わっていれば、テレビ観戦して、気になるところがあればツイートしたいと思います。
指導者や育成年代の選手たちのお手本になるような、私を唸らせてくれる動きをたくさん見せてくれることを願っています。
本当は現役の選手たちに、そういう目線で試合を見て欲しいんですけどね。
  • 2015-09-06│18:32 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
No title
サッカー代表、やはりというか想像通りの結果(残念な意味で)でした。

まだまだ西本先生のおっしゃっていることは理解できておりませんが、力が入って頑張って動いている?ように見受けられました。
世界の舞台での活躍はまだまだ遠いかもしれません。

いつも更新楽しみにしております!
  • 2015-09-06│10:57 |
  • ao URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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