数値と感性

私は学者でも研究者でもありません、今やっている仕事には合わない言葉かもしれませんが、自分は職人だと思っています。

頼まれた仕事に対して自分の持っている技術や経験を最大限に発揮し、そこに新しいアイデアというか遊び心を加えて、お互いが満足できる結果を求めてくのが私のやり方です。

私が相手にしているのは、物言わぬ道具や機械の類ではなく生身の人間ですから、同じように仕上げようとしても二人と同じ結果を出すこともできません。

そこが面白いと言っては不謹慎かもしれませんが、思ったような変化を見せてくれない、ある意味出来の悪い相手の方がやりがいを感じるところもあったり、またこちらの想像を超えるような成長を見せてくれる相手に出会って、人間の無限の可能性を感じさせてもらえたり、飽きることなくいまだに職人家業を続けています。

職人として辛い所は、組織に属してしまうと、すべての対象者に対して平等にとか、可もなく不可もない対応を求められ、コツコツ何かを作り上げることより、大量生産のラインの作業になってしまうことです。

そこに求められるのは結果を客観的に判断するための数値であり、今現在常識とされている方法論を踏襲することです。

プロスポーツ選手というのはまさにその逆で、人と同じことをしていては選手として生き残っていくことのできない世界に生きているわけで、そういう選手たちを相手にする立場の人間たちの意識が、それと真逆なものを良しとしていることに、私は納得どころか意味が分かりません。

人間の体は、私自身まだまだ見ることのできない、無限の可能性を秘めているということだけは実感しています。

それをどういうやり方で掘り起し開花させられるか、一言でいうとそれを追い求めての職人家業だと思っています。


古今東西数えきれないほどのトレーニング理論やメソッドが公開され、そして消えて行きます。

方法論より先に、まずは「自分がどうなりたいのか」という目標設定の甘さが、正しい方向性を見いだせない一番の理由だと思います。

見いだせないと言いましたが、現実として単純にこうなりたいと思った時、それを実現してくれる何かがなければ、考えても仕方がないということだったかもしれません。

方法論に頼れば、そこには過程と結果があり、それらは数値として厳然と突きつけられることになります。

しかし、それらが目標とした一定のレベルに達したとしても、本来の目的であったことが達成されたかと言えば、そうでないことがほとんどだと思います。

例えばサッカーの選手が、一歩目のスタートが若いころよりも遅くなったと感じたとします。

筋力の衰えか、はたまた練習が足りないのか、今流行の体脂肪率の増加が原因かもしれない、色々なことを考えたとします。

少なくともその問題点に対しては、出来うる限りの対応をして、数値の上では十分当初の問題点であるスタートの遅さは改善できるはずだということになります。

ところがそうはなりません。

なぜ遅くなったのか、その原因がどこにあったのか、その部分の分析が間違っていれば、当然ですが改善されるはずはありません。

あれもやったこれもやった、ここも改善したあそこも改善できた、これ以上何をやったらいいのか、もう自分の能力はここまでなのか、そう思ってしまうのも当然でしょう。

なぜかそういう状況に追い込まれた選手が、私の元を訪れる場合が多いのです。

私の言う「体づくりから動きづくりへ」という言葉に共感してくれたというか、数値に現れる結果で評価できる体づくりでは、自分にとって本当に必要な動きの改善はできなかったとうことに気づいたからです。

「動きづくりってなんだろう、もしかしたら自分にもまだ可能性が残っているのではないか」、そう思うことがスタートです。

何度も言いますが私は研究者ではありません、高価な測定装置を備えた研究室に白衣を着て座っている立場の人間ではありません。

私がみるのは、目の前にいる人間そのものです。

その立ち居振る舞いから表情や、ものの言い方、ちょっとした仕草にさえ人間としての本性が見え隠れしています。

そして問題点と改善できるところを検証してきます。

さらに何より大切なことは、「本人の本気の度合」です。

口ではああだこうだ言っていても、本気でそうなりたいという意思を感じる人間は、私の経験ではそうはいないと思います。

本気度を見分ける目は、私なりに身に付いてきたと思っています。

私の本気度を超えるものがない人間とは、当然ですがかみ合わず、私の一人相撲になってしまうことも何度かありました。

だから今は、相手の意識レベルに合わせてしか指導をしないようにしています、もちろんそれが高まるように持って行くのも私の仕事だとは思っていますが。

数値で表せない分、お互いの気持ちというか信頼関係が一番重要になってきます。

一番苦手なところですが、うまくやろうとか気に入られようなどという感覚は私にはありません、目的はそんな問題とは違う所にあるので、相手のために言わなければならないことは厳しい言葉になっても言わなければならないと思っています。

明日もそんな一人が、私の元を訪れることになっています。

彼の意識と動きを3時間で変えるのが私の仕事です、どんなことになるか私自身とても楽しみです。

また一般の方ですが、30年来の腰痛に悩まされ、何度もぎっくり腰に襲われ、勧められるままに様々な施設を訪れ、様々な施術を受けてきたが効果を感じたことがないという50代の男性が先日訪れてきました。

初めてお会いするその方に、私の考える体の仕組みや腰痛のメカニズムを話し続けました。

1時間後、今まで感じたことのない体の変化に、すぐには言葉がありませんでした、どう表現したらよいのか分からないと。

治ったとか治らない、痛いとか痛くなくなったではない、まさに数値どころか、これまで感じたこともない感覚の変化、これこそその方の体を変えてくれる唯一の手がかりであり、目標設定のスタートなのです。

私の、科学的でも何でもない感覚的な説明に、最初は納得できないというか納得のしようがないという顔をしていました。

当然でしょう、その方の職業は担当分野こそ違いますが、循環器系を専門とするドクターなのですから。

しかし、そうであるからこそ医療の限界も知っているし、人間の体の不思議さや可能性も感じているはずなのです。

数値に頼り、数値を使いこなせなければ時代遅れのように言われますが、私は人間の体の可能性を信じ、そして相手を何とかしてあげたい、自分ならなんとかできるかもしれない、その小さな可能性も信じて、これからも職人としての腕を磨き続けて行きたいと思います。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月9・10日に予定しています。

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