前側(屈)の意識を消すトレーニング

私が知っているのはスポーツヘルニアという呼び方で、元をただせばいわゆる脱腸のことですが、今はグローイングペインという呼び方をする症状があるます。

脱腸というのは飛び出してしまう状態ですが、そこまではいかないけれども、踏ん張ったり下腹部に力を入れると鼠蹊部の辺りに痛みが出て、思い切った動きができないというのが選手の訴えです。

一度痛みを感じてしまうと、何をやっても気になって、もうどうしていいのか分からなくなってしまう選手もいるようです。

それに対しては局所的な治療が主で、あまり効果を上げていないのが現状のようです。

局所の痛みをかばうために、他の部分というよりも全身の緊張が高まっているため、まずは体全体の緊張を取りバランスを整えてあげることが先決だと思います。

その上でないと、本来の痛みの場所や原因を特定できません。

まずは安静時や日常生活レベルの痛みの軽減です、気にしすぎていますから安静時というか日常の歩行程度でも痛みを訴えたりします。

もちろん最終目的はトップレベルのスポーツ選手としての動きを取り戻すことですが、いきなりそこにはもちろんいきません。

過去何人かそんな選手に関わりましたが、今現在関わっている選手とのやりとりに中で、改めて発見したことがありました。

「背中を使えていない」ということです。

これはそういう選手に限らず、私が見てきた選手全般に言えることで、ひいては日本人の特性なのではというところまで思っています。

踏ん張って動き出す、踏ん張って止まる、前にも横にも上にも、360度地面の反力を最大限に使うことが、体を動かす最も基本的なエネルギーの獲得方法だと思わされてきました。

そのためには筋力を鍛え、より強い反力を得ようと努力します。

そのためのトレーニングはほとんど屈筋を鍛えるものでした。

鍛えれば鍛えるほど、筋肉はその過程を忠実に再現しようと頑張ってくれます。

ここ一番に活躍してくれるのは、鍛えに鍛えた屈筋です、筋肉は本当にいいやつなのです。

屈筋の起始と停止部分は、その瞬間的な筋収縮によって引っ張られ、付着部には大きな負荷がかかります。

これが痛みの原因となります。

伸筋だって同じじゃないかと思われるでしょうが、屈筋は短い時間しか収縮できない代わりに瞬間的な力は伸筋よりも得ることができます。

その感覚を頑張っていると感じてしまうのです。


しかし、鍛えれば鍛えるほど付着部が受ける負荷は高まるので、残念ですがトレーニングをしたからといってケガを予防するということとは比例した効果は得られません。

これまでもいろいろ工夫をして、いかに伸筋を稼働させるか、言い換えれば屈筋を使わない、もっと言えば屈筋の意識を消すということが、一つの目標になっていました。

体の仕組みを説明し、伸筋の有用性も理解してもらってからトレーニングを始めますが、分かったつもりできているつもりでも、実はやはり屈筋はでしゃばってきてしまいます。

何年何十年の積み重ねは、そう簡単に変わるものではありませんから。

グローイングペインを訴える選手の場合、このことが解消できなければ、完全に元の動きを取り戻すことは不可能だと思います。

これまで行わせてきたトレーニングでも十分その効果はあると思っていますが、毎日一緒にトレーニングを行う環境にない場合、その意識を完全に体になじませることは容易ではありません。

もっと強烈に背中を使うという意識がわかるトレーニングが必要でした。

今回それが見つかりました、このトレーニングを何セットか行っていくと、ラットプルダウンという種目で扱っている重量が、1セットごとに軽く感じると言います。

体験した方は分かると思いますが、肘関節を曲げる上腕二頭筋という屈筋を使って行っていたものが、広背筋を使って骨盤と背骨の連動で動かせるようになると、全く違う感覚になります。

それを高いレベルで感覚できることが、屈筋を全く意識しない動き方、屈筋の意識が消えた状態と言えるのではないでしょうか。

あまりにも腰背部への刺激が強いため(これはこれまでその部分が使えていなかったということの証明でもありますが)、最初は腰の部分に痛みを訴えたりしますが、全く無視してトレーニングを続けさせます。

私がやって見せて、こんなに簡単にできることがプロの選手としてできないことのほうがおかしいと納得させて、なぜできないのか、どこが使えていないのかを体で理解させます。

言葉で説明するのは難しいですが、腹筋運動のようなものを広背筋のみで行うという感覚です。

この動きを徹底的に筋肉に教え込んでいくと、骨盤が理想的な角度を保ってくれるようになり、前側の筋肉に頼る必要がなくなります。

そのうえで、ステップワークや手投げのボールタッチの基本動作を行わせると、痛みを感じていた場所が働かなくていいのですから、当然痛みが少なくなっていくということになります。

もちろん一度や二度というわけには行きませんし、炎症が起きている場合は、それが収まるまでの時間は必要となりますが、炎症が治っても痛みが消えるわけではありませんから、このトレーニングは治療と並行して行う必要があります。

こういう痛みに対して有効ということだけではなく、動きづくりのトレーニングのベースとして、もっと重要視していかなければならないと思います。

誰かに手伝って貰えば道具もいらないので、FBTに加えて西本塾でも指導していこうと思います。

20年以上同じような仕事を続けてきましたが、相手をなんとかしてあげたいという気持ちがある限りは、新しいアイデアというか方法は生まれてくるものだと思います。

また今まで行っていたトレーニングが、別の意味を持っていたことに気づかされたりと、私の中での変化や進化はとどまることがありません。

今の治療やトレーニングに満足ができず、何か自分にあった方法があるんじゃないかと考えているのなら、一度私の元を訪ねてみてください。

一緒に考えれば良い知恵が浮かんでくるかもしれません。

スポンサーサイト

Trackback

Comment

Post a comment

Secret


プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

最新記事

カレンダー

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

カウンター

検索フォーム

QRコード

QR