動きの中から見えてくること

これまでにも多くの選手の動きを観察して、私なりにその動きがどういう意識のもとに行われているのかを分析し、またそこから見えてくることを想像したものを文章にしてきました。

そうしたことを繰り返しているうちに、一流選手と言われている選手たちの動きには、共通したものがあると感じるようになり、その部分を中心にさらに動きをみていくと、やはりそうだったかという感覚で無駄なく動きを見られるようになってきたと思います。

私の指摘する部分について、同じような視点で見ることができないという声も聴きますが、様々な競技の一流選手をたくさん見ていく中で、私なりに出来上がった視点なので、ポイントとなる見方を教えたとしても、同じようには見えないのかもしれません。

ブログを書き始めたころに使った言い方ですが、「私が見ているもの、見えているものと、他の人が見ているもの見えているものが違う」というのは、そういうことなのかもしれません。

私にとっては当たり前に思えることですが、それは、これまでの経験の中で生まれた視点であって、カメラのレンズを交換するように、簡単に見え方を変えるわけにはいかないようです。

なおかつ、私が指摘したポイントを、指摘された本人が意識して行っているかという問題があります。

ほとんどの場合まったく無意識に行っていることで、もし私が本人とそのことについて話をすることがあったとしても、「そんなことは考えたこともない」という答えが返ってくるかもしれません。

しかし、人間の体が動くという現象は、「自らが意図した筋肉の収縮活動」であることは間違いありません。

無意識という言葉が使われますが、筋肉はほとんどの場合脳から神経を介しての電気信号によって収縮します。

ただ、例外というか、「反射」という筋肉活動もありますし、脳からの指令を実際に思い描いてからでは遅いですので、それが瞬時に行えるようにするために行うのが練習ということになるわけです。

練習といっても最初はどんな動きをしたらいいのか分からない訳ですから、目から入ってくる視覚的な情報や、言葉として指示される内容はとても重要となります。

私がトレーニングを指導する際に、自分でやって見せることにこだわっているのにはそういう意味もあります。

実際にやっているところを見せ、この動きにはどういう意味があって、どういう意識で行っているのかをきちんと説明し理解してもらうことは何より大事なことです。

そのうえに、こういう意識でこういう動きができるようになることで、選手としての動きを向上させたいという本来の目的のために、どういうメリットがあるかを分かってもらわなければ、練習のための練習、動き作りのための動きづくりとなってしまい、本気で取り組み、そして継続しようという気持ちにはなってくれないと思います。

動き分析をされた選手は、自分ではそういう意識はないと答えることがほとんどだと言いましたが、長所として見える部分も短所として見える部分も、どちらも自分がやっていることの現実だと冷静に受け止めることができれば、まだまだ向上できる可能性はどんなレベルの選手にも残されていると思っています。

一流そして超一流と呼ばれた選手が、自分と同じかそれ以上の能力の選手を作れないのは、「凄い」の一言で自他ともに済ませてしまい、動きの本質を自分でも理解できていなかったからではないでしょうか、本人にはそんな必要もなかったでしょうが。

そんな超一流にまでは届かなかったけれど、こういう考え方でこういう体の動かし方で、もっと早くここに気づいて練習していれば、自分も超はつかなくても、一流選手の仲間入りができたのではないかと考えるような人間が指導者となった時、本当の意味で凄い選手というのは生まれるのではないかと思います。

そういう例はたくさんあると思いますし、私のような何の実績がない人間にも、指導する側の人間としてならチャンスはたくさんあると思って頑張っていますから。

そういう意味で私の指摘したところを、選手自身が咀嚼してくれて、なるほどそういう見方もあるのか、そういう人間から見ると自分はそう映っているのかと、耳を傾けてくれれば、私の分析も少しはお役にたてるかもしれません。

今回地元広島で、サンフレッチェ広島対川崎フロンターレ戦を、久しぶりにスタジアムで観戦しました。

ご縁があって、試合の後食事をご一緒したフロサポの方たちから、二人の選手の名前が上がり動きを見てもらえないかという話になり、昨日今日と改めてオンデマンドでプレーを見させてもらいました。

個人の動き分析ですが、当然チームとしての戦術があり指示もあるでしょうから、本人が好きなように動いているわけではないでしょうし、当然相手があることですから、自分が意図した動きだけで対応できるわけではありません。

しかし、そんな中でいかに自分の持っている能力を発揮できるのかという所が、選手としての質というか能力を判断される材料なわけですから、まったく言い訳はできません。

私は以前短い期間ですが、川崎でスタッフの一員として仕事をさせていただきましたが、今はまったくの部外者ですから、一個人の意見として聞いていただきたいと思います。

まずは、FWの小林選手です、度重なる膝のケガで、本人の思ったようなプレーは出来ていない状況が続いているのかもしれませんが、いつもの私の分析の基準でいうと、彼は常に重心が前掛かりで、DFの裏を取る動き出しの一歩目でも、上半身が少し前かがみになって太腿をぐっと引き上げるような走り方をします。

普通に考えれば当たり前に感じる方も多いと思いますが、前かがみで膝を引き上げるという動作は、ずばり体の前側の屈筋を使う運動です。

彼の体重が70キロだとすると、すでに体を前に運び出すために蹴り足には、体重の何倍もの力が必要になります。

そして踏み出した足が着地する位置は、重心である股関節よりも前方になるので、同じく着地した足にも大きな負荷がかかることになります。

間接的な言い方かもしれませんが、この筋肉や関節に対する必要以上の負荷が、膝のケガにつながっていると考えることは間違ってはいないと思います。

加えて、前かがみで腰が引けると、前方の視野が狭くなります、ボールだけを見るのではなく、オフサイドトラップをかけてくるDFラインの位置や、味方のポジションも含めて、視野を広くとり情報は少しでも多い方がいいはずです。

ボールに対して突進ではダメなのです。

前半の20分過ぎのプレーでしたが、大久保選手からの絶妙なクロスに対して、ほぼフリーな状態でヘディングシュートを試みましたが、ジャストミートせずボールはゴールの上に飛んで行きました。

原因は二つ、大久保選手が相手のディフェンスをかわすために、少しタイミングを遅らせてからのクロスになったため、小林選手はその前のタイミングで動き出していたため、自分が思っていてよりもほんの少しゴールに近い所でジャンプをすることになったのではないでしょうか。

その結果、フリーな状況であったにもかかわらず背中を大きく反らせた反動を使って、ボールを上からゴールの下へ向かって叩きつけるような強いヘディングとはならなかったのだと思います。

元々、少し前かがみのプレーが多いですから、もしジャンプの位置とタイミングが合っていたとしても、どういう結果になっていたのかは分かりません。

もうひとつ、21分過ぎですが、中村選手がつぶれながら奪ったボールを大島選手がコントロールし、右サイドにいた小林選手に少し長いボールを供給してカウンターに近い攻撃かと思ったプレーですが、ボールを受けドリブルで持ち上がり中央の田坂選手に出そうとしたパスを、DFの足に当ててカットされてしまいました。

跳ね返ったボールは小林選手の方に戻ってきましたが、足元でコントロールできず、寄せてきたDFに簡単に奪われてしまいました。

どちらのプレーもイージーミスでしたが、ドリブルの姿勢できちんと背中が使えておらず、頭から前に突っ込むような形になっていることが根本的な問題だと思います。

何気ないことですが、大久保選手というまさに見本になる体の使い方をしている選手が目の前にいて、毎日一緒に練習できる環境を活かして、しっかり盗んでほしいと思います。

ちょっとしたことですので、意識を持って取り組めば彼はすぐにものにできる能力があると思います、ケガのことも含め体の使い方という観点を持ってくれたらと思います。

もう一人はDFの武岡選手です。

既にベテランと言ってよい経験の持ち主ですが、今回の試合で気になった動きがありました。

前半8分過ぎ、ミキッチ選手が攻め上がってきた際の姿勢が、踵体重で腰が落ち、上半身が前傾していました(いわゆる猫背)ので、相手の動きに対応できていませんでした。

日本人DF全般に言えることですが、どうしてもそういう姿勢になりやすく、反応が遅くなったり逆を取られてバランスを崩すというシーンが多く見られます。

武岡選手一人の問題ではなく、ではどうすればいいのかということをきちんとトレ-ニングから変えて行かなければ、この問題は解決しないと思います。

もう一つは終了間際のシーンですが、左サイドからカウンター気味に攻め上がる柴崎選手のドリブルに対して、ここでも踵体重のまま足をちょこんと出しただけの対応で、あっさり抜かれてしまいました。

柴崎選手の上りを余裕を持って見ているポジションにいたにもかかわらず、寄せも遅く実際の対応は「え?」というくらい軽率に見えてしまいました。

もちろん疲れはあったでしょうが、もう少し何とか必死なプレーをして欲しかったように思いました。

これまでこうして個人的な分析というか、私なりに思ったことを書いてきませんでしたが、今回是非という言葉をいただきこういう記事を書かせていただきました。

けっして個人的に欠点を探して問題にしているとかではなく、本人にもし参考にしてもらえるところがあれば嬉しいです。

とくに小林選手に対しては、もう少し私がしてあげられたことがあったのではと思うこともあるので、これからもっともっと良い選手に成って欲しいと思います。

J1リーグも残り3試合となりました、最後までサポーターを勇気づけるプレーをしてほしいと思います。

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Comment

返信、ありがとうございました。
広島遠征の際、誰一人として個人的にアプローチする選手がいないというのは残念です。欧州一流クラブの選手であれば、keep in touchというか、お世話になったコーチと連絡を取り合って、自分の足しにするものだと思いますが。これが川崎の現状なんでしょうね。貪欲さが足りません。

マラソンの件、やり過ぎ症候群にならないように、適度に頑張ります。でも、半年間、いろいろ試してみて、腰回りの動きについては、少しずつイメージが定まってきました。
一歩一歩です。



  • 2015-10-23│22:37 |
  • 阪井徹史 URL│
  • [edit]
Re: やはりそうでしたか?
坂井さん
ご無沙汰しております。
小林選手に限らず、私の分析やそれに沿った指摘は本人と真剣に話をしてこそ意味のあるものです。
自分もそう思うとか、そんな気がするというのはあくまでも第三者の見方であって、私の言わんとしているところは正しく伝わっているとは思えませんし、本人にも正確に伝わることはないと思います。
依頼され、仕事の一つとしてコメントしていますが、毎回もどかしい思いは変わりません。
最近のブログやツイッターにもそれらしいことを書いていますが、できることなら本人と膝を交えて議論し、指導させてもらいたいと真剣に考えています。
それもこれも本人の問題意識、いえ危機意識があることが大前提となります。
川崎が私を正式に受け入れることはもうありませんが、個人的になら問題ないはずです。
彼に危機意識があれば、もしかしたら話を聞きてみたいと思ってくれるかもしれませんが。
西本塾生の皆さんにも、分かったつもりにならないよう、とくに気をつけてほしいと思っています。
さてマラソンのことですが、やはり私の伝えたいことを完全にとは言いませんが、形にできている人は残念ながらいません。
まだまだ伝えなければならないことはたくさんあるのです。
職業ランナーではないのですから、それなりの形になればいいと思います。
何回も来て直接指導を受けて完璧を目指してほしいとは思っていません。
私が伝えたことを基本として、自分なりに試行錯誤をすればいいと思います、その方が楽しいはずです。
今回の結果を真摯に受け止め、何故どうしてを突き詰めて次に生かしてください。
阪井さんのことですから、ストイックに取り組まれているのでしょうが、あくまでも趣味の世界を超えないように楽しく走ってくださいね。
またお会いしましょう。
  • 2015-10-22│22:28 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
やはりそうでしたか?
たいへんご無沙汰しております。西本塾の第10期生の阪井でございます。
結局、川崎は今年も例年並みの成績に終わりそうです。タイトルにはなかなか手が届きません。

さて、今回のエントリーで取り上げていただいた小林選手の動きですが、「やはりそうか」と思いました。塾への志望動機のやり取りの際、「小林選手は西本さんの指導を良く活かせている」と書きましたが、2月に実際に塾を受けてから改めて見てみると、自分がかなりの誤解をしているように感じていました。

確かに動きのスピードはありますが、脚を使って強引に動いているので、最初に決めた動きしかできず、能力あるDFを交わすことが出来ないし、ご指摘のように怪我もしやすいです。「広背筋で背骨を運ぶ」という感覚にはほど遠いと思っておりました。こうして指摘いただくと考えの整理が進みます。

この試合にも出ていましたが、最近、中野という選手が試合に出るようになり、中野と小林を比較すると、どちらが自由度がある動きなのかがはっきり感じられます。小林には頑張ってもらいたいです。

最後に近況報告です。
先週、初フルマラソンの地である大町アルプスマラソンに再挑戦して参りました。記録は13分短縮と冴えない結果でしたが、ラスト3kmでの脚の痙攣がなければ30分は短縮出来ました。
痙攣する事自体が問題ですが、少しだけ感じが掴めたレースでした。特に腸骨筋で脚を後方に引き上げるとかなり走りやすいことを少し実感できて来ました。ただ、全く馴染んでいないために痙攣するのですが。

まだまだ道のりは長そうですが、引き続き自分の走りを探して行きたいと思います。
  • 2015-10-22│21:59 |
  • 阪井徹史 URL│
  • [edit]
ありがとうございます。
早速のご返信ありがとうございます。
巧い選手の身体の使い方の違いを以前より気にしてはいたものの、それを言葉にすることができていませんでした。このブログに出会えたことで自信にも確信にも繋がることがあり、本当に感謝してもしたりない思いです。
かくいう私は愛媛県出身でありますが、やはり小学生のうちから正しい身体の使い方を伝えていかねばこの現状を打破することはできないと考えています。
意識して頭で理解し身体に落とし込むというよりも感覚的に理解できる小学生のうちに伝えてあげたい、そう思っています。
まだまだ勉強、勉強です。
  • 2015-10-22│16:43 |
  • yasuoka keizi URL│
  • [edit]
Re: 身体の動かし方
コメントありがとうございます。
私自身小学生のサッカー選手の指導はしておりますし、これまで育成年代の指導者の方も西本塾にたくさん参加して頂き、指導に生かして頂いています。
参考にしていただけるところがあり、きちんと伝えられると思って頂けたなら、どうぞ子供達のために正しく伝えてあげてください。
  • 2015-10-22│12:49 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
身体の動かし方
小学生にサッカー指導を始めようと考えています。ここで挙げられている身体の動かし方について、小学生の未発達な身体状況においても指導していくことは可能でしょうか?
  • 2015-10-22│10:54 |
  • yasuoka keizi URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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