投球動作の指導

日曜日の午前中に来てくれたフロサポのメンバーの方たちの目的の一つに、趣味でやっている草野球で活躍するために、私が主張している正しい体の使い方による投球動作を教えて欲しいということがありました。

その中の一人は、神奈川県内でも有名な野球の強豪校の出身で、もちろん野球部のOBだそうです。

高校まで野球を続けたというだけで、経験のない方から見れば、かなりのレベルを想像するかもしれませんが、その方がというわけではありませんが、私に言わせると人間がボールを投げる動作の本質が分かっているというか、実際にできている人はほとんどいません。

それが上達を妨げ故障の原因になっていることは明らかですが、そう思っている人自体がほとんどいませんし、ではどうすることが正しいのかを分かっている人は、もっと少ない限られた人たちだけになってしまいます。

プロ野球のOBたちが行う野球教室でも、その部分を明確に指導しているという話は聞いたことがありません。

今回私の指導を受けていただいて、今まで行ってきたことを私がなぜ間違っていると言うのか、どうしてそれではいけないのか、そして私が提唱する体の使い方を身につけることで、どういうメリットがあるのか、短い時間ではありましたが、本質的なところは理解していただけたと思います。

ただ、それを実際にできるようになるのは簡単なことではありません。

さらには自分ができるようになったからと言って、それを人に伝えるということができるようになってもらうのは、もっと大変なことです。

9年間二人三脚で投球フォームを追求してきた、現広島カープの2軍投手コーチをしている佐々岡君でも、私が指導した内容をそのまま伝えられているかどうかは分かりません。

ただ彼は実際にそれができた人間で、9年間試行錯誤を繰り返しながらマウンドに立ち続けた人間ですから、私には分からない部分をたくさん持っているはずです。

その経験を含めて、私以上に的確な指導をしてくれていると思います。

現在の仕事で野球選手に関わっているのは一人だけです。

現在彼は高校3年生で、大学に進学して野球を続けることを前提に1年前から指導をしています。

すでに高校生としての現役は引退していますが、高校球児としての実績はまったくありません。

最後の夏の大会はベンチ入りすらできませんでした。

甲子園には行けませんでしたが、それなりの強豪校で、よその県からも選手がくるくらいのチームですから、投手としてベンチに入ることは容易ではなかったようでした。

そのうえ彼は本気で野球に取り組んだというか、小さい頃からリトルリーグに入って硬球で野球をやっていたわけではなく、中学では普通の部活で軟式野球をやっていて、ある意味選ばれて入部してくる選手とは入学時に大きく差をつけられていました。

それでも彼は諦めずに、このまま野球を続けて自分の可能性を追求したいということで、私もその夢を一緒に追いかけることにしました。

以前に書いた言葉ですが、私は「負けると分かっている喧嘩は買わない」という主義です。

それは単に逃げるという意味ではなく、勝つためにはあらゆる努力をしなければなりません、その覚悟もなく、なんとなく戦いの場に足を踏み入れても勝算などあるはずはないということです。

個人として組織として本気ではない相手に対して、私がいくら力んで頑張っても無駄なことは目に見えています。

私が彼の指導を請け負ったのは、彼にはその覚悟とやる気を感じ、何より彼には大きな可能性があると感じたからです。

過去にも何人かの中学生を指導したことがありました。

それぞれが真剣で一生懸命指導についてきてくれました。

そしてそれぞれが高校に進んで、自分の目標に近い結果を残してくれたと思います。

今回はその目標が今までとは比べ物にならないレベルを最終目標にしています。

高校野球で活躍できなかった選手が、そんな大きな目標をと思われるかもしれませんが、だからこその可能性を見出したのです。

勝つためにはから始まる指導で、体に無理をさせられることもなく、フォームに関してはまったく指導を受けていませんでした。

一からいえゼロから私の考えている理想の投球動作を染み込ませていける、格好の対象となりました。

身長は十分ですが、まだまだ体はできていません。

すべて含めて私が思ったような方向に導いています。

投球動作の詳細については過去の記事を読み返していただくとして、それを実際にできるようにすることは本当に難しいことです。

当初はまったくの素人同然で(私の求めているレベルと比較してですが)、教えても教えてもなかなか身に付いてはくれませんでした。

指導の内容は、単に体をこう使ってという指導ではありません、今行っている動作がなぜ良くないのか、これから目指して行く動作はどういうメリットがあるのか、それができるようになるためには、まずは動きづくりのためのトレーニングがあって、それを繰り返し行うことなしに、形だけの指導では絶対に身に付かないし、もしできるようになったとしても、反復継続できる体が伴わないことなど、毎回毎回口を酸っぱくしていい続けました。

前半の動きづくりのトレーニングのことを、「折り紙の折り目をつける作業」と呼んでいます。

彼にはまだ確固たる折り目はありませんでしたが、もし「私はこういう折り方で折ってきましたと」いうものがあったとしても、一度開いてしまい、アイロンこそかけませんが、折り目を消してから、私が新たな折り目をつけていく作業を行うのが動きづくりのトレーニングです。

こういうと何か押し付けているように思われるかもしれませんが、一度きちんとした折り目さえつけてしまえば、あとは個人差というか個性がありますので、同じように折り直しても、基本の部分が変わらなければ、私が教えた通りにみんながならなくてもまったく問題はありません。

そんなトレーニングと並行して、投手にとって必要な股関節の感覚やバランス感覚のトレーニングも行います。

様々なトレーニングを組み合わせることによって、私が目指す投手としての体の動きができるようになるための下地を作っていくのです。

そして最後に行うのが実際の投球動作ということになります。

この段階になっても、今日今までやってきたことはなんだったんだと言いたくなるような、過去の悪癖が大きく顔を出します。

しかしそれは当然のことで、だから私の指導を受けにきているわけで、根気良くその作業を繰り返すうちに、少しずつ変化が見られるようになってきます。

ボールを投げるという動作は、実際に行えば結果というか感覚として、ボールがどういう回転と軌道で進んで行くのかが分かりますから、他の動作に比べれば変化を実感しやすいと思います。

約1年の指導を経て、彼の動作は大きく進歩しました。

実際にキャッチボールをする機会がありませんが、なんとか機会を作ってキャッチャーミットで受けてみたいと思います、今の彼はかなりのレベルに達していることは間違いありません。

どこの誰でもこのレベルまで指導ができるのかと言われると、安請け合いはできませんが、もしこの選手を見てくれと言われれば、ある程度のゴール地点は見えるような気はします。

今年引退を決めた、中日の山本投手は現役時代肩肘の故障はまったくなかったそうです、あと10年投げ続けてもそれは変わらないだろうというコメントを見ました。

もちろんその秘訣を一言で言い表すことなどできないでしょうか、「正しい投げ方をすること」という言葉を使っていました。

私が佐々岡君と目指した理想の投球フォームもまさにそういうものでした。

「正しい投げ方」、まさに抽象的な言い方ですが、人間という動物が手に持ったボールを、マウンドに立って静止した状態からキャッチャーミットめがけて150キロにも達するスピードとコントロールを両立させ、なおかつ100球を越える球数を投げ続けるためには、どういう体の使い方が理想なのか、自分にはできないことを、その可能性を持った人間と一緒に追求できたことは、何にも勝る大きな経験でした。

それを今、同じ夢を持った少年に伝えています。


昨日も彼に話をしましたが、どんなに正しい努力も常に右肩上がりの成長を続けて行けるわけではありません。

今回でも最初は地を這うような時期が長かったと思います。

そんな期間が続いても諦めずに継続してくれて行くうちに、小さな変化を感じたり、また停滞する時期になったり、お互いに「おっ」という大きな変化を感じられたりと、その時々の感覚は一様ではありません。

しかし、的確な目標設定の元に、正しい努力を継続していけば、間違いなく目標は近づいてくるものだと思います。

まずは自分の現状を冷静に判断し、どこに問題があるのかをしっかり整理した上で、その解決方法を私が持っていると信じてくれることがスタートだと思います。

それが信頼関係ということになるのでしょうが、それを築くことが何よりも難しいことかもしれません。

私のこれまでの経験と実績ではまだまだそう思ってもらえないのかもしれません、一つ一つ目の前の問題を丁寧に解決していくことで、私ならと思ってくれる人が増えるかもしれません。

それもこれもすべては「縁」だと思います。

縁を結ぶのは偶然ではなく必然だとも思います。

どんな立場であっても、現状に満足せず向上心を持っていれば、きっと何かに出会うと信じています。

次回になると思いますが、動作と故障の関係について、特に走るときの着地の位置がなぜ膝の故障や肉離れに結びつくと考えるのか、言葉で整理してみたいと思います。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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