脚の運びと人体組織への影響、3・5・7理論からの考察

明日、明後日は西本塾を行います。

埼玉県と岡山県から二人の方が参加していただくことになっています。

人数は少ないですが、お二人から届いた受講の申し込みの内容は、本当に真剣そのもので、私から何かを学び、それをそれぞれの環境に還元したいという熱い思いが十分伝わってくるものでした。

おそらくは今までにも増して深みのある西本塾になるのではないかと、私自身とても楽しみにしています。

さて、前回予告をしたとおり、走るという行為によって人体の組織が受ける負荷の大きさが、体の使い方によってどれくらい違うと考えるのかを、私の意見として書いておきたいと思います。

これまで様々な選手の動き分析をしてきましたが、動きそのものから、体の負担の大きさを感じ、こんな動き方をしていたらケガをしそうだなという選手の動きは以前から目についていました。

一番直近の例では、生中継で試合を見ていた時、何度もゴール前に駆け上がる選手の脚の運び方を見て、スピードもテクニックもあって良い選手だなとは思いながら、一歩間違えば肉離れを起こしそうな走り方だと、一緒に見ていた家族に話をしていた矢先に、ゴール前に走り込んだ際に、それが現実になったことがありました。

家族には色々な話をしていますので、私が言わんとしていることはある程度分かってくれているので、「本当だやっちゃったね」ということになりましたが、そうでない人たちにとってはまったく意味不明な解説だったと思います。

予想通り本人から連絡があり、早期復帰に向けてお手伝いをさせてもらいましたが、本人にその話をしても、そんなことが分かるはずがないと、本気でその話を聞くことはありませんでした。

それから信頼関係ができていく中で、「最初に言われたことはそういうことだったのですね」と、西本理論による解説を理解してくれるようになりました。

肉離れをした部分の回復はもちろんのこと、どういう体の使い方をすれば、そういうリスクを少しでも減らせるのかという部分も含めて、真剣にトレーニングを行ってくれました。

その甲斐あってか復帰後の彼の動きは、私の目にも明らかな改善が見られ、直近の試合でも素晴らしいプレーを見せて勝利に貢献してくれました。

ではなぜ私が選手の動きからケガを予測したかということです。

走るという行為は、静止もしくはゆっくりしたスピードから、素早く体を移動させるという行為です。

このことについては過去記事で、相当詳しく書いてきましたのでそちらを読み返していただくとして、ここで言いたいのは、自分の体重を移動させるために、どういう体の使い方が、体の負担を減らして効率的に効果的に、目的である速いスピードで走れ、ストップターン、ジャンプと自在に動き回れるかという問題です。

既成概念というか、誰もが深く考えずに行っている行為ですが、私はこの部分を深く考えずして故障の予防はできないと断言します。

過去に関わった外国人選手の例ですが、彼は身長が高く脚も長い選手でした。

DFとして安定感のある選手でしたが、肉離れが常態化し離脱と復帰を繰り返していました。

通訳を通じ私の考え方を伝えましたが、正しく理解してくれてはいないようでした。

当然のことです、言葉の通じる日本人選手であっても、私の考えを正確に伝えることが難しいのに、生まれも育ちも考え方も違う外国人選手に、私の分野の専門家でもない通訳を通して、理解をしてもらうことは、さすがに無理がありました。

ケアのやり方にしても同じで、結局その選手の力にはなれませんでした。

同じ時期に日本人選手で、こちらはベテランで実績も十分な選手でしたが、私の考えを受け入れて地道にトレーニングを重ねてくれたので、前年までに比べ動きが明らかに改善し、トレーニング量も増やせたので持久力も回復し、出場時間が大幅に増えた選手もいました。

二人とも肉離れが持病のように思ってしまい、思い切ったトレーニングができていませんでしたから、当然動きも良くないですし、スタミナもありません。

二人の明暗を分けたのは、やはり私の考え方を理解できたかどうかに尽きると思います。

形だけは同じようなトレーニングを行ってくれても、根本的な考え方が理解できていなければ、良い方向へは導くことはできないのです。

動きで一番負荷のかかるのは着地の瞬間と、後ろ足で地面を蹴る瞬間です。

このことは誰の目にも明らかだと思います、その負荷に耐える筋力をつけるために、筋力トレーニングを行っているということも間違いとは言えません。

しかし、筋力を向上させればそれだけ蹴る力が強まり、着地の衝撃は比例して大きくなることは明らかです。

このことは一般的に行われている走るという行為の体の使い方を前提の話ですが。

人間の重心位置は股関節部分だと考えています。

きちんと股関節の上に上半身が乗っていれば、立っていても頭を重たく感じることはありませんし、長く立っていても腰や肩の辺りが痛くなったりということも少ないと思います。

速く走るために、膝を高く引き上げ股関節を屈曲させるために、大腿四頭筋を屈筋として強く収縮させなければなりません。

いわゆる腿上げをしている状態です。

そういう使われ方で引き上げられた膝が大きく前方に振り出され、重心位置である股関節よりも前方に着地することになります。

ここで受ける衝撃が、筋電図による解析では、スピードによって体重の3倍とも5倍とも言われる大きな衝撃となります。

計算上の話ですが、体重が70キロとして、着地の瞬間には210キロから350キロなどという想像もつかない負荷がかかってしまうことになります。

そして瞬間的にそんな大きな負荷を支えている筋肉を、後ろ足がそれ以上の筋力を発揮しなければ、前に運ぶことはできないことになります。

当然連続した動作ですから、慣性も働きますので、数字そのものの大きさでないことはもちろん分かっています。

そうであったとしても、少しでもその負荷を小さくすることはできないのかと考えたのです。

その方法は股関節の真下に着地することです。

この感覚が身につくと、着地している感覚も地面を蹴っている感覚も、本当に少なくなって、慣性のみで体が進んでいく感覚になります。

だから私が指導をした人たちが、「走っている気がしないとか、足が張らないとか、全然疲れない」などと、およそ走った後の感想とは思えない言葉を発することになるのです。

3・5・7理論についても詳細は過去記事に譲るとして、膝を前方に大きく振り上げる際には、大腿四頭筋は股関節に対して屈曲という方向に運動させていることは前述しました。

この大腿四頭筋という筋肉にはもう一つの役割があり、膝関節に対しては伸展という運動を行ってくれます。

一つの筋肉がほぼ一瞬のうちに、二つの関節に対して屈曲と伸展という真逆の運動を、同時に行うことになるのです。

筋肉の仕事は骨を動かすことのみですが、屈曲も伸展も行わないゆったりした状態を5という単位で考えるのが基本の3・5・7理論ですが、股関節の屈曲のために5から3の方向へ短くなっている筋肉を、間髪を容れずに膝関節に伸展のためにさらに短くなる方向に働いてもらうことは、どう考えても難しいことだと思うのです。

無理をさせた上に、さらに追い討ちをかけることになるのですから、筋繊維の負担は想像を超えたものであることは間違いないと思います。

これが大腿四頭筋の肉離れにメカニズムだと思っています。

その負担を少しでも少なくするために、股関節の真下に着地をしたい、それを可能にするのが広背筋をしっかり収縮させて骨盤を後上方に引き上げた状態を保つことで、股関節の自由度を高め、腰がスッと起きた状態で自然に真下に着地できる状態を作ってあげるのです。

5から3に収縮した筋肉を、一度フリーにして5に戻し、できれば揺れを利用してもっと7に近いリラックス状態を作ることで、3から7の間を大きく使うことができれば、筋繊維自体の負荷は相当軽減できると思います。

動き出す際にも同じことが言えます。

静止した物体を動かすには大きなエネルギーが必要です。

地面を強く蹴って反力を得る必要があります、この際には3の収縮方向へ瞬間的に大きな力が必要になります。

この瞬間にも肉離れは起こります。

これを防ぐためには、股関節をアイドリング状態にして、地面を蹴るのではなく、股関節という重心を移動させることで動き出し、動き出した体の重さを支えるために自然に膝が振り出され、移動した重心である股関節の真下に着地してしまったという結果に導くのです。

ほとんど筋肉の活動は必要ありません、3・5・7の中心の5の前後で揺らいでいるだけの感覚です。

そんなことで瞬発力が発揮できるのか、相手との接触に勝てるのか、みなさん心配してくれますがまったく問題ありません。

逆に力んでしまって、動き出したら止まらないとか、動きが直線的になって融通が利かないとか、腰が引けて視野が狭くなるという弊害もありません。

外国人選手にはこの感覚がまったく伝わらず、結局居ついた状態から地面を強く蹴り、大股でドスンドスン走る走り方を変えてあげることはできませんでした。

また別の外国人FWの選手は細かい話をしたことはありませんでしたが、何となく私の伝えたかった重心移動をうまく使って走っているように見え、多少感覚が伝わったのかなと嬉しく思っています。

3・5・7の幅を大きく行ったり来たりすることを怖がって、関節の運動に自分でブレーキをかけてしまいきちんとした可動域でのトレーニングができていませんでしたので、それを改善するトレーニングを指導したら、ほとんど毎日のように取り組んでくれたので、こちらは移籍したチームでも長い時間ピッチに立ってくれているようで、本人と話をする機会はありませんが、おそらくは役に立ったと思ってくれていると思います。

筋肉の問題だから焦らないほうがいいと進言してくれるスタッフもいましたが、筋肉の問題だからこそ早期にアプローチして、できるだけ拘縮させず3・5・7の間を自由に収縮できるように導いてあげることこそがケアでありリハビリとなるはずです。

そこには当然痛みの問題が生じますが、痛みの感覚にはまさに個人差があって、少しの痛みでも怖がって動かさない選手もいましたが、信頼して多少の痛みは我慢してでも3・5・7の動きづくりを優先してくれなければ、画像の診断に頼って、治ったとか治らないとかを論じていては、スポーツ選手としての復帰は難しいと思います。

私の提唱する走り方は、サッカーで言えば90分間走り続けるから、頭と体を動かし続けるへの意識改革はもちろんですが、故障をしづらいという側面も同じくらい重要なことで、良いとこだらけの考え方だと自負しています。

現状に危機意識を持っている選手は、本気で考えて欲しいと思います。

時間は待ってくれませんから。

そんなこんなも含めて、明日からの二日間しっかり伝えていきたいと思います。

気をつけてお越しください、お待ちしています。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。

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