木を見て森を見ずにならないために。

このブログの副題でもある「木を見て森を見ず」という言葉をここ数日改めて気づかされることが続きました。

年明け早々から三日間、新天地での活躍と言うよりトップレベルの選手としてもう一度輝きたいという強い想い込めて指導を受けにきてくてた選手がいました。

早熟な選手で早くからトップレベルの仲間入りをして海外にまで活躍の場を広げてきたようでしたが、その輝きを失わせてきた原因はやはりケガでした。

例えば膝の靭帯損傷や半月板損傷というサッカー選手にとっては致命的とも言える大きなケガをしたとします。

保存療法ではなく手術という手段をとったとすれば、まさに教科書的なリハビリが始まります。

何週間たったからこれをしてもいい、何ヶ月たったからこれができるはず、そんな判断基準で進んでいきます。

私が問題視していることは、膝をケガしたのだから膝周囲の筋肉を鍛えることで、痛めた部位を守るということが、何にも増して優先されることです。

「そのどこが悪いのか、当たり前すぎてお前の言っていることの意味が分からない」、そんな声が聞こえてくるのは百も承知です。

ではそうやって鍛え上げ万全な筋力を取り戻して復帰した選手が、元のような活躍ができているでしょうか。

もっと言えば、同じケガを繰り返している選手や、完治しているはずの膝を無意識にかばい、体全体のバランスさえ失ってしまって、膝以外の腰や股関節の痛みまで訴えている選手がどれだけ多いことか。

その度に行われることは、膝が痛いから膝の治療、腰が痛いから腰の治療ではないのでしょうか。

痛いところが悪い、痛いところを治す、まさにモグラ叩きのようになってしまいます。

良かれと思って頑張った膝周辺の筋力トレーニング、反対の膝にも負けないくらい、いやそれ以上の筋力や周径囲を作り上げたとしたら、その筋肉は待ってましたとばかり前面に立って負荷を受け止めてくれることに気づいているでしょうか。

そこに落とし穴があるのです、筋肉は本当にいいやつで、教えたことをそのままやろうとしてくれます。

鍛えれば鍛えた分だけそこに、新たな大きな負担がかかるのです。

そうならないための動きづくりのトレーニングが必要なのです。

彼もまさにそうでした、彼に私のことを紹介してくれたエルサマニ・オサマ選手も、その負の連鎖に陥り、その方法論に納得できず、何かが違う、本当に人間の体を理解し向き合ってくれる理論と技術を持った人間がいるのではと探し続けた結果、私のブログに出会い、自分の思いを言葉にしたメールを送ってくれたことから、直接広島を訪れてくれ、それ以来の交流が続いています。

彼も痛いところケガをしたところを治そうと、考えうる限りの手を尽くしてきました。

しかし結果は納得できるものではありませんでした。

私がそうした選手たちに向かう時、まず分かって欲しいことがあります。

半月板や靭帯という組織がそう簡単に傷んでしまうようには、体は作られていません。

半月板という組織は、骨と骨とが直接接触することがないように、骨の表面にコーティングされたような組織です。

滑らかに滑り合うようにするためのものです。

ただその半月板という組織にして、常に滑り合うわけではありません。

骨と骨とが形成する関節部分に、適度な隙間を作り、筋肉の収縮によって骨が動かされ関節の角度が変わっても(これが人間の体が動くということです)、骨どうしがぶつからない様に、さらには一定の可動範囲を超えない様にするための【靭帯】という組織が存在します。

様々な組織が複雑に作用しあって、そう簡単には骨どうしはぶつかることがない様にきちんと仕組まれたからくりがあるのです。

それが予期せぬ大きな外力や衝撃によって、本来仕組まれたカラクリでも支えきれなくなってしまうことで、半月板という組織が骨と骨とに挟まれ傷ついてしまうというのが半月板損傷の機序です。

半月板の部分で済めばまだマシですが、骨の表面まで傷ついてしまうほどの重傷を負ってしまうと、まさに致命的です。

膝の角度を保つためには、内側・外側そして前・後十字靭帯の4本の靭帯でバランスを取り合っていますから、半月板が挟み込まれるほどの状態になったということは、最低でも4本のうち一本の靭帯は生理的な範囲を超えて引き伸ばされているはずですから、半月板損傷イコール靭帯損傷という図式が成り立つわけです。

現代医学はその状況を客観的に画像で判断することができるという意味では本当にありがたい存在です。

私もそれを確認して上で、その後の処置やトレーニングを組み立てる判断をしていましたから。

問題はそこなのです、医療機関に行って画像診断を受ける、その後です。

「こういう風になっています、だから痛いのです」、ケガをした本人や関係者が知りたいのはもちろん現在の状況もそうですが、「ではどうするか」、知りたいこと聞きたいことはこっちなのです。

そこで語られるのは、患部がどのような過程をたどって回復して行くかという一般論であって、今日から、いや今から私は何をすればいいのかという具体的な方法論が語られることはありません。

なぜ言わないか、その方法論を持ち合わせていないからです。

それを私は考え実行してきたのです。

先ずは日にちの薬が最優先で、とりあえず様子をみてくださいで終わってしまいます。

ケガをしてしまったことは事実で、どうあがいてもなかったことにはできません。

なぜ私がそんな選手の体を触って、曲がらなかった膝が曲がったり体重をかけるだけでも痛みがあったはずなのに、歩くどころか走ることさえできる様になってしまうのか。

これがまさに「木を見て森を見ず」なのです。

膝を見ても仕方がないと言っているわけではありません。

ケガをして痛い思いをしてしまった瞬間から、体中の神経筋肉が総動員を掛けて、この膝を守ろうとします。

それが痛めた部分を守ってくれる体の防衛反応であり、ありがたい体の仕組みです。

しかし、ありがたい反面、過剰な反応を示してしまうことがほとんどです。

体は過剰だとは思っていないでしょう、そこに負担がかからない様に他の部分が普段とは違う筋肉の緊張 を維持したり、関節の角度を変えてまで、痛めた部分がそれ以上痛くならない様に頑張ってくれているのですから。

しかし私はそこまでやってくれなくてもいいよと、体に語りかけるのです。

他の部分が過度に緊張してしまうことで、逆に痛めた部分が本来発揮できる能力にまでブレーキをかけてしまっている場合が多いからです。

複雑な動きを表現できる操り人形の糸は、長さや太さそして素材まで絶妙なバランスで配置されています。

そのうちの一本でも本来の機能を果たせない状態になってしまったら、人形全体の動きまで変わってしまいます。

人間の体も同じです。

長い短い太い細い、それぞれの筋肉や靭帯が、本来の役割を果たしてくれてこその体の動きなのです。

全身の筋肉のバランスを整えていくことで、骨格の位置が整い、関節のすき間が回復することで、結果として膝の痛みが軽減したり、腰痛や肩の痛みも軽減できるかもしれないというのが私の考えです。

普段私の施術を受けている方でも、半月板や靭帯損傷の選手の痛みが軽減したという話をすると、「そういう時はどういう施術をするのですか」と聞かれます。

自分が受けているのは腰痛のための施術であって、これで膝の痛みが軽減できるとは思はないのです。

腰痛であっても、私の施術でどうして楽になるのかそれさえ分かっていないのですから、そう思うのも当然でしょう。

まさに「木を見て森を見ず」なのです。

もうお一人、長年お付き合いをいただいている方の奥さんですが、かなり以前に一度腰痛できていただいたことがありました。

その時は私のやり方が理解できない様で、あまりいい顔をして帰ってはいただけませんでしたので、たぶん一度だけだったと思います。

年齢は私と変わらない方ですが、ヨガやダンスと活動的な方で、昨年の11月にジャンプで着地した際に膝に痛みを感じながら、そのうち良くなるだろうと放っておいたら、年末に我慢も限界となり整形外科を受診するとMRIで半月板の損傷が疑われるという診断を受け、腫れ上がった膝から関節液を抜き取る処置を受け、これで楽になりますと言われたにもかかわらず、正月休みの間ずっと痛みが続き、膝は曲がったまま伸び切らず曲げることもできない状態が続いていたというのです。

運悪く私の正月休みと時を同じくしてのことでしたので、休み明けに慌てて電話があり、選手よりもひどい状態でしたが、考え方もやることも同じです、結果は一回で普通に歩ける様になり2回の施術でほぼ全身のバランスは整い、念のために来週またきてくださいで終わりにしました。

半月板損傷が治ったわけではありません、不必要にかばってくれていた他の筋肉の緊張を取り、全身のバランスを整えただけのことです。

膝の患部に本来の隙間ができ、休息を与えること以外に、組織として回復を早めてあげることはできません。

あとはそれこそ日にちの薬で、毎日来て頂いても時間とお金の無駄ということです。

そこを引っ張るのが商売かもしれませんが、私にはそういう商売気は残念ながらありません。
相手のために最良の選択をするのが私のポリシーです。

一般の方の痛みに対する施術行為、健康の維持増進を目的としたトレーニングの指導、さらにはトップレベルのスポーツ選手の能力向上を目的とした知識やトレーニングの指導、もっともっと多くの方の役に立てるようになるために、ここ広島から発信を続けていきます。

そろそろサッカーも来週あたりから全体練習が始まる頃でしょうか、短期間であっても私の指導を受ければ選手の意識や能力は確実に変わると思います。

残念ながらそういう依頼はありませんが、年末年始を含め、私の指導を受けてくれた選手たちが、周りをあっと言わせる動きを見せてくれることを期待しています。

週末の連休は、大阪府立旭高校野球部の指導に行きます。

やっと来たかという感じです、社会人野球やプロ野球の一流選手を相手に結果を出し続けてきたにも関わらず、これまで野球関連の仕事はほとんどありませんでしたから。

子供の頃から考え続けてきた野球という競技に必要な 、ボールを投げる、バットを振る、走るという行為の、なぜどうしての部分からしっかり理解してもらって、継続して取り組める様に指導してきたいと思います。

色々なことをやっていますが、その一つ一つのことから私自身が学ばせてもらうことがたくさんあります。

そんな機会を与えていただくことに感謝して、日々頑張っていきます。

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Re: もしかして
コメントありがとうございます。
このブログで何度も書いてきましたが、私自身は私のやり方に対して、誰が認めようと認めまいと、孤高の覚悟を持って仕事をしてきました。
その結果として、正しいことが正しいと思われないまま、既成概念に流されているスポーツ界や施術の方法に、やはりこのままではいけないと、具体的に私が指導した選手の個人名を出して、その成果を知らしめることにしました。
と言っても、そう思ったのはつい最近のことですが。
そんな中、この選手の変化をストレートに表に出してしまうより、本人はもちろん、見てくれた人たちが、○○選手ってこんな動きが出来たっけ、こんなに凄いプレーが出来る選手だったっけと驚いてくれて、このオフの間に何があったんだ誰の指導を受けたのだと、話題になった時、もしかしたら広島に行って西本の指導を受けたんじゃないのかという流れになった方が面白いと、少し遊び心が出てしまいました。
それくらい、これまでの彼が知らなかった動きや発揮できていなかった能力を掘り起こし、目覚めさせることができたと思ったからです。
そんな数日でとか、私にサッカーの何が分かるんだと思っている人間たちの鼻をあかしてやりたい気持ちもあります。
過去に私の理論や方法論を受け入れなかった選手やチームに対しての気持ちもあります。
彼を含め、何人かの選手を指導しましたが、間違いなく彼らの動きは変わりました。
今年は見なければならないカードが増えました。
それぞれのチームのサポーターの皆さんと一緒に応援し、楽しませてもらいます。
まだ全体練習も始まっていないと思うので、それが誰でどう変わったのか確認していただくことはできませんが、楽しみにしてください、そして期待を込めて応援してあげてください。
  • 2016-01-09│16:15 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
もしかして
明けましておめでとうございます。本年もブログ更新楽しみにしております。
その選手とはもしかして…早熟で海外で活躍していてトップレベルで、オサマ選手の紹介ということは…あの、ストライカーですか?
答えはスタジアムで確認してみます!!

今年は日本サッカー界が西本理論に気付く大きなきっかけとなる年になってほしいです!
  • 2016-01-09│15:40 |
  • ao URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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