高校球児を指導して感じたこと

週末連休の二日間、12月の16期西本塾に参加してくれた、大阪府立旭高校野球部の監督をしている井上芳憲さんの招きで、選手たちに対する「野球西本塾」を行ってきました。

現在は野球の直接指導に携わってはいませんが、同じ16期の野球小僧吉田顕宏君も見学どころかアシスタント状態で手伝ってくれました。

私の指導することは、例えば元プロ野球選手や社会人野球経験者が行うものとは根本的に違っていると思います。

そういう意味では、指導者が現状に対してどういう認識をしているかということが一番の問題となります。

たまたま広島に帰ってきた夜に、その日の地元紙に目を通すと、中四国の高校野球指導者が集まって勉強会を行ったという記事を目にしました。

野球という競技特性のためか、攻撃・守備・走塁・投手・捕手・野手と分類したり、さらにはウエイトトレーニングまで、それぞれの専門家、と言っても、その分野で結果を残している指導者の経験談を聞くということになるのでしょうが、そういうことが行われていました。

そのこと自体を悪いとは思いません、指導者が教員であるならば野球を教えるということに関してプロフェッショナルなはずがなく、自分が知り得ない情報を少しでも集めて、チームを強くしたいと思うのは当然のことです。

集まっていた学校の顔ぶれも、甲子園の経験者や、まさにそこを目指そうとしている学校の指導者が多かったと思います。

皮肉なことにというか、時を同じくして私は大阪で府立の公立高校の選手たちに、野球という競技を行うために必要な体の使の仕組みや使い方を教えに行っていたというわけです。

強豪校の指導者から見れば、私の指導することなど基本的すぎて、そんなことは知っているし選手たちも出来て当たり前のことだと思っているかもしれません。

しかし、私が過去指導に携わってきたプロの一流選手から社会人野球選手たちを含め、1人の例外もなく私のいう基本的な知識や使い方ができていませんでした。

指導はその部分から始めなければならなかったのです。

これは大げさに言っているわけではありません、紛れも無い事実です。

だからこそ、ほとんどの選手は故障を抱え、だましだましプレーを続けてきたのです。

そんな選手たちを受け入れ、なんとかしてくださいと言われても、私にも出来ないものはできません。

人口自体が減っていき、スポーツも多様化して、野球部に入ってくる選手たちにも変化を感じました。

40年以上前の話では古すぎるかもしれませんが、野球部に入ってくる選手というのは、それなりにスポーツ万能で、ほかの競技をやらせてもそこそこできる能力を持っていたけれど、やっぱり野球だという強い気持ちがあったと思います。

野球部の雰囲気も他の部とは少し違っていたようにも思います。

それは良い意味でも悪い意味でもそうで、未だに悪い部分が残っていることは当然良く無いことですが、良い意味での規律や礼儀まで失われてしまっていることは少し残念でした。

野球に限らず、スポーツを行う上でまず知っておかなければならないことがあります。

それは自他ともに頑張っていると思えるような体の使い方をしているときには、人間本来の能力を発揮することができないということです。

そのことに関しては、いろいろな例えを見せたり、実際の動作で理解してもらわなければ、言葉だけでは絶対に理解することはできない事実です。

その上で具体的な体の使い方という段取りになるのですが、ボールを投げるバットを振るという動きに対して、なぜどうしてこうやるんだという明確な指導を受けたことも無いし、もっといえば誰でも行っている動作ですから、考えたことも無いという答えがほとんどでした。

ここに大きな落とし穴があるのです。

四つ足の動物が二足歩行の動物へと進化し、二本の手が自由に使えるようになったことでボールを投げるという行為が行えるようになり、野球というスポーツが生まれました。

もともと体に仕組まれたカラクリをうまく使うことができれば、他の動物たちと同じように筋肉や関節を痛めることなく競技が行えるはずなのに、どうして人間にだけスポーツ障害などという概念が生まれてしまったのか、スポーツ医学云々の前に、正しく使えば体を痛めることなく、楽しんで上達していけるという方向性を求めることのほうが大事なのでは無いでしょうか。

2日間そんな思いで選手たちと一緒に汗をかきました。

シニアやボーイズで活躍し、推薦で強豪校に進んでいくのではなく、ちゃんと勉強して公立高校に進学し、その環境の中で勉強と野球を両立させようという選手たちですから、甲子園に出て次の世界に進むことだけが目標になってしまっている選手たちよりも、ある意味私の指導する内容に敏感に反応し、吸収しようという姿勢を見せてくれました。

なぜボールはこう握らなければならないのか、それはボールに正しく回転を与えるため、なぜバットをグリップエンドに近い小指で握ることが正しいのか、ヘッドの重みを使って遠心力を利用し、なおかつ肘の外旋運動でヘッドを回転しやすくできることなど、何も考えないでやってきたことにも一つ一つ意味があって、自分はこうしたいという個性は、そのことがきちんとわかった上で主張できる個性であることを知らなければなりません。

好きなように投げろ、好きなように振れではないのです。

そうした一つ一つの動作の意味がわかってくると、練習に取り組む意識が自ずと変わってきます。

正しい目標に対して正しい努力をすれば、結果は必ずついてくるのです。

ただそこに大阪という土地柄を考えると、入学時点で大きな実力差がある強豪校の選手たちとの差を、2年半の間に埋め、なおかつ彼らを上回るチーム力をつけるというのは、現実的な目標としては正しいとは思えません。

しかし、この過程を知り継続し結果に結びつくということを体験できたとしたら、甲子園に出場したことと同じかそれ以上の何かを高校野球の3年間で経験することができるのではないでしょうか。

そして彼らが成長し、親となった時、また指導者として選手の指導に携わった時、必ずこの経験が生かされると思います。

私の伝えたいことは、甲子園を本気で目指しているようなチームにこそ必要だと思います。

もう一歩殻を破れない何かが足りないという選手たちに、本当に必要なことは長時間の猛練習ではなく、人間本来の体の仕組みと使い方を知ることだということに気づいて欲しいのです。

いつかそんな日がきた時に私から学んだ人たちの出番がきっとくると思います。

それにしても野球のグランドにいる私は、我ながら本当に楽しそうでした。

写真を見ると、普段見せない心からの笑顔が弾けていて、家内からも「楽しかったでしょう」と言われてしまいました。

明日は千葉から競輪選手がやってきます。

一般の方で定期的にトレーニングを指導させていただいている方にそのことを話すと、「その人は何をしにここにくるのですか」と、少し寂しいというか情けなくなるような言葉が返ってきました。

その方は施術に関しても同じで、ある選手の椎間板ヘルニヤが改善したとか、肉離れの選手のケアをしているとか、膝の靭帯や半月板を痛めた選手の施術も行っているということを話しても、「そういう時は何をするんですか」と、まさにあなたに普段受けていただいている施術はなんのために行っているのですかと、聞き返したくなるような言葉しか出てこないのです。

別に弟子入りしてもらおうと思っているわけではありませんから、それ以上詳しい話はしませんが、体は丸ごと一つの存在であるという根本原理が、未だに理解していただけていないことは残念なことです。

競輪選手に対しては、私なりに自信を持って指導できる内容が準備できています。

このことを本人がきちんと理解してくれて、持ってきてくれるというレース用の自転車を使って、ローラー台の上で実感してくれれば、次節開催の競輪でもすぐに結果を出してくれると思っています。

「勝てない喧嘩は買わない」主義の私でしたが、勝ち負けの意味を自分の中で小さくしすぎていたところがあったので、「本人の伸び代をどこまで広げられるか」、お互いが納得できる変化をもたらすことを一つの目標として、様々な競技の様々なレベルの選手に対しても、私の力を発揮していこうと思います。

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Re: 野球西本塾(高校野球ver.)
井上さん

生徒たちの指導をさせていただきありがとうございました。

大切な生徒たちに部外者の指導を受けさせるということは、指導者として覚悟のいることだと思います。

逆に言えば自分ですべてを抱え込んでしまい、他のことを見せないという指導者が多いのではないかとも思います。

高校生という多感な時期に、様々な指導を経験させることはとても大事なことだと思います。

その一人に選んでいただいたことを、とても光栄に思い、私なりに全力を尽くして彼らのためにと奮闘させていただきました。

昨日お届けいただいた、生徒たちからの感想文、名前と顔が一致しないことが残念ですが、写真を見ながら、文面から想像し、たぶんこの子だなとか思いながら楽しく読ませていただきました。

その内容から、私の本気は全員に伝わっているようで、とても嬉しく思いました。

すべての始まりは本気と本気のぶつかり合いだと思います、きれいごとでは済まされません。

スタート時点では残念ながらそれが感じられず、厳しい言葉をぶつけることになりましたが、それ以降は、本当に自分たちのためになるという気持ちになってくれ、まさに本気でぶつかってくれたと思います。

二日間という短い時間でしたが、彼らを指導させていただき、私の野球小僧の一面を十分発揮させていただけたと思います。

何より私が一番楽しんでいたのかもしれません。

生徒たちは野球部員である前に、旭高校生たれという指導をされていると伺いましたが、ユニフォームに着替えた瞬間から、ほかの何者でもなく、真剣に野球に取り組む野球少年になって欲しいと思います。

野球選手として、私から色々なことを吸収してくれたと思います。

二日間の最後には、最初の印象とは全く違う野球少年たちに変わってくれました。

この変化をこれから大きく大きく進化させ、今年の夏に、そして旭高校野球部の新たな歴史を作る基礎にしていただきたいと思います。

彼らの活躍を期待しています。

選手そして女子マネージャーさんたちに、よろしくお伝えください。

西本は君たちに期待しているぞと!
  • 2016-01-15│18:40 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
野球西本塾(高校野球ver.)
西本直先生

1月10日、11日の2日間、大阪府立旭高校に来ていただき、ご指導誠にありがとうございました。
昨年末西本塾に参加し、身をもって西本理論を体感し、あつかましくも翌日に個人レッスン(野球西本塾)までしていただき、「これだ!この感覚だ!体の仕組みに沿った、正しい体の使い方ができれば、すれば、こんなに楽に、無理なく、かつ体が喜びながら、そして持っている可能性が最大限に発揮できるのだ!」と強く感じることができました。
是非、子供たちにも伝えたい、体感させたい、西本先生に会わせたい、その場ですぐ大阪に来てもらえるようにお願いをしました。
先生はいろいろな配慮をしてくださりながら、後日快く了承してくださいました。

講習初日から開始時間ぎりぎりに来るやら、その場にいても全く緊張感が伝わってこない生徒の雰囲気をもちろん敏感に感じ取られ、30分ほどお叱りの言葉をいただきました。私の普段からの指導不足であり、私自身も反省させられました。
「本気でやる気があるのか、その気になってやらなきゃ意味がないんだよ!」
まさにその通りで、与えられたことをただただこなしていることに慣れきってしまっている子供たちの心に強く訴えかけられました。

そこからぱっと切り替わり、講義が始まりました。

少しの事前学習をしたとは言え、生徒にとってほぼ始めての西本理論。
ただ私には不安はまったくありませんでした。だって西本先生ですから。笑
厳しさの中に優しさあり、ユーモアあり、そして何よりも本気の姿勢。
話し方、実技の見せ方、子供たちへの声のかけ方、引き出しの多さ。
子供たちはあっという間に西本ワールドに引き込まれ、非常に良い距離感で講習は進んでいきました。

今まで当たり前と思ってやってきたこと。投げ方であったり、打ち方であったり、走り方だってそう。正しい使い方はこうなんだ。体はこういう風に使うんだよ、こういう使い方ができるようになっているんだよ。
いろいろなドリルからいよいよ実践へ。
「おー、すげぇー」あちこちから声があがってきました。多くの子供たちが体感できていました。今までの常識が非常識になり、新たな感覚が身についた瞬間でした。ただ急に全てが良くなるわけではありません。小さいころからの積み重ねで私も含めて残念ながら良くない習慣(体の使い方)が身についてしまっているのです。今後継続してトレーニングを行い、無理のない体の使い方、正しい体の使い方を身につけ、個々が持っている可能性が最大限に発揮されるよう努めていきます。

私自身も2日間一緒に学ばせていただき、より西本理論を体感することができました。投げ方のドリルを行い、いざボールを投げると、腕を力強く振っているつもりはないのに腕は振られ、その先のボールは指にかかり、今までに感じたことがないような感覚でボールを投げられるようになりました。あまりの気持ちよさに時間を忘れ、気がつけば30分近くボールを投げ続けていました。しかも次の日にまったく肩肘に痛みがないのです。
「おー、なんだこれは!!こういうことかぁー!」。子供たちより私が1番体感できたのかもしれません。バットを振れば「ビュッ、ビュッ」今までに聞いたことのないようなスイング音が聞こえてくるのです。「あー、ボールを打ってみたい!バッティングしてみたい!」実践してみたくなるのです。

2日間という限られた時間でしたが、西本理論に触れることができ、また西本先生という人柄に触れることができ、野球のスキルアップに繋がったことはもちろんですが、それ以上に子供たちにとって非常に何物にも変えがたい貴重な経験ができたと思います。
甲子園に出ること、勝つことが全てではありませんが、目標を「夏の大会ベスト8」に掲げました。トレーニングを反復継続し、可能性を最大限まで引き出し、それが結果的に勝つことにつながり、「西本先生のおかげです!西本理論ここにあり!」と、ここ大阪より発信したいです。もっともっと西本理論を広めたいです。広げなければいけません。
それが先生への恩返しです。
私たちが結果を出すことで多くの人に振り向いてもらうこと!!
子供に関わる多くの指導者に西本理論を知ってもらえるよう微力ですが、力を尽くしたいと思います。

西本先生2日間誠にありがとうございました。
いよいよ寒くなって参りました。くれぐれも体調崩されませんようにご自愛ください。
今後とも宜しくお願いいたします。

西本塾16期生 井上芳憲
  • 2016-01-15│13:06 |
  • 井上 芳憲 URL│
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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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