「体づくりから動きづくりへ」原点回帰

昨日、千葉から来てくれた競輪のS級選手、山賀雅仁選手のトレーニングを指導しました。

まさに競輪選手という体つきで、太腿の太さは私の倍ほどあるくらい立派な筋肉の持ち主でした。

そんな彼が昨年、縫工筋の肉離れというケガをしたことで、後輩の選手から西本塾生の望月さんを紹介され指導を受けてきた中で、直接私の指導も受けてみたいと広島まで来てくれたのです。

私の施設は広島競輪場がすぐ近くなので、土地勘というかこの場所のイメージはすぐにできたそうです。

ケガをしている間に、動かせる上半身についてはこれまで以上にトレーニングに励み、まさに筋肉隆々の立派な体を作り上げていました。

それが望月さんを通じて西本理論に出会い、これまでのただ頑張るトレーニングが実は効果的ではなかったことや、体を整えるという発想なしに、ただ体を追い込んでしまうことこそがケガを誘発し、動きの向上に結びついていなかったことにも気づいてくれたようでした。

彼の口からも、「もしケガをしていなかったら今まで通りのトレーニングを続けていたと思うし、体そのものに興味を持つこともなかったでしょう」という言葉がありました。

競輪選手に限らず、他の競技の選手も同じだと思います。

それぞれの競技に特有なトレーニングの考え方があったり、今世間で流行っているというトレーニングを行うことで、自分は努力している頑張っていると、満足している選手がほとんどだと思います。

その根本の考え方が、いわゆる「体作り」という言葉や、「肉体改造」という言われ方に代表される、数値に現れる結果を求めるトレーニングです。

今の世の中の主流となっている、データ化されたものしか信じない、数字がすべてだと言い切る人たちにとってこれほど客観的な評価ができるものはないでしょう。

そういうトレーニングを誰よりも頑張ったと言い切れる人たちこそが、実はその結果として自分が思い描いた結果に結びつかないジレンマに悩まされているのです。

ここに私が生涯をかけて取り組んでいる「体づくりから動きづくりへ」というテーマが生まれてきたのです。

「動きづくり」の本質は、動きの意識を変えるという所から始まります、たんなる方法論ではありません。

大きいものが強いものが勝つ、何時からそんなことが当たり前に信じられるようになってしまったのでしょうか。

遥か昔、東京オリンピックの重量級で、日本の威信をかけて決勝戦を戦った神永選手が、オランダのヘーシンク選手に敗れてしまったことが、大きな転機だったと思います。

柔よく剛を制すのはずの柔道が、あれだけの体格差があると、なすすべもなく敗れてしまう、そのことを印象付けられたシーンだったと思います。

その後細かい体重別の争いになっていくと、今度は筋力の差が勝敗を分けるという考え方がされるようになりました。

まさにパワー優先体作り優先の考え方が全盛となっていったのです。

15年ほど前に、地元の競輪選手のトレーニングを請け負う際に、参考にしようと観戦に行った広島競輪場で行われた「共同通信杯」という大きなレース、出走していたのは当時を代表する有名なレーサーばかりでした。

朝から最終レースまで、選手の動きを見続けた私が一番印象に残ったのは、最後の直線で抜け出してくる選手のフォームでした。

力みまくって屈筋をフル稼働し、自転車を揺らし、もがき苦しんでゴールラインを超えるのではなく、まったく体がぶれずに伸筋優位の体の使い方で、体全体の力がすべて前に進む推進力になっていると思わせる美しいフォームだったことをはっきり覚えています。

もちろん全員がものすごい体をしていましたが、鍛え上げられた筋肉をいかに効率的に使うかということが、勝敗のカギになると思いました。

私のスポーツ選手に対する動きや体の使い方に対する評価や判断の基準は、どの競技でも変わることはありません。

しかし、そういう日本のトップレーサーにして、その後オリンピック種目に採用されてから、期待されているような結果を得ることができていません。

そうするとやはり、体が違う筋力が違う、やっぱり体作りが大事なのだという発想に結びついていくのだと思います。

ある意味世間がそう思ってくれている方が、私の仕事にとっては好都合かもしれません。

体づくりとは対極にある「動きづくり」をテーマに指導している私の考え方に興味を持ち、活路を見出してくれた選手が、次々と結果を残してくれるのですから。

千葉から来てくれた彼が、地元広島の選手が私のところに一人も来ていないという現実に驚くとともに、出来ればこのまま知られたくない、他の選手に教えたくないというのも、現役の選手としては当然のことかもしれません。

仲間の選手を含め、レースに臨めばすべての選手がライバルであり、負けられない「敵」という関係なのですから。

彼は私から多くのことを学んで帰ってくれました、地元に帰ってからは、改めて望月さんとのトレーニングを続けてくれることと思います。

そうやって二人で成長してほしいと思います。

4時間以上一緒に居て本当に楽しかったです、今朝も質問の続きがあると電話があり、またまた長々と話をしてしまいました。

年末から続いたスポーツ選手の指導、本当に真剣な選手たちとの時間を過ごせて、それぞれの選手の役に立てていることを実感できる、良い仕事をさせてもらっていると思います。

最近私に対する批判的な意見がもしあったとしても、気にならないというか、気にしている時間がもったいないと思うようになってきました。

頭の中で処理できる容量がだんだん少なくなってきたのか、そんな暇があったら目の前の選手のために何が出来るかをしっかり考えないと、せっかく来てくれる選手たちに申し訳がありませんから。

他の考え方を選ぶのなら、迷わずそちらに行っていただけばいいだけのことで、私の守備範囲はそれほど広くありませんから(笑)

ここらで一息つけるかと思いきや、下記に紹介する大学生から個人指導の依頼がありました。

電話では彼のことがよく分からないので、現状や問題点を文章にして送ってくださいと言う依頼に応えて、彼が送ってくれた内容を、彼の了解を得て紹介します。(今のところは匿名が条件ですが)

まさに体作りを追及して行き詰ってしまった典型例として、自分も同じ状況に陥っているという選手はたくさんいると思います。

そういう選手たちのヒントになるかと思い、掲載をお願いしました。

読んで見てください。

僕は11月上旬に西本さんのブログを知り読ませていただいています。

大学のサッカー部に所属していて、昨期はリーグ2部優勝し、今期からは1部リーグに所属することになりました。

チームが調子が良い中、自分の身体のコンディション、パフォーマンスの低下でだんだんと試合に出られないという状況が増えていきました。

そんな中で悩み迷って藁をもすがる気持ちでサッカーに取り組んでいるときに西本さんのブログに出会い、西本さんの理論に出会いました。

今はオフシーズンで、本格的な練習が無い中で動き作りを学び、理解し、身体に覚えさせるのは今しかないと思い、突然連絡させていただきました。

昨年の12月までは、身体の強さ、ジャンプ力、足の速さの為に、東京にあるパーソナルトレーナーの所に通っていました。

僕の考えは、筋肉を鍛えいじめることで超回復をさせ栄養をとり休息をとる、その事でパフォーマンスが上がると思い込みひたすら追い込んでいました。

しかし、身体が悲鳴を上げて疲労が困憊し、試合当日ですらその疲労が抜けていませんでした、そんな中で西本さんの理論に出会い考え方が180度変わりました。

いま、サッカーをする時に意識している事は、まず身体から力みをとり、動くときは骨盤、肩甲骨の連動性を意識し、そして伸筋優位な身体使いをするため広背筋に意識を持って行き骨盤を立てること、そしてダッシュするとき、瞬間的な動きの時など、お腹から走る(肋骨下の空洞のある所、おへその所)ことを意識をしています。

自主練などで自分のタイミングでボールを蹴ったり走ったりする時にはものすごく楽にプレーできました。

練習が本格的に始まり、動き作りを試せるチャンスだと思ってワクワクしながら練習をしました。

最初のパス練習、パスゲームまではものすごく滑らかに、スムースにプレーができ自分の身体ではないような感覚が味わえていました。

しかし、気づかない内に屈筋の方を使っていってしまったのか最後のゲームの時には、先ほどのような感覚でわありませんでした。

この時に、実際西本さんのお話を直接聞き、いま自分がわかっているつもりな考え方を、より一層理解してプレーしなければ、僕の夢であるサッカー選手になることへの可能性が絶たれてしまうと思いました。

西本さんの理論を理解し、実際に体現できれば必然とパフォーマンスは向上し、力みなく自分らしいプレーができれば、可能性は無限大だと感じています。

長々と書いてしまいすみませんでした、自分なりに今考えていることを整理して書きました。2月2日よろしくお願いします。


こういう若い選手の気づきを大切にして、夢先案内人として選手を導いてあげるのが私の仕事です。

過去にも私の元を訪れてくれた選手たちの、お決まりのパターンと言っていいかもしれません。

広島の高校で全国優勝し、大学に進んでプロをめざし、自分は絶対にプロになれると信じ、その時に備えて誰よりもトレーニングに励み、肉体を鍛え上げていくうちに、肝心のサッカー選手としての動きに精彩がなくなり、夢を果たすどころか学年が上がるごとにレベルが落ちて行ったという、現在もフットサルリーグの現役選手から相談を受けた際に、事前に送られてきた手書きの手紙にも、同じような内容が切々と綴られていました。

もちろんそれだけが原因だったとは言いません、それでもその努力の方向が違っていたことは明らかです。

世の中がこういう流れになったことはもちろん私の責任ではありませんが、そうではないことを分かってもらい、本来それぞれの人間に与えられた、持って生まれた能力を、いかんなく発揮するためにはどうすればいいのか。

この本質的な命題を、クリアにしていくために、微力ではありますが選手一人一人としっかりと向き合い、指導を受けてくれた選手たちが結果を残し、その確かさを証明してくれることで、少しずつ本当は何が正しいのかという部分に目を向けてくれる人を増やしていきたいと思います。

いよいよJリーグも各クラブが始動し始め、選手の動きを生で見ることができるようになってくると思います。

私が指導した選手の何が違って見えるのか、期待を持って見て欲しいと思います。

今年は何チームかの試合をチェックしなければならなくなって、そういう意味でも楽しみが出来ました。

一サポーターとしても大いに期待しています。


スポンサーサイト

Trackback

Comment

Re: 自分に適したやり方
コメントありがとうございます。
理論というのは実際に行われていることを言葉で説明する手段にすぎません。
しかし、理論という言葉に踊らされ、言葉をなぞることに一生懸命になることは本末転倒なのです。
とにかくやってみる、そこで感じたことが理論なのです。
私が感じたことと近いこともあれば、違うと思うことがあっても良いのです。
ただそこに個人差と言うか感性の違いは当然ありますが、指導者としての理論が必要なのか、自分のための理論なのか、その辺りで判断していただければいいと思います。
月末のレース、また良い報告を期待しています。
  • 2016-01-17│17:47 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
自分に適したやり方
西本様

西本塾10期生、阪井徹史です。

新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

「動きづくりへ原点回帰」、もはや経典ですね。運動を始める度に唱える呪文です。

さて、本日は近況報告をさせていただきたく投稿いたしました。

先月の福岡国際マラソン、マラソンレースを通じて知り合った知人が出場するということで、テレビ画面を通じてレースをじっくりと見ておりました。結局、テレビカメラが彼を捉えることはありませんでしたが、気がつけば、先頭集団のアフリカ人選手の動きを西本理論目線で観察していました。そして、西本塾に参加して以降、こうしてお手本を観察することをしていなかったことにも気付きました。

なんと遠回りをしていたのかと。

彼らのランニングフォームですが、以下のように見えました。

◯一番感じたのは、脚を後方にリリースしていること。地面を蹴るというよりは重心を過ぎた頃に地面を軽く押している。
○使っている筋肉はお腹でしょうか、身体の内部にある大きな筋肉、脚の表面の筋肉ではない。これが広背筋につながっているのだろうか?
○身体もまっすぐで、骨盤も起きるので股関節可動域が広がり、フォームがダイナミックで軽快に見える。

普段の自分と比べました。

×脚を後方にリリースする感じがなく、伸びがない。地面を蹴ってはいないが、押してもいない。どこかに力が逃げている。
×動きが小さく、腿、脛、足首等の小さな筋肉が動員される。だから、消耗が早く、脚がつる。ゴルフの癖か右膝が微妙に左(内側)に行こうとする。
×疲れてくると体が「く」の字に曲がって前面の屈筋が活躍を始める。骨盤も後傾してしまいダイナミックさがまるでなくスピードが出ない。

広背筋をこう使う?骨盤を立てる?股関節の旋回?
頭でっかちに良かれと思って続けてきましたが、やってきたことは全く逆でした。

西本理論を頭で考え、理論先行で実践を試みてきましたが、それが出来るほど私は天才ではないのです。勉強もそうでしたが、まずは数多くの例題を解き、何となくのイメージを作りながら、理論との照合を繰り返します。良い事例と理論の間を行ったり来たりり。これですと、正しく頭に入りやすく、ちゃんとできる傾向が強いのです。これが私の脳回路なのでしょう。

何度かコメントさせていただきましたが、「自分の身体に聞きながら楽しんでごらん」というのが西本さんの決まり文句でした。こういう意味だったのかもしれませんね!

現状の走りは随分と楽になり、スピードも上がってきました。月末は昨年に続いての「勝田全国マラソン」を走ってきます。フルマラソン4レース目。昨年の3時間46分を上回ることはもちろんですが、どんな走りができるか、非常に楽しみです。

今後の指導でのご活躍を楽しみにしています。

阪井

  • 2016-01-16│12:19 |
  • 阪井徹史 URL│
  • [edit]

Post a comment

Secret


プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。

最新記事

カレンダー

04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

カウンター

検索フォーム

QRコード

QR