指導するということ、立場による違いを超えて

昨夜のU23日本代表選手たちによる、オリンピックアジア予選の準決勝は、深夜までしっかりテレビ観戦しました。

私がサッカーの試合を見る時には、戦術や個人の能力に対しての先入観もないので、単純に動きの良し悪しという視点で見ることが多くなります。

もちろん勝ってほしいという気持ちはありますが、たとえ相手チームの選手であっても、今の動きは良いなと思えば、そこで声が出てしまうこともあります。

今回は試合の途中で気になったことをツイートするということは行わず、最後まで見届けたうえで気になったことがあればという気持ち見ていました。

ほとんどの選手は、名前も顔もまったく知らない選手たちで、この予選の中で少し覚えたかなという程度でした。

ですからまったく先入観なしに、一つ一つのプレーを観察することができました。

今朝起きてネットで試合内容に関する様々な感想を見ていると、まさに同じ試合を見ても、それも延長戦を制して劇的な勝利を収めてくれた選手たちに対してのコメントとは思えない辛辣なものもありました。

それはそれで個人の感想として否定はしませんが、国を代表して戦うという選手たちの姿に関しては、今回出場している監督や選手たちは、私にとっては納得のできる戦い方をしてくれていると思いました。

目的は日本というチームが勝つことで、それによってオリンピックという大きな舞台に駒を進めることです。

そういう意味では、W杯予選に出場しているフル代表の選手たちも何ら変わることはありません。

しかし、今回の戦いぶりを見ていると、どこかフル代表とは違う雰囲気を感じるのです。

悪い意味ではありません、U23の選手たちの方が日の丸を背負って戦っているという強い気持ちが伝わってくるような気がしました。

それがなぜなのか、自分の中でも色々な答えが出てはきますが、一番の理由は指導者の考え方ではないかと思いました。

勝負事ですから、まずは勝つことが最優先でしょう、その戦いの中で日本というチームのコンセプトというか、スタイルを構築していくとか、新たな戦力を発掘していくとか、その他にもいろいろなことが要求されながら、最終的に勝ってくれという命題が突きつけられるのが、チームを率いることを任された監督の仕事でしょう。

最も大きな舞台の一つであるオリンピック、指導者としても大きなチャンスであり、同時に大きな責任を背負わされることになります。

私にはもちろん縁のない世界ですが、今の私の仕事に置き換えてみると、個人を相手にしている仕事ではありますが、その一人一人に対して私なりの「結果責任」を感じながら仕事をしています。

その責任の範囲は、私に対して何を求めてくれているかということに比例します。

私のブログを読んで興味をもったから、直接話を聞きたいということが動機なら、そこには何の責任も生じないことになります。

しかしブログを読んで、自分の現状に何か少しでもプラスになることがあると感じていただいたのなら、それを実現させるという責任が発生します。

例えば同じサッカー選手という立場であっても、現状置かれている選手としての立場がそれぞれ違うのですから、求める高みも当然違ってくることになります。

先日指導を受けに来てくれた競輪選手は、S級1班という競輪選手の中でもトップランクに位置する選手ですが、その中でも頭一つ抜きんでた選手になりたいという目標を持ってきてくれたのですから、私の指導もより細かい部分にまでおよび、一切の妥協は許されない状況を作らなければ、到底その目的に達するための協力などできるはずはありません。

私の元を訪れる選手のほとんどが、そういう真剣な気持ちでやってきてくれます。

そんな中でも私が一番本気を感じるのが、「教員」という立場で指導をしている人たちです。

野球であれば、甲子園という明確な目標があり、それを達成するために何をするかということが指導者としての最大のテーマとなります。

当然のように結果を残している名監督と呼ばれている方たちの元に指導を受けに行くことになります。

しかし、私にはその考え方にどうしても納得できないところがありました。

まさに勝つことだけが目的となってしまい、高校生という人生の基礎を学ぶべき時期に、本来の教育というか指導ができているのかという問題です。

私ですらそんなことを考えるのですから、現場で指導している教員の方々の中には、もっと真剣にこの問題を考えている人がたくさんいると思います。

もちろん野球だけの話ではありません、自分が学生時代に経験したこともない競技の顧問になって、何をどう教えていいのか分からない、たとえ競技歴があったとしても、それと指導することはまったく別の話で、生徒たちのために本当に自分は役に立っているのか、自分は指導者としてこれでいいのか、本来の仕事ではない部活動の指導というところで、様々な問題を抱えている教員の方が本当に多いと思います。

昨日電話をいただいた方もそんなお一人だと思いますし、過去に学びに来てくれた教員の方々もまったく同じ気持ちだったと思います。

テレビ中継されるような種目でもない限り、どんなに結果を残したとしても世間に知られることもないでしょうし、給料が上がるわけでもないでしょう。

それでも休日返上で生徒たちに接している教員の方々に対して、ご苦労様ですという言葉はかけられても、指導方法に文句を言えるはずはないと思いますが、現実にはそんなことが当然のように言われ、多くの悩みを抱えているというのが現実のようです。

そんな方たちに私が何を教えてあげられるのか、それは勝つための方法論ではなく、人間の体に仕組まれたからくりを正しく理解し、体に無理をさせることなく、安全に確実に上達できる動きの基礎を学んでいただくということに尽きます。

逆に言えば、その根本を知らないままに枝葉の方法論に終始しているからこそ、選手たちの体を痛め、技術の習得を遅らせ、結果として勝利に結びついていないということです。

最後まで負けないチームは一つしかありません、負けという現実に対して納得できる過程を歩ませてあげることが、指導者として最も大切なことなのではないでしょうか。

そのために知っていなければならないことがたくさんあるのです。

それらをあえて見て見ぬふりをして、勝つための方法論だけを求めている指導者のなんと多いことか。

プロの世界ならそれも許されるかもしれません、勝つために選手を集め、勝つための練習を課し、それが習得できない選手は切り捨て、その過程の中でけがをした選手も見捨ててしまう、そんな非常な世界でもあります。

教員の方々にそんなことが許されるはずはありませんが、いわゆる強豪校ではそんな現実があることも否定できないでしょう。

そんなジレンマと、何をどこで学んだらいいのかも分からないまま、日々生徒と向き合う中で、私の考え方に出会い、もしかしたらその中に自分が求めるヒントが隠されているのではないか、そう思ってコンタクトを取ってくれる方に対して、私はどんな一流のプロスポーツ選手に対するとき以上の結果責任を感じます。

もしかしたら多くの若者の人生を左右するきっかけを、間接的とは言いながら私が作ってしまうかもしれないのですから。

先日指導させていただいた大阪旭高校の野球部員たちに対しても、冒頭の30分間が生活指導のような話になってしまったことは、まさに私が枝葉の方法論を教えるために来た人間ではないと言いたかったからです。

それぞれの立場で真剣に悩み、向き合おうとしている指導者の方々、そんな方々のお役に立てることが私の中にあると感じていただけたのなら、どうぞ私のところに来てください。

どんな立場であれ、どんなレベルの選手を対象にしているのであれ、相手にしているのは同じ人間です。

本気でぶつかれば必ず届くと思います。

その本気を手に入れるためには、自分が納得できる理論とある程度の実践力が必要です。

今年も私には現場で指導する環境はありませんが、そのおかげで多くの方々と一緒にたくさんの経験をさせていただけるようです。

「誰かのために」、一緒に頑張りましょう。

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Re: 現状報告
もう二週間も経ったのですね。
彼らと過ごした時間は、私にとっても青春時代の苦しくも楽しい野球少年の頃を思い出させてくれました。
私にとっての野球は、大袈裟でなく生活のすべてでした。
小学生から始めた野球を奪われてしまった高校時代、まさに抜け殻になってしまった時期もありました。
何をどうやったら野球というものを正しく追求していくことができるのだろうと、あの頃からずっと考え続けてきたように思います。
今その答えのようなものを見つけ出すことができ、それをどうやったら正しく伝えられるかを考える立場になりました。
細かい部分は数限りなくありますが、一番大切なことは本気で取り組むということに他なりません。
そして、その本気を裏付けてくれるのは、自分が納得できる理論でした。
誰かがそう言っている、みんながそうやっている、そんな曖昧で根拠のないことを延々と続けているのがスポーツの世界ではないでしょうか。
その一つ一つを突き詰め、まずは自分が納得できるところまで整理し、それが正しいという確証を得るために自分でやってみる。
その上で初めて、選手に指導するという段階に進んでいけるのです。
さらに大切なことは、目の前の選手たちが、そこまで準備した理論と実践を伝えるに値する対象であるかということです。
そうでなければ、どんなに準備をしても本気で伝えられる訳はありませんし、彼らが理解できるはずもないのです。
まずは相手を本気にさせる、そのためには誰よりも自分が本気になる。
これ以外に私が追い求めてきた、正しい指導というものは存在しえません。
今回彼らはその姿勢がまったく感じられませんでした。
それはある意味、想定の範囲内のことでした。
そんな彼らをどうやって本気にさせるか、それが私の仕事です。
本気で取り組めば、こんな良いことがあるよ、そう思わせる指導ができなければ私を呼んでいただいた価値はありません。
あとは井上さんの仕事です。
まだ彼らのやる気に火がついたというレベルではなく、種火くらいのはずです。
この火を大きく燃え盛る炎にすることが井上さんの仕事で、それさえできれば、激戦地大阪でベスト8という目標が現実のものとなるのです。
本気で取り組んでください、応援しています。
  • 2016-01-23│20:37 |
  • 西本 直 URL│
  • [edit]
現状報告
西本先生に指導に来ていただいて2週間が経ちました。
本日も先ほど練習が終わりました。

子供たちの意識は確実に変わりました。
全員が、とまでは言い切れませんが、キャプテンを中心に上級生が「本気で取り組む姿勢」に気づき、下級生を巻き込みながら、チームに厳しい雰囲気をもたらしてくれています。
講習会初日冒頭に西本先生に厳しい言葉をいただいて、それが各人の胸に深く刻まれているようです。

そういう土台・心構え(本気で取り組む姿勢)がある上で、体の仕組みに沿った正しい体の使い方でトレーニング(ドリル)を反復継続し→効果が体感でき(目で見てわかる)→できる人ができない人に教え(アドバイス)→できるようになり→トレーニングが楽しくなり→自主的に取り組むようになる、という好循環がチームに芽生えようとしています。

「やるならちゃんとやろう!本気で取り組もう!」
文字にすれば当たり前で、非常に低次元・レベルの低い話かもしれませんが、1番大事なことを先生は訴えかけて下さいました。
子供たちよりも私が深く反省させられました。
枝葉の技術論・指導論にばかり目を向けるのでなく、もっともっと大事なこと「根っこ」の部分にもしっかりと向き合わなければならないと。
私自身がもっと本気にならないと。

まだ2週間しか経っていません。
もちろんまだまだできていないことだらけです。
大事なのはこれからです。
子供たちの可能性をどんどん伸ばしていけるように、私自身が学び続け、動き続けながら、もっと「西本理論」の根っこを深めていかなければなりません。
そして高校野球が終わった後でも、人生に活かしていけるようなことを伝えていきたいと思います。

西本先生
今回のブログからも先生の本気の想いが伝わってきました。
いつもありがとうございます。

大阪府立旭高校野球部
西本塾16期生 井上芳憲
  • 2016-01-23│15:31 |
  • URL│
  • [edit]

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。こちらもご覧ください。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
西本塾を深める会を9月10日(日)に開催を予定しています。
詳細はstudio操のホームページ内の「講習会情報」をご覧ください。

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