筋肉そのものに興味を持った訳

20代の後半、今となっては時効ですが、会社員として働きながら、会社には内緒で鍼灸専門学校の夜間部に通っていました。

もともと鍼灸に強い強い興味があったわけではありませんが、お世話になっていた渡部栄三先生から、操体はカテゴリーとしては民間療法で、いわゆる整体やカイロプラクティックと同じ扱いとなるので、この先仕事として考えているなら、国が認めた資格をとっておいた方が世間の信用が得られると勧めていただき、鍼灸師の資格をとるための学校に通うことにしました。

皮肉なもので、その後サンフレッチェ広島在籍中に、日本体育協会が制定した「アスレチックトレーナー」の資格も取得しましたが、4年に一度の更新時に、この資格は私が仕事を続けていくにあたって必要ないと判断し、更新を行わなかったため、現在は所持していませんし、鍼灸師としての看板も上げることなく、自分のやり方で仕事をしたいため、あれだけ苦労して取った資格は表向き役に立ってはいません。

もちろん学生として学んだことはたくさんありますし、特に解剖学と生理学という基礎医学の授業は、その後の東洋医学を学ぶ上でも、操体法の理解を深める上でも、さらにはスポーツ動作の改善を行うためのトレーニングの分野まで、私の基礎を作ってくれた大事な時期となりました。

その中でも解剖学の授業で筋肉の働きや性質を学んだことは、とても意義深いことでした。

一般的に考えられている筋肉は、名称の付けられた上腕二頭筋や大腿四頭筋などという大雑把なものだと思います。

しかしその筋肉は単純な構造ではありませんでした。

一つの筋肉は筋膜に包まれていて、その中には筋繊維束と呼ばれるいくつもの束で構成されています。

見た目で言えば、レンコンか蜂の巣輪切りにしたものをイメージしたら良いと思います。

さらにその筋束の中には同じように筋繊維という束が入っていて、その筋繊維を構成するのが筋原繊維という、まさに複雑な何層構造にもなっている組織でした。

筋繊維の中には数百から数千本の筋原繊維が入っており、筋繊維自体の3分の2を占めています。

限りなく細いそうめんの束が筋原繊維のイメージでしょうか。

筋原繊維の太さは0.5から2μm、1μmは0.001㎜ですから、その細さというか太さは想像もつきません。

筋肉がこんな細い繊維の集合体であることを知っただけでも衝撃的だったのに、その構造はもっと複雑というか機能的というか、どうしてこんな精巧なカラクリが我々の中に存在するのだろうかと、あえて神様という言い方をすれば、神様はよくもまあこんな仕組みを考えてくれたものだと感心するしかありませんでした。

それが筋原繊維の収縮の仕組みです。

詳しくは専門のサイトを見ていただくとして、超極細の筋原繊維の中の、隣り合う2本のZ版という仕切りの間を結節(サルコメア)と呼び、アクチン繊維ミオシン繊維が交互に重なり合う構造になっています。

書物よって多少違うようですが、この結節の長さは筋繊維が弛緩している時2.5μm、収縮時には2μmあるいはそれ以下にもなるそうです。

ということは、たとえば10㎝の長さの筋肉があったとしたら、結節と呼ばれるZ版に区切られたものが40,000個並んでいて(計算は合っているでしょうか)、その一つ一つが0.5μmずつ収縮してくれることで、我々は筋肉のおかげで骨を動かしてもらい、体を動かすということが可能となっているのです。

単純にゴム紐のようなイメージしか持っていない人もいたのではないでしょうか。

筋肉の仕事は収縮、脳からの指令を受けて縮むことだけで、自分で伸びるということはできません。

相対する筋肉が収縮した時、引き伸ばされるという状態になります。

ただ不思議なことに、収縮時だけではなく引き伸ばされながら力を発揮すことも出来ますし、長さを変えずに力を発揮することもできるという、まさにマルチな仕事をしてくれる凄い仕組みを備えています。

この働きを模式図で簡単に説明できないかと考えたのが、3・5・7理論と名付けた説明の仕方です。

こうして私の筋肉に対する興味はますます深まり、どうして体の痛みが出るのか、なぜ筋肉の故障が起きるのか、どうすればそういう状況にならないで済むのか、日々考えるようになりました。

その過程の中でまず思いついたのが、屈筋に分類される筋肉は運動、とくに外向きの力を必要とする競技にっとってマイナスな働きをしているのではないかと思うようになりました。

たしかに見た目は大きくパワフルです、しかし目の前の選手の中には、その筋肉を持て余しているというか、うまく使いこなせていないと感じる動きしかできない選手がいました。

その頃に生まれた発想が「体作りから動き作りへ」という、一般的でない考え方でした。

全てを言葉にすることはとても難しいですが、私の発想の原点が、もう30年も前のことですが、解剖学の授業を担当していただいた、当時埼玉医科大学の教授を務められていた金子先生のお話の面白さであったことを書いておきたいと思いました。

あの時の授業をもし休んでいたら、今の発想はなかったかもしれません、出会いというか縁というのは不思議でとても有難いことだと思います。

今日書いたことは、少し知識がないと分かりづらいかもしれませんが、筋肉は本当によくできた組織で、我々のために日々一生懸命働いてくれていることを理解して、それを道具のように扱ったり、体を虐めるなどという言い方をすることなく、本来の仕事を気持ち良く行ってもらえるように、少しだけその仕組みにも興味を持っていただけたらと思いました。

なぜ屈筋を鍛えることを、私はマイナスなことだと思っているのか、とくに股関節に関して屈曲という意識を持つとなぜ故障に結びつきやすいのか、改めて私の考えを整理して書きたいと思います。

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プロフィール

Author:西本 直
1993年、Jリーグサンフレッチェ広島を皮切りに、社会人野球三菱重工広島・協和発酵・ヴィッセル神戸・川崎フロンターレ、そして広島カープ佐々岡真司投手など、プロアマ問わず競技レベルのスポーツ選手から一般の方まで、トレーニングやメンテナンスの指導を行ってきました。
その経験と知識の蓄積を「西本理論」としてまとめ、一人でも多くの方に実践していただくことが、これからの私の使命であると信じ、このブログから発信していきます。
私の理論はスポーツ選手のみを対象としたものではなく、ビジネスマンや家庭の主婦まで老若男女すべてに当てはまる不変のものです。
指導や講演のご依頼も受け付けています。
実名でツイッターも書いていますので、チェックしてみてください。
また、2013年9月9日にConditioning Studio 操をオープンしました。
また、遠隔地にお住まいの方を対象とした動き分析とアドバイスを行っています。
詳細は「スタジオ操」のホームページ内の「遠隔サポート」をご覧ください。
「第25回西本塾」を11月18・19日の土日に開催を予定しています。
詳細はStudio操ホームページ内の「講習会情報」をご覧ください
尚、深める会も12月10日に予定しています。

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